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[[画像:Circle of Willis ja.svg|250px|thumb|right|脳底の動脈の模式図]]
'''もやもや病'''(もやもやびょう、[[英語{{lang-en-short|英称]]:Moyamoya disease}}<ref group="†">{{IPA-en|(ˈ)mɔɪəˈmɔɪə dɪˌziːz}} モヤ'''モ'''ヤ(モィヤ'''モ'''ィヤ)・ディ'''ズィ'''ーズ</ref><ref>[http://dictionary.cambridge.org/dictionary/british/moyamoya-disease Moyamoya disease''] (Cambridge Dictionaries Online)</ref>)は、脳底部に異常血管網がみられる[[脳血管障害]]。脳[[血管造影]]の画像において、異常血管網が[[煙草]]の[[煙]]のようにモヤモヤして見えることから、[[日本人]]研究者鈴木二郎と高久晃の研究論文 Cerebrovascular "Moyamoya" Disease: Disease Showing Abnormal Net-Like Vessels in Base of Brain: Jiro Suzuki, Akira Takaku; Arch Neurol. 1969; 20(3): 288-299. により「もやもや命名されたなっている
 
これまで、[[厚生労働省]]の正式な疾患呼称かつて'''ウィリス動脈輪閉塞症'''(ウィリスどうみゃくりんへいそくしょう)であが日本における正式な疾患呼称だったが、[[20032002年]]から厚生省度([[難病研究班平成]]14年度)より現在正式名ももやもや病となり、もやもや病という病名が正式ものとし認証されたいる
 
== 定義(概念) ==
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== 合併症 ==
小児例では知能障害、成人例では脳出血
 
== 原因 ==
原因となる感受性[[遺伝子]]はRNF213遺伝子の多型p.R4810Kである(感受性[[遺伝子]]とは疾患への感受性を高める[[遺伝子]]をいい、[[遺伝子異常]]だけで起こる原因[[遺伝子]]とは区別される)<ref>[http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110721_1.htm もやもや病感受性遺伝子の特定とその機能についての発見]([[京都大学]] 2011年7月21日)</ref>。RNF213を[[クローニング]]した[[ゲノム]]は591-kDaの細胞質に存在するタンパクをコードしており、[[ゼブラフィッシュ]]によって発達期にこの[[遺伝子]]の発現を抑制すると、[[頭蓋]]内の[[眼動脈]]や[[脊椎動脈]]の分岐の異常が出ることから、[[血管]]形成に重要な新たな遺伝子であることも分かった。また、この遺伝子を持っている人が全て発症するわけでなく、環境要因の関与も疑われている。さらにp.R4810Kは推定1万5千年の[[中国]]、[[韓国]]、[[日本]]共通の祖先にまでにさかのぼることも分かり、[[東アジア]]の歴史の中で広がっていった遺伝子であることも分かった。
原因となる感受性[[遺伝子]]はRNF213遺伝子の多型p.R4810Kである。<br />
(感受性[[遺伝子]]とは疾患への感受性を高める[[遺伝子]]をいい、[[遺伝子異常]]だけで起こる原因[[遺伝子]]とは区別される。)<br />
RNF213を[[クローニング]]した[[ゲノム]]は591-kDaの細胞質に存在するタンパクをコードしており、[[ゼブラフィッシュ]]によって発達期にこの[[遺伝子]]の発現を抑制すると、[[頭蓋]]内の[[眼動脈]]や[[脊椎動脈]]の分岐の異常が出ることから、[[血管]]形成に重要な新たな遺伝子であることも分かった。<br />
また、この遺伝子を持っている人が全て発症するわけでなく、環境要因の関与も疑われている。さらにp.R4810Kは推定1万5千年の[[中国]]、[[韓国]]、[[日本]]共通の祖先にまでにさかのぼることも分かり、[[東アジア]]の歴史の中で広がっていった遺伝子であることも分かった。<br />
<br />
(特定までの流れ)<br />
2008年 15家系を用いた研究で、17番[[染色体]]の長腕の終末部領域に100個以上の[[遺伝子]]が存在することを見出し報告された。<br />
2010年 17番[[染色体]]の長腕の終末部領域の[[遺伝子]]「Raptor」を道しるべとして原因[[遺伝子]]が検索できることが報告された。<br />
2011年 17番[[染色体]]の候補領域にあるRNF213という[[遺伝子]]の4810番目のアルギニンがリジンに代わる多型(p.R4810K)が機能異常に結びつく多型と結論づけられた。<br />
<br />
(出典:[[京都大学]] もやもや病感受性[[遺伝子]]の特定とその機能についての発見[http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110721_1.htm])
 
== 統計 ==
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== 疫学 ==
原因[[遺伝子]]のp.R4810kは、およそ1万5000年前の[[アジア]]大陸における祖先においてもやもや病感受性変異が起きたとされ、[[アジア]]、特に[[中国]]、[[韓国]]、[[日本]]人に多く確認されている疾患であり、中でも[[日本]]が最も患者数が多い。欧米・白人集団では原因となるp.R4810Kが確認されないことから発生頻度が極めて少ない。
 
