「弾性率」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Tom Toyosaki (会話 | 投稿記録)
出典はそれなりに示せたと思いますので{{出典の明記}}を削除。座標変換について追記。独立な成分が21個まで減らせることを追記。
7行目:
== 概要 ==
弾性率は[[弾性変形]]における[[応力]]と[[ひずみ]]の間の比例定数(応力/ひずみ)として定義される。ひずみは無次元であるので、弾性率は応力と同じ[[量の次元|次元]]を持ち、[[国際単位系|SI]]における単位は[[パスカル]](記号: Pa)、[[ニュートン]]毎[[平方メートル]](記号: N/m<sup>2</sup>)が用いられる。また、弾性率の逆数を'''弾性コンプライアンス定数'''や単に'''弾性コンプライアンス'''という。単位は1/Pa、m<sup>2</sup>/N。
 
2階のテンソル量である応力<math>\boldsymbol{\sigma}</math>とひずみ<math>\boldsymbol{\epsilon}</math>に対して、弾性率<math>\boldsymbol{D}</math>は4階の[[テンソル]]量で表すことができる<ref name = "構成方程式の基本知識"/>。
:<math>\boldsymbol{\sigma}= \boldsymbol{D} \boldsymbol{\epsilon}</math>
:<math>\sigma_{ij}= D_{ijkl} \epsilon_{kl}\quad(i,j,k,l =1\sim3)</math>
応力テンソルとひずみテンソルの対称性により、<math>\boldsymbol{\sigma}</math>と<math>\boldsymbol{\epsilon}</math>はそれぞれ独立な6成分を持つので、弾性率テンソル<math>\boldsymbol{D}</math>の独立な成分は36(= 6 x 6)個となる。材料が等方均質弾性材料とすると独立な成分は2個まで絞られる<ref name="構成方程式の基本知識">{{Cite web |author=吉川弘道 |url= http://c-pc8.civil.musashi-tech.ac.jp/RC/ciber/conc/conc_pdf/kouseisoku.pdf |title= 構成方程式の基本知識―考え方と定式化― |format=PDF |accessdate=2013-08-04}}</ref>。
 
弾性率の種類としては以下のようなものがある。
*''E'' :引張力、圧縮力などの単軸応力に対する変形の場合の[[ヤング率]](縦弾性係数):<math>E</math>
*''G'' :[[せん断力]]に対する変形の場合の[[剛性率]](ずり弾性率・横弾性係数・せん断弾性係数・ラメの第二定数):<math>G</math>
*''K'' :[[静水圧]](直角3方向の力)に対する変形の場合の[[体積弾性率]] :<math>K</math>
*&lambda;:[[ラメ定数|ラメの第一定数]](ラメの弾性係数):<math>\lambda</math>
この他に、無次元数の[[ポアソン比]]も存在する。
 
== テンソル量としての弾性率の相関関係 ==
2階のテンソル量である応力<math>\boldsymbol{\{math|'''&sigma;'''}}</math>とひずみ<math>\boldsymbol{\{math|'''&epsilon;'''}}</math>に対して、弾性率<math>\boldsymbol{{math|'''''D'''''}}</math>は4階の[[テンソル]]量で表すことができる<ref name = "構成方程式の基本知識"/>。
等方均質弾性体では、ヤング率<math>E</math>、ポアソン比<math>\nu</math>、体積弾性率<math>K</math>、剛性率<math>G</math>、ラメの第一定数<math>\lambda</math>の五つの弾性率はそれぞれ、二つを用いて残りの三つを表すことができる。その関係を下に示す。
:<math>\boldsymbol{\sigma} = \boldsymbol{D} \boldsymbol{\epsilon},</math>
:<math>\sigma_{ij}= D_{ijkl} \epsilon_{kl}\quad(i,j,k,l =1\sim3)</math><ref>[[総和規約]]を用いており、[[総和|総和記号]]が省略されていることに注意。</ref>
 
