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本来はハンターが捕獲した完全に野生のもの({{Lang-fr-short|sauvage}}、ソヴァージュ)を指すが、供給が安定しない、また入手困難で高価になってしまうといった理由で、飼育してから一定期間野に放ったり、また生きたまま捕獲して餌付けしたものもドゥミ・ソヴァージュ({{Lang-fr-short|demi sauvage}}、半野生)と呼び、ジビエとして流通している。
 
近年ではフランス料理に限らず、狩猟から供給される鳥獣肉を使った料理にジビエと入れるケースがある<ref>{{Cite web |url = http://www.nhk.or.jp/sakidori/backnumber/150301.html |title = じわじわ来てるョ!"ジビエ"ブーム ||publisher = [[NHKオンライン]] |accessdate = 2015-04-08 }}</ref>。ジビエを[[珍味]]と称して[[生食]]するのは[[感染症]]や[[肝炎]]のリスクが有り、大変危険である<ref>{{Cite web |url = http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032628.html |title = ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう ||publisher = [[厚生労働省]] |accessdate = 2015-04-08 }}</ref>。
 
==工程==
ジビエのハンティングには、大変気を遣う。銃弾によって可食部分が大きく損傷してしまったり、また[[内臓]]が飛び散って味が悪くなってしまってはいけない。ジビエ特有の獣臭は血抜きの技術に大きく左右され、血が残っているほど臭いは強くなる。逃げ回っ獣は体温が上昇しており、なるべく早く肉を冷やさないと急速に腐敗する。そのため仕止めた後も血抜きや解体といった処理を迅速かつ適切に行う必要がある。解体は内臓を摘出し、一旦きれいな水で肉を冷却し、皮を剥いで脱骨や精肉をする。通常は獲ってすぐに食べるのではなく、数日から1か月をかけて熟成({{Lang-fr-short|faisandage}}、フザンダージュ)させてから調理する。
通常は獲ってすぐに食べるのではなく、数日をかけて熟成({{Lang-fr-short|faisandage}}、フザンダージュ)させてから調理する。
 
==旬==
野生の鳥獣は冬に備えて体に栄養を蓄えるため、秋がジビエの旬となる。これはジビエの[[胃]]の内容物を調べることでよくわかる。冬季にはジビエの餌となる[[果実]]などが減少するため、年越し頃から一般に肉質は低下する。また、[[繁殖期]]前は脂が乗り味が良くなるが、繁殖期を過ぎると一気に味が落ちる。[[夏バテ]]をしやすい動物もいる。旬を見極めるには知識が必要だが、古くから狩猟によって食料を得てきたヨーロッパの人々にとっては、身近であると同時に無くてはならない食材である。
 
== 主なジビエ ==
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: キジもポピュラーなジビエである。雄より雌の方が肉質が柔らかく、珍重される。なお、肉の熟成を意味する「フザンダージュ」は、キジの[[フランス]]名に由来している。
; [[ライチョウ]]({{Lang|fr|grouse}}、グルーズ)
: 日本では[[天然記念物]]であるため狩猟できないが、フランスでは比較的よくみかけるジビエ。肉は赤身で独特の香りがある。[[エゾライチョウ]]は狩猟対象ではあるが、減少傾向にある。
; [[ヤマシギ]]({{Lang|fr|bécasse}}、ベカス/ベキャス)
: 肉質は柔らかく、ジビエにしては繊細。内臓が特に珍重され、付けたまま料理される。また、裏漉しした内臓をソースに加える料理も多い。非常に希少価値が高く、[[乱獲]]されたため、こちらは逆にフランスで禁猟となっている。
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; [[イノシシ]]({{Lang|fr|sanglier}}、サングリエ)、[[仔イノシシ]]({{Lang|fr|marcassin}}、マルカッサン)
: 日本では成獣を狩るが、フランスでは肉が硬くなるのを嫌って、まだウリ坊の幼獣を対象とする。味、料理法等は豚肉に準じる。
; [[クマ]]({{Lang|fr|ours}}、ウルス)
: 肉の大半は脂身で、口どけが良い。赤身は筋張って臭みがある。発酵温度が非常に高く、冷蔵庫では腐敗するので冷凍に近い温度で熟成させる。シカやイノシシと違い、脱骨済みの部位で流通している。
 
== 日本におけるジビエ ==
{{main|日本の獣肉食の歴史}}
[[日本]]で一般的に肉食が広まったのは[[明治|明治時代]]以降とされているが、それ以前にも狩猟・肉食の文化はあった。[[マタギ]]やシカリといった猟師がシカや[[クマ]]、イノシシを獲っていたし、海から離れた山岳地では[[ツグミ]]やキジなどの野鳥も食べられていた。[[ウサギ]]を一羽二羽と数えるのも、鳥と偽りながら食べられていた名残である。そうした意味においては、日本人もジビエを食べてきたといえる。
 
フレンチ食材としてのジビエは、1990年代の中頃から日本に輸入されるようになった。ピジョン、コルヴェール、ペルドロー、フザン、リエーヴル、シュヴルイエなどがフランスから入ってきている。ただし全てがフランス産という訳ではなく、[[ベルギー]]、[[イタリア]]、[[スペイン]]、[[ドイツ]]、さらには[[オーストリア]]などで獲れたジビエがいったんフランスに集められる。これは日本における[[検疫]]の都合によるものである。[[テレビ]]番組「[[料理の鉄人]]」で「ジビエ対決」が組まれるなど、知名度が上がるにつれて、ジビエ料理を出すレストランも増えてきている。
 
現在日本ではジビエを入手するには専門の業者・肉屋に依頼する方法が一般的だが、国内の猟師とつながりのある肉屋、または[[食肉処理施設]]を持つ猟師から直接買い付ける方法もある。ジビエの品質は年齢や性別など肉質が不揃いで当たり外れがあり、実際に捌いてみないと確認できない事も多い。また、費用や労力がかかる上に安定供給できない効率の悪い商材のため、相場感も独特である。ジビエの流通では信頼関係や目利き、経験が重要となる。
 
[[長野県]]では、農作物のシカによる[[食害]]に悩まされていることから、生息密度をコントロールするために、毎年一定量の駆除を行っている。しかし捕獲されたシカが食肉として利用されることは少ない。例えば2006年に長野県で駆除された[[ニホンジカ]]約9,200頭のうち、食肉となったのは820頭で僅か9%に過ぎない。大半はハンターに自家消費されたり、山中に埋設されたりしている。そうした中、捕獲したシカを「モミジ鍋」ばかりではなくジビエとして消費を拡大し、地域振興につなげようという動きも出始めている。長野県[[大鹿村]]などでの取り組みが代表例としてあげられるが、近年は全国各地の自治体も取り組み始めている<ref>徳島県の取り組み例。{{cite news |title=鹿の食害減らしたい、ジビエ料理5店舗認定 |newspaper= [[読売新聞]]|date=2013-3-22|url=http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/cooking/20130322-OYT8T00332.htm |accessdate=2013-8-26}}</ref>。
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== 参考文献 ==
* 谷昇 著 『ル・マンジュ・トゥー 素描するフランス料理』 柴田書店 2003 ISBN 978-4-388-05905-8
* {{Cite |和書 |author = 神谷 英生 |title = 料理人のためのジビエガイド |date = 2014 |publisher = 柴田書店 |isbn = 9784388062003 |ref = harv }}
 
== 関連項目 ==
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* [[トドカレー]]
* [[乾燥熟成肉]]
* [[ぼたん鍋]]
 
{{DEFAULTSORT:しひえ}}