「カルデラ」の版間の差分

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[[File:Edge of Aso caldera.jpg|right|thumb|right|220px|[[日本]]の[[阿蘇カルデラ]](カルデラ壁の一部)。南北25km、東西18km]]
[[File:Pinatubo92pinatubo caldera crater lake.jpg|thumb|right|220px|[[フィリピン]]の[[ピナトゥボ山]]。]]
'''カルデラ'''({{Lang-en|caldera}})とは、[[火山]]の活動によってできた大きな凹地のことである。「[[釜]]<ref>スペイン語でのcalderaの意味を、[[大辞林]]と[[大辞泉]]は「釜」、[[広辞苑]]は「大釜」と解説している。</ref>」「[[鍋]]<ref>[[白水社]]「スペイン語ミニ辞典」ではcalderaは「大鍋」「[[:es:Caldera (máquina)|ボイラー]]」と和訳されているが、「[[:es:Caldera (cocina)|やかん]]」の意味指す場合もある。因みに、calderoは「小鍋」と和訳されている含む。</ref>」という意味の[[スペイン語]]に由来し、カルデラが初めて研究された[[カナリア諸島]]での現地名による。本来は単に地形的な凹みを指す言葉で明瞭な定義はなく、比較的大きな火山[[火口]]や火山地域の盆地状の地形一般を指す場合がある。過去にカルデラが形成されたものの、現在は侵食や埋没によって地表に明瞭な凹地として地形をとどめていない場合もカルデラと呼ぶ
 
本来は単に地形的な凹みを指す言葉であり、比較的大きな火山[[火口]]や火山地域の盆地状の地形一般についてもカルデラを称するなど定義は明瞭でない。しかし、概ね欧米などでは1マイル以上、日本では2km程度以上になると、凹みの成因は単純に噴火だけでは説明できないため、火口と区別してカルデラと称しているようである。また地上に明瞭なカルデラ地形をとどめていない場合でも、調査によって現在は侵食や埋没しているが過去にカルデラであったと認められるものはカルデラと呼ぶ。
 
== カルデラの成因 ==
=== 陥没カルデラ ===
大規模な[[噴火]]で、[[火山灰]]、[[火砕流]]、[[軽石]]、[[溶岩]]などの、いわゆる「火山噴出物」が大量に噴出したり、マグマが地下を移動して空洞化した地下の[[マグマ溜まり]]に、落ち込む形で地表が陥没した(続いて崖崩れによりさらに拡大した)もの。カルデラの多くがこのタイプである。
 
==== 陥没カルデラを形成する噴火 ====
21世紀初頭において、「カルデラ盆地」や「カルデラ湖」は、1回 - 数回の噴火で現在の陥没地形が形成されたと考えられている。すなわち、1回の噴火の噴出物量が非常に多い巨大噴火であったと推定される。歴史上、[[1815年]]の[[インドネシア]]の[[タンボラ火山]]の噴火で噴出物が100km<sup>3</sup>にまで達したが、この大きさは日本の[[赤城山]]の全部の体積に相当する。
 
[[日本]]では、紀元前3,000年頃まで陥没カルデラを形成する巨大カルデラ噴火が度々発生していたが、それ以後はカルデラを形成するような噴火は発生していない。しかし、同一カルデラからの大規模噴火は、その間に数万年 - 数十万年の期間があるために、将来も発生しないという保証はない。
 
古い解説書などには、「カルデラは成層火山の山頂が噴火で陥没してできる」などと書かれている場合があるが、その後の研究によりカルデラのできる場所は成層火山の山頂とは限らず、もともと何も無かった場所で巨大噴火が起こってカルデラができる場合もあることがわかってきた。[[箱根山|箱根カルデラ]]は[[富士山]]のような巨大な成層火山の山頂にできたと考えられていたが、20世紀末以降の研究では「巨大な成層火山」の存在は否定されつつある。[[十和田湖]]・[[洞爺湖]]・[[屈斜路湖]]などではカルデラの周囲は古い地層からなっており、成層火山はなかったと考えられている。また、[[阿蘇山]]の外輪山は、ほとんどが[[阿蘇カルデラ]]そのものの噴出物からなり、やはり、巨大成層火山はなかったと考えられる。
 
==== 陥没カルデラのできかたと内部構造 ====
[[File:Mount Mazama eruption timeline.PNG|thumb|right|220px|「陥没カルデラの生成モデル」。[[クレーターレイク国立公園|クレーターレイクカルデラ]]の場合。]]
陥没カルデラのでき方、内部構造は大きく2種類あると考えられている。一つはあまり内部が破砕せずにピストン状に落ち込むピストンシリンダー型で、もう一つは破砕が進みじょうご型の凹地を形成するじょうご型である。さらにそれぞれがいくつかに分類されている。このうちバイアス型カルデラと濁川型カルデラはボーリングなどによって内部構造が比較的よくわかっているが、その他の個々のカルデラについてはまだよくわかっていないことが多い。玄武岩質火山によく見られるキラウエア型カルデラは形成過程が何回か観察されている。
 
