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ATIブランド廃止
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[[ファイル:NVidia Riva 128.jpg|thumb|200px|right|NVidia Riva 128 (1997年)]]
'''ビデオカード'''<ref>は、[[パーソナルコンピュータ]]などの各種の[[コンピュータ]]で、[[映像]]を信号として出力または入力する機能を、[[拡張カード]](拡張ボード)として独立させたものである。「'''ビデオボード'''」「'''グラフィックカード'''」「'''グラフィックボード'''(俗称グラボ)」「'''グラフィックスカード'''」「'''グラフィックスボード'''」ともいう<ref>メーカーや[[パソコンショップ|販売店]]によって名称にばらつきがあるが、本項では「'''ビデオカード'''」に統一する。</ref>は、[[パーソナルコンピュータ]]などの各種の[[コンピュータ]]で、映像を信号として出力または入力する機能を、[[拡張カード]](拡張ボード)として独立させたものである
<!--日本の出版社では、PC-9801時代に用語統一が行われたためか、「拡張ボード」や「グラフィックボード」といった表現が使われるが、英語圏では他分野でも使われることもあり、PC用語としては一般的ではない。-->
 
カードに搭載されている[[集積回路|チップ]]や[[Dynamic Random Access Memory|メモリ]]によって描画速度、[[画面解像度|解像度]]、[[3次元コンピュータグラフィックス|3D]]性能などが異なる。
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日本の出版社では、PC-9801時代に用語統一が行われたためか、「拡張ボード」や「グラフィックボード」といった表現が使われるが、英語圏では他分野でも使われることもあり、PC用語としては一般的ではない。-->
 
== 概要 ==
[[IBM PC]]および[[PC/AT互換機|IBM PC互換機]]の多くの機種では、ビデオ[[回路]]が[[マザーボード]]上には[[実装]]されておらず、ビデオカードによる拡張が容易である。しかし現在{{いつ|date=2015年3月}}では、[[ウェブサイト]]閲覧や[[電子メール]]のやり取り、[[オフィススイート|オフィス作業]]など日常的な作業を行うには支障のない程度の性能を備えた表示回路を組み込んだ[[チップセット]]([[チップセット#統合チップセット|統合チップセット]])と、それを搭載したマザーボードが増えており、安価なPCではビデオカードを搭載していない'''[[オンボードグラフィック]]機能'''を用いるものが一般的である。このため、ビデオカードは高速な3D表示性能や[[マルチディスプレイ]]機能を目的として追加される場合が多い。また統合グラフィック機能の[[ユニファイドメモリアーキテクップセット#統合チップセット|UMA]]による性能低下を避けるためにビデオカードを追加する場合もある。
 
ビデオチップカード(チップ)のうち、[[グラフィック]]表示を中心としたものをグラフィックカード(チップ)、更に[[Microsoft Windows|Windows]]や[[OpenGL]]など特定の表示環境に[[最適化]]したものを[[グラフィックアクセラレータ]]カード(チップ)と呼ぶ。また「カード」は、「ボード」や「アダプタ」とも呼ばれる。
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== ビデオカードの構成 ==
一般的なPC/AT互換機用ビデオカードは主に以下の[[モジュール]]により構成される。
 
=== ビデオメモリ (VRAM) ===
{{Main|VRAM}}
表示する描画情報を保持するための[[フレームバッファ]]として利用されるメモリ領域。大容量化に伴い、オフスクリーンバッファや[[シェーディング]]バッファなどとしても利用されるようになっている。グラフィックチップとは専用[[バス (コンピュータ)|バス]]で[[ポイント・ツー・ポイント]]接続される。広帯域で接続したほうが性能的には有利だが、[[コスト]]・実装面積・発熱などを優先しグラフィックチップの仕様より狭い[[帯域幅]]で接続することもある。
 
ビデオメモリには高速性と低価格性の両立が求められるため、汎用の[[Dynamic Random Access Memory|DRAM]]だけでなく専用のRAMが用いられることも多い。かつては専用モジュールによりビデオメモリの増設に対応する製品も存在したが、2000年代以降ビデオメモリの増設に対応したビデオカードの存在は確認されておらず、おおむね512[[メガバイト|MB]]~6[[ギガバイト|GB]]程度に固定されている。
 
