「インターステラー (映画)」の版間の差分

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近未来。地球規模の植物の枯死、異常気象により、人類は滅亡の危機に立たされていた。元[[宇宙飛行士]]'''クーパー'''は、義父と15歳の息子'''トム'''、10歳の娘'''マーフ'''とともに[[トウモロコシ]]農場を営んでいる。マーフは自分の部屋の本棚から本がひとりでに落ちる現象を幽霊のせいだと信じていたが、ある日クーパーはそれが何者かによる[[重力波]]{{要曖昧さ回避|date=2014年11月}}を使った[[二進数]]のメッセージではないかと気が付く。クーパーとマーフはメッセージを解読し、それが指し示している秘密施設にたどり着くが、最高機密に触れたとして身柄を拘束される。
 
そこでクーパーはかつての仕事仲間の'''ブランド教授'''と再会し、大昔に無くなった[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]が秘密裡に復活し活動を続けていることを知らされる。NASAは[[土星]]近傍の[[ワームホール]]を通り抜けて、別の[[銀河]]に人類の新天地を求めるプロジェクト――'''ラザロ計画'''を遂行していたのだった。48年前に[[地球外生命|”彼ら”]]によって創造されたと考えられているワームホールを通過し、すでに三名の先駆者達が、[[入植]]が期待できる惑星から信号を送り返している。教授は、第二の地球となり得る惑星を探すミッションにパイロットとして参加するようクーパーを説得する。帰還できたとしてもそれがいつなのか不明なミッションに、マーフは激しく反対する。二人は和解の機会を得られないまま、クーパーは出発の日を迎えてしまう。クーパーはマーフに「必ず戻ってくる」とだけ言い残し、ブランド博士の娘のアメリアらとともに宇宙船'''エンデュランス'''に搭乗し地球を後にする。
 
二年後、'''クーパー'''、'''アメリア'''、'''ロミリー'''、'''ドイル'''の四名と[[人工知能]]ロボット'''TARS'''と'''CASE'''の二体を乗せて、エンデュランスは土星近傍の[[ワームホール]]に接近する。エンデュランスはワームホールを通り抜け、ラザロ計画の先駆者の一人――ミラー飛行士が待つ水の惑星を目指す。水の惑星は超大質量[[ブラックホール]]'''ガルガンチュア'''のまわりを公転している。[[物理学]]者のロミリーは、ガルガンチュアの超重力が時間の流れを歪めており、水の惑星での一時間は地球の七年間に相当すると警告する。クーパーは地球に残してきた家族を想い、水の惑星への接近を躊躇するが、他の飛行士らに公私の混同をたしなめられ、着陸は決行されることとなる。[[地質学]]者のドイル、アメリア、クーパー、CASEは小型シャトル'''レインジャー'''で水の惑星に降り立つ。アメリアは、惑星の表面を捜索するが、ミラー飛行士は見つからず、彼女の着陸船の残骸だけが見つかる。間もなく山脈と見まごうほどの巨大な波が一行を襲い、逃げ遅れたドイルは死亡し、レインジャーのエンジンが故障する。アメリアは、ミラー飛行士がこの惑星到着したのは数時間前、死んだのは数分前に違いないと話す。数十分後、エンジンが回復し、クーパーらはエンデュランスに帰還するが、そこでは23年あまりが経過していた。エンデュランスでクーパーらの帰りを待っていたロミリーはすでに壮年に差しかかっていた。
 
地球出発時点のクーパーと同い年に成長したマーフは、ブランド教授とともに[[重力]]の研究を行っている。重力の方程式に解を見つけられれば、巨大な[[スペースコロニー]]を宇宙に打ち上げ、地球に残された人間を宇宙に脱出させられると期待されている。しかしブランド教授は老齢で死亡する間際にマーフに自身の罪を告白する。実はブランド教授は何十年も前に重力方程式を解いており、重力制御は事実上不可能だとの結論を導いていたが、長年にわたって事実を隠蔽し続けてきたのだった。真相を知ったマーフは愕然とするが、それでも研究は継続し、重力の本質を理解するためにはブラックホールの中心の[[特異点]]を観測して、データを持ち帰る必要があることに気付く。もっとも、事象の地平面の外側から特異点を観測するのは絶対に不可能とされていて、それこそがブランド教授が重力制御を諦めた理由だった。
 
