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不登校は病気や精神的な問題だけでなく、「家庭の[[貧困]]」にも相関することが明らかになってきている<ref group="注">相関関係は必ずしも因果関係を意味しない点に注意。「[[相関関係と因果関係]]」の項目を参照のこと。</ref>。
 
例えば、[[東京都]][[板橋区]]が[[2009年]]に公表した調査によると、区立中学校の[[2006年]]度の全生徒のうち、不登校の生徒は127人で、発生率は2.41%であった。しかし、[[生活保護]]を受ける中学生は、不登校の生徒が52人、発生率は11.58%であり、これは、生活保護および[[就学援助]]を受けない子どもの4.8倍の発生率である<ref name="mainichi2009">ここまで。「中学生不登校 生活苦も原因 保護世帯の1割 東京・板橋」 『毎日新聞』 2009年1月30日付.</ref>
 
また、[[東京都]][[杉並区]]が[[2008年]]に行った調査では、生活保護を受ける中学生70人を調査したところ、不登校の発生率は8.6%であり、前年同期の区全体の不登校発生率2.19%の約4倍であった<ref name="mainichi2009" />。
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=== 不登校の契機 ===
[[文部科学省]]による小・中学校を対象とした調査では、それぞれの生徒が「不登校になったきっかけと考えられる状況」が集計されている(複数回答可)。中学校で最も多いのは「無気力」で26.4%<ref group="注">パーセンテージは不登校児童生徒数に対する割合</ref>である。次がほぼ並んで「不安など情緒的混乱」の25.1%であり、以下、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が15.7%、「あそび・非行」が11.4%、「学業の不振」が9.5%などとなっている(以下省略)。小学校では、「不安など情緒的混乱」が最多で33.2%、次いで「無気力」が23.8%、「親子関係をめぐる問題」が20.2%、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が11.0%、「家庭の生活環境の急激な変化」が9.6%、「病気による欠席」が9.3%などであった(以下省略)<ref name="H24">ここまで。文部科学省 「平成24年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」</ref>
 
「無気力」には、「怠学」から「[[うつ病|うつ状態]]」までもが含まれ得る。「無気力」が必ずしも「なまけ」を意味するものではないことに注意しなければならない。うつ状態はもちろん、怠学についても、その背後に貧困や家庭環境の影響が無いとは言い切れないためである<ref>ここまで。青砥恭 「不登校、ひきこもりは心の問題にとどまらない」 WEDGE Infinity, 2012年9月12日.</ref>。また、「不安など情緒的混乱」は中学校で2位、小学校で1位となっており、[[メンタルヘルス]]の問題が不登校の契機として最も大きなものの一つとなっている。
 
前掲の「不登校になったきっかけと考えられる状況」のうち、「[[いじめ]]」は中学校で2.1%、小学校で1.9%に留まっている<ref group="注">ただし、学校側がいじめを十分に把握していない可能性も残る。</ref>。いじめが不登校の主な契機の一つとなっている事実は確認されなかった。また、不登校を自ら選択する「意図的な拒否」も、中学校で4.7%、小学校で4.6%であり、上位には入っていない<ref name="H24" />
 
== 不登校への対応 ==
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また、[[小学校]]では、「登校を促すため、電話をかけたり迎えに行くなどした」が35.6%、「家庭訪問を行い、学業や生活面での相談に乗るなど様々な指導・援助を行った」が32.3%、「保護者の協力を求めて、家族関係や家庭生活の改善を図った」が27.8%、「不登校の問題について、研修会や事例研究会を通じて全教師の共通理解を図った」が26.2%などであり(以下省略)、中学校と比べて全体的に低い数値となっている<ref name="H24" />。
 
[[栃木県]][[宇都宮市]]は2007年度から、「1日休んだら電話、2日続けて休んだら家庭訪問」の実施など、不登校に組織的な対応を行った。同市内の中学校の不登校率は、2008年度をピークに減少に向かい、2012年度には不登校率が3.21%と過去13年間で最少となった。また、小・中学校とも連続的な欠席者が減り、日数も89日までの短期間欠席の割合が増えた<ref>ここまで。「中学校不登校が過去最少 宇都宮市の昨年度不登校まとめ」 『下野新聞』 朝刊 12月25日付.</ref>
 
保護者などによる暴力的な登校圧力は、教育行政の進歩や、世論の理解、「更生施設」において死者が出たことなどにより、現在では推奨されていない。
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==== 子どもの精神疾患 ====
精神疾患は人生の早期に発症する。50[[パーセンタイル]]<small>(50パーセンタイルは[[中央値]]を表す)</small>が14歳までに発症、75パーセンタイルが24歳までに発症している<ref>ここまで。Kessler 2005.</ref>。また、26歳時点でいずれかの精神障害を持つ者の1/2が15歳までに、3/4が18歳までに、何らかの精神障害の診断を受けていた<ref>Kim-Cohen et al. 2003.</ref>。
 