=== 一次予防 ===
<br />[[DNA型鑑定]]により、早急に手術適応のある症例かどうかを判断する指標([[遺伝子マーカー]])の有無を調べることが最も有効とされている<ref>[http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/120302_amedrc.html 横浜市立大学学術院医学群の松本教授ら研究グループが、重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見!]([[横浜市立大学]] 2012年3月2日)</ref>。遺伝子マーカーには現在解明されているものでR213遺伝子の[[多型]]であるc.14576G>Aがある。この[[多型]]を所持する場合のもやもや病発生リスクは通常の259倍である。さらにこの[[多型]]はもやもや病の発生時期も予測しうる[[遺伝子マーカー]]である。c.14576G>Aがホモ接合体の場合の予測発症時期は3歳前後、ヘテロ接合体の場合は7歳前後、そのどちらでもない野生型の場合は8歳前後となっている([[ホモ接合型]]:父母由来のそれぞれの[[遺伝子座]]の両方に同じ変異がある状態。[[ヘテロ接合型]]:父母由来の[[遺伝子座]]のどちらか一方にのみ変異がある状態。[[野生型]]:正常な(本来の)機能を有するもの。詳しくは[[対立遺伝子]]の項目)
[[DNA型鑑定]]により早急に手術適応のある症例かどうかを判断する指標([[遺伝子マーカー]])の有無を調べることが最も有効とされている。
<br />[[遺伝子マーカー]]は現在解明されているものでR213遺伝子の[[多型]]であるc.14576G>Aがある。この[[多型]]を所持する場合のもやもや病発生リスクは通常の259倍である。さらにこの[[多型]]はもやもや病の発生時期も予測しうる[[遺伝子マーカー]]である。c.14576G>Aがホモ接合体の場合の予測発症時期は3歳前後、ヘテロ接合体の場合は7歳前後、そのどちらでもない野生型の場合は8歳前後となっている。([[ホモ接合型]]:父母由来のそれぞれの[[遺伝子座]]の両方に同じ変異がある状態。[[ヘテロ接合型]]:父母由来の[[遺伝子座]]のどちらか一方にのみ変異がある状態。[[野生型]]:正常な(本来の)機能を有するもの。詳しくは[[対立遺伝子]]の項目)
 
(出典:[[横浜市立大学]] 学術院医学群の松本教授ら研究グループが、重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見![http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/120302_amedrc.html])
==== 二次予防 ====
[[頭痛#片頭痛|片頭痛]]や[[てんかん|癲癇]]として見逃されている例が多いため、繰り返す頭痛や痙攣発作がある場合はもやもや病を疑い、MRIやMRAと合わせてDNA型鑑定を受ける。
 
==== 三次予防 ====
激しい運動は[[脳虚血]]や[[脳出血]]を誘発する恐れがあるため、極力避けるようにする。
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日本で[[脳神経外科学]]が発達し始めた[[1950年代]]、[[血管造影]]において[[1953年]]([[昭和]]28年)に選択的血管造影法が創始された。同法は脳の血管造影にも導入され、未知の疾患が様々な[[日本語]]や[[英語]]の呼称、あるいは、日本の研究者の苗字をとった名称などでも報告された。
 
それら未知の疾患のうち、いくつもの名称で発表されていた当疾患は、[[1965年]]([[昭和]]40年)[[8月]]号の「脳と神経」の特集において1つの疾患として整理された<ref name=BN>[http://www003.upp.so-net.ne.jp/moyamoya/noutoshinnkei1965.htm 脳底部に異常血管網を示す疾患群をめぐって](大阪市立総合医療センター脳神経外科 小宮山雅樹『もやもや病に関する医療情報サイト』)</ref>。また、異常血管網の成因については[[奇形]]説と[[側副血行路]]説とが唱えられた<ref name=BN/>。
 
