「中華民国憲法」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
二林史夫 (会話 | 投稿記録)
m 沿革<3>の章を追加
二林史夫 (会話 | 投稿記録)
本「中華民国憲法」の特色の章を追加
10行目:
 
== 沿革<2>戒厳令と「動員戡乱時期臨時条款」 ==
憲法は制定されたが、中国大陸においては、共産党と国民党の主導権争いが内乱に発展し、国民党は共産党勢力の制圧を目指して軍事活動を展開した<ref name="goto90"/>。しかし、憲法を基本法としていたのでは共産党勢力の制圧が不十分であるとして、平時の国家秩序である憲法を修正して戦時体制をとる必要があるとされた。[[1948年]]5月10日、中華民国憲法の付属条項として、[[動員戡乱時期臨時條款|動員戡乱時期臨時条款]]が公布された<ref name="goto90"/>。2年間を限度として、事実上憲法の諸制度を停止するというものである<ref name="goto90"/>。ここで、「動員」とは国家総動員のことであり、「戡」(かん)とは、「うちかつ」の意味であり、「戡乱(かんらん)とは「乱にうちかつ」<ref name="takamizawa69">高見澤(2010年)69ページ</ref>、すなわち反共産主義のことである<ref name="goto90"/>。この主要な内容は、動員戡乱時においては、総統は国家や人民が緊急の危難に遭遇することを避けるため、または財政経済上の重大な変動に対応するために、憲法上必要とされる手続きに拘束されることなく行政院の決議を経て緊急処分をなすことができるというものである<ref name="goto90"/>。中国大陸での戦線が共産党の優位に進展し、1949年1月23日には北京が共産党の支配下に置かれるようになると、国民政府の台湾撤退は焦眉の急となり、同年5月19日台湾全土に「戒厳令」を布告した<ref name="goto91">後藤(2009年)91ページ</ref><ref name="takamizawa69"/>。この「戒厳令」は、1950年3月14日立法院の追認を受け、合法化されていった<ref name="goto91"/>。蒋介石の率いる国民党総裁は、1949年7月24日、[[アモイ]]から台湾に逃れてきた<ref name="goto92">後藤(2009年)92ページ</ref>。この国民党政府の移駐に伴い、中華民国の法体制が台湾に持ち込まれ、日本統治時代の法体制をほぼ完全に取り換えた<ref name="endo44">遠藤(2014年)44ページ</ref><ref name="jian77">簡(2009年)77ページ</ref>。
 
== 沿革<3>「動員戡乱時期臨時条款」の廃止と憲法修正 ==
[[1991年]]4月30日、李登輝総裁は「動員戡乱時期臨時条款」の廃止を宣言し、翌5月1日より廃止した。これに合わせて同日「中華民国憲法増修条文」10条を公布した<ref name="goto109">後藤(2009年)109ページ</ref>。
 
== 本「中華民国憲法」の特色 ==
第1条で国体を三民主義に基づく民主共和国と定め、第2条で主権は国民全体にあると定める<ref name="takamizawa50">高見澤(2010年)50ページ</ref>。第2章では人民の権利義務を定め、第3章から第12章で、国家機構および選挙などについて定める<ref name="takamizawa50"/>。全国国民を代表して「政権」を行使するのが国民大会であり、総統・副総統の選挙・罷免や憲法改正などを担う(第25条・第27条)。そのもとに、元首として規定されている「総統」(第35条)、および行政権を担う「行政院」、立法権を担う「立法院」、司法権を担う「司法院」、公務員や専門家の資格についての試験や任用を担う「考試院」、監察を行う「監察院」という五権を担う「五院」が置かれている<ref name="takamizawa50"/>。国民大会が置かれている点では典型的な権力分立ではないが、国民大会の権限は限られているので、基本的には権力分立型の憲法といえる<ref name="takamizawa50"/>。権力分立、国民主権、男女平等を含む人権規定等から見れば、20世紀型の憲法ということができる<ref name="takamizawa51">高見澤(2010年)51ページ</ref>。
 
== 出典 ==
19 ⟶ 22行目:
 
== 参考文献 ==
* 鮎京正訓編『アジア法ガイドブック』(2009年)名古屋大学出版会(執筆担当;簡玉聰)
* 後藤武秀『台湾法の歴史と思想』(2009年)法律文化社
* 高見澤麿・鈴木賢『叢書中国的問題群3中国にとって法とは何か』(2010年)岩波書店(第4章;執筆担当;高見澤麿)
* 鮎京正訓編『アジア法ガイドブック』(2009年)名古屋大学出版会(執筆担当;簡玉聰)
* 遠藤誠・紀鈞涵『図解入門ビジネス台湾ビジネス法務の基本がよ~くわかる本』(2014年)秀和システム* 國谷知史・奥田進一・長友昭編集『確認中国法250WADS』(2011年)成文堂、「中華民国憲法」の項(執筆担当;松井直之)
 
== 関連項目 ==
*[[台湾法]]
*[[中華人民共和国憲法]]