「クスクス」の版間の差分

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[[Image:Couscoussier.jpg|thumb|right|200px|クスクス鍋]]
クスクスの調理に用いられる専用のクスクス鍋というものがあり、二段になっていて下段でスープを煮て、その蒸気で上段のクスクス粒を蒸す仕組みになっている。フランス語では'''クスクシエ'''(Couscoussier)(couscoussier)、アラビア語では下段を'''タンジュラ'''または'''グドラ'''、上段を'''クスカス'''と呼ぶ。かまどやコンロの口が2つあれば、鍋を二つにして'''タージーン'''(طاجين)と呼ばれる具入りの[[スープ]]とクスクス粒を別々の鍋で調理することも行われている。レストラン、フランスの家庭ではスープとは別に、熱湯と塩とバターまたは[[オリーブ・オイル]]で炊くのが一般的であるが、マグリブの家庭ではタージーンの汁と上に浮いた脂でクスクス粒を煮ることも多い。モロッコでは食べる直前に汁をクスクスにかける。クスクス鍋でクスクスを蒸すのは時間と手間がかかるが、本格的に蒸したクスクスの食感は他の調理法とは比べものにならないふっくら感やぷちぷち感があり美味である。一般的にバターを加えるのはモロッコ風、オリーブオイルを加えるのがチュニジア風とされている。
 
クスクス鍋でクスクス粒を炊く場合、クスクス粒に水を含ませてから指で塊をほぐし、クスクス鍋の蒸気で蒸してから再びほぐし、塩とバターやオリーブ油を加え、もう一度蒸して仕上げる。別鍋でクスクス粒を炊く場合、一人当たり200cc相当を目安に、それ相当のクスクス粒、ほぼ同量のぬるま湯とごく少量のバターまたはオリーブオイル、少量の塩を加え、5分程度火にかけて炊き、火を止めた後さらに数分蒸らす。ぬるま湯とバターの代わりに、マグリブの家庭で行われているように、タージーンの汁や脂を用いても良い。この場合クスクス粒に既に味が染み込むことになり、風味が向上する。
 
[[File:Koskose with Fish.jpg|thumb|right|200px|魚のクスクス、[[リビア]]]]
'''タージーン'''は、肉や野菜を煮込んだ具沢山のスープである。フランス語では'''[[ブイヨン]]'''(bouillon)とも表現される。[[チュニジア]]では、トマトペーストを入れて濃厚なトマト味に仕立てたタージーンが最も一般的である。[[モロッコ]]風のタージーンはトマトは控えめで、[[クミン]]や[[シナモン]]、サフランを中心としたあっさりした味付けである。その他の野菜として[[ニンジン]]、[[カブ]]、[[キュウリ]]、[[ズッキーニ]]、[[タマネギ]]、[[カボチャ]]、[[キャベツ]]などが多く用いられる。また[[ソラマメ]]や[[ライマメ]]、[[グリーンピース]]、[[ヒヨコマメ]]も用いられる。チュニジアではよく[[ジャガイモ]]が入る。[[パセリ]]や[[コリアンダー]]などの[[ハーブ]]を用いることもある。モロッコでは[[レーズン]]や[[ナツメヤシ]]の実、[[アーモンド]]を入れたり、[[砂糖]]や[[蜂蜜]]で軽く甘みをつけることもあり、モワヤン[[アトラス山脈]]のベルベル人は、タージーンに[[牛乳]]や[[クリーム (食品)|クリーム]]を加えることもある。また、 蒸したクスクスの上にバターとドライフルーツをのせ、シナモンを振りかけた甘いクスクスが主菜とデザートの間に供されることがある。
 
[[File:CouscousDromadaire.jpg|right|200px|thumb|[[ヒトコブラクダ]]のクスクス、[[モーリタニア]]]]
具は主に肉が用いられるが、魚や家畜の臓物も用いられる。元々[[イスラム教]]圏の食文化のため、イスラム教徒の間で[[豚肉]]を用いることは絶対に無い。肉は[[羊肉]]が最も多く、[[牛肉]]や[[家禽]]の肉([[鶏肉]]や[[ハト]]の肉)もよく使われる。それら3種の肉を同時に盛り付けたものや、さらに辛味の効いたメルゲーズ(merguez)と呼ばれる羊肉の[[ソーセージ]]を加えたものをフランス語でクスクス・ロワイヤル(couscous royal)と呼ぶことが多い。肉は普通タージーンに入れて煮込むが、レストランなどでによって煮込み肉を出す場合と、[[グリル]]で焼いたもの丸焼き肉や鉄串に挿して焼いたシシュ・[[ケバブ]]を別添えの皿に盛り付けるのが一般的て出す場合もあり、また両者を併せてオーダーきる場合もある。魚は鯛(ドラド、仏 daurade)、特に[[クロダイ]]を用いることが多い。変わったものとしては、羊の胃袋の中にさらに別の部位の臓物を練りこんだ[[アンドゥイエット]](仏 andouillette)と呼ばれる臓物ソーセージを具に用いることもある。
 
調味料としては、[[唐辛子]]ペーストにオリーブ油などを加え、クミン、[[コリアンダー]]、[[ニンニク]]などを加えて味を整えたチュニジアの唐辛子ソース、[[ハリッサ]](هريسة、Harissa)harissa)が用いられることがあり、特にチュニジアとフランスで一般的である。一般家庭ではタージーンを煮込む際に既にこのハリッサで調味することもあるが、レストランでは普通はテーブルに配膳された段階で各自が好みで適量を加えて食べる。マグリブの多くの国では公用語としてフランス語が話されているために、Hが[[無声音]]になりアリッサと呼ばれる。また[[レモン]]や[[オリーブ]]の塩漬けや、青[[唐辛子]]の[[ピクルス]]を添えることも多く、ハリッサの代わりに青唐辛子で辛味を補う食べ方も一般的である。
 
モロッコでは、[[安息日]]である[[金曜日]]の昼食に食べることが多い他、[[結婚式]]、誕生祝い、[[割礼]]、[[葬式]]など、人生の節目となる主要な行事に供する。宴席では、賓客が空腹で帰宅しないように、食事の最後に供される。モロッコのベルベル人は[[バターミルク]]を飲みながらクスクスを食べることを好む。