実装面積を重視する[[モバイル]]用途ではグラフィックチップの[[LSI]]パッケージにビデオメモリ用RAMを同梱している製品も存在する。
 
==== ビデオメモリとして用いられたRAM ====
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* [[DDR2 SDRAM]]
* [[DDR3 SDRAM]]
* DDR SGRAM ([[GDDR]])
* [[GDDR2]]
* [[GDDR3]]
* [[GDDR4]]([[:en:{{仮リンク|GDDR4|en]])|GDDR4}}
* [[GDDR5]]
 
==== Unified Memory Architecture (UMA) ====
[[Unified Memory Architecture]] (UMA)とは独立したビデオメモリを持たず、[[メインメモリ]]と共有するシステムである。シェアメモリ・共有メモリなどとも呼ばれる。
 
メインメモリは同世代の専用ビデオメモリと比較すると低速であり、システムとメモリ帯域を共有するためシステム[[パフォーマンス]]が低下するなどのデメリットがある。反面、実装面積が少なく省スペース性に優れる、部品点数が少なく安価であるなどのメリットがあり、[[チップセット#統合チップセット|チップセット統合グラフィックス機能]]で多く採用されている。
 
メインメモリの高速化に伴い、単体型のグラフィックチップにおいても[[NVIDIA]]社の[[Turbo Cache]]、[[アドバンスト・マイクロ・デバイセズ|AMD]]社の[[HyperMemory]]などメインメモリをビデオメモリ領域として利用する技術が登場している。
 
=== 内部インターフェイス ===
[[ファイル:Matrox_millennium_p650_pcie.jpg|thumb|right|PCI Expressインターフェイスを備えるビデオカードの例]]
ビデオカードとシステムを接続するための[[インターフェイス]][[データ転送]]用に高速な専用[[バス (コンピュータ)|バス]]を用いることが多い。
 
==== 主なビデオカード用内部インターフェイス ====
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==== その他の内部インターフェイス ====
また[[HDMI]]の普及黎明期には、ビデオカード上のHDMI出力端子から[[音声]]を出力する為に、[[基板]]上に[[S/PDIF]]入力インターフェイスを供える製品も登場している。
 
その他、マルチGPU技術の制御用端子や[[ビデオキャプチャカード]]との連携用端子などのオプション機能用の端子が搭載されることも多い。
 
=== 外部インターフェイス ===
ビデオカードの出力を[[ディスプレイ (コンピュータ)|ディスプレイ]]など表示デバイスに接続するためのインターフェイス。当初はアナログ[[RGB]]出力が一般的だったが、04年頃から[[DVI-I]]出力も備え[[マルチディスプレイ]]機能に対応するものが一般的になってきている。
[[S-Video]][[コンポジット]]によるビデオ出力の他、[[コンポーネント]]出力を搭載する製品や、[[HDMI]]出力、[[DisplayPort]]を搭載する製品も出現している。
 
* アナログ[[RGB]]
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=== 冷却機構 ===
ビデオカードはPC内部で最も[[消費電力]]や発熱量が大きいパーツの一つであり、特に高性能な[[ハイエンド]]製品では強力な放熱・[[冷却]]が必要となる。隣接する[[拡張スロット]]用空間を占有してしまうほど巨大な[[送風機|ファン]]や[[ヒートシンク]]を備える製品が2003年頃から登場し、現在{{いつ|date=2014年3月}}<!-- See [[WP:DATED]] -->ではハイエンド製品では一般的となっている。1スロットのみ占有するタイプであっても、放熱性を保つよう隣のスロットはなるべく空けておくのが望ましい。
 
一方、[[ローエンド]]な製品では発熱が少なくファンレス仕様の物もある。
 
=== 補助電源 ===
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[[ファイル:Trident_TVGA9000.jpg|thumb|right|ISAインターフェイスを備える初期のビデオカードの例]]
{{see also|Graphics Processing Unit#歴史|グラフィックコントローラ#歴史}}
以下、IBM PC(とその末裔)のビデオ設計としてのビデオカードについて主に述べる。
 