子どもの精神疾患は必ずしも成人と同様の症状が現れる訳ではなく、その診断は成人よりも困難である。ことに、[[双極性障害]](躁うつ病)はうつ病と非常に誤診されやすい。25歳未満の若年発症のうつ病は双極性障害であるリスクが高い(若年発症の大うつ病は40%以上が後に躁転<small>(そうてん)</small>する<ref>Goldberg et al. 2001.</ref>)。軽度、短期であっても過去に躁<small>(そう)</small>状態のあった場合、過眠、過食などの双極性障害に特徴的な症状がある場合、または双極性障害の家族歴がある場合には、必ず医師に申告しなければならない。うつ病と双極性障害では治療法が全く異なるためである。双極性障害はうつ病よりも自殺率が高く、[[アルコール依存症]]や[[薬物乱用]]など無軌道な行動とも結びつきやすい。うつ病との鑑別は極めて重要である<ref>ここまで。[http://www.nho-kumamoto.jp/kumabyo-news/178-08.html]</ref>。[[双極性障害|双極スペクトラム障害]]の生涯有病率は2.7-7.8%<ref>Sadock, B. J., Sadock, V. A., Ruiz, P., ''Kaplan and Sadock's Comprehensive Textbook of Psychiatry'', 9th ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2009.</ref>であり、軽視できる数値ではない。
 
重い疲労感が長期にわたって続いているにもかかわらず、精神疾患を含め、他の疾病の可能性がすべて否定された場合、[[慢性疲労症候群]](筋痛性脳脊髄炎)と診断される可能性がある。
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{{Seealso|日本の通信制高等学校一覧}}
 
昼間定時制は、[[1991年]]に[[東京都立新宿山吹高等学校|新宿山吹高校]]が開校して以降、普及している課程である。昼間定時制は単位制であり、決められた時間割は無く、生徒自らが教科・課目を選択する。定時制ではあるが、昼間に授業があり、また単位制のため、必要な単位を修得するなどすれば、3年間で卒業することが可能である。無学年制で、[[原級留置]](留年)は無く、一度認められた単位は卒業に必要な単位に積み重ねられる。また、無学級であり、授業はクラス単位では行われない<ref>ここまで。文部科学省 「今後の高校教育の在り方に関するヒアリング(第2回)配布資料・議事録」 飯山昌幸氏発表資料 平成22年11月30日 p. 5.</ref><ref name="helpfulnotes">ここまで。「【特集】元祖単位制高校にみる情報科授業」 Helpfulnotes教育通信 2013年12月25日閲覧.</ref><ref>ここまで。東京都立新宿山吹高校 公式ウェブサイト 2013年12月25日閲覧.</ref>昼間定時制の高校は、全日制高校にはなじみにくい不登校経験者らも積極的に受け入れている<ref>『朝日新聞』 夕刊, 2006年7月8日付.</ref>。
 
ただし、昼間定時制に代表される単位制高校は、時間の制約や集団生活の煩わしさからは解放されるものの、主体的に学ぶ姿勢が無ければ、未成年の重要な時期に孤立した状況にも陥りかねない<ref name="helpfulnotes" />。一般的な[[全日制]]の[[学年制|学年制高校]]と比較した場合の[[リスク]]も考慮しなければならない。定時制の単位制高校は、中途退学率および不登校率が、全日制高校より高い。中途退学率は、全日制高校が1.2%に留まるのに対して、定時制の単位制高校の中退率は10.7%である。かつ、不登校率は、全日制高校で1.2%だが、定時制の単位制高校では18.3%に達している<ref>ここまで。文部科学省 「平成23年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」 pp. 62, 76.</ref><ref group="注">全日制高校であっても、定時制の単位制高校と同じ程度かそれ以上に中退率の高い学校があることに注意。例えば、東京都では、中退率が10%以上の全日制普通科の都立高校が15校ある。 出典:「都立高校と生徒の未来を考えるために-都立高校白書(平成23年度版)」</ref>もっとも、定時制には夜間部が含まれており、そのことが中退率と不登校率を押し上げている可能性に注意する必要がある。「昼間」定時制の単位制高校(定時制の昼間部)は、全日制の単位制高校とほぼ同じものである<ref group="注">前掲の文科省調査では、全日制の単位制高校の中退率は1.2%であり、全日制全体の平均1.2%と同程度である。また、全日制の単位制高校の不登校率は1.7%であり、全日制全体の平均1.2%よりわずかに高い程度である。</ref>
 
