「スピリチュアル」の版間の差分

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聖書から引用
野外集会用讃美歌について
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=== 音楽ジャンルとしてのスピリチュアルという名称の由来 ===
スピリチュアル(霊歌)は、新約聖書の「[[エフェソの信徒への手紙]]」(エペソ人への手紙)、「[[コロサイの信徒への手紙]]」(コロサイ人への手紙)にある「霊の歌」(スピリチュアル・ソング)に由来し、伝統的に教会で使われた[[詩編]]歌や[[賛美歌]]のテキストと区別するために、18~19世紀半ばの讃美歌集で使われた<ref name="桜井" />。これらは民謡ではなく、白人・黒人の区別もしていない<ref name="桜井" />
 
{{Quotation|そこで、あなたがたの歩きかたによく注意して、賢くない者のようにではなく、賢い者のように歩き、今の時を生かして用いなさい。今は悪い時代なのである。だから、愚かな者にならないで、主の御旨がなんであるかを悟りなさい。酒に酔ってはいけない。それは乱行のもとである。むしろ御霊に満たされて、詩とさんびと'''霊の歌'''とをもって語り合い、主にむかって心からさんびの歌をうたいなさい。 |[[s:エペソ人への手紙(口語訳)|エペソ人への手紙(口語訳)]]}}
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{{Quotation|キリストの平和が、あなたがたの心を支配するようにしなさい。あなたがたが召されて一体となったのは、このためでもある。いつも感謝していなさい。キリストの言葉を、あなたがたのうちに豊かに宿らせなさい。そして、知恵をつくして互に教えまた訓戒し、詩とさんびと'''霊の歌'''とによって、感謝して心から神をほめたたえなさい。 |[[s:コロサイ人への手紙(口語訳)|コロサイ人への手紙(口語訳)]]}}
 
「スピリチュアル・ソング」は、伝統的に教会で使われた[[詩編]]歌や[[賛美歌]]のテキストと区別するために、18~19世紀半ばの讃美歌集で使われた<ref name="桜井" />。これらは民謡ではなく、白人・黒人の区別もしていない<ref name="桜井" />。また19世紀初頭には、野外集会用讃美歌も「スピリチュアル・ソング」と呼ばれるようになった<ref name="桜井" />。
 
現在のように「スピリチュアル」が、賛歌、黒人霊歌を指すようになったのは、明確にはわからないが[[南北戦争]]後のことであり、それまでは(それ以降もしばしば)、アンセム、賛美歌、霊の歌、ジュビリー・ソング、奴隷の歌、奴隷小屋・プランテーションの歌、ゴスペル、ニグロ・メロディー、プランテーション讃美歌など様々に呼ばれた<ref name="桜井" />。1960年代には、黒人霊歌を指す言葉として、スピリチュアルが一般的になった<ref name="桜井" />。歌集の標題にスピリチュアル・ソングではなくピリチュアルを用いた本は、ジョンソン兄弟の『アメリカ黒人霊歌集』(1925年)が最初である<ref name="桜井" />。
 
== 黒人霊歌 ==
黒人霊歌は、[[アフリカ大陸]]から[[アメリカ大陸]]に強制連行され、[[奴隷]]状態に置かれた黒人たちから生まれた。生活の中で育まれ口頭で伝えられる歌、すなわち[[民謡]]であった<ref name="桜井" />。現在黒人霊歌と呼ばれるものはそれほど均質ではなく、黒人霊歌とそれ以外の歌の区別は明瞭ではない<ref name="桜井" />。歌集や[[アルバム]]には、奴隷制以後の芸術歌謡や[[ゴスペル]]と重複する歌もあり、「'''黒人が関与した(と考えられる)宗教的な歌'''」程度の漠然とした共通点が読みとれる<ref name="桜井" />。名称が規定している民族性(アフロ・アメリカン)と宗教性(キリスト教)が共通する特徴として挙げられる。成立の時期・条件として奴隷制度を重視するなら、「奴隷の歌」または「[[プランテーション]]・ソング」の一種とされ、そのように呼ばれてきた<ref name="桜井" />。

黒人霊歌の起源は、アフリカ民謡を起源のひとつとする説、白人の民間宗教歌が黒人に影響を与えて発生したという白人音楽起源論などがあるが、アフリカとアメリカ南部白人文化両方の影響があると考えられている<ref>[http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kiyou/17-2/RitsIILCS_17.2pp.149-165WELLS.pdf 歌はどこから - 黒人霊歌資料にアメリカの意識を追う - ] ウェルズ恵子</ref>。