=== IBM PCのビデオカード採用 ===
[[1981年]]の'''[[IBM PC]]'''は、当時のみならず後の[[パーソナルコンピュータ]]でも普通に見られた、ビデオ回りのハードウェアをオンボードで固定したものにはせず、ビデオカードとして独立させる設計を採用した。
 
IBM PCはビデオサブシステム(ビデオチップなど)を本体([[マザーボード]])にではなく、[[拡張カード]]([[IBM]]はアダプターと呼ぶ)に搭載した。IBM PCの発売時には2種類のビデオカード(テキストモードのみの'''[[Monochrome Display Adapter|MDA]]'''と、グラフィックモードを持つ'''[[Color Graphics Adapter|CGA]]''')が提供され、用途により選択・交換できた。
 
この'''[[拡張性]]'''により、IBM PCファミリーおよび[[PC/AT互換機|IBM PC互換機]]では、ユーザーは本体を買い換えなくても、各社から販売される多様なビデオカードに交換(種類によっては追加して共存)し、対応したディスプレイと[[ソフトウェア]]を使用すれば、より高速・高解像度な表示環境を得られるようになった。中でも[[:en:Hercules (corporation)|Hercules]]の'''[[Hercules Graphics Card|HGC]]'''は広く使われた。日本での[[東芝]]の[[ダイナブック (東芝)|ダイナブック]](初代J-3100 SS)も、CGAをベースに独自の日本語モード(640x400)を追加したものだった。
 
一文字テキスト出力(int 10h, ah=0eh)のような、BIOSの提供する機能としては高水準の機能を用意し(この機能を提供するBIOS ROMは本体ではなくビデオカードに載る)、MS-DOSなどはそちらを使うようにすることで、ハードウェアの差異に対するソフトウェアの[[互換性]]を確保した。
 
=== EGAの登場と上位互換 ===
1984年の[[PC/AT]]では'''[[EGA]]'''が標準搭載されたが、これはMDAおよびCGAの'''[[上位互換]]'''であり、MDAとCGAの主要な表示モードを含んでいた。表示モードはソフトウェアで容易に切替できたため、下位の画面モードにしか対応していないソフトウェアも継続して使用できた。この上位互換は、その後の主要なビデオ[[規格]]でも継承され、また複数の画面解像度([[走査]]周波数)に自動対応できる[[マルチスキャン]]方式のディスプレイが普及した。
 
EGAは広く普及し、各社がEGA上位互換のグラフィックチップやカードを製造した。日本での[[AX]]規格の'''[[JEGA]]'''ボードも、EGAをベースに独自の日本語モード(640x480)を追加したものだった。
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* 描画性能の向上
* システム性能の向上(元がUMAであった場合)
* [[マルチディスプレイ]]機能などの対応
* [[保守性]]の向上
* CPUの負荷が軽減される(グラフィック描画の処理が、CPUから外れる)
 
=== デメリット ===
* [[消費電力]]の増加(電気代の経済的負担だけでなく、電源ユニットも比較的高額な高電力タイプが求められる)
* 接続部位の増加による信頼性の低下
* 隣接PCI Expressスロットへの圧迫(厚みの大きいビデオカードを挿入することで隣接スロットで挿入できるスペースが取られ、物理的に使用不可となるケースが多い)
* 支出の割には性能水準陳腐化のペースが速く、グラフィック処理の高性能さを求められるソフト(例:CGソフトの[[レンダラ]][[PCゲーム]]、動画加工[[オーサリングソフト]]など)の[[バージョンアップ]]に合わせ、買い替えが必要となるケースが生じやすい
 
== その他 ==
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[[ファイル:Sis_760gxlv.jpg|thumb|right|統合チップセットの例]]
{{main|オンボードグラフィック}}
マザーボードが持つグラフィックス機能を総括して'''オンボードグラフィック'''または'''オンボードビデオ'''と呼ぶことが多い。これは、単体のグラフィックチップをマザーボードの基板に直接実装したものと、統合[[チップセット]]のグラフィックス機能を利用したものに大別される。基板に実装するタイプは高性能ノートパソコンやサーバ向マザーボードで用いられる。統合チップセットの登場以前は低価格機のグラフィックス機能はこのタイプを用いたものが多く、「オンボード」という呼称はこの形態に由来する。
 
