「日本のダムの歴史」の版間の差分

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[[2000年]](平成12年)に[[名古屋市]]を中心に大きな浸水被害をもたらした[[東海豪雨]]を皮切りに、毎年のように台風が日本に上陸。また梅雨前線末期の集中豪雨などにより日本各地で洪水被害が相次いだ。特に[[2004年]](平成16年)は[[1953年]](昭和28年)に匹敵する「水害の当たり年」となった。この年だけでも9個の台風が日本に上陸し、梅雨前線や[[秋雨前線]]などを刺激して大雨を各地に降らせた<ref name="kishocho2"/>。7月には[[平成16年7月新潟・福島豪雨]]と[[平成16年7月福井豪雨]]が[[北陸地方]]を襲い、[[信濃川]]流域や[[足羽川]]などで[[堤防]]が決壊。また[[四国地方]]には台風10号と11号が連続で上陸し、[[長安口ダム#細川内ダム|細川内ダム]]中止後の[[那賀川]]流域に大雨を降らせ、[[徳島県]][[那賀郡]][[上那賀町]]海川では一日降水量1,317ミリという日本新記録となった。9月の[[平成16年台風第21号|台風21号]]は[[三重県]][[尾鷲市]]などで時間雨量が100ミリを超えて[[宮川 (三重県)|宮川]]流域に大きな被害を与え、10月には[[平成16年台風第23号|台風23号]]が[[近畿地方]]を襲い、[[円山川]]流域を中心に多数の死者を出す大惨事をもたらした。[[2006年]](平成18年)の[[平成18年7月豪雨]]は[[鹿児島県]]の[[川内川]]流域で総降水量が1,000ミリを超える記録的な集中豪雨をもたらし、[[2011年]](平成23年)の[[平成23年台風第12号|台風12号]](紀伊半島豪雨)は[[熊野川]]流域を中心に[[紀州大水害]]以来の大きな被害を与えた。また[[九州地方]]北部は[[2009年]](平成21年)7月の[[平成21年7月中国・九州北部豪雨]]と、[[2012年]](平成24年)の[[平成24年7月九州北部豪雨]]という豪雨災害が発生し、大きな被害を受けている<ref name="kishocho2"/>。
 
こうした災害に対して、批判の渦中にあったダムが災害防止に威力を発揮した例がある。[[福井県]]の[[九頭竜川]]水系[[真名川]]に建設された[[真名川ダム]]は、福井豪雨の際に[[洪水調節]]能力を発揮して真名川流域の浸水被害をほぼ皆無に抑えた。甚大な被害を受けた足羽川流域と同程度の豪雨が降ったにも関わらず対照的な結果を出し、建設が凍結されていた[[足羽川ダム]](部子川)の建設が[[福井市]]など流域自治体の要望により再開された<ref>[http://www.kkr.mlit.go.jp/kuzuryu/ 国土交通省近畿地方整備局九頭竜川ダム統合管理事務所『平成16年7月福井豪雨におけるダムの治水効果』]2015年8月25日閲覧</ref><ref>[http://www.kkr.mlit.go.jp/asuwa/about/index05.php 国土交通省近畿地方整備局足羽川ダム工事事務所『事業の経緯』]2015年8月25日閲覧</ref>。台風23号では[[由良川]]の洪水で孤立した[[観光バス]]の乗客を救うため[[大野ダム (京都府)|大野ダム]](由良川)が際どい状況下で[[放流 (ダム)|放流]]を調節し乗客の命を救った<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=1402 『ダム便覧』大野ダム]2015年8月25日閲覧</ref>。平成18年7月豪雨では[[長野県]]を流れる[[犀川 (長野県)|犀川]]の氾濫を防ぐため国土交通省の[[大町ダム]]([[高瀬川 (長野県)|高瀬川]])に加えて、[[東京電力]]の[[奈川渡ダム|奈川渡]]・[[水殿ダム|水殿]]・[[稲核ダム|稲核]](犀川)および[[高瀬ダム|高瀬]]・[[七倉ダム|七倉]](高瀬川)の発電用5ダムが連携して洪水を貯留し犀川の氾濫を防いだ<ref name="omachi">[http://www.hrr.mlit.go.jp/chikuma/jimusho/dam/damsaihen.pdf 国土交通省北陸地方整備局『大町ダム等再編事業』]2015年8月25日閲覧</ref>。他方記録的な豪雨により治水計画で定めた[[治水|計画高水流量]]を大幅に超過する洪水が発生し、[[ただし書き操作]]による放流も増加して下流の洪水を完全に抑制出来なかった例もある。