「脂質異常症」の版間の差分

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== 診断基準および病態による分類 ==
脂質異常症(高脂血症)は診断基準による分類と病態による分類とがあり、診断基準による分類は、[[高コレステロール血症<!-- ループリンク -->]]、[[高LDLコレステロール血症]]、[[低HDLコレステロール血症]]、[[高トリグリセリド血症]]といった種類があり、[[世界保健機関]] (WHO) の基準に基づき日本動脈硬化学会が診断基準を定めている<ref>[http://jas.umin.ac.jp/publications/pdf/guideline_summary.pdf 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007年版] 日本動脈硬化学会</ref>。一方病態による分類はリポタンパク質の増加状態より分類
するもので、[[世界保健機関]] (WHO) の1970年報告<ref>[Classifcation of Hyperlipidaemias and Hyperlipoproteineamias,Bull,WHO,vol.43,891-915,1970</ref> に基づき日本動脈硬化学会が2013年版脂質異常症治療ガイドに脂質異常症表現型の分類法として記載した。<ref>[日本動脈硬化学会2013年版14-15 </ref>
病態による分類例は図を参照。[[File:高脂血症の病型分類リポフォーAS版.PDF|thumb|高脂血症の病型分類リポフォーAS版]]
 
=== 高コレステロール血症 ===
'''高コレステロール血症'''([[w:hypercholesterolemia|Hypercholesterolemia]])とは、血液中の総[[コレステロール]]値が高い(220 &nbsp;mg/dL 以上)タイプの脂質異常症である。生活習慣による脂質異常症の多くがこのタイプである。1997年の国民栄養調査では、日本人の男27%、女33%が該当する。フラミンガムスタディにおいて使用されたためこの値と生活習慣病との関連が注目されたという意味で重要だが、最近では悪玉コレステロール([[低比重リポタンパク質]]、LDL)のほうが明らかに心血管リスクとの相関度が高いので、この値の重要度は廃れている。現在WHO、アメリカ、日本のガイドラインは、いずれも総コレステロール値に注目していない。
但し、LDLコレステロールの直接測定法は、主に日本で使われており、欧米では総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール値から計算するLDLコレステロール値(Friedewald
の計算式{LDL-C=TC-(HDL-C)-TG/5}を使用しており、わが国でも日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」からFriedewald(この計算式によるLDLコレステロール値を用いることとなった(注: 計算式は TGが400mg/dL未満のとき有効)。
 
=== 高LDLコレステロール血症 ===
'''高LDLコレステロール血症'''('''高LDL-C血症''')とは、LDL中のコレステロール(悪玉コレステロール)が血液中に多く存在する(140 &nbsp;mg/dL 以上)タイプの脂質異常症である。アメリカ合衆国のガイドラインATP-III によれば、コレステロールの検査値の中では唯一心血管疾患の絶対的リスクファクターであり、他の検査値である善玉コレステロール(HDL、{{仮リンク|高比重リポタンパク質|en|High-density lipoprotein}})、[[中性脂肪]](トリグリセリド)と比較して明らかに重要度が高い。
 
=== 低HDLコレステロール血症 ===
'''低HDLコレステロール血症'''('''低HDL-C血症''')とは、血液中の善玉コレステロール (HDL) が少ない(40 &nbsp;mg/dL 未満)タイプの脂質異常症である。特に女性において、心血管疾患の重要なリスクファクターとなりうる。1997年の国民栄養調査では、日本人の男16%、女5%が該当する。この病態は脂質が低下して起こるため、高脂血症から脂質異常症へと改名される主な理由となった。
 
=== 高トリグリセリド血症 ===
'''高トリグリセリド血症'''('''高TG血症''')とは、血液中に中性脂肪([[トリグリセリド]])が多く存在する(150 &nbsp;mg/dL 以上)タイプの脂質異常症である。1997年の国民栄養調査では、日本人の男45%、女33%が該当する。内臓脂肪型肥満の人に多い。一時期(米国ATP-IIのころ)、その心血管疾患との関連が疑問視されたが、現在ではやはり関連はあると考える人が多い。RLP-C (Remnant-like lipoprotein particles-cholesterol) が、高TG血症における[[動脈硬化]]発症への関与が示唆されている。
 
