「ダイアトニック」の版間の差分

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これに対して、一つのボタン(ないし鍵盤)を押すと、蛇腹を押しても引いても同じ音が出るようにしてある「押し引き同音式」を、蛇腹楽器の世界では「'''クロマティック式'''」あるいは「ユニソニック」(“unisonic”一音式)と呼ぶ。
 
=== ダイアトニック式の有利と不利 ===
ダイアトニック式(押し引き異音式)は、少ないボタン鍵盤でたくさんの高さの音を鳴らせる、という利点がある(理論的にはボタン数の2倍までの数の音を鳴らせる)。そのため、小型軽量の蛇腹楽器に向いている。その反面「ドレミファ」を鳴らすためには、蛇腹を小刻みに押し引きしなければならぬため、楽器のサイズが大きくなると演奏がしにくくになる。結果として、ダイアトニック式のボタン鍵盤配列は、1kgから6kgくらいのあいだの小型~中型の蛇腹楽器に多い。
 
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ちなみに、手鍵盤(ピアノやオルガンの鍵盤と同じ、黒鍵と白鍵の板状の鍵盤)は、一つの鍵盤が占める面積がボタン鍵盤より広い。手鍵盤のアコーディオン(ピアノ式アコーディオンとも呼ぶ。日本で単に「アコーディオン」と呼ぶと普通はこのタイプを指す)は、中型~大型の蛇腹楽器に向いている。
 
=== 蛇腹楽器の多様化と分類呼称の「ねじれ」の発生 ===
初期の蛇腹楽器は、全音階(ダイアトニック・スケール)のみを弾ける素朴で小さなタイプが多く、それらはバイソニック(押し引き異音式)のボタン鍵盤が多かった。そのため、蛇腹楽器の関係者はバイソニックの意味で「ダイアトニック」という語を使うようになった。
一方、半音階(クロマティック・スケール)も網羅して弾ける蛇腹楽器は、初期の頃はおおむねユニソニック(押し引き同音式)だったため、蛇腹楽器の関係者はユニソニックの意味で「クロマティック」という語を使うようになった。
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その後、蛇腹楽器の改良と多様化が進んだ。バイソニックの蛇腹楽器でも、半音のボタン鍵盤を追加して増やし、半音階も網羅できるタイプも現れた。しかし蛇腹楽器の世界では、長年の習慣をふまえ、クロマティック・スケールを弾ける蛇腹楽器でも、ボタン鍵盤がバイソニックなら、習慣的に「ダイアトニック」ないし「セミ・クロマティック」(準クロマティック式)と呼ぶ(このような呼称上の「ねじれ」は、西洋の楽器では珍しくない。例えばフルートは、現在は金属製の改良型が主流であるが、分類上は「木管楽器」と呼ばれる。その理由は、改良前の昔のフルートは木製だったからである。蛇腹楽器の呼称や分類にも、金属製のフルートを「木管楽器」と呼ぶのと同様の確信犯的な感覚がある)。
 
=== 事実上は別種の楽器 ===
蛇腹楽器の場合、外見がほぼ同じであっても、鍵盤の配列がダイアトニックかクロマチックかで、奏法も音楽のフィーリングも全く変わってしまうため、事実上、別種の楽器になる。アコーディオンやバンドネオン、コンサーティーナなどでの演奏者は、「ダイアトニック派」と「クロマティック派」に分かれ、それぞれ自分の楽器に強い思い入れをもつ傾向がある。
 
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[[Image:A convertor free-bass piano-accordion and a Russian bayan.jpg|thumb|150px|鍵盤式アコーディオンと、クロマティック・ボタン・アコーディオンの一種であるロシアのバヤン。]]具体的に言うと、一口に「ボタン式アコーディオン」と言っても、フランスやロシア等の音楽で使われる大型のものはクロマティック式が多く、アイルランドや中南米で使われるものは小型のダイアトニック式が多い、という傾向がある(あくまでも「傾向」である)。
 
=== 半音階もカバーする「ダイアトニック」式蛇腹楽器もある ===
上述のとおり、ダイアトニック・タイプの蛇腹楽器の中には、半音専用のアクシデンタル・キー等をつけたり、B調全音階とC調全音階というふうに半音違いの2つの全音階を2列のボタンとして並べることにより、半音階も網羅して弾けるタイプもある。蛇腹楽器の世界では、「ダイアトニック」はほぼ「バイソニック」や「押し引き異音式」と同義語であり、「ダイアトニックスケールしか弾けない」という意味ではない。この点は注意を要する。