「世界の死刑制度の現状」の版間の差分

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===== キューバ(存続) =====
2000年以来の刑の執行を停止していたが、2003年4月に、アメリカへの渡航目的でフェリーを乗っ取り逮捕された3人に対し死刑が執行された。この際、国連人権高等弁務官事務所から執行停止を勧告されたが、キューバ政府は拒否した<ref>Patricia Grogg 2008“DEATH PENALTY-CUBA: No Abolition in Sight”IPS Inter Press Service News Agency (IPS). </ref>。
 
==== 南米 ====
===== ペルー(存続) =====
これまで[[ペルー]]では、1979年に最後の死刑が執行され、一般刑法犯に対する死刑は廃止され[[終身刑|終身禁固]]を最高刑としている。またテロリズム実行による[[国家反逆罪]]および戦時下での反逆罪に対する死刑は1993年のペルー憲法で認められているため、死刑適用が可能であると規定されている。ただし1993年憲法発布以後に死刑判決を受けたテロリストはいない。たとえば左翼武装組織「[[センデロ・ルミノソ]]」の指導者[[アビマエル・グスマン]]は、当局が死刑によって「殉教者」になることを危惧し、終身刑で服役させるとともに囚人服姿でマスコミの前で出演させ「生き恥」をさらし、カリスマ性を奪うことで組織の弱体化を図った。その一方で[[1996年]]に発生した[[在ペルー日本大使公邸占拠事件]]では翌年4月に[[人質救出作戦]]「チャビン・デ・ワンタル作戦」が実行された。人質犯の[[トゥパク・アマル革命運動]]のメンバー14人全員が死亡したが、実際には降伏した無抵抗の者を虐殺したのではないかとの疑いがあり、後に特殊部隊指揮官らが訴追された。そのため、国家に対する反逆者は時と場合によって生命与奪が行われているといえる。
 
一般刑法犯に対する死刑をめぐる論議であるが、2006年6月に就任した[[アラン・ガルシア]]大統領は、選挙公約の一つに掲げた、テロリストに死刑を適用できる法案や「7歳未満の子供に、[[性的暴行]]を加え[[殺害]]した被告への死刑適用」を認める法案など4つの法案を、9月21日に議会へ提出、審議が行なわれていた。そのうち児童性的虐待による殺害び対する死刑適用の法案提出の背景に、日本の[[広島県]]で[[2005年]]に発生した少女暴行殺害事件([[広島小1女児殺害事件]])で、容疑者として逮捕された日系ペルー人が、母国において同様の性犯罪を繰り返していたにも関わらず、司法の不手際で収監を逃れたことにより、「年少者に対する性犯罪」の厳罰化世論が高まったことや、殺害した場合の死刑適用に'''8割'''が賛成するなどの世論調査の結果が挙げられる<ref>「子供への性的暴行殺人に死刑適用:ペルー大統領が法案提出」 [[時事通信社|時事通信]]、[[2006年]][[9月22日]]。</ref>。
 
また法案のうち2案では、死刑制度復活の為に死刑の拡大を禁止する米州人権条約からの脱退することが提起されていた。これらの法案であるが、テロリズムに対する法案のみがペルー国会で2007年1月10日に投票されたが、49人中の23票の賛成しかえられず反対多数で否決された。
 
===== コロンビア(1991年に廃止) =====
[[コロンビア]]では、[[1909年]]に最後の死刑が執行され、[[1991年]]に完全廃止された。[[終身刑]]はなく、最高刑は60年である。しかし、[[2008年]][[9月]]に発生した幼児殺害事件を契機に死刑の復活や終身刑の創設を求める動きが広まり、[[2009年]][[6月17日]]に14歳以下の児童に対する性的暴行・殺害に対して終身刑を規定する法案が上院で可決された。また、軍や警察、[[自警団]]による超法規的な処刑が横行しているとされる。
 
[[2008年]][[3月1日]]、コロンビア政府は隣国[[エクアドル]]に滞在する反体制武装組織[[コロンビア革命軍]]の最高幹部である[[ラウル・レジェス]]ら23名を[[コロンビア空軍]]の[[空爆]]により殺害した。これは国家の[[主権]]を侵害したのではないかとして国際問題になり、反米左派のエクアドルと[[ベネズエラ]]の[[ウゴ・チャベス]]大統領らが反発、コロンビア国境地帯に戦車部隊を集結させるなど緊張が高まり、[[アンデス危機]]に発展した。この政治的危機は[[ドミニカ共和国]]の仲介により和解したが、反体制派活動家を逮捕も裁判もせず、他国の領土で超法規的に処刑することを少しも躊躇しないコロンビア政府の断固たる方針は、コロンビアが死刑制度廃止国であり、南米ではかなり早い時期に死刑を廃止した同国においても、国家の脅威となりうる人物に対してはいささかも法外的な殺人、いわゆる略式処刑を厭わないという冷酷な現実を示しているとも言えよう。
 
