「ダイアトニック」の版間の差分

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通常の音楽用語では「ダイアトニック・スケール」は[[全音階]]を、「クロマティック・スケール」は[[半音階]]を指す。
 
しかし、[[蛇腹楽器]]の世界では、ある一つのボタン[[鍵盤]]を押したまま、蛇腹を押したときはド、引いたときはレ、というように、別の音が出る「押し引き異音式」を、'''ダイアトニック式'''あるいは「バイソニック」(“bisonic”双音式)、または「プッシュ・アンド・プル」と呼ぶ。[[File:Accordion1897japan.jpg|thumb|150px|left|明治時代の本のダイアトニック・アコーディオンの説明図。各ボタンの「押」「引」それぞれの音階(ドレミ)を[[工尺譜]]で書いてある。]]
 
これに対して、一つのボタン(ないし鍵盤)を押すと、蛇腹を押しても引いても同じ音が出るようにしてある「押し引き同音式」を、蛇腹楽器の世界では「'''クロマティック式'''」あるいは「ユニソニック」(“unisonic”一音式)と呼ぶ。
 
ダイアトニック式(押し引き異音式)は、少ないボタン鍵盤でたくさんの高さの音を鳴らせる、という利点がある(理論的にはボタン数の2倍までの数の音を鳴らせる)。そのため、小型軽量の蛇腹楽器に向いている。その反面「ドレミファ」を鳴らすためには、蛇腹を小刻みに押し引きしなければならぬため、楽器のサイズが大きくなると演奏がしにくくになる。結果として、ダイアトニック式のボタン鍵盤配列は、1kgから6kgくらいのあいだの小型~中型の蛇腹楽器に多い。
初期の蛇腹楽器は、全音階(ダイアトニック・スケール)のみを弾ける素朴で小さなタイプが多く、それらはバイソニック(押し引き異音式)が多かったため、蛇腹楽器の関係者はバイソニックの意味で「ダイアトニック」という語を使うようになった。一方、半音階(クロマティック・スケール)も網羅して弾ける本格的な蛇腹楽器は、初期の頃はおおむねユニソニック(押し引き同音式)だったため、蛇腹楽器の関係者はユニソニックの意味で「クロマティック」という語を使うようになった。
 
その反対に、クロマティック式(押し引き同音式)は、ボタン鍵盤の数が少ない小型軽量の蛇腹楽器では鳴らせる音域が狭くなってしまい、不利である。逆に、中型~大型のサイズの楽器では、蛇腹の押し引きの切り返しが不要であるぶん、演奏は有利になる。結果として、6kg~10数kgの中型・大型の蛇腹楽器では、クロマティック式が多い。
その後、蛇腹楽器の改良と多様化が進み、バイソニックの蛇腹楽器でも、半音のボタン鍵盤を追加して増やし、半音階も網羅できるタイプも現れた。しかし、蛇腹楽器の世界では、クロマティック・スケールを弾ける蛇腹楽器でも、ボタン鍵盤がバイソニックなら、習慣的に「ダイアトニック」ないし「セミ・クロマティック」(準クロマティック式)と呼ぶ。
 
ちなみに、手鍵盤(ピアノやオルガンの鍵盤と同じ、黒鍵と白鍵の板状の鍵盤)は、一つの鍵盤が占める面積がボタン鍵盤より広い。手鍵盤のアコーディオン(ピアノ式アコーディオンとも呼ぶ。日本で単に「アコーディオン」と呼ぶと普通はこのタイプを指す)は、中型~大型の蛇腹楽器に向いている。
蛇腹楽器の場合、外見は全く同じでも、ボタンないし鍵盤の配列がダイアトニックかクロマチックかで、奏法も音楽のフィーリングも全く違うため、事実上、別種の楽器になる。アコーディオンやバンドネオン、コンサーティーナなどでの演奏者は、「ダイアトニック派」と「クロマティック派」に分かれ、それぞれ自分の楽器に強い思い入れをもつ傾向がある。
 
初期の蛇腹楽器は、全音階(ダイアトニック・スケール)のみを弾ける素朴で小さなタイプが多く、それらはバイソニック(押し引き異音式)のボタン鍵盤が多かった。そのため、蛇腹楽器の関係者はバイソニックの意味で「ダイアトニック」という語を使うようになった。一方、半音階(クロマティック・スケール)も網羅して弾ける本格的な蛇腹楽器は、初期の頃はおおむねユニソニック(押し引き同音式)だったため、蛇腹楽器の関係者はユニソニックの意味で「クロマティック」という語を使うようになった。
一方、半音階(クロマティック・スケール)も網羅して弾ける蛇腹楽器は、初期の頃はおおむねユニソニック(押し引き同音式)だったため、蛇腹楽器の関係者はユニソニックの意味で「クロマティック」という語を使うようになった。
 
その後、蛇腹楽器の改良と多様化が進み、んだ。バイソニックの蛇腹楽器でも、半音のボタン鍵盤を追加して増やし、半音階も網羅できるタイプも現れた。しかし蛇腹楽器の世界では、長年の習慣をふまえ、クロマティック・スケールを弾ける蛇腹楽器でも、ボタン鍵盤がバイソニックなら、習慣的に「ダイアトニック」ないし「セミ・クロマティック」(準クロマティック式)と呼ぶ(このような呼称上の「ねじれ」は、西洋の楽器では珍しくない。例えばフルートは、現在は金属製の改良型が主流であるが、分類上は「木管楽器」と呼ばれる。その理由は、改良前の昔のフルートは木製だったからである。蛇腹楽器の呼称や分類にも、金属製のフルートを「木管楽器」と呼ぶのと同様の確信犯的な感覚がある)
 
蛇腹楽器の場合、外見は全くがほぼ同じであっても、ボタンないし鍵盤の配列がダイアトニックかクロマチックかで、奏法も音楽のフィーリングも全く変わってしまうため、事実上、別種楽器になる。アコーディオンやバンドネオン、コンサーティーナなどでの演奏者は、「ダイアトニック派」と「クロマティック派」に分かれ、それぞれ自分の楽器に強い思い入れをもつ傾向がある。
 
そのため、例えばバンドネオンを購入して習うような場合、自分のあこがれの名奏者がダイアトニック派かクロマティック派か事前に調べておかないと、あとで失望することになりかねない。(詳しくは[[バンドネオン#ボタン配列-ディアトニックとクロマチック]]参照)
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=== 楽器業界での慣用的表現 ===
ピアノ鍵盤式アコーディオン(ピアノ・アコーディオンとも言う。右の写真参照)は、クロマティックの定義半音階も網羅しているという点から言えば、クロマティックアコーディオンの一種であるが、鍵盤式ピアノ・アコーディオンはほぼ全てクロマティック式であるとわかりきっているため、わざわざこれを「クロマティック」云々の呼称で呼ぶことはない。
 
単に「クロマティック・一方、ボタン鍵盤式アコーディオン」と言えば小型はダイアトニック式が、大型はクロマティック・ボタン・アコーディオン(右上式が多い、という傾向はあるも写真参照)の、見かけだけを指すではどちらなのか分別しにくい場合も多い
そのため楽器業界では、単に「クロマティック・アコーディオン」と言うと、クロマティック・ボタン・アコーディオン(右上の写真参照)だけを指す。
 
== ハーモニカの場合 ==