[[鶴田ダム]](川内川)は九州最大の多目的ダムであるが平成18年7月豪雨は川内川上流に平均1,000ミリという未曽有の豪雨を降らせ、ダムは可能な限り洪水を貯留したが計画を大幅に超過する洪水により治水機能を喪失ただ書き操作を余儀なくされ、結果的に下流浸水被害が生じを完全には防止できなかった。ダムの治水機能強化を求める流域住民からの要請もあり望が強く出たことから、国土交通省は住民との意見交換会を経て治水能力の強化を図る[[鶴田ダム#再開発|鶴田ダム再開発事業]]を[[2007年]](平成19年)より実施している<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=3597 『ダム便覧』鶴田ダム(再)]2015年8月25日閲覧</ref><ref>[http://www.qsr.mlit.go.jp/turuta/d4_kouzuikentou/index.html 国土交通省九州地方整備局鶴田ダム管理所『洪水調節に関する検討会』]2015年8月25日閲覧</ref>。また[[新宮川]](熊野川)水系では2011年の台風12号による被害を受け[[池原ダム]]([[北山川]])や[[風屋ダム]](熊野川)など発電用ダムの洪水時運用改善要求が流域自治体で高まったため、「熊野川の総合的な治水対策協議会」を設置しダムの運用改善などを検討している<ref>[http://www.kkr.mlit.go.jp/river/kyougikai/toppage.htm 国土交通省近畿地方整備局『熊野川の総合的な治水対策協議会』]2015年8月25日閲覧</ref>。
 
2000年代はこのように大きな水害が相次いだが、治水事業が未発達だった1950年代に比べ人的被害は少なくなっている。例えば死者・行方不明者1,001名を数えた[[昭和28年西日本水害]]と同程度の降水量だった平成24年7月九州北部豪雨<ref name="kishocho2"/>は西日本水害を教訓とした[[筑後川]]・[[矢部川]]などの治水整備により堤防決壊は生じても人的・浸水被害は軽減されており、矢部川では[[日向神ダム]]のある矢部川本流上流部より[[星野川]]・笠原川といったダムのない河川が合流した後の被害が大きい<ref>[http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/169701_51071010_misc.pdf 福岡県『平成24年7月九州北部豪雨等災害箇所図』]2015年8月25日閲覧</ref>。また[[利根川]]や[[北上川]]では上流ダム群を始めとする治水事業整備により多数の人的被害や広範囲の浸水被害を伴う水害は[[カスリーン台風|カスリーン]]・[[アイオン台風]]以降発生していない。ダム事業の有効性が再認識されることで事業に対する批判一辺倒の動きも徐々に修正された。「脱ダム」宣言を発表した田中康夫は平成18年7月豪雨直後の知事選で県政を巡り対立していた反田中派から治水対策の不備を追及され落選、後任の[[村井仁]]長野県知事は「脱ダム」宣言を撤回して浅川ダムなどの事業を再開した<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=1036 『ダム便覧』浅川ダム]2015年8月25日閲覧</ref>。またダム反対派が代替対策として主張した[[森林]]の保水力を高めることで治水を行う「[[緑のダム]]」については[[2001年]](平成13年)に[[日本学術会議]]が答申した『地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について』で森林涵養の有効性は認めつつも、いわゆる「緑のダム」として豪雨災害を緩和する機能には限界があると指摘しており<ref>[http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/shimon-18-1.pdf 日本学術会議『地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について(答申)』pp.91-93]2015年8月25日閲覧</ref>、[[2003年]](平成15年)の[[平成15年台風第10号|台風10号]](日高豪雨)における[[沙流川]]源流[[原生林]]の流失と[[二風谷ダム]](沙流川)の流木捕捉による被害軽減、[[2013年]](平成25年)の[[平成25年台風第26号|台風26号]]による[[伊豆大島]]土砂災害・[[2014年]](平成26年)の集中豪雨による[[広島土砂災害]]などの[[土砂災害]]がそれを証明している<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=40 『ダム便覧』洪水軽減に役立った二風谷ダム]2015年8月25日閲覧</ref>。
 
