「異体字セレクタ」の版間の差分

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なお、U+303EにIDEOGRAPHIC VARIATION INDICATOR(直訳すると漢字異体字表示子)という似たような名称で、かつ例示字形が点線で囲まれている(通常は不可視である制御文字などを示す)ものが存在するが、これはこれに続く漢字が異体字であることを示す可視の記号 ([[下駄記号]]の異体字版) であり、異体字セレクタではない<ref>{{cite web|url=http://std.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n1728.doc|title=Ad-Hoc Report on Ideographic Variation Indicator|date=1998-03-18|accessdate=2008-02-21}}</ref>。
 
2014年9月現在Unicodeに登録されている異体字セレクタの組み合わせは、[[数学記号の表|数学記号]]が23通り、[[モンゴル文字]]が64通り、[[パスパ文字]]が6通り<ref name="u5stdvars"/>、[[携帯電話の絵文字]]が214通り(テキストスタイルと絵文字スタイルが107通りずつ)、そして[[漢字]]が[[CID (文字コード)|Adobe-Japan1-6]]に含まれる約14600通り、および汎用電子コレクション ({{lang-en-short|Hanyo-Denshi collection}}) に含まれる約13000通り<ref name="ivd"/>、文字情報基盤コレクションに含まれる約10000通り、[[CJK互換漢字]]に対応するものが1002通りである。ただし汎用電子コレクションには、Adobe-Japan1コレクションと多数の重複がある<ref>{{cite web|url=http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110124/356398/|title=UnicodeのIVSがもたらすメリットとデメリット - 新常用漢字が引き起こす文字コード問題|author=安岡孝一|date=2011-01-24|accessdate=2011-02-01}}</ref>。汎用電子コレクションと文字情報基盤コレクションは同一の字形は異体字セレクタを共有している。漢字は[[常用漢字]]の字形など日本において標準的な字形も登録されており、Adobe-Japan1-6に含まれるものなら、「一」のように単一の字形しか存在しないものでもその単一の字形が登録されている。汎用電子コレクションの方は、Adobe-Japan1-6とは異なり、同一コードポイントで複数の字形を持つもののみ登録されており、単一の字形しか存在しないものは登録されていない。
 
漢字の字形指定 (IVS) には、[[基本多言語面]]の異体字セレクタを使わない<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/reports/tr37/|title=Unicode Technical Standard #37 - Ideographic Variation Database|date=2006-01-13|accessdate=2008-02-02}}</ref>。このためIVSに対応し、[[UTF-16]]を使用するアプリケーションは、[[Unicode#サロゲートペア|サロゲートペア]]を正常に扱えなければならない。なお、CJK互換漢字は、IVSではなく非漢字と同じStandardized Variantsとして登録されたため、漢字でありながら基本多言語面の異体字セレクタを使用する。
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2010年12月6日、[[アドビシステムズ]]、イースト、[[ジャストシステム]]、[[大日本スクリーン製造|大日本スクリーン]]、[[マイクロソフト]]、[[モリサワ]]の6社共同で、IVSの普及推進を目的としてIVS技術促進協議会が設立された<ref>{{cite web|url=http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20101206_412176.html|title=人名などの異体字もデータ交換可能に、MSなどが「IVS技術促進協議会」発足 |publisher=INTERNET Watch|accessdate=2011-01-19|accessdate=2011-02-01}}</ref>。
 
2011年4月2日、UTCから[[簡体字]]をIVSで表す登録申請の準備をしていることが告知された<ref>{{cite web |url=http://appsrv.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg36/IRGN1757_ProposedIVDRegistration.pdf |title=Preliminary Proposal for an Ideographic Variation Database Registration |date=2011-04-02 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>。しかしCJK統合漢字の既存の符号化モデルと矛盾する上に、21字中符号化済みの漢字が6字も含まれるというずさんな提案であり、IRG<ref>{{cite web |url=http://std.dkuug.dk/JTC1/SC2/WG2/docs/n4021.pdf |title=Summary Report of IRG #36 |date=2011-04-20 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>・韓国<ref>{{cite web |url=http://appsrv.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg36/IRGN1757ROKFeedback.pdf |title=R.O.Korea's comments RE: IRG N1757 (UTC Preliminary Proposal for an IVD Registration) |date=2011-06-01 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>・イギリス<ref>{{cite web |url=http://appsrv.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg37/IRGN1783_WG2n4075.pdf |title=Comments on issues raised in N4021 |date=2011-05-22 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>などから懸念が寄せられ、登録申請は中止された。
2012年1月31日、Unicode 6.1が制定。携帯電話の絵文字のテキストスタイルと絵文字スタイル切り替えのための異体字セレクタの組合せが登録された。
 