側副路説に基いた名称には、工藤達之[[慶應義塾大学]]教授<ref group="†">[[1966年]](昭和41年)第25回日本脳神経外科学会会長。生年:[[1911年]]([[明治]]44年)、没年:[[1991年]]([[平成]]3年)。</ref><ref name="chairmen">{{PDFlink|[http://jns.umin.ac.jp/jns/pdf/chairman.pdf 日本脳神経外科学会 学術総会歴代会長ならびに開催地]}}(日本脳神経外科学会)</ref>が[[1967年]](昭和42年)に出版した本<ref>頭蓋内に異常血管網を示す疾患 - Willis動 脈輪閉塞症 -([[医学書院]])</ref>に記載した「'''ウィリス動脈輪閉塞症'''」や、鈴木二郎[[東北大学]]教授<ref group="†">[[1974年]](昭和49年)第33回日本脳神経外科学会会長。生年:[[1924年]]([[大正]]13年)、没年:[[1990年]](平成2年)。</ref><ref name="chairmen"/>が同年に命名した<ref>「少女救おう」レバノンから招き手術へ--仙台のNPOが募金活動 (毎日新聞 2005年6月24日)</ref>「'''もやもや病'''<ref>[http://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=568758 Cerebrovascular "Moyamoya" Disease: Disease Showing Abnormal Net-Like Vessels in Base of Brain] (Jiro Suzuki, Akira Takaku; Arch Neurol. 1969; 20(3): 288-299.)</ref>」などがあったが、[[厚生省]](当時)はこの統一された疾患の標準病名として工藤の「ウィリス動脈輪閉塞症」を採用<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/91/8/91_8_2289/_article/references/-char/ja/ 1.ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)]([[J-STAGE]] [[日本内科学会]]雑誌 Vol. 91 (2002) No. 8 P 2289-2295)</ref>。[[1982年]](昭和57年)[[1月1日]]には特定疾患治療研究事業対象疾患に加えられた<ref>[http://www.nanbyou.or.jp/entry/513 特定疾患治療研究事業対象疾患一覧表(56疾患)](難病情報センター)</ref>。ところが、海外では鈴木の「もやもや病」の方が病名として広く受け入れられ、[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類]]でも標準病名となってしまった。そのため、[[2001年]]([[平成]]13年)<ref group="†">この年、[[シンガーソングライター]]の[[徳永英明]]が当疾患に罹患したことが報じられた。</ref>になり、世界の趨勢に合わせて日本でも[[厚生労働省]]が「もやもや病」を標準病名にすることにした。[[2002年]](平成14年)[[6月1日]]より、特定疾患治療研究事業の対象疾患としての名称も「'''モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)'''」に変更した<ref>[http://www.tottori.med.or.jp/docs/siori/h14-no1.htm 平成14年度 社会保障部便り No.1]([[鳥取県医師会]] 2002年6月20日)</ref><ref>{{PDFlink|[http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/tamakodaira/jouhou/07toukei.files/23datatikicare.pdf Ⅲ 地域ケアシステムの充実]}}([[東京都]]福祉保健局)</ref><ref>[http://www.nanbyou.or.jp/entry/485 各疾患の解説 50音順索引 ア行](難病情報センター)</ref>。
のちに側副路説が優位となると、同説に基いた「'''ウィリス動脈輪閉塞症'''」(脳神経外科学会会長であった工藤達之[[慶應義塾大学]]教授が提唱)をこの統一された疾患の標準病名として[[厚生省]]が採用するが、その一方で、同説の鈴木二郎[[東北大学]]教授が[[1967年]]([[昭和]]42年)に命名した「'''もやもや病'''」<ref>「少女救おう」レバノンから招き手術へ--仙台のNPOが募金活動 (毎日新聞 2005年6月24日)</ref>が海外では広く受け入れられ、[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類]]でも標準病名となってしまった。[[2001年]]([[平成]]13年)になり、世界の趨勢に合わせて日本でも[[厚生労働省]]が「もやもや病」を標準病名とした。同年、[[シンガーソングライター]]の[[徳永英明]]が当疾患に罹患したことが報じられた。
 
なお、各国語での「もやもや病」にあたる病名は、[[日本語]]の[[ローマ字]]表記を用いた“moyamoya”と、[[病気]]を表す各国語により表現される。[[しゃぶしゃぶ]]と並び、日本語の[[擬態語]]が[[外国語]]に借用された数少ない例であるが、この“moyamoya”という[[綴り]]は、[[英語]]では「モィヤモィヤ」、[[フランス語]]では「モワイヤモワイヤ」、[[スペイン語]]では「モヤモヤ」「モジャモジャ」などと発音する綴り方であるため、正しく「もやもや」と発音していない外国人医師も見られる。
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*[[松本直通]]
*[[東保肇]]
 
== 出典 ==
[[京都大学]] もやもや病感受性遺伝子の特定とその機能についての発見(2011年7月21日)<br/>
[[横浜市立大学]] 学術院医学群の松本教授ら研究グループが、重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見!(2012年3月2日)
 
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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{{Reflist|group="†"|}}
 
=== 出典 ===
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=== 参考文献 ===
* [[京都大学]] http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110721_1.htm もやもや病感受性遺伝子の特定とその機能についての発見(]([[京都大学]] 2011年7月21日)<br/>
(出典:[* [http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/120302_amedrc.html 横浜市立大学]] 学術院医学群の松本教授ら研究グループが、重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見!]([http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/120302_amedrc.html[横浜市立大学])] 2012年3月2日)
 
== 外部リンク ==
* [http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/115.htm 難病情報センター|モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)]
 
* [http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110721_1.htm 京都大学もやもや病感受性遺伝子の特定とその機能についての発見]
* [http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/120302_amedrc.html 横浜市立大学学術院医学群の松本教授ら研究グループが、重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見!]
 
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