一方、2000年代は[[地震]]によるダムの被害が多い時期でもあった。2004年に発生した[[新潟県中越地震]]では震源地に近い[[妙見堰]](信濃川)の門柱や管理所建屋に被害が生じ<ref>[http://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/eq01/pdf/1706.pdf 国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所『新潟県中越地震における信濃川河川事務所管内の被害状況と復旧方針』]2015年8月25日閲覧</ref>、[[2008年]](平成20年)に発生した[[岩手・宮城内陸地震]]では[[宮城県]]の[[荒砥沢ダム]]([[二迫川]])の貯水池である藍染湖で大規模な山崩れが発生し大量の土砂が流入<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0309 『ダム便覧』荒砥沢ダム]2015年8月25日閲覧</ref>したほか[[石淵ダム]]([[胆沢川]])では遮水壁が損傷した<ref>[http://www.thr.mlit.go.jp/bumon/b00097/k00360/happyoukai/H21/ronbun/1-3.pdf 『2008年岩手・宮城内陸地震によるダムの被害調査報告』PDF]2015年8月25日閲覧</ref>。そして未曽有の被害を東日本にもたらした2011年の[[東日本大震災]]では、[[福島県]]の[[藤沼ダム]](江花川)が地震により決壊して8名が死亡<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0483 『ダム便覧』藤沼ダム(元)]2015年8月25日閲覧</ref>し1953年の[[大正池 (井手町)|大正池]]決壊事故以来のダム決壊事故となった。また沿岸を襲った大津波が河川を遡上したことで[[北上大堰]](北上川)などが津波の被害を受けている<ref>[http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/kakouzeki_suimon/arikata/arikata110930.pdf 東北地方太平洋沖地震を踏まえた河口堰・水門等技術検討委員会『東日本大震災を踏まえた堰・水門等の設計、操作のあり方について』2011年]2015年8月25日閲覧</ref>。ただし[[重力式コンクリートダム]]については[[1995年]](平成7年)の[[阪神・淡路大震災]]の激震を耐え抜いた[[布引五本松ダム]]([[生田川]])のように地震による致命的な被害は報告されておらず、[[関東大震災]]を教訓に[[1925年]](大正14年)に[[物部長穂]]が『貯水用重力堰堤の特性並びに其の合理的設計方法』という論文で発表した重力ダムの耐震理論が活かされている<ref>『湖水を拓く』pp.102-103</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=3330 『ダム便覧』布引五本松ダム(再)]2015年8月25日閲覧</ref>。
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=== 水余りと水不足 ===
[[File:姿を現した旧大川村役場2005年8月20日.jpg|thumb|200px|2005年の平成17年渇水で[[早明浦ダム]]([[吉野川]])湖底より姿を現した旧[[大川村]]役場。]]
