「護衛空母」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
編集の要約なし
1行目:
{{出典の明記|date=2012年10月}}
[[File:Cve-18a.jpg|thumb|250px|ボーグ級護空母]]
'''護空母'''('''ごえいそうくうぼ'''、Escort carrier)は、[[第二次世界大戦]]で使用された小型・低速の[[航空母艦]]である。主に[[護送船団|船団護]]の目的に使われた。大きさは長さで正規空母の約半分、排水量で1/3であった。低速で武装も貧弱で搭載できる航空機の数も少なかったが、ブロック工法、電気溶接などの技術を採用し、短期間で安価で大量に建造することが出来た。
 
 
[[軽空母]]多く、排水量、搭載可能機数等の共通点を持つが、軽空母の持つ艦隊に随伴できる高速性を持つ、艦体や飛行甲板の装甲等ので護衛空母と異なる。
__TOC__
<br style="clear:both"/>
9 ⟶ 10行目:
== 概要 ==
=== 誕生 ===
第二次世界大戦において、[[ドイツ海軍 (国防軍)|ドイツ海軍]]は主に[[Uボート]]を用いて、[[連合国 (第二次世界大戦)|連合国]]に対する[[通商破壊]]活動を行った。開戦以降、[[イギリス]]の商船の被害は甚大であり、一年間で約150万トンの商船を失うこととなった。しかし潜水艦は攻撃に際し、魚雷の射程まで目標に近づき、潜望鏡深度にまで浮上するため、付近を航空機で警戒しておけば、ほとんど攻撃を防ぐことができた。そのため、当初は大型の四発重[[爆撃機]]や[[飛行艇]]で船団護を行ったが、[[大西洋]]の中央に[[対潜哨戒機]]の航続力の限界からいわゆる「空の隙間」ができたため、そこでは船団は空からの護が受けられず被害が続出した。
 
そこで、[[イギリス海軍]]は商船に[[カタパルト]]を装備して使い捨ての旧式[[戦闘機]]による護を行った([[CAMシップ]])。そして、さらに効率的に護する目的で、1940年頃からイギリス海軍と[[アメリカ海軍]](当時のアメリカは[[中立国]])は、この空の隙間を埋めるため、大型の商船を改造し短い[[飛行甲板]]からカタパルトを装備することで航空機を発艦させることのできる小型改装空母を多数建造し、これを対潜哨戒の船団護に用いる案が検討され始めた。商船船体を基にした、小型で安価な空母を多数整備することにより、多くの船団に対し、潜水艦に対して必要な防衛力を備えさせることが目的であった。この案が護空母として結実することとなる。
 
[[太平洋戦争]]開戦の後は、これら護空母は太平洋戦線でも活躍することになり、空母の分類として護空母(escort aircraft carrier)という艦種が誕生した。
 
最初の護空母はイギリス海軍の「[[オーダシティ (護空母)|オーダシティ]]」である。拿捕したドイツ貨客船「ハノーファー」を1941年1月から改装を開始し、1941年6月に就役した。
 
アメリカ海軍初の護空母は「[[ロング・アイランド (護空母)|ロング・アイランド]]」であり、竣工は1941年6月である。
 
===戦歴===
アメリカ海軍では最初、補助的な艦船として扱われていたが、大戦初期に大西洋に展開していたドイツ海軍のUボートを壊滅させるために多数建造された。護空母の任務は、現地での[[潜水艦]]掃討や、パトロール、偵察、輸送船などの護、そして航空機の輸送などである。
 
イギリスの要請により、[[大量生産|大量建造]]され、イギリス海軍に[[レンドリース法|レンドリース]]された。戦争中に100隻以上の護空母が就役したが、現在ではこの種類の艦船は使用されていない。
 
太平洋戦争では、上陸作戦における対地支援任務にもつき、[[ダグラス・マッカーサー]]の[[レイテ島]]上陸作戦に続く、[[レイテ沖海戦]]の中の[[レイテ沖海戦#10月25日 サマール沖海戦|サマール島沖海戦]]にも加わっている。護空母6隻を中心とするクリフトン・スプレイグ少将の艦隊は、[[レイテ湾]]に突入しアメリカ地上部隊の壊滅を意図する[[栗田健男]]長官の主力艦隊と遭遇し、果敢な戦闘を行った。
 
===構造===
[[File:Savo Island CVE-78.jpg|thumb|250px|カサブランカ級護空母]]
アメリカ海軍における護空母の艦種コードは''CVE''である。これは空母を表す''CV''に護(Escort)の頭文字を付加したものであるが、乗員達からは、自嘲的に燃え易い(Combustible)、壊れ易い(Vulnerable)、消耗品(Expendable)の頭文字と揶揄されていた。通称として「[[ジープ]]空母」、「赤ちゃん空母」と呼ばれた。これは簡単な改造で多数の商船改造空母を送り出すことを目的としたアメリカ海軍の方針によるもので、後述する[[大日本帝国海軍|日本海軍]]の護空母建造方針とは対極に位置するものである。
 
典型的な護空母の大きさは、全長150mぐらいであり、同時代の[[正規空母]]の270mに比べて、約半分である。[[排水量]]は正規空母の30,000トンに対して8,000トン程と1/3以下であった。速力も20ノット未満で、カサブランカ級は機関に蒸気タービンではなく蒸気レシプロを用いた。
 