燃料が少なくなっているエンデュランスでは、乗組員が残る二つの候補惑星のどちらを探査するかの選択を迫られていた。クーパーとロミリーは生存信号を発信し続けているラザロ計画の先駆者'''マン博士'''の惑星を推したが、アメリアはもう一方のエドマンズ飛行士の惑星へ行くことを強く推した。クーパーはアメリアとエドマンズが恋人関係であることを見抜き、彼女こそ決断に私情を挟んでいると批判する。エンデュランスはマン博士の待つ、氷の惑星へ針路を取る。クーパー、アメリア、ロミリー、TARS、CASEはレインジャーで氷の惑星に降り立ち、マン博士の設営したキャンプに到着する。冷凍睡眠から目覚めたマン博士は、ラザロ計画の本当の目的はプランB――すなわち人類の凍結[[受精卵]]を新天地の惑星で孵化させ、種を保存することだったと告白する。エンデュランスにはそのための受精卵も搭載されている。ブランド教授が研究の結論を隠蔽したのは、地球の人間に真実を告げることが、ラザロ計画と、プランBの遂行の障害になりかねないと懸念してのことだった。
 
マン博士はクーパーを惑星表面探査に連れ出す。マン博士は地球に帰還することを諦めていないクーパーを不意討ちし、彼の宇宙服のバイザーを破壊する。マン博士は氷の惑星に着陸してすぐ、この惑星では人類は生存できないことを悟っていた。彼は孤独に死にゆく運命だったが、それを受け入れることが出来ず、氷の惑星が人類の新天地であるかのような捏造データを地球に発信していたのだ。クーパーは窒息死寸前でアメリアに救出されるが、ロミリーはマン博士がキャンプに仕掛けた爆弾の犠牲になってしまう。マン博士はレインジャーを奪って軌道上のエンデュランスを奪取しようと惑星外へ離脱する。クーパーとアメリア、TARS、CASEは別の着陸船'''ランダー'''で彼を追跡する。マン博士はクーパーらに先んじてエンデュランスにランデブーし、手動でドッキングを試るが、ドッキング・モジュールの気密が不完全だったため急激な減圧で死亡する。エンデュランスも事故の衝撃で本来の軌道を外れ、回転しながら氷の惑星に落下しはじめる。クーパーとTARSは決死の操縦でランダーをエンデュランスにドッキングさせ、機体を惑星大気圏外まで押し上げる。
 
甚大な損傷を蒙ったエンデュランスは燃料と酸素のほとんどを失っている。地球への帰還、マーフとの再会は叶わなくなった。クーパーとアメリアはエンデュランスをガルガンチュアに接近させ、[[ペンローズ過程]]を応用してエドマンズの惑星に向かう運動量を獲得しようと目論む。エドマンズの惑星でプランBを遂行し、人類の絶滅を阻止するのだ。今度は五十年後の未来に飛ぶことになるが、もはやそれを気にするものはだれもいない。
クーパーは、エンデュランスをガルガンチュアに接近させ、アメリア一人をエンデュランスに残したまま、TARSを乗せたランダー、自分を乗せたレインジャーⅡを切り離し、彼女一人にミッションの全てを託す。死重量を捨てて身軽になったエンデュランスはガルガンチュアを脱出する軌道に乗るが、クーパーとTARSはガルガンチュアへ落下していく。
 