統合チップセットは1999年に発表された[[Intel 810]]以降、安価かつ省スペース性に優れるため急速に普及し、PCグラフィックス機能の主流となっている。多くのユーザーが一般的な用途で求める程度の性能に留まるため、高負荷な3D描画能力を求められる用途には向いていない。
 
Unified Memory Architecture(UMA)によりビデオメモリ用として確保・占有される一部のメインメモリ領域はシステムから使用できなくなり、実効メモリ容量が減少する。
 
== ビデオカードメーカー ==
かつてビデオカードは[[ダイヤモンド・マルチメディア]]や[[エルザ_(企業)|ELSA]]などの各ビデオカードメーカーが[[ベンダー]]から[[Graphics Processing Unit|GPU]]を購入し、[[設計]][[製造]]を行ったものが販売されていた。しかしこの方式はメーカーごとの製品の[[品質]]のばらつきが大きいという問題があった。このため、ベンダーがGPUに対応するビデオカードの[[リファレンス]]デザインをメーカーに提供し、メーカーはリファレンスデザインに沿った製品の販売を行うという形態が2000年代頃から主流になった。これに伴い、2000年代後半以降は[[ASUS|ASUSTeK Computer]]、[[GIGABYTE]]、[[Micro-Star International|MSI]]などのマザーボードメーカーが手がけるビデオカード製品が多くを占めるようになっている。
 
一般的なビデオカードメーカーは複数のGPUベンダーのビデオカード製品を取り扱うが、[[サファイア (企業)|サファイア・テクノロジー]]のように特定のGPUベンダーのビデオカード製品しか扱わない例もある。
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=== 日本国内メーカー ===
日本国内メーカーでは[[アイ・オー・データ機器]]([[挑戦者]]ブランドも展開)・[[バッファロー (パソコン周辺機器)|バッファロー]]([[玄人志向]]ブランドを含む)などの[[周辺機器]]メーカーがビデオカードの販売を手がけている。商品では、「[[グラフィックアクセラレータ]]」の名称が用いられた。[[アイ・オー・データ機器]]の製品は、設計こそリファレンスに準じたものになっていたものの、かつては[[ドライバ]]が独自に[[チューニング]]されており、一定の評価を得ていた。その後、OEM供給を受けたATI、nVidia製品をラインナップしていたが、2010年12月発売のGA-RH5450を最後に、取り扱いを終了している。ビデオカードの販売は終了したものの、[[USB]]接続のグラフィックアダプターは取り扱いを継続している。これら国内の取り扱い製品の中で特に[[トムソン・カノープス|カノープス]]はリファレンスデザインと異なる独自開発の基板およびドライバを採用したビデオカードの製造・販売を行い、マニア層を中心にかつて人気を博していたが、2002年に独自設計のビデオカードのリリースは終了し、2006年二月のMTVGA X1300Lのリリースを最後にビデオカード事業から撤退している。
 
また[[日本電気|NEC]]も産業向け[[ワークステーション]]製品のビデオカードを一部製造・販売している。
 
== ビデオカードに使用される主なGPU ==
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[[DirectX]]と組み合わせて使うことが多い
* [[NVIDIA]] [[NVIDIA GeForce|GeForce]]シリーズ
* [[ATIAMD Technologies|ATI]] [[RADEONRadeon]]シリーズ
<!-- 撤退済みにつきコメントアウト * [[S3 Graphics|S3]] [[S3 Chrome|Chrome]]シリーズ -->
 
282行目:
[[OpenGL]]と組み合わせて使うことが多い
* [[NVIDIA]] [[NVIDIA Quadro|Quadro]]シリーズ
* [[ATIAMD Technologies|ATI]] [[ATI FirePro|FirePro]](FireGL)(FireGL、FireMV、FireStream)シリーズ
* [[3Dlabs]] [[Wildcat]]シリーズ(以前は[[ハイエンド]]の3DCGソフトウェア用のものを作っていたが現在{{いつ|date=2014年3月}}<!-- See [[WP:DATED]] -->は事業から撤退)
 
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{{DEFAULTSORT:ひておかあと}}
[[Category:グラフィックカード|*]]
[[Category:拡張カード]]
[[Category:コンピュータグラフィックス]]