弾性率はテンソルであるため、[[材料の構成式#物質客観性の原理|物質客観性の原理]]により座標変換において{{math|&sigma;{{=}}''D''&epsilon;}}の関係を保たねばならない。座標系{{math|O-''x''<sub>1</sub>''x''<sub>2</sub>''x''<sub>3</sub>}}から{{math|O-''x'' '<sub>1</sub>}}{{math|''x'' '<sub>2</sub>}}{{math|''x'' '<sub>3</sub>}}へ変換するとき、弾性率テンソルの成分は
:<math>D'_{ijmn}=D_{pqrs} l_{ip} l_{jq} l_{mr} l_{ns}</math>
と変換される<ref name=nakasone/>。ここで{{math|''l<sub>ip</sub>''}}は、{{math|''x<sub>i</sub>''}}軸と{{math|''x'<sub>p</sub>''}}軸の[[方向余弦]]である。
 
弾性率テンソルは81(= 3<sup>4</sup>)個の成分を持つが、応力テンソル{{math|'''&sigma;'''}}とひずみテンソル{{math|'''&epsilon;'''}}は対称性、すなわち
:<math>\sigma_{ij}= D_\sigma_{ijklji},\quad \epsilon_{klij}\quad(i,j,k,l =1\sim3)epsilon_{ji}</math>
によりそれぞれ独立な6成分を持つので、弾性率テンソル{{math|'''''D'''''}}も
:<math>D_{ijkl}=D_{jilk}</math>
の性質を持ち、独立な成分は36(= 6<sup>2</sup>)個となる。さらに単位体積あたりの[[弾性ひずみエネルギー]]
:<math>dW\equiv \sigma_{ij}\,d\epsilon_{ij}</math>
を用いて弾性率が
:<math>D_{ijkl}=\frac{\partial^2 W}{\partial\epsilon_{ij} \partial\epsilon_{kl}}</math>
と表せることから
:<math>D_{ijkl}=D_{klij}</math>
が成り立つため、最終的に弾性率テンソル{{math|'''''D'''''}}の独立な成分は21(= 6&times;(6+1)/2)個となる<ref name=nakasone>{{cite|和書|editor=中曽根祐司|title=異方性材料の弾性論|publisher=コロナ社|year=2014|isbn=978-4-339-04633-5|pages=80-83}}</ref>。
 
== 等方均質材料の弾性率の相関関係 ==
材料が等方均質弾性材料とすると、弾性率テンソル'''''D''''' の独立な成分は2個まで絞られる<ref name="構成方程式の基本知識">{{Cite web |author=吉川弘道 |url= http://c-pc8.civil.musashi-tech.ac.jp/RC/ciber/conc/conc_pdf/kouseisoku.pdf |title= 構成方程式の基本知識―考え方と定式化― |format=PDF |accessdate=2013-08-04}}</ref>。この場合、ヤング率''E'' 、ポアソン比&nu;、体積弾性率''K'' 、剛性率''G'' 、ラメの第一定数&lambda;の5つの弾性率はそれぞれ、2つを用いて残りの3つを表すことができる。その関係を下に示す。
 
:ここで、<math>\alpha=\sqrt{E^{2}+9\lambda^{2}+2E\lambda}</math>とする。
99 ⟶ 115行目:
== 複素弾性率 ==
{{main|粘弾性#複素弾性率}}
*[[{{see also|動的弾性率]]}}
[[粘弾性体]]に対しては、弾性率は[[複素数]]で表される。複素弾性率の実部は貯蔵弾性率、虚部は損失弾性率と呼ばれる。
 
== ざまざまな物質の弾性率の例 ==
{{節stub}}
具体的な材料についての弾性率の値を示す。
 
== 脚注 ==
109 ⟶ 130行目:
*[[剛性]]
*[[フックの法則]]
*[[動的弾性率]]
*[[ヤング率]]
 
 
{{DEFAULTSORT:たんせいりつ}}