「幻想文学」の版間の差分

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==幻想文学の範疇==
幻想文学の定義やその範疇は曖昧であり、[[神話]]や[[民話]]、[[寓話]]などの一部にもその傾向は見られる。古くは伝説や神話といったものや『[[古事記]]』、様々な[[叙事詩]]、近代に近づくと、[[ジョン・ミルトン|ミルトン]]の『[[失楽園]]』、[[ローレンス・スターン]]の『[[トリストラム・シャンディ]]』などもその一つとされることがあるので、近代小説の成立以前にも多く存在していた分野と言ってもいい。ゴシック趣味にもとづく超自然的現象を装飾文体で語る[[ゴシック・ロマンス]](ゴシック小説)では、[[マシュー・グレゴリー・ルイス]]、[[アン・ラドクリフ]]等があげられる。また、近代小説と分類される作家のなかにも、[[ニコライ・ゴーゴリ|ゴーゴリ]]、[[フョードル・ドストエフスキー|ドストエフスキー]]、[[チャールズ・ディケンズ|ディケンズ]]、日本では[[夏目漱石]]、[[森鴎外]]、[[芥川龍之介]]、[[川端康成]]、[[谷崎潤一郎]]などと言ったように、時として超自然に材を取った作風のものを残している作家もいる。この分野ではモダニズムの作家である[[フランツ・カフカ|カフカ]]、[[ウラジーミル・ナボコフ|ナボコフ]]、[[サミュエル・ベケット|ベケット]]、[[マルセル・プルースト|プルースト]]、[[ジェイムズ・ジョイス|ジョイス]]らの作品が幻想文学に位置づけられることもある。また事象を現実世界への無意識の侵入をテーマ化する[[シュルレアリスム]]も含むことがある。
 
現代に入ると、[[ポストモダニズム]]の先鞭となる、古来からある神話的・民話的モチーフを取り入れ、寓話風の作品を書く作家が現れた。代表的なものとして、[[イタロ・カルヴィーノ|カルヴィーノ]]「我らの祖先」三部作や[[澁澤龍彦]]の幻想小説、[[アントニオ・タブッキ|タブッキ]]、ウィンターソン、[[アンジェラ・カーター]]の作品などが挙げられる。これらと並行した時期に、南米の[[マジックリアリズム]]作家、[[ガブリエル・ガルシア=マルケス|ガルシア=マルケス]]、[[ホルヘ・ルイス・ボルヘス]]、[[マヌエル・プイグ]]、[[ホセ・ドノーソ]]らがいる。事象が幻覚であり、現実に起きていないことを認識した上でその幻覚を描く[[内田百間]]や[[日野啓三]]のようなタイプの作品もあり、さらに[[ジェラール・ド・ネルヴァル]]「オーレリア」<ref>ツヴェタン・トドロフ『幻想文学論序説』Ⅱ 幻想の定義</ref>、[[夢野久作]]「[[ドグラ・マグラ]]」、[[色川武大]]『狂人日記』のように、狂気あるいは[[精神障害]]や錯乱による幻覚、[[ウィリアム・S・バロウズ]]などのドラッグ的な幻覚をも扱う場合もある。