== 脂質についての血液検査の参考基準値 ==
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|0.9<ref name=tg-mass/>||1.7<ref name=tg-mass/>||mmol/L
|-
|rowspan=2|総[[コレステロール]]||rowspan=2| ||3.0<ref name=ch-mass>Derived from values in mg/dl to mmol/l, using molar mass of 386.65 g/mol</ref>, 3.6<ref name=firstaidch-mass/><ref name=ch-massfirstaid/> ||5.0<ref name=uppsala/><ref name="GPcholesterol">{{GPnotebook|-214630397|Reference range (cholesterol)}}</ref>, 6.5<ref name=firstaid>Last page of {{cite book
|author = Deepak A. Rao; Le, Tao; Bhushan, Vikas |title=First Aid for the USMLE Step 1 2008 (First Aid for the Usmle Step 1)
|publisher = McGraw-Hill Medical
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|40<ref name=ch-molar>Derived from values in mmol/l, using molar mass of 386.65 g/mol</ref>, 50<ref name=aacc>[http://www.labtestsonline.org/understanding/analytes/hdl/test.html American Association for Clinical Chemistry; HDL Cholesterol]</ref>||86<ref name=ch-molar/>||mg/dL
|-
|rowspan=2|HDLコレステロール||rowspan=2|男性||0.9<ref name=rcpa/><ref name=uppsala> Reference range list from Uppsala University Hospital ("Laborationslista"). Artnr 40284 Sj74a. Issued on April 22, 2008</ref><ref name=rcpa/>||2.0<ref name=rcpa/>||mmol/L
|-
|35<ref name=ch-molar/>||80<ref name=ch-molar/> || mg/dL
|-
|rowspan=2|[[LDLコレステロール]]† ||rowspan=2| ||2.0<ref name=rcpa/>, 2.4<ref name="GPcholesterol" />||3.0<ref name="GPcholesterol" uppsala/><ref name=uppsala"GPcholesterol" />, 3.4<ref name=rcpa/>||mmol/L ||<2.5 <ref name=rcpa/>
|-
|80<ref name=ch-molar/>, 94<ref name=ch-molar/>||120<ref name=ch-molar/>, 130<ref name=ch-molar/>||mg/dL||<100<ref name=ch-molar/>
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|LDL/HDL比|| || 不明 ||5<ref name=uppsala/>|| (単位なし)
|-
| colspan=6 | 空腹時にトリグリセリドが <400 &nbsp;mg/dL であれば LDLコレステロール = 総コレステロール − HDLコレステロール − トリグリセリド/5 (トリグリセリド >500 &nbsp;mg/dL の場合無効)
|}
 
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==治療==
体脂肪率の減少により大きく数値を低下させることが可能である。2–3 &nbsp;kg の減量が大きな影響を与える。
 
治療内容はLDL-C値 ≧140 &nbsp;mg/dL、TG ≧150 &nbsp;mg/dL、HDL-C <40 &nbsp;mg/dL にてその他の[[動脈硬化]]のリスクファクターによって異なる。空腹時にTG <400 &nbsp;mg/dL であれば LDL-C = TC − HDL − TG/5、という関係式も知っておくと便利である。LDL-Cが上昇している場合は[[甲状腺機能低下症]]、[[ネフローゼ症候群]]、[[ステロイド]]の使用状況も念頭におき、二次性であれば原疾患の治療を優先する。
 
=== 食事療法 ===
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!男子!!女子!!年令範囲!!調査年
|-
||171.65 &nbsp;cm||158.60 &nbsp;cm||20-24||2012<ref>[http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001050841 体力・運動能力調査平成24年度]</ref>
|}
 
