「サブプライム住宅ローン危機」の版間の差分

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証券化とサブプライム危機の間のもっと直接的な結び付きは、審査者、格付け機関や投資家たちがローンや証券化プールが有するリスク相関 ([[:en:Correlation and dependence|en]]) を数学的に[[数理モデル|モデル]]化した際に犯した根本的な誤りと関係している。相関モデリング ― あるプールの中の一つのローンを取り出してその債務不履行リスクを決定する方法は、統計的にその他のローンの債務不履行リスクと関連している ― は統計学者の李 祥林 ([[:en:David X. Li]]) が開発した[[コピュラ (統計学)#正規コピュラ|ガウス・コピュラ]]という技法に基づいていた。この技法は、証券化取引に伴うリスクを評価する手段として広く採用されたが、実は相関を調べる上では余りにも単純化され過ぎた方法を採っていた。不幸なことに、この技法に潜む欠陥が市場参加者に露呈したのは、サブプライムローンで裏付けされた何千億ドルもの[[資産担保証券]] (ABS) や CDO が既に格付けされ売り捌かれた後だった。投資家たちがサブプライム担保証券を買うのをやめた時には ― これによって住宅ローンの融資企業はサブプライムローンを転嫁不能になった訳だが ― 危機の影響は既に顕在化し始めていた<ref>{{Citation | last = Salmon | first = Felix | year = 2009 | authorlink=:en:Felix Salmon | title = Recipe for Disaster: The Formula That Killed Wall Street | journal = Wired | date = 2009-02-23 | url = http://www.wired.com/techbiz/it/magazine/17-03/wp_quant|accessdate=2010-07-07}}</ref>。
 
アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞受賞者の[[マイケル・スペンス]]はこう書いている。{{quote|金融革新はリスクの分散と削減を意図していたが、実際には主に視界から隠しただけだった。前に進むための重要な挑戦の一つは、金融の不安定性に関する早期警戒システムを分析面で支える基礎として、これらの力学への理解を深めることである<ref name="viewpoints1">{{citation| first=A. Michael | last=Spence | url=http://www.pimco.com/LeftNav/Viewpoints/2008/Viewpoints+Lessons+from+the+Crisis+Spence+November+2008.htm |title=Lessons from the Crisis|publisher=PIMCO|date=2008-11-26|accessdate=2009-02-27}}</ref>。}}
 
===不正確な信用格付け===
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2008年6月の講演の中で、[[ニューヨーク連邦準備銀行]]総裁(当時。後に財務省長官)の[[ティモシー・ガイトナー]]は、金融市場の麻痺を「並行」銀行システム、別名[[シャドーバンキングシステム]] にて生じた「取り付け騒ぎ」に起因するものとして強く非難した。これらの機関は金融システムを支える金融市場の中で重大な地位を占めるに至ったが、貯蓄銀行のような規制監督下には置かれていない。しかもこれらの機関は脆弱だった。何故ならそれらは流動性市場から短期の資金を調達しては、長期の非流動的かつリスクの高い資産を購入していたからである。このため、金融市場が崩壊すると、それらは忽ち資金不足に見舞われ長期資産を安値で売り払う事態に陥り易い。ガイトナーはこれらの機関の大きさを次のように描写した:「2007年初頭、資産担保型約束手形導管 ([[:en:Asset-backed commercial paper|en:ABCP]]導管)<ref group="#">導管は conduit の訳語。ここでは ABCP を扱う特別目的会社等を指す</ref>、投資ビークル ([[:en:Structured investment vehicle|en:SIV]]) の中身、オークション式優先証券([[:en:Auction rate security]])の中身、償還請求権付入札利率債券(Tender Option Bond、TOB)、および変動金利要求証券(VRDN=variable-rate demand notes)を合わせた資産総額はおおよそ 2兆2千億ドルだった。トライパーティ・レポ取引の翌日物資産は 2兆5千億ドルに成長した。ヘッジファンドが保有する資産は凡そ 1兆8千億ドルに成長した。当時の五大投資銀行のバランスシート合計額は 4兆ドルだった。これに対し、米国における上位5行の銀行持ち株会社が同時点で保有していた資産合計は 6兆ドル強に過ぎず、(正規の)銀行システム全体が所有していた資産総額は約 10兆ドルだった」。ガイトナーによれば「これらの要素が合わさった結果として出来上がったのは、自己膨張的な資産価格と信用循環に対して脆弱な金融システムだった」<ref name="newyorkfed.org"/>。
 
アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞受賞者である[[ポール・クルーグマン]]は、シャドーバンキングシステムに走ったことが、危機を呼んだ「出来事の核心」であると記した。「シャドーバンキングシステムが重要性において伝統的な金融業に匹敵あるいは凌駕さえするにつれて、政治家および政府官僚は彼らが世界大恐慌を生んだのと同種の金融的な脆弱性を復活させつつあることに気付くべきだった ― そして彼らはこれらの新たな機関を制御できるように規制と金融的なセーフティネットを拡充すべきだった。指導者たちが公式に打ち出すべきだったのは単純なルールである:つまり、銀行がやることをやり、危機の中では銀行と同様に救済されねばならないものは、それが何であれ、銀行と同様に規制されるべきなのだ」。彼はこの制御の欠如を「悪質な無視」と呼んだ<ref name="Krugman 2009">{{citation
| last = Krugman
| first = Paul