クーパーはTARSにブラックホール内部のデータを取り続けるように命じる。クーパーとTARSは無数の立方体が幾重にも折り重なった不思議な空間'''テサラクト'''にたどり着く。クーパーはそこが、マーフの部屋を通じて地球の過去、現在、未来全ての時間と連結している空間であると気付く。クーパーは重量波を操作して本棚から本を落とす等して過去のマーフと交信を試みるが、それでも娘を置いてミッションに出発する自分の過去を変えることはできない。最後にクーパーはTARSに収集させた特異点のデータを、現在のマーフの[[アナログ時計]]の秒針で表現する。彼女にそのデータを真意が理解できるのか?とTARSは疑うが、クーパーは「あいつはただの女の子じゃない。俺の娘だ」とだけ答えデータを送り続ける。旧家に戻ったマーフは、幼い頃に部屋で起こった重力現象が父親からのメッセージだったのことに気付く。秒針の動きから紐解いた特異点のデータを使い、マーフはブランド教授が成し得なかった重力問題に解を見つける。その瞬間、テサラクトが閉鎖し始めクーパーは別のワームホールの中に吸い込まれる。
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=== プロダクションデザイン ===
『インターステラー』にはレインジャー、エンデュランス、ランダーの3つの宇宙船が登場する。レインジャーの機能は[[スペースシャトル]]に似ており、大気圏突入・脱出が可能である。クルーの{{仮リンク|母船|en|mother ship}}は12のカプセルで形成される円形構造であり、その内訳は惑星植民機器で4つ、医療ラボと居住スペースで4つ、コックピットとエンジンで4つのなっている。プロダクションデザイナーの[[ネイサン・クロウリー]]はエンデュランスが[[国際宇宙ステーション]]を基にしていると述べている。ランダーは惑星上に植民機器のカプセルを輸送するものであり、クロウリーはそれを「ヘビーなロシアのヘリコプター」と比較した<ref name="jolin" />。
 
映画にはまたCASEとTARSという2体のロボットが登場(マン博士の惑星にもう1体存在するがレインジャーの電力確保のために解体されている)する。ノーランはロボットの[[擬人観|擬人化]]を避けさせ、5フィートの[[四角形]]のデザインを採用した。{{仮リンク|ビル・アーウィン (俳優)|en|Bill Irwin|label=ビル・アーウィン}}は当初、両方のロボットの声と肉体的な演技を務めていたが、デジタル処理により彼のイメージは消去され、CASEの声に変更された<ref name="jolin" />。
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視覚効果はノーランの2010年の映画『[[インセプション]]』も手がけた[[ダブル・ネガティブ]]が作り上げた<ref>{{Cite journal | last=Giardina | first=Carolyn | url=http://www.hollywoodreporter.com/behind-screen/vfx-shakeup-prime-focus-world-714852 | title=VFX Shakeup: Prime Focus World, Double Negative to Merge | journal=[[ハリウッド・リポーター|The Hollywood Reporter]] | date=June 25, 2014 | accessdate=June 26, 2014 }}</ref>。視覚効果スーパーバイザーの[[ポール・フランクリン]]はノーランの『[[ダークナイト ライジング]]』や『インセプション』よりも視覚効果数は多くはなく、[[ブルーバック|グリーンスクリーン]]よりもデジタルプロジェクターを用いて作り上げたことを明かした<ref name="jolin" />。
 
宇宙船レインジャー、エンデュランス、ランダーはCGIよりも本物に拘ったノーランの希望により、ネイサン・クロウリーとニューディール・スタジオズが手がけた[[ミニチュア撮影|ミニチュア・エフェクト]]を使って作り上げられた。[[3Dプリンター|3Dプリント]]と彫刻を組み合わせて作られたこのスケールモデルはその巨大さ故にスタッフから「maxatures」というあだ名で呼ばれ、エンデュランスの1/15スケールのミニチュアは7.6m以上に及んだ。レインジャーとランダーのミニチュアはそれぞれ14mと15mに及んだ。ミニチュアはホイテ・ヴァン・ホイテマがNASAのIMAXドキュメンタリーを模倣して宇宙船の上にIMAXカメラを取り付けるのに十分な大きさであった。さらにモデルにはオペレーターが動きを操ることができるように運動制御システムに6軸の[[ジンバル]]が装着され、それはより小さな運動制御トレーラーの上で[[ビスタビジョン]]・カメラを使っている宇宙の背景プレートに対して撮影された<ref>{{Cite web | url=http://emanuellevy.com/comment/interstellar-creating-the-various-aircrafts/ | title=Interstellar: Creating the Various Aircrafts | journal=Emanuel Levy | date=October 27, 2014 | accessdate=November 5, 2014 }}</ref>。
 