2012年1月31日、Unicode 6.1が制定。携帯電話の絵文字のテキストスタイルと絵文字スタイル切り替えのための異体字セレクタの組合せが登録された<ref>{{cite web |url=http://www.unicode.org/Public/6.1.0/ucd/StandardizedVariants.html |title=Standardized Variants Revision 6.1.0 |date=2011-11-27 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>
2012年3月2日、IVDがバージョンアップ。汎用電子コレクションとAdobe-Japan1-6のこれまで登録されていなかった異体字のうち一部が追加登録された。
 
2012年3月2日、IVDがバージョンアップ。汎用電子コレクションとAdobe-Japan1-6のこれまで登録されていなかった異体字のうち一部が追加登録された<ref name="ivdversions">{{cite web |url=http://www.unicode.org/ivd/#versions |title=Ideographic Variation Database |accessdate=2014-09-17 }}</ref>
2013年9月30日、Unicode 6.3が制定。CJK互換漢字がStandardized Variantsとして登録された。
 
2013年9月30日、Unicode 6.3が制定。CJK互換漢字がStandardized Variantsとして登録された<ref>{{cite web |url=http://www.unicode.org/Public/6.3.0/ucd/StandardizedVariants.html |title=Standardized Variants Revision 6.3.0 |date=2013-03-03 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>。
2014年5月16日、IVDがバージョンアップ。文字情報基盤コレクションが登録された。
 
2014年5月16日、IVDがバージョンアップ。文字情報基盤コレクションが登録された<ref name="ivdversions"/>
 
{{clear}}
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* 漢字の場合、出典が異なれば同一字形であっても別の異体字セレクタが割り当てられることとなっている。そのため、同一字形に対して複数の異体字セレクタが割り当てられ、検索等において支障が生ずる場合がある。例えば、{{JIS2004フォント|葛飾区の葛}}には、Adobe1-6用の異体字セレクタ18の他に汎用電子コレクション用の異体字セレクタ20、{{JIS90フォント|葛城市の葛}}にはAdobe1-6用の異体字セレクタ17の他に汎用電子コレクション用の異体字セレクタ19が与えられてしまった。また、Unicode 6.3ではIVSとは別にCJK互換漢字に異体字セレクタが与えられたため、例えば「&#xFA30;」にはAdobe1-6の異体字セレクタ18と汎用電子の異体字セレクタ20に加え互換漢字U+FA30に対応する異体字セレクタ1が与えられるなど最大3つ異体字セレクタが与えられることとなった。
 
さらに2011201429月現在、
* 異体字セレクタに対応した環境は少なく([[#ソフトウェア]]の節を参照)、また対応した環境であっても、対応範囲はフォントによって必ずしも一様ではない。たとえばWindows 8.1標準の日本語フォントのうちメイリオ/游明朝体/游ゴシックはおおむねAdobe-Japan1コレクションをサポートするが、MS 明朝/MS ゴシックはおおむねJIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形のみをサポートする。
* 異体字セレクタに対応した環境はかなり少なく、現在のところ一部のDTPソフトウェアやブラウザなどのみである ([[#ソフトウェア]]の節を参照)。
* 異体字セレクタに対応したフォントが少ない ([[#フォント]]の節を参照)。
* 現状では漢字は日本向けのコレクションしか登録されていないため、国によって異なる骨の異体字(右記の図参照)のようなケースを異体字セレクタで区別することはできない。
 
