「変分法 (解析力学)」の版間の差分

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'''変分法''' (へんぶんほう、{{lang-en-short|Variational method, Calculus of variations)variations}})は、[[関数 (数学)|関数]]を取り[[値]]を返す関数である[[汎関数]](functional)の[[微分]]に関する手法である。[[解析力学]]における重要な方程式は[[最小作用の原理]]を元に変分法を用いて導出される。
 
==変分法を使った原理==
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例えば、[[物性物理学]]について考えてみよう。[[多体問題]]において多体の[[波動関数]]を使って[[固有値問題]]を解析的かつ厳密に解くことは困難であり、何らかの[[近似法]]を用いて解かれる。その近似手法の一つに'''変分法'''がある。
 
ある多体系において、規格化、直交性などの条件の下で任意に選んだ試行関数(変分関数とも言う。ここでは多体の波動関数)を {{math|Ψ<SUBsub>trial</SUBsub>}} とする。試行関数はいろいろな選び方があるがここでは、{{math|Ψ<SUBsub>trial</SUBsub>}} は、系を記述する厳密な[[固有関数]](波動関数)Ψ){{math|Ψ<SUBsub>''i''</SUBsub>}} の展開で記述できるとする。
 
:<math> \Psi_\mathrm{trial} = \alpha_0 \Psi_0 + \alpha_1 \Psi_1 + \alpha_2 \Psi_2 + \cdots </math>
 
ここで、{{math|Ψ<SUBsub>0</SUBsub>}} を[[基底状態]]の固有関数とする。また、{{math|Ψ<SUBsub>1</SUBsub>, Ψ<SUBsub>2</SUBsub>・・・, ...}} は[[励起状態]]の固有関数である。系の[[ハミルトニアン]]を {{mvar|H}} として、{{mvar|H}} に対する {{math|Ψ<SUBsub>''i''</SUBsub>}} に対応する[[固有値]]を {{mvar|E<SUBsub>i</SUBsub>}} とすると、試行関数 {{math|Ψ<SUBsub>trial</SUBsub>}} の固有値 {{math|''E''<SUBsub>trial</SUBsub>}} は、
 
:<math> \left\langle \Psi_\mathrm{trial} |, H | \Psi_\mathrm{trial} \right\rangle = E_\mathrm{trial} </math>
 
であり、
 
:<math> \begin{align}
:<math> \begin{matrix} E_{trial} & = & \left\langle \alpha_0 \Psi_0 + \alpha_1 \Psi_1 + \alpha_2 \Psi_2 + \cdots | H | \alpha_0 \Psi_0 + \alpha_1 \Psi_1 + \alpha_2 \Psi_2 + \cdots \right\rangle \\ \ & = & | \alpha_0 |^2 E_0 + | \alpha_1 |^2 E_1 + | \alpha_2 |^2 E_2 + \cdots \ge E_0 \end{matrix} </math>
E_\mathrm{trial} & = \sum_i \overline{\alpha}_i\alpha_i \left\langle \Psi_i, H \Psi_i\right\rangle \\
& = \sum_i | \alpha_i |^2 E_i \\
& \ge E_0
\end{align} </math>
 
となる。この時、試行関数の固有値は、必ず基底状態の固有値 {{math|''E''<SUBsub>0</SUBsub>}}(これがこの場合の厳密解)に等しいかエネルギー的により高い値となる。そして、展開係数である {{mvar|α<SUBsub>i</SUBsub>}} を調節して {{math|''E''<SUBsub>trial</SUBsub>}} の最小値(最適値)E){{math|''E''<SUBsub>opt</SUBsub>}} を求める。これが試行関数を使った変分法の手順である。この場合の最適値 {{math|''E''<SUBsub>opt</SUBsub>}} も、真の固有値 {{math|''E''<SUBsub>exact</SUBsub> ({{=}} ''E''<SUBsub>0</SUBsub>)}} に対し、
 
:<math> E_\mathrm{opt} \ge E_\mathrm{exact} </math>
 
となる。これが満たされない場合、その変分計算は正しくない。以上では、試行関数は厳密解としての {{math|Ψ<SUBsub>0</SUBsub>}} を含むという特殊な場合である。実際の計算では厳密解が存在し得られない場合がほとんどである。尚、以上に出てくる固有値は、系の[[全エネルギー]]と置き換えて考えても良い。変分法の結果の良し悪しが、試行関数の選び方に強く依存する場合がある。
 
試行関数の具体例としては、[[スレーター行列式]]を使い、個々の一粒子波動関数を最適化するものや、試行関数にジャストロウ型波動関数を使い[[量子モンテカルロ法]]を使って最適値を求めたりする。[[量子化学的手法]]や[[バンド計算]]も変分法が使われており、様々な場面で利用されている。
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== 参考文献 ==
* {{cite book | 和書 | author=日本数学会 | title=岩波数学辞典 |edition = 3 )』 | publisher=岩波書店 | date=1985年。ISBN | isbn=4000800167 | ref=岩波数学辞典}}
* {{cite book | 和書 | authorlast=戸川 | first=隼人 | title=変分法と有限要素法 | publisher=日本評論社 | yeardate=1994 | ref=harv}}
 
==関連記事==
* [[最小作用の原理]]
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* [[ディリクレの原理]]
 
[[Category{{DEFAULTSORT:力学|へんふんほう]]}}
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[[Category:電磁気学]]
[[Category:熱力学]]
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[[Category:数学に関する記事]]