アメリカ・イギリスで運用された護空母は油圧カタパルトを装備しており、短い飛行甲板と低速でありながらも船団護には十分な航空戦力の運用能力があった。
{{-}}
 
== アメリカ海軍の護空母 ==
* [[ロング・アイランド (護空母)|ロング・アイランド]]
* [[チャージャー (護空母)|チャージャー]]
* [[ボーグ級航空母艦|ボーグ級]]
* [[サンガモン級航空母艦|サンガモン級]]
43 ⟶ 44行目:
* [[コメンスメント・ベイ級航空母艦|コメンスメント・ベイ級]]
 
== イギリス海軍の護空母 ==
* [[イギリス海軍の護空母一覧]]
* [[オーダシティ (護空母)|オーダシティ]]
* [[アーチャー (護空母)|アーチャー]]
* アヴェンジャー級
* アクティヴィティ
55 ⟶ 56行目:
** ([[MACシップ]])- 同上。
 
== 日本海軍の護空母 ==
日本海軍では当時の日本にアメリカほどの造艦能力がなかったため、同一艦型で多数が造艦される護送空母は存在しない。民間商船を改造した特設空母を建造した護送空母に近い艦種と言える。これは当初は正規の航空母艦の補助として[[連合艦隊]]が主戦力として使用することを意図したもので、英米の護空母に比べると本格的なものであった。しかし特に優速で船体も大型・甲板長があった[[飛鷹型航空母艦|飛鷹型]]2隻を除くと、速力が遅く小型なことは否めず艦隊行動は行えず、カタパルトも装備していなかったために主力艦上機の運用が不可能で、航空機輸送用にしか向かなかった。日本海軍は特設空母以外にも[[輸送艦|給油艦]]を改造し発艦能力のみを持たせた[[CAMシップ]]類似の[[速吸 (給油艦)|速吸]]を完成させ、後継として同様の形態を持つ[[鷹野型給油艦]]も計画しているが、これらの艦艇も飽くまでも船団護ではなく艦隊随行の給油艦兼正規の航空母艦の補助戦力として位置づけられていたものであった。
 
その後、英米同様の船団護の強化の目的で[[海上特設護衛船団司令部]]に移管された。旧式の[[艦上攻撃機]]などで対潜哨戒を行ったが、[[レーダー]]の不備から、航空機の使用できない夜間に攻撃を受けて失われる例が多かった。同時期に陸軍からは[[戦時標準船|TL型戦標]][[タンカー]]に全通飛行甲板を架装し簡易な護衛空母とする[[特TL型]]建造の提案を受けているが、日本海軍は船団護護衛空母の随行よりも陸上機での[[直掩機|直掩]]がより適切であるとして、当初は建造・改装に難色を示し、終戦までに僅かに2隻が竣工したのみであった。なお、日本海軍は特TL型も前述の艦艇同様に正規の航空母艦の補助として運用する意図を持っており、陸軍よりも優速の船舶の提供を受けている。
・改装に難色を示し、終戦までに僅かに2隻が竣工したのみであった。なお、日本海軍は特TL型も前述の艦艇同様に正規の航空母艦の補助として運用する意図を持っており、陸軍よりも優速の船舶の提供を受けている。
 
既存の特設空母においても、船速20kt級の比較的優速の優良船舶ばかりで構成された'''[[ヒ船団|ヒ74船団]]'''にて[[潜水艦]]の雷撃で喪失した[[雲鷹 (空母)|雲鷹]]が、その戦闘詳報において『空母ガ船団ト同速力ニテ運動スルハ最モ不可ナリ』と明言し、(正規の艦隊と比較した場合)'''低速の輸送船団に空母を同行させる編成を抜本的に見直すよう提言する'''<ref>{{Cite book|和書|author=C08030583700|title=昭和19年4月1日~昭和19年9月17日 軍艦雲鷹戦時日誌(3)}}pp.49-51『七.(一)戦訓』、[http://www.jacar.go.jp/index.html アジア歴史資料センター(公式)](防衛省防衛研究所)</ref>など、連合国とは逆に護衛空母の生産配備が妨げられる方向へと向かって行き、最終的にシーレーンの壊滅により運用する艦載機もそれらを動かす燃料も枯渇し、生き残った僅かな空母も港湾で係留されたまま空襲で喪われる結末を迎えている。
 
* [[大鷹 (空母)|大鷹]]
* [[冲鷹 (空母)|冲鷹]] - 海上護衛船団司令部への移管前に戦没。
* [[雲鷹 (空母)|雲鷹]]
* [[海鷹 (空母)|海鷹]]
70行目:
 
海軍以外の所属として、以下のものも整備された。
* [[あきつ丸]] - [[陸軍特殊船]]([[揚陸艦]])に護衛空母としての機能を追加したもの。
* [[熊野丸]] - 同上。
**([[特TL型]])- 商船を改装し簡易空母としたものであるが、徴用船ではなくMACシップ同様に民間人運用である。海軍は[[しまね丸 (タンカー)|しまね丸]]、陸軍は[[山汐丸]]の配当を受けたが、いずれも本来任務に就く事の無いまま空襲で喪われた。
 
== 脚注 ==
84行目:
 
{{warship-stub}}
{{DEFAULTSORT:こえいそうくうほ}}
[[Category:航空母艦]]