== 影響 ==
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2014年10月、パラマウントは複数のプラットフォーム間で『インターステラー』を販促するために[[Google]]と提携した<ref name="sneider">{{Cite news | last=Sneider | first=Jeff | url=http://www.thewrap.com/christopher-nolans-interstellar-at-center-of-unique-google-deal/ | title=Christopher Nolan's ‘Interstellar’ at Center of Unique Google Deal | work=[[:en:TheWrap|TheWrap]] | date=October 3, 2014 | accessdate=October 24, 2014 }}</ref>。映画のウェブサイトはGoogleドメインがホストのデジタルハブとしてリニューアルされた<ref name="jarvey">{{Cite journal | last=Jarvey | first=Natalie | url=http://www.hollywoodreporter.com/news/google-promotes-christopher-nolans-interstellar-738067 | title=Google Promotes Christopher Nolan's 'Interstellar' With Interactive Digital Hub | journal=[[ハリウッド・リポーター|The Hollywood Reporter]] | date=October 3, 2014 | accessdate=October 4, 2014 }}</ref>。ウェブサイトでは最終版の予告編が公開され、同時に鑑賞予定者各々に向けた劇場の場所とスケジュールのナビゲートが提供された<ref name="mcclintock20141001" />。またGoogleのプラットフォーム間で映画関連コンテンツのナビゲーションが提供され、観客からのフィードバックが集められ、モバイルアプリにリンクされた<ref name="jarvey" />。2014年9月に{{仮リンク|パラマウント・デジタル・エンターテインメント|en|Paramount Digital Entertainment}}から公開されたアプリはプレイヤーが[[太陽系]]モデルを構築し、宇宙旅行用のフライトシミュレーターを使うことができるゲームであった<ref>{{Cite news | last=Watercutter | first=Angela | url=http://www.wired.com/2014/09/interstellar-app/ | title=Explore Black Holes and Destroy Planets in the Awesome New ''Interstellar'' Game | date=September 18, 2014 | accessdate=September 19, 2014 }}</ref>。パラマウントとGoogleは2015年に利用可能となるユーザーが作成したコンテンツでコンパイルされたバーチャル・[[タイムカプセル]]も用意した。両社を通じて『インターステラー』のキャストは[[Google+ ハングアウト]]を使用して映画について語った。Googleはアメリカ合衆国の学校で数学科学を推進するために映画を利用する<ref name="sneider" />。
 
パラマウントは[[Oculus Rift]]の技術を利用した宇宙船エンデュランスの[[バーチャルリアリティ]]・ウォークスルーを提供している。2014年10月6日から11月19日までニューヨーク、ヒューストン、ロサンゼルス、ワシントンD.C.の4劇場で順番にウォークスルーが開催された<ref>{{Cite news | last=Lussier | first=Germain | url=http://www.slashfilm.com/interstellar-oculus-rift-experience-coming-select-theaters/ | title='Interstellar' Oculus Rift Experience Coming To Select Theaters | work=/Film | date=October 3, 2014 | accessdate=October 4, 2014 }}</ref><ref>{{Cite web | url=http://www.interstellarmovie.com/vrexperience/ | title=Interstellar: Oculus Rift Immersive Experience | work=interstellarmovie.com | publisher=[[パラマウント映画|Paramount Pictures]] | accessdate=October 24, 2014 }}</ref>。2014年11月11日に{{仮リンク|ランニング・プレス|en|Running Press}}より{{仮リンク|マーク・コッタ・バズ|en|Mark Cotta Vaz}}著のメイキング本『''Interstellar: Beyond Time and Space''』が発売された<ref>{{Cite news | last=Kramer | first=Miriam | url=http://www.space.com/25855-interstellar-movie-book-behind-scenes.html | title=New 'Interstellar' Book Will Go Behind the Scenes of Sci-Fi Film | publisher=[[:en:Space.com|Space.com]] | date=May 13, 2014 | accessdate=July 11, 2014 }}</ref>。また11月7日には{{仮リンク|W.W.ノートン&カンパニー|en|W. W. Norton & Company}}より[[キップ・ソーン]]著の『''The Science of Interstellar''』が発売された<ref>{{Cite news | author=Staff | url=https://news.yahoo.com/science-adviser-interstellar-writing-book-211122545.html | title=Science adviser to 'Interstellar' writing book | work=[[:en:Yahoo! News|Yahoo! News]] | publisher=[[AP通信|Associated Press]] | date=September 17, 2014 | accessdate=September 29, 2014 }}</ref>
 
== 公開 ==