※ラテンアメリカ諸国の傾向として、78%の国が一般犯罪に対する死刑を廃止し、59%の国が完全な死刑を廃止している。死刑制度存続国も、10年以上死刑を執行していない
 
=== 南アメリカ ===
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|{{VEN}}||完全廃止||align=center|-||align=center|1863年||align=left|憲法で廃止を規定
|}
 
===== ペルー(存続) =====
これまで[[ペルー]]では、1979年に最後の死刑が執行され、一般刑法犯に対する死刑は廃止され[[終身刑|終身禁固]]を最高刑としている。またテロリズム実行による[[国家反逆罪]]および戦時下での反逆罪に対する死刑は1993年のペルー憲法で認められているため、死刑適用が可能であると規定されている。ただし1993年憲法発布以後に死刑判決を受けたテロリストはいない。たとえば左翼武装組織「[[センデロ・ルミノソ]]」の指導者[[アビマエル・グスマン]]は、当局が死刑によって「殉教者」になることを危惧し、終身刑で服役させるとともに囚人服姿でマスコミの前で出演させ「生き恥」をさらし、カリスマ性を奪うことで組織の弱体化を図った。その一方で[[1996年]]に発生した[[在ペルー日本大使公邸占拠事件]]では翌年4月に[[人質救出作戦]]「チャビン・デ・ワンタル作戦」が実行された。人質犯の[[トゥパク・アマル革命運動]]のメンバー14人全員が死亡したが、実際には降伏した無抵抗の者を虐殺したのではないかとの疑いがあり、後に特殊部隊指揮官らが訴追された。そのため、国家に対する反逆者は時と場合によって生命与奪が行われているといえる。
 
一般刑法犯に対する死刑をめぐる論議であるが、2006年6月に就任した[[アラン・ガルシア]]大統領は、選挙公約の一つに掲げた、テロリストに死刑を適用できる法案や「7歳未満の子供に、[[性的暴行]]を加え[[殺害]]した被告への死刑適用」を認める法案など4つの法案を、9月21日に議会へ提出、審議が行なわれていた。そのうち児童性的虐待による殺害び対する死刑適用の法案提出の背景に、日本の[[広島県]]で[[2005年]]に発生した少女暴行殺害事件([[広島小1女児殺害事件]])で、容疑者として逮捕された日系ペルー人が、母国において同様の性犯罪を繰り返していたにも関わらず、司法の不手際で収監を逃れたことにより、「年少者に対する性犯罪」の厳罰化世論が高まったことや、殺害した場合の死刑適用に'''8割'''が賛成するなどの世論調査の結果が挙げられる<ref>「子供への性的暴行殺人に死刑適用:ペルー大統領が法案提出」 [[時事通信社|時事通信]]、[[2006年]][[9月22日]]。</ref>。
 
また法案のうち2案では、死刑制度復活の為に死刑の拡大を禁止する米州人権条約からの脱退することが提起されていた。これらの法案であるが、テロリズムに対する法案のみがペルー国会で2007年1月10日に投票されたが、49人中の23票の賛成しかえられず反対多数で否決された。
 
===== コロンビア(1991年に廃止) =====
[[コロンビア]]では、[[1909年]]に最後の死刑が執行され、[[1991年]]に完全廃止された。[[終身刑]]はなく、最高刑は60年である。しかし、[[2008年]][[9月]]に発生した幼児殺害事件を契機に死刑の復活や終身刑の創設を求める動きが広まり、[[2009年]][[6月17日]]に14歳以下の児童に対する性的暴行・殺害に対して終身刑を規定する法案が上院で可決された。また、軍や警察、[[自警団]]による超法規的な処刑が横行しているとされる。
 
[[2008年]][[3月1日]]、コロンビア政府は隣国[[エクアドル]]に滞在する反体制武装組織[[コロンビア革命軍]]の最高幹部である[[ラウル・レジェス]]ら23名を[[コロンビア空軍]]の[[空爆]]により殺害した。これは国家の[[主権]]を侵害したのではないかとして国際問題になり、反米左派のエクアドルと[[ベネズエラ]]の[[ウゴ・チャベス]]大統領らが反発、コロンビア国境地帯に戦車部隊を集結させるなど緊張が高まり、[[アンデス危機]]に発展した。この政治的危機は[[ドミニカ共和国]]の仲介により和解したが、反体制派活動家を逮捕も裁判もせず、他国の領土で超法規的に処刑することを少しも躊躇しないコロンビア政府の断固たる方針は、コロンビアが死刑制度廃止国であり、南米ではかなり早い時期に死刑を廃止した同国においても、国家の脅威となりうる人物に対してはいささかも法外的な殺人、いわゆる略式処刑を厭わないという冷酷な現実を示しているとも言えよう。
 
※ラテンアメリカ諸国の傾向として、78%の国が一般犯罪に対する死刑を廃止し、59%の国が完全な死刑を廃止している。死刑制度存続国も、10年以上死刑を執行していない
 
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