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== TRISTAN実験 ==
KEKBの前身となる加速器が、1986年に完成した'''TRISTAN'''(トリスタン。<small>'''T'''ransposable '''R'''ing '''I'''ntersecting '''St'''orage '''A'''ccelerator in '''N'''ippon (日本における粒子の貯蔵と加速を行う置換可能な交差型リング) を意味する名称の略称</small><ref name=saisin14>矢沢潔構成『最新宇宙論 われわれはビッグバンの瞬間に到達できるか』[[学研ホールディングス|学習研究社]]〈最新科学論シリーズ2〉、1988年、14頁。楽劇『[[トリスタンとイゾルデ (楽劇)|トリスタンとイゾルデ]]』に登場する[[トリスタン]]に共通する名であると説明される。</ref><ref group="注釈">[http://nucl.phys.s.u-tokyo.ac.jp/torii/physics/expname.html 鳥居のホームページ「物理学実験や加速器の名称」]によると、当初リングを3本設置する予定で「'''T'''hree '''R'''ing '''I'''ntersecting '''St'''orage '''A'''ccerelator in '''N'''ippon(TRISTAN)」という名称がつけられ、『トリスタンとイゾルデ』に関連するため研究者達に気に入られたことから、リングが2本に変更された後も引き続きTRISTANという略称で呼ばれる名称に変えたという。</ref>)である。[[文部省]]高エネルギー物理学研究所<ref group="注釈">この頃から'''KEK'''の愛称で知られる。</ref>が5年の期間と870億円の費用<ref name=saisin13>『最新宇宙論』13頁。</ref>をかけて開発した、円形衝突加速器である([http://www.kek.jp/hyouka/TRISTANreport/images/img24.gif 2.1.2トリスタン加速器の概要 Figure 1]<ref name="tristan_report">[http://www.kek.jp/hyouka/TRISTANreport/index.html トリスタン計画報告書]文部省・高エネルギー物理学研究所(1996年)</ref>)。円形とは言ってもいえ、電子・陽電子衝突実験を行うため途中に直線加速器を接続し、緩やかな屈曲部で繋いだ[[八角形]]型の[[トンネル]]からなる。陽電子発生用加速器と電子・陽電子線形加速器の長さは400[[メートル]]、入射蓄積リングは約370メートル、主リングの周長は3[[キロメートル|キロ]]で、地下11メートルの深さのトンネル内にある<ref name=saisin15>『最新宇宙論』15頁。</ref>。直線加速器の途中には、実験装置を収納する施設が設置されており、それぞれ、日本の地名にちなんだ名前がつけられている。筑波・大穂・富士・日光の四箇所である<ref group="注釈">概ね、[[筑波山]](北東)、[[つくば市]]大穂地区(南東)、[[富士山]](南西)、[[日光市|日光]](北西)の方向と対応している。</ref>。主リング内を電子は右回り、陽電子は左回りに飛び回転し、これらの実験室で衝突する<ref name=saisin15 />。なお、八角形型になっているのは、電子・陽電子が[[シンクロトロン放射]]光でエネルギーを損失する屈曲部の曲率をなるたけ少しでも減らすためである。
 
TRISTAN実験は、[[トップクォーク|Topクォーク]]の発見と標準理論の検証を最大の目的として始まった。TRISTAN実験では、最先端技術が多数投入された大型プロジェクトとして注目を受けていた。電子を加速するための高周波空洞は、TRISTANのために開発した5連型超伝導加速器空洞<ref name=saisin13 />投入され、実験を行った。また、現在のBell実験装置の雛形になった、トパーズ(TOPAZ)検出器<ref group="注釈">ほかにビーナス(VENUS)、エミー(AMY)、シップ(SHIP)の計4設備がある。</ref>なども開発されて、実験に用いられるなど、のちのBelle実験にもその経験が生かされている。TRISTANでの研究成果は[[Zボソン|''Ζ'']]<sup>0</sup>の質量決定や[[フェルミオン]]の世代数決定に対する寄与等である<ref>[http://www.kek.jp/hyouka/TRISTANreport/3_2.html 3.2 標準理論の精密検証とその予言する新しい現象の発見]、トリスタン計画報告書</ref>。
 
この実験で用いられた装置群は、改良を行った後、以下の節に記載するKEKB加速器へ殆ど全てが転用されることになった。改良を行ったポイントは、高調波減衰型超伝導加速器空洞8台を導入、クラブ空洞によるバンチ衝突角の適正化によるルミノシティの向上や、非対称型になるため、トンネルを再活用して、そこに新規の加速器を設置したことなどが挙げられる。
 
また、衝突点における実験装置も複合型実験装置にすることで、簡素化を行ったものである。これらと同時に、直線加速器の大強度化を行い、最終的にKEKB実験へと引き継ぐ事になった。
 
== KEKB加速器 ==