多くのカルデラでは、内部を密度の小さな破砕された岩石や火砕物が埋めているため、周りより重力が小さいことが多い(低重力異常型)。一方、キラウエア型カルデラでは凹所を厚い玄武岩質溶岩流が埋め、火砕物が少ないため周りより重力が大きい(高重力異常型)。
 
===== ピストンシリンダー型 =====
====; バイアス型 ====
:地下の巨大なマグマ溜まりから地表に向かって環状の割目ができ、そこから[[マグマ]]が大量に噴出し巨大噴火となる。噴火と並行して、空洞になったマグマ溜まりに地面が陥没し大規模な円筒形の凹地ができる。[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の{{仮リンク|バイアスカルデラ|en|Valles Caldera}}を代表とする。[[日本]]にはこのタイプのカルデラ地形は現存しないが、過去にそうであったと推定できる環状の割目やその内部を埋める噴出物は各地で見つかっている([[本宿カルデラ]]など。こういった「元・バイアス型カルデラ」を「コールドロン」という)。
====; キラウエア型 ====
: 主に玄武岩質で流動性の高い[[マグマ]]が、真上に噴火はせずマグマ溜まりから側方に移動して、空洞となったマグマ溜まりに地面が陥没し円筒形の凹地ができる。[[ハワイ]]の[[キラウエア火山|キラウエアカルデラ]]を代表とする。日本では[[伊豆大島]]や[[三宅島]]などが、このタイプと考えられている。
 
===== じょうご型 =====
[[File:20091206妙高山黒姫山Tagged.jpg|thumb|right|220px|馬蹄形爆発カルデラの中央火口丘([[妙高山]])と[[外輪山]](三田原山)の空撮[http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=36.88960514&lon=138.13075981&sc=8&mode=aero&pointer=off (航空写真リンク)]。]]
ピストンシリンダー型より小さく、環状割目ではなく1個から数個の火口から噴火し、周辺の岩石は破砕されてマグマ溜まり跡の空洞に落ち込みじょうご型の凹地を形成する(これはすぐに土砂で埋まって平坦な盆地となる)。以前は「クラカトア型」や「クレーターレイク型」などと呼ばれていたが、代表とされる[[クラカタウ|クラカトアカルデラ]]および[[クレーターレイク国立公園|クレーターレイクカルデラ]]が、じょうご型ではないらしいことが判明したため、現在では「じょうご型」と呼ぶ。日本のカルデラの多くはこのタイプと考えられていたが、最近の研究では、じょうご型でないモデルもいくつか提案されている。
====; 濁川型 ====
: 形はじょうご型であるがカルデラとしては最も小さい部類で、直径3km程度。形成過程は不明である。内部に落ち込んだ岩石にあまり大きいものはなく、カルデラと火口の中間的なものとも考えられる。[[北海道]]の[[濁川カルデラ]]を代表とする。日本のカルデラの分布が[[伊豆半島]]から[[伊豆諸島]]を除いて南北に偏っているのは[[プレート]]の配置と関係があると考えられている。100万年以上前には、本州中央部にもカルデラがあったことが分かっている([[穂高岳]]など)
 
=== 爆発カルデラ ===
[[File:20091206妙高山黒姫山Tagged.jpg|thumb|right|220px|馬蹄形爆発カルデラの中央火口丘([[妙高山]])と[[外輪山]](三田原山)の空撮[http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=36.88960514&lon=138.13075981&sc=8&mode=aero&pointer=off (航空写真リンク)]。]]
陥没カルデラよりも小規模な噴火や[[水蒸気爆発]]が引き金となって[[火口]]付近の山頂部が崩壊し、O形またはU型の凹地ができたもの(「U型」のものは「馬蹄形カルデラ」と呼ぶ場合もある)。[[1888年]]の[[磐梯山#噴火|磐梯山噴火]]の[[山体崩壊]]によるカルデラが代表例である。[[1980年]]に崩壊の様子が、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[セント・ヘレンズ山#1980年の噴火|セント・ヘレンズ山噴火]]で連続写真に撮影され、詳細が明らかになった。
 
=== 中央火口丘 ===
'''中央火口丘''' (central cone) は、カルデラ内に新たに形成された小規模な火山。阿蘇[[中岳 (阿蘇山)|中岳]]や[[箱根駒ヶ岳]]などが代表例。但し、カルデラができた後の火山活動はカルデラ内部で起きるとは限らず、カルデラの縁やすぐ外側に火山ができる場合も多い。例えば[[有珠山]]は[[洞爺湖|洞爺カルデラ]]の外側にできた火山である。
 
== 陥没カルデラを形成する噴火 ==
21世紀初頭において、「カルデラ盆地」や「カルデラ湖」は、1回 - 数回の噴火で現在の陥没地形が形成されたと考えられている。すなわち、1回の噴火の噴出物量が非常に多い巨大噴火であったと推定される。歴史上、[[1815年]]の[[インドネシア]]の[[タンボラ火山]]の噴火で噴出物が100km<sup>3</sup>にまで達したが、この大きさは日本の[[赤城山]]の全部の体積に相当する。
 