== 実装 ==
2011年9月現在、漢字の異体字セレクタに対応した[[実装]]には以下のようなものがある。
=== フォント仕様 ===
* [[OpenType]]仕様のバージョン1.5は、漢字の異体字セレクタによる字形切り替えをサポートするためにFormat 14 'cmap' subtableと呼ばれる情報のフォーマットを規定する<ref>{{cite web|url=http://www.microsoft.com/typography/otspec150/default.htm|title=Microsoft Typography - OpenType Specification|date=2008-01-29|accessdate=2008-03-10}}</ref>。
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=== ソフトウェア ===
* [[Windows 7]]では標準のテキスト描画処理が異体字セレクタに対応しており、[[エクスプローラー]]でのファイル名表示や[[メモ帳]]やサードパーティのテキストエディタでのテキスト表示等で異体字セレクタによる字形切り替えが可能である。但し、使用するフォントが異体字セレクタによる字形切り替えに対応している必要があり、日本語版に[[プレインストール]]された標準的なフォントである[[メイリオ]]は非対応であるため、初期設定では異体字セレクタで字形が切り替わらない。<ref>{{cite web|url=http://biotronique.jp/techno/computing/unicode_variationselector_windows7|title=Biotronique - Computing - 実は異体字セレクタに対応済のWindows 7|date=2009-12-02|accessdate=2009-12-03}}</ref>
* [[Windows 8]]以降、システム標準の日本語フォントがAdobe-Japan1コレクションに対応した<ref>{{cite book|和書 |title=Unicode IVS/IVD入門 |author=田丸健三郎, 小林龍生 |isbn=978-4822294830 }}</ref>。
* [[Mac OS X 10.5]]標準のテキスト描画処理はdefault ignorableプロパティに従い<ref>{{cite web|url=http://unicode.org/faq/unsup_char.html|title=FAQ - Display of Unsupported Characters|accessdate=2011-01-19}}</ref>異体字セレクタを描画しないが、字形の切り替えはサポートしない。
* [[Mac OS X 10.6]]標準のテキスト描画処理は字形の切り替えをサポートするが<ref name="lunde2009">{{cite web|url=http://blogs.adobe.com/typblography/2009/08/ivs_ideographic.html|title=IVS (Ideographic Variation Sequence) support in OSes|author=Ken Lunde|accessdate=2011-02-01}}</ref>、Windows 7と同様標準フォントの[[ヒラギノ]]は異体字セレクタに未対応である。
* [[OS X Lion]] (10.7)以降、システム標準の日本語フォントがAdobe-Japan1コレクションに対応した<ref>{{cite web |url=http://www.screen.co.jp/ga_product/sento/support/otf_ver_hiragino.html |title=ヒラギノとMac OS Xのバージョン相関表 |date=2014-07-08 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>。
[[Image:uts37sample.png|thumb|right|289px|AlphaとY.OzFontによる、UTS #37の例文の描画結果「芦田さんは[[芦屋]]<!-- 曖昧さ回避不能 -->のお嬢様だ」「[[芦]]」の「戸」が[[新字体]]と[[旧字体]]]]
* Alpha (テキストエディタ) - 2008年2月のIVS-OTFT試験公開版では異体字セレクタの情報をOpenType機能タグの情報に変換することにより、異体字セレクタによるグリフの切り替えに対応している<ref>{{cite web|url=http://alpha.sourceforge.jp/diary/|title=Alpha の бесполезный な日記|date=2008-03-04|accessdate=2008-03-10}}</ref>。
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* FooEditor(テキストエディタ)<ref>{{cite web|url=http://fooeditor.sourceforge.jp/|accessdate=2013-10-13|title=Foo Editor}}</ref>
* [[Adobe Reader|Adobe Reader 9]]以降、[[Flash Player|Flash Player 10]]のFlash Text Engine、[[Adobe InDesign|Adobe InDesign CS4]]などの[[アドビシステムズ|アドビ]]社製品<ref name="lunde2009"/>。
* Windows 7上での[[Opera]] ([[Presto]])<ref>{{cite web|url=http://d.hatena.ne.jp/iwaman/20100827/p1|title=Windows7でIVSの表示テスト|accessdate=2011-01-19}}</ref>
* [[Mozilla Firefox|Mozilla Firefox 4]]はバージョン4以降システムにインストールされたフォントおよびWebフォントによる異体字セレクタの描画をサポートする<ref>{{cite web|url=https://bugzilla.mozilla.org/show_bug.cgi?id=552460|title=Bug 552460 - implement Ideographic Variation Sequences support|accessdate=2011-01-19}}</ref>。またバージョン31以降、CJK互換漢字のStandardized Variantsをフォントがサポートしていない場合に、CJK互換漢字のグリフで代替する機能を持つ<ref>{{cite web |url=https://bugzilla.mozilla.org/show_bug.cgi?id=989557 | title=Bug 989557 - Support fallback for CJK Compatibility Ideographs Standardized Variants | accessdate=2014-09-17 }}</ref>。
* [[WebKit]]はSVGフォントをサポートしており、SVGフォントによって定義したIVSによる字形切り替えが可能である。Opera (Presto)もSVG文書でのみSVGフォントによる字形切り替えが可能<ref>{{cite web|url=http://d.hatena.ne.jp/mandel59/20100131/1264941470|title=SVGフォントでIVSを表示するテスト|accessdate=2011-01-19}}</ref>。
* [[一太郎]]2008以降 - 入力機能は2014 徹から。それ以前は貼り付けのみ対応。個人向け[[ATOK]]も2014より正式対応。法人向けはその前年より。
* [[Microsoft Office]] 2007以降 - 2010まではUnicode IVS Add-in for Microsoft Office<ref>{{cite web|url=http://ivsaddin.codeplex.com/|title=Unicode IVS Add-in for Microsoft Office|accessdate=2012-11-12}}</ref>が必要