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* [[たんぱく質]]:15%–20%(獣鳥肉より魚肉・大豆たんぱくを多くする)
* [[脂肪]]:20%–25%(獣鳥性脂肪を少なくし、植物性・魚肉性脂肪を多くする)
* [[コレステロール]]:1日 300 &nbsp;mg 以下
* [[食物繊維]]:25 g 以上
* [[アルコール]]:25 g 以下(他の合併症を考慮して指導する)
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===== 栄養摂取目標の範囲と摂取バランス =====
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 栄養摂取目標の範囲(抄)<ref name="whofao2003">Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation ''[http://www.fao.org/docrep/005/ac911e/ac911e00.htm Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases]'', 2003</ref><br />
! colspan="2" | 食物要素 !! 目標(総エネルギー%)
|-
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** [[イヌリン]] - [[ごぼう]]や[[きくいも]]などキク科植物の根茎に含まれる
** [[カラギーナン]] - [[やはずつのまた]]や[[すぎのり]]などの[[紅藻類]]に多く含まれる多糖
* 不溶性食物繊維が多く含まれる食品 - [[大麦]]、[[玄米]]、[[オートミール]]、[[全粒粉]]、[[ライ麦]]、[[りんご]]、[[西洋なしセイヨウナシ]]、[[キンカン]]、[[アボカド]]、[[インゲン豆]]、[[うずら豆]]、[[そらまめ]]、[[あずき]]、[[納豆]]、[[テンペ]]、[[大豆]]、[[さつまいも]]、[[なめこ]]、[[甘栗]]、[[アーティチョーク]]、[[キャベツ]]、[[ブロッコリー]]、[[えだまめ]]、[[オクラ]]、[[ごぼう]]、[[大根]]、[[ニンニク]]、[[ふきのとう]]、[[芽キャベツ]]、[[にんじん]]、[[モロヘイヤ]]、[[海藻]]など
* 不溶性食物繊維
** [[セルロース]]、[[ヘミセルロース]]、[[リグニン]] - 植物の[[細胞壁]]の主要構成要素で、[[野菜]]など植物性食品から多く得られる
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==== 高LDL-Cの治療 ====
HMG-CoA阻害薬であるスタチン系が第一選択となる。重大な副作用としては肝障害と骨格筋障害が知られている。筋肉痛といった症状が出現することが多く、筋炎や横紋筋融解症は極めて稀である。筋疾患や甲状腺機能低下症が認められる場合は横紋筋融解症のリスクが高まるため注意が必要である。高齢者や肝機能障害、腎機能障害がある場合も注意が必要である。重症(目標値よりも50 mg/dL 以上高い)であれば[[アトルバスタチン]]({{sname||Lipitor}} [[リピトール]]&reg;®)、[[ピタバスタチン]](リバロ&reg;®)、[[ロスバスタチン]](クレストール&reg;®)が選択されることが多く、軽症(目標値との差が30 mg/dL 以内)ならば[[プラバスタチン]](メバロチン&reg;®)、[[シンバスタチン]](リポバス&reg;®)、薬物相互作用が気になる場合はプラバスタチン(メバロチン&reg;®)、[[ピタバスタチン]](リバロ&reg;®)が選択されることが多い。相互作用はマクロライド系抗菌薬、アゾール系抗真菌薬、カルシウム拮抗薬など多岐にわたる。
 
==== 高TGの治療 ====
[[高トリグリセリド血症]]の治療には、[[フィブラート]]がよく用いられる。フィブラートにはHDL-Cを増加させる作用もある。[[肝障害]]、[[横紋筋融解症]]のリスクがあり、そのリスクは[[腎機能障害]]時に増悪する。また[[胆汁]]へのコレステロールの排出を促すため、[[胆石症]]を起こすことがあり、既往がある場合は注意が必要である。また[[スルホニルウレア|SU剤]]や[[ワーファリン]]との相互作用も知られている。{{仮リンク|フェノフィブラート|en|Fenofibrate}}(リピディル&reg;®、トライコア&reg;®など)と[[ベザフィブラート]](ベサトール&reg;®SR、ベザリップ&reg;®など)が知られている。フェノフィブラートは[[尿酸]]低下作用もあるが、一過性の[[肝機能障害]]を起こしやすく、肝障害のある患者では避けられる傾向がある。
 
==== 民間療法薬の種類 ====
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{{DEFAULTSORT:こうしけつしよう}}
[[カテゴリCategory:代謝内分泌疾患]]