このようなリスクがあることは、通信制高校(通信制の単位制高校)でも同様である。通信制高校の卒業率は全国平均で45%に留まっている<ref>ここまで。内閣府 「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会(第5回)」 配布資料 資料2 2004年12月21日.</ref>。また、[[2004年]]度に[[構造改革特別区域|構造改革特区法]]で[[株式会社]]の運営する通信制高校が認められてから、それらは高い卒業率を宣伝することで生徒を集めている。しかし、卒業した後の進路に注目しなければならない。全日制の高校卒業者の進路は、大学等が54.4%で最多、[[専修学校]](一般, 専門)等が23%、就職者が16.4%、無職などそれら以外の者が4.6%となっている。一方で、通信制高校の卒業者の進路は、大学等が16.7%、専修学校(一般, 専門)等が23.8%、就職者が14.3%で、無職などそれら以外の者は43.1%で最も多く、全日制高校とは極端にかけ離れている<ref>ここまで。文部科学省 「平成24年度 学校基本調査」</ref><ref>ここまで。「平成24年度 高等学校教育の現状 参考資料5」 pp. 24, 26.</ref><ref group="注">同じ統計には、定時制高校の卒業者の進路についても記載されているが、定時制の単位制に限定したデータでは無いため省略する。</ref>なお、大きく増加している広域通信制は、その添削指導のレベルにも改善が求められている<ref>文部科学省 「中央教育審議会 初等中等教育分科会 高等学校教育部会(第6回) 議事録」 小谷教育制度改革室長の発言 2012年3月9日.</ref>。
 
==== その他の進路 ====
[[支援教育を行う普通学校]]<ref group="注">これはあくまでもWikipedia上の分類であり、公式の名称ではない。</ref>は、主に不登校の児童を対象とした高等学校のことである<ref group="注">「[[特別支援学校]]」のことではない。</ref>。[[東京都]]立のチャレンジスクールやエンカレッジスクール、トライネットスクールなどがあり、このうちチャレンジスクールは昼夜間定時制、エンカレッジスクールは全日制、トライネットスクールは通信制である。また、[[発達障害]]など各種の障害を持つ不登校の児童を受け入れている私立の高校がある(「[[支援教育を行う普通学校]]」の項目を参照のこと)。
 
[[高等学校卒業程度認定試験]](高認)は、その取得により、高等学校を卒業しないまま、[[大学]]や[[短期大学]]、[[専門学校]]の受験が可能になる。しかし高認は、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験」であり、'''「高等学校卒業の資格」を与えるものではない。'''このため、就職の際に不利になるケースもある<ref>ここまで。「就活コンサルタントが断言 優秀な人事マンは採用時、
出身高校名を必ずチェックします」 『プレジデントファミリー』 プレジデント社 2010年11月号</ref><ref>ここまで。「[http://www.j-cast.com/2011/12/26117615.html 人事マンは新卒採用で高校名重視する 内部進学や推薦・AO入学に厳しい目]」. [http://www.j-cast.com J-CASTニュース]. 2011年12月26日付. 2014年1月10日閲覧.</ref>。また、[[因果性|因果関係]]は不明であるものの、高認から大学を受験し、面接で不合格となった例が確認されている<ref>「[http://www.asahi.com/edu/center-exam/TKY201212230769.html 入試面接0点、なぜ 今年医学部不合格『採点基準は』]」. [http://www.asahi.com 朝日新聞デジタル]. 2012年12月24日付. 2014年1月5日閲覧.</ref> 。
 
また、高校に在学しながらの高認取得も可能である。高校で必要単位を修得した科目は免除されるため、高認を受験する場合でも、何らかの高校に在籍したほうが有利である。高校の全課程を修了すれば、[[大学]]への[[推薦入学]]も可能になる。これは高認のみでも不可能ではないが、容易さが異なる。
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さらに、[[大学受験]]を希望する場合、高認や通信制高校の内容と、平均的な大学受験で必要とされる内容の格差が大きいことに、注意する必要がある。また、高認に限らず、通信制高校(一部<ref group="注">例えば、[[科学技術学園高等学校]]のインターネット学習では数学IIIが開講されている。</ref>を除く)では、[[数学 (教科)#入試などへの影響|数学III・数学C]]など、[[文系と理系|理系]][[学部]]の受験で求められることの多い科目が受講できない。
 
なお、近年、広域通信制高校などが「[[サポート校]]」と呼ばれる無認可の教育施設を展開している。それらは、通信制高校の卒業や高認の合格を目指す子どもへの[[教育、学習支援業|学習支援]]を行う一方で、その脱法行為や教育の質が問題となっている。[[構造改革特別区域|構造改革特区法]]に基づく株式会社立の通信制高校の7割が、同法の禁ずる特区外での教育活動をしていた。[[文部科学省]]の担当者は、''「脱法行為であるうえに教育の質も低く、高卒資格を売り物にしたビジネスになっている」''と述べている<ref>ここまで。『朝日新聞』 2012年8月19日付.</ref>
 
==== 転校について ====