「ポスト・ケインズ派経済学」の版間の差分

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'''ポスト・ケインズ経済学'''(Post-Keynesian economics、ポストケインズ経済学)economics)とは、[[ジョン・メイナード・ケインズ]]が著した『[[雇用・利子および貨幣の一般理論]]』をもとにして、[[ミハウ・カレツキ]]、[[ジョーン・ロビンソン]]、[[ニコラス・カルドア]]、[[ポール・デヴィッドソン]]、[[ピエロ・スラッファ]]などの影響を受けて発展してきた経済思想である。ケインズの伝記を執筆した[[ロバート・スキデルスキー]]は、ポストケインズ派を、ケインズ自身の業績の精神を最もそのまま受け継いでいるとしている。
 
== 構成要素 ==
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ポール・デヴィッドソンは貨幣および貨幣経済の性質を左右する、時間と不確実性を理論の中心に据えることで、ケインズに厳密に従っている。ヨーロッパで発達した[[貨幣サーキット理論]]([[:en:Monetary circuit theory]])は支払い手段としての貨幣の示差的な役割を強調する。ポストケインズ派の経済思想は、アカデミックな主流派経済学者たちからは軽んじられつつも、これらの構成要素は、次世代の経済学者たちによって更なる発展を続けている。
 
[[現代金融理論]]([[:en:Modern monetary theory]])は、チャータリズムや[[機能的財政論]]と同じように、労働市場についてのウィン・ゴドリー、[[ハイマン・ミンスキー]]らによるマクロ経済モデルに影響を受けた、比較的最近の派生理論である。
 
== 新古典派経済学との違い ==
ポストケインズ経済学は新古典派経済学とは根本的に異なる立場をとる異端的経済学派であり、異端派として、以下のような差異を強調する持つ<ref>[[宇仁宏幸]]・[[大野隆]](訳)、[[マルク・ラヴォア]](著)『ポストケインズ派経済学入門』、ナカニシヤ出版、2008年、4-16頁。</ref>
 
=== 異端派共通の特徴 ===
*[[道具立てにこだわるよりも主義]]ではなく[[現実性を重視した主義]]にもとづく認識。ポストケインジアンによって示された仮説は現実と一致するべきである。
*[[方法論的個人主義]]ではなく、有機体論(または全体を扱う論)によるアプローチ。フレデリク・プロン([[:fr:Frédéric Poulon]])は例として、ミクロ経済への接続から自立したマクロ経済の可能性を主張し、単純な「国民会計(comptabilité nationale)」への考察ではなく、マクロ経済学自身の省察による分析領域を提唱している。
*現実性を無視した合理性を追及した仮説(hypothèses de rationalité absolue)の放棄。(限定的な(limitée)合理性の仮説であったとしても)
*新古典派的な[[経済主体]]が「独立的合理性」(rationalité absolue)に基づく判断を行なうと考えるのではなく、個人や企業は「[[限定合理性|手続き的合理性]]」(bounded rationality)によることを前提とする。
*経済における希少性の問題を重要なものとせず、代わりに生産、再生産、成長、流通の問題を分析の中心に置く。
*新古典派が短期における不完全性や[[外部性]]の存在によって政府の介入を支持するものの、基本的に[[市場原理]]を信頼するのに対し、市場メカニズムの存在自体を疑問視する。よって市場は国家による様々な規制や介入がなされなければならない。
*政府による介入は自由主義経済よりも支持される。
*インフレーションはコストプッシュの視点から分析される。貨幣は内生的であり、貨幣価値の賃金は寡占と労働組合によって決定される。資本ストックは均一である。
 
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*[[小野善康 (経済学者)]]
*[[黒瀬一弘]]
 
== 脚注 ==
<references/>
 
== 関連項目 ==