高度経済成長期に需要が急増した[[上水道]]・[[工業用水道]]は、深刻な[[水不足]]や[[地盤沈下]]などの問題を招いた。紆余曲折の末に誕生した水資源開発公団は利根川・[[荒川 (関東)|荒川]]・[[豊川]]・[[木曽川]]・[[淀川]]・[[吉野川]]・筑後川の7水系で水資源開発のためのダム事業や[[愛知用水]]・[[豊川用水]]・[[香川用水]]などの[[用水路]]整備を行い、大都市圏や[[四大工業地帯]]などへの水道需要を満たした。また直轄・補助の別なく河川総合開発事業では水道供給を目的にした多目的ダム建設が盛んに行われた。しかし高度経済成長が終わり経済が安定成長に向かい、産業構造が変化するに連れて工業用水道の需要は徐々に下落。さらに[[円高]]などにより企業が工場を日本国外に移転する傾向が強まり、需要はさらに低迷した。また上水道も人口増加が鈍化したことや[[節水]]技術・意識の向上でダム計画時に予想された水需要との齟齬が生じた。このため水道供給目的を有するダムの中には受益地から水利権を返上されるなど使い道が宙に浮く、いわゆる「'''水余り'''」の状況に陥った例がある。一例として[[富山県]]の[[熊野川ダム]]([[熊野川 (富山県)|熊野川]])は[[富山市]]などへの上水道供給が目的にあったが、富山市などが上水道水利権を返上したため上水道目的が喪失した<ref>『日本の多目的ダム補助編 1990年版』pp.300-301</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0865 『ダム便覧』熊野川ダム]2015年8月26日閲覧</ref>。「水余り」に対してダム反対派はダム事業を否定する一つの根拠となっており<ref>[http://suigenren.jp/damproblem/probrem3/ 水源開発問題全国連絡会『水需要は余り水余り時代に』]2015年8月26日閲覧</ref>、戸倉ダムなどのように上水道事業に参加した自治体が撤退して事業が中止される例も多くなった<ref name="tokura"/>。
 
一方、元来降水量が少ない地域では水資源施設の整備が行われてもなお、深刻な水不足に悩まされる地域が存在している。[[1982年]](昭和57年)から[[2002年]](平成14年)までの20年間に発生した渇水において、特に回数の多い地域として愛知用水を水源とする[[愛知県]][[知多半島]](15回)、豊川用水を水源とする[[豊橋市]]・[[豊川市]]・[[蒲郡市]]など愛知県東部(14回)、香川用水を水源とする[[香川県]][[高松市]](11回)、木曽川用水を水源とする[[名古屋市]]・[[一宮市]](8回)などがある。何れも慢性的な水不足に悩まされた地域であり水資源整備が重点的に行われたが、地域によっては半年以上取水制限が継続された大渇水もある<ref name="kassui">『河川便覧 2004年版』pp.66-67</ref>。[[1994年]](平成6年)の'''[[平成6年渇水]]'''ではこうした地域で深刻な渇水が発生。愛知県では愛知用水の水源である[[牧尾ダム|牧尾]](王滝川)・[[岩屋ダム|岩屋]]([[馬瀬川]])・[[阿木川ダム|阿木川]]([[阿木川]])の3ダムが枯渇、豊川用水でも水源の[[宇連ダム]]([[宇連川]])が枯渇して名古屋市では159日間の厳しい取水制限が行われ一日19時間[[断水]]などが実施されるなど、渇水による[[東海地方]]の農工業への被害額は推定約512億円という莫大な被害を生じた<ref name="kassui"/><ref>[http://www.mlit.go.jp/common/000114934.pdf 国土交通省『木曽川水系の利水の現状』]2015年8月26日閲覧</ref>。また[[福岡市]]では330日間、[[愛媛県]][[松山市]]では312日間という長期間の取水制限に見舞われたほか、[[東京都]]も[[利根川水系8ダム|利根川上流ダム群]]の貯水量低下により60日間、最大で30パーセントの取水制限が実施されるなど[[関東地方]]から九州地方の広い範囲で深刻な水不足が生じている<ref name="kassui"/>。
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[[File:Yanba Dam site 2012.jpg|200px|thumb|1952年の計画発表から60年以上の歳月を経て本体工事に着手する[[八ッ場ダム]]建設予定地([[吾妻川]]。2012年撮影)]]
{{ダム開発}}