黒人霊歌はニグロ・スピリチュアルという言い方もあるが、黒人を指す二グロという言葉には差別色があり、現在では好まれない。
 
== 著名なスピリチュアル ==
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* スピリチュアル、スピリツアル、すぴりつある:キリスト教用語で、霊的であること、霊魂に関するさま<ref name="大辞典" />、宗教的・精神的な物事、教会に関する事柄などを指す名詞で、霊歌より古い用法である。[[キリシタン]]用語としては、ポルトガル語読みでスピリツアル、すぴりつあると表記される<ref name="大辞典">『[[日本国語大辞典]] 第二版』 小学館、2003年</ref>。
* [[スピリチュアリティ]]:人間に特有な心理的あるいは精神的活動を指す用語で、個人の内面における奥深く、しばしば宗教的な感情および信念と関連があるもの。霊性、霊的<ref>[http://www.evangelical-theology.jp/jets-hp/jets/paper_in_printable/037-3.pdf 新約聖書における霊性] 内田和彦</ref>、精神世界、精神性、精神主義、宗教的など様々に訳される。スピリチュアルも類似した意味で使われる。
* [[超自然]]:[[キリスト]]の水上歩行など、自然の法則を越えた現象を指す。英語ではスーパーナチュラル(Supernatural)スピリチュアルには「超自然的な」も呼ばれいう意味がある。
* [[ニューエイジ]] / [[精神世界]] / [[スピリチュアル (現代日本)]]:「精神世界」はスピリチュアリティの日本語訳のひとつでもあり、1970年代以降ブームとなったアメリカの対抗文化「ニューエイジ」における思想の多くの部分を含む日本のジャンルである<ref name="有元" />。「ニューエイジ」は主に「精神世界」の名で日本に広まり、その後「スピリチュアル」と呼ばれるものにほぼ受けつがれた<ref name="有元" />。そのため、日本におけるスピリチュアルという名詞の意味は、キリスト教におけるスピリチュアルとはかなり異なる。「ニューエイジ」、「精神世界」、現代日本の「スピリチュアル」は、「スピリチュアリティ」(霊性)と「スピリチュアリズム」(心霊主義)を柱とする<ref name="有元" />。ただし、現代日本の「スピリチュアル」には、「ニューエイジ」の[[エコロジー]]、自然志向、[[平和主義]]など社会性の高い領域は含まれず、個人におけるご利益など現世利益的側面が強い<ref name="有元" />。[[三菱UFJリサーチ&コンサルティング]]の有元裕美子は、現代日本の「スピリチュアル」には、狭義では[[癒し]]、セラピー、補完・[[代替医療]]([[食事療法]]を除く)、[[占星術]]、[[東洋思想]]、[[古代文明]]、超自然現象などがあり、広義では[[哲学]]、[[心理学]]、[[宗教学]]、[[民俗学]]、[[人類学]]、また[[宗教]]、日本的霊性([[先祖崇拝]]、[[巫女]]、[[イタコ]]、[[ノロ]]、[[ユタ]]、[[陰陽道]]など)も含まれるとしている<ref name="有元">[https://books.google.co.jp/books?id=ump_lBrIiGAC&lpg=PA43&ots=-7Z9oviedb&dq=%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E4%B8%96%E7%95%8C%20%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88%20%E7%96%91%E4%BC%BC%E7%A7%91%E5%AD%A6&hl=ja&pg=PA42#v=onepage&q=%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E4%B8%96%E7%95%8C%20%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88%20%E7%96%91%E4%BC%BC%E7%A7%91%E5%AD%A6&f=false 有元裕美子 著 『スピリチュアル市場の研究: データで読む急拡大マーケットの真実』 東洋経済新報社 2011年]</ref>。また、「精神世界」に含まれる[[潜在能力]]開発([[自己啓発]])、[[ニューサイエンス]]、[[疑似科学]]、[[オカルト]]、[[宇宙人]]、[[UFO]]などは狭義のスピリチュアルには含まれないとしている<ref name="有元" />。
* [[フランシスコ会#スピリトゥアル主義とコンヴェントゥアル派|スピリトゥアル派]]、スピリチュアル派:13~14世紀の清貧の厳格な実践を唱える[[フランシスコ会]]の一派はスピリトゥアル派(心霊派、聖霊派、厳格派)と呼ばれた。英語ではスピリチュアルである。