[[日本]]では、紀元前3,000年頃まで陥没カルデラを形成する巨大カルデラ噴火が度々発生していたが、それ以後はカルデラを形成するような噴火は発生していない。しかし、同一カルデラからの大規模噴火は、その間に数万年 - 数十万年の期間があるために、将来も発生しないという保証はない。
 
古い解説書などには、「カルデラは成層火山の山頂が噴火で陥没してできる」などと書かれている場合があるが、その後の研究によりカルデラのできる場所は成層火山の山頂とは限らず、もともと何も無かった場所で巨大噴火が起こってカルデラができる場合もあることがわかってきた。[[箱根山|箱根カルデラ]]は[[富士山]]のような巨大な成層火山の山頂にできたと考えられていたが、20世紀末以降の研究では「巨大な成層火山」の存在は否定されつつある。[[十和田湖]]・[[洞爺湖]]・[[屈斜路湖]]などではカルデラの周囲は古い地層からなっており、成層火山はなかったと考えられている。また、[[阿蘇山]]の外輪山は、ほとんどが[[阿蘇カルデラ]]そのものの噴出物からなり、やはり、巨大成層火山はなかったと考えられる。
 
== 陥没カルデラのできかたと内部構造 ==
[[File:Mount Mazama eruption timeline.PNG|thumb|right|220px|「陥没カルデラの生成モデル」。[[クレーターレイク国立公園|クレーターレイクカルデラ]]の場合。]]
陥没カルデラのでき方、内部構造は大きく2種類あると考えられている。一つはあまり内部が破砕せずにピストン状に落ち込むピストンシリンダー型で、もう一つは破砕が進みじょうご型の凹地を形成するじょうご型である。さらにそれぞれがいくつかに分類されている。
このうちバイアス型カルデラと濁川型カルデラはボーリングなどによって内部構造が比較的よくわかっているが、その他の個々のカルデラについてはまだよくわかっていないことが多い。玄武岩質火山によく見られるキラウエア型カルデラは形成過程が何回か観察されている。
 
多くのカルデラでは、内部を密度の小さな破砕された岩石や火砕物が埋めているため、周りより重力が小さいことが多い(低重力異常型)。一方、キラウエア型カルデラでは凹所を厚い玄武岩質溶岩流が埋め、火砕物が少ないため周りより重力が大きい(高重力異常型)。
 
=== ピストンシリンダー型 ===
==== バイアス型 ====
地下の巨大なマグマ溜まりから地表に向かって環状の割目ができ、そこから[[マグマ]]が大量に噴出し巨大噴火となる。噴火と並行して、空洞になったマグマ溜まりに地面が陥没し大規模な円筒形の凹地ができる。[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の{{仮リンク|バイアスカルデラ|en|Valles Caldera}}を代表とする。[[日本]]にはこのタイプのカルデラ地形は現存しないが、過去にそうであったと推定できる環状の割目やその内部を埋める噴出物は各地で見つかっている([[本宿カルデラ]]など。こういった「元・バイアス型カルデラ」を「コールドロン」という)。
 
==== キラウエア型 ====
主に玄武岩質で流動性の高い[[マグマ]]が、真上に噴火はせずマグマ溜まりから側方に移動して、空洞となったマグマ溜まりに地面が陥没し円筒形の凹地ができる。[[ハワイ]]の[[キラウエア火山|キラウエアカルデラ]]を代表とする。日本では[[伊豆大島]]や[[三宅島]]などが、このタイプと考えられている。
 
=== じょうご型 ===
ピストンシリンダー型より小さく、環状割目ではなく1個から数個の火口から噴火し、周辺の岩石は破砕されてマグマ溜まり跡の空洞に落ち込みじょうご型の凹地を形成する(これはすぐに土砂で埋まって平坦な盆地となる)。以前は「クラカトア型」や「クレーターレイク型」などと呼ばれていたが、代表とされる[[クラカタウ|クラカトアカルデラ]]および[[クレーターレイク国立公園|クレーターレイクカルデラ]]が、じょうご型ではないらしいことが判明したため、現在では「じょうご型」と呼ぶ。日本のカルデラの多くはこのタイプと考えられていたが、最近の研究では、じょうご型でないモデルもいくつか提案されている。
 
==== 濁川型 ====
形はじょうご型であるがカルデラとしては最も小さい部類で、直径3km程度。形成過程は不明である。内部に落ち込んだ岩石にあまり大きいものはなく、カルデラと火口の中間的なものとも考えられる。[[北海道]]の[[濁川カルデラ]]を代表とする。
 
日本のカルデラの分布が[[伊豆半島]]から[[伊豆諸島]]を除いて南北に偏っているのは[[プレート]]の配置と関係があると考えられている。100万年以上前には、本州中央部にもカルデラがあったことが分かっている([[穂高岳]]など)。
 
== 主なカルデラ ==
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