[[616年]]の[[狭山池 (大阪府)|狭山池]]([[西除川]]・[[東除川]])建設以来、日本におけるダム事業の歴史は1,400年の長きに及んでいる。明治時代以降日本ではコンクリートダムの建設が開始され、水道事業・電気事業の勃興と共にダム技術が発展した。[[1926年]](大正15年/昭和元年)の物部長穂による論文以降、日本では河川総合開発事業に基づく多目的ダム建設が戦前・戦後を通じ盛んに実施されて、治水や利水に貢献した。しかし盛んにダム建設が行われたことで、日本にはダムを建設できる適地が確実に減少している。
 
[[1960年代]]から[[1970年代]]に掛けて計画され、強い反対運動によって事業が長期化したダム事業は2000年代に入って続々完成した。主なものとして2000年に宮ヶ瀬ダム、2004年に[[苫田ダム]]([[吉井川]])、2007年に[[滝沢ダム]]([[中津川]])と日本最大の多目的ダム・[[徳山ダム]]([[揖斐川]])、2012年に[[森吉山ダム]](小又川)と[[嘉瀬川ダム]]([[嘉瀬川]])、2013年には[[胆沢ダム]]([[胆沢川]])と完成まで51年の歳月を費やした[[大滝ダム]]([[紀の川]])、[[2015年]](平成27年)には北海道最大の多目的ダム・[[大夕張ダム#夕張シューパロダム|夕張シューパロダム]]([[夕張川]])が完成し運用が開始されている<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=1909 『ダム便覧』苫田ダム]2015年8月28日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0395 『ダム便覧』森吉山ダム]2015年8月28日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=2553 『ダム便覧』嘉瀬川ダム]2015年8月28日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/TableAllItiran.cgi?zi=jyuni&kei=(ALL)&jy=kou 『ダム便覧』順位表(全て)堤高順]2015年8月28日閲覧</ref>。2015年以降完成が予定されているダムとしては[[1952年]](昭和27年)の計画発表以来地元の強烈な反対運動や公共事業見直しの象徴として槍玉に挙げられ事業が遅延に次ぐ遅延を重ねた'''八ッ場ダム'''が[[2019年]](平成31年)完成に向け本体工事に着手しているのを始め<ref>[http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/kisya/h21/20090422.pdf 国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所『平成21年度事業の概要』]2015年8月28日閲覧</ref>、津軽ダム(2016年)、[[大分川ダム]]([[七瀬川 (大分県)|七瀬川]])・五ヶ山ダム([[那珂川 (九州)|那珂川]]。以上2017年)、[[二風谷ダム#平取ダム|平取ダム]]([[額平川]]。2019年)などがあるが、[[設楽ダム]]([[豊川]])など完成年代が定まっていないダム事業もある<ref name="minaoshi"/>。ダム事業再検証は続いており、[[1969年]](昭和44年)に計画が発表された[[南摩ダム]](南摩川)や大戸川・丹生ダムなどが事業検証中である<ref name="minaoshi"/>。
 
一般財団法人日本ダム協会調べによると2014年3月31日時点で2,659ダム事業が完成し、2014年以降に完成が予定されているダムは96ダム事業でありを合わせると'''2,755のダムが日本には存在する'''<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/Syuukei.cgi?sy=keikisinsou 『ダム便覧』型式別既設新設別集計表(総括表)]2015年89282日閲覧</ref>。完成予定96ダム事業の内訳を[[ダム#型式|型式]]別で見ると[[重力式コンクリートダム]]が67ダム、[[ロックフィルダム]]が16ダム、[[台形CSGダム]]と[[アースダム]]が各5ダムなどとなっているがその他の型式は日本では計画されていない<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/Syuukei.cgi?sy=keikisin 『ダム便覧』型式別既設新設別集計表]2015年8月28日閲覧</ref>。[[アーチ式コンクリートダム]]は2001年に完成した[[温井ダム]]([[温井ダム#滝山川|滝山川]])と奥三面ダム([[三面川]])が<ref group="注">ダム便覧集計表の2ダムは天ヶ瀬ダム再開発と中止を前提に周辺整備を実施している川辺川ダムである。</ref>、[[重力式アーチダム]]は1974年に完成した[[阿武川ダム]]([[阿武川]])が、[[中空重力式コンクリートダム]]は[[1973年]](昭和48年)に完成した[[内の倉ダム]](内の倉川)が、[[コンバインダム|複合ダム]]は2012年に完成した外山ダム(羽茂川)がそれぞれ日本最後の完成例となっている<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/TableAllItiran.cgi?zi=jyuni&kei=GA&jy=kou 『ダム便覧』順位表(重力式アーチダム)]2015年8月28日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/TableAllItiran.cgi?zi=jyuni&kei=HG&jy=kou 『ダム便覧』順位表(中空重力式コンクリートダム]2015年8月28日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/TableAllItiran.cgi?zi=jyuni&kei=GF&jy=kou 『ダム便覧』順位表(複合ダム)]2015年8月28日閲覧</ref>。[[都道府県]]別で見ても[[関東地方]]や[[近畿地方]]を中心に新規のダム事業が計画されていない地域がある<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/Syuukei.cgi?sy=kendan 『ダム便覧』都道府県別段階別集計表]2015年8月28日閲覧</ref>。また大正時代以降日本のダム事業をリードし黒部ダムや[[奥只見ダム]]([[只見川]])・[[佐久間ダム]]([[天竜川]])など多くの大規模ダムが建設された[[水力発電]]事業も、環境負荷の少ない[[マイクロ水力発電]]や[[小水力発電]]といったダムを必要としない水力発電所の建設が主流となり、ダム建設を伴う水力発電所は[[北海道電力]]が2014年に1号機の運転を開始した京極発電所の下部調整池である京極ダム(ペーペナイ川)以降新規の発電用ダム計画がない<ref>[http://j-water.org/about/index.html 全国小水力利用推進協議会『小水力発電とは』]2015年8月28日閲覧</ref><ref>[http://www.hepco.co.jp/ato_env_ene/energy/water_power/kyogoku_ps/summary.html 北海道電力『京極発電所の概要』]2015年8月28日閲覧</ref>。[[鴨川ダム]](鴨川)建設に始まる[[農林水産省直轄ダム]]事業も、2017年完成予定の市野新田ダム(石橋川)を以って新規のダム建設が終了する<ref>[http://cmed.sakura.ne.jp/sekou2012/ichinoshinden.html ダム工事総括管理技術者会『市野新田ダム』]2015年8月28日閲覧</ref>。
 
日本のダム事業は、高さ100メートルを超えるダム計画も幾つか存在するものの、1950年代から1960年代に掛けて見られた大ダム建設の時代が再び到来することはほぼ皆無である。ただし既存のダムを強化させるダム再開発事業については日本各地で施工・計画されており、[[丸山ダム#新丸山ダム|新丸山ダム]](木曽川)や[[桂沢ダム#新桂沢ダム|新桂沢ダム]](幾春別川)など大規模な人造湖を形成する再開発事業や、天ヶ瀬ダム・鶴田ダムなど洪水吐きを新設・改良して治水能力を強化する事業、さらには大町ダム等再編事業のように大町ダムの容量変更と発電専用ダムである高瀬ダム・七倉ダムに洪水調節目的を追加して多目的ダム化する再開発事業が計画されるなど、既存ダムのリニューアルやメンテナンスを軸にした事業が増加している<ref name="omachi"/><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/Saikaihatu.cgi 『ダム便覧』再開発一覧]2015年8月28日閲覧</ref>。