「ジークフリード・キルヒアイス」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
6行目:
 
== 略歴 ==
帝国暦467年1月14日([[道原かつみ]]のコミック版第3巻より)、司法省下級[[官吏]]の息子として、ごく一般的な家庭に生まれ育つ。10歳の時、隣にミューゼル(ラインハルトの旧姓)家が引越してきて、その家の長男である同級生のラインハルトと友人になり、同時にラインハルトの姉で5歳年上の[[アンネローゼ・フォン・グリューネワルト|アンネローゼ]]に初恋を感じる。引っ越して来て間もなく、アンネローゼが[[皇帝]][[銀河英雄伝説の登場人物・銀河帝国#皇帝・皇族|フリードリヒ4世]]の[[後宮]]に召されたことにより精神的なショックを受けるが、自以上にショックを受けたラインハルトから姉を取り戻す為に帝国を[[簒奪]]することを誓ったと唯一打ち明けられ、その実現に全面的に協力することを誓う。以後、ラインハルトと共に帝国軍幼年学校に進み、卒業後は帝国軍に入隊する。
 
それ以来、常にラインハルトの傍らで[[副官]]として仕えた。軍においての立場は単なる部下であり、ラインハルトの主観では友人だったようだが、周囲からはまるで主従関係のようだと思われていた。それを表すかの様に2人きりのときにファーストネームで呼ぶ場合においても「ラインハルト様」と敬称付きで呼んでいた<ref>なお、銀河帝国公用語のモデルと推測される現代[[ドイツ語]]には、日本語の「様」に相当する敬語表現は存在しない。</ref>。ちなみに幼年学校入学以前は呼び捨てでラインハルトを呼んでおり、敬語は使っていない。ラインハルト曰く「いつの間にか“ラインハルト様”と呼ぶようになったとのことである。その一方で、彼に諫言できる唯一の存在でもあった。アンネローゼもキルヒアイスの換言を聞き入れなくなったら終わりだと理解している。帝国暦487年、[[元帥府]]開設直後に[[銀河英雄伝説の戦役#カストロプ動乱|カストロプ動乱]]を平定して[[中将]]に昇進、[[銀河英雄伝説の戦役#同盟軍の帝国領侵攻|同盟軍の帝国領侵攻作戦]]においては、ホーウッド[[提督]]の同盟軍第7艦隊を降服させた後、さらは、[[ヤン・ウェンリー]]の第13艦隊と対峙。ヤンをして「つけ込む隙もない」と感嘆させ、少なからず打撃を与えた。その後の[[銀河英雄伝説の戦役#アムリッツァ星域会戦|アムリッツァ星域会戦]]では[[コルネリアス・ルッツ|ルッツ]]と[[アウグスト・ザムエル・ワーレン|ワーレン]]との共同作戦で大軍を有効に運用し、別働隊を率いて同盟軍が背後に敷設した広大な[[機雷]]原を突破し、戦線を崩壊させて戦いの趨勢を決した。この功績によって上級大将に昇進、宇宙艦隊副司令官に任命されるが、ナンバー2不要論を持つ[[パウル・フォン・オーベルシュタイン|オーベルシュタイン]]は眉をひそめた。
 
翌488年、同盟との[[捕虜]]交換式<ref>同盟内で[[クーデター]]を起こさせるための謀略の一環でもあった。</ref>では、帝国側の代表としてイゼルローン[[要塞]]に出向き、ヤンや[[ユリアン・ミンツ|ユリアン]]らと直接対面している。その後の[[銀河英雄伝説の戦役#リップシュタット戦役|リップシュタット戦役]]では引き続きルッツとワーレンを副将とし、その艦隊を傘下に別働隊を率いて辺境を平定した。また、同戦役中の[[銀河英雄伝説の戦役#キフォイザー星域会戦|キフォイザー星域会戦]]において数で勝る敵の貴族連合軍副盟主であるリッテンハイム[[侯爵]]の艦隊を撃ち破った後、ガルミッシュ要塞を無血占拠して門閥貴族軍に大きな打撃を与えている。漫画版では彼らをしてローエングラム侯がもう1人いるようだと慄然・感嘆せしめた
 
しかし、同戦役の中、敵盟主のブラウンシュヴァイク[[公爵]]が起こした[[虐殺]]事件「[[銀河英雄伝説の用語#ヴェスターラントの虐殺|ヴェスターラントの惨劇]]」への対応がきっかけとなり、ラインハルトとの関係に亀裂が生じることとなる。意固地になったラインハルトは[[参謀]]であるオーベルシュタインからの進言を入れて、キルヒアイスを今後は一臣下として扱おうとし、キルヒアイスだけには今まで許していた公式な場での武器携行を禁じた。そして帝国暦488年9月9日、リップシュタット戦役終結後の捕虜の謁見において、ブラウンシュヴァイク公の部下であるアンスバッハ[[准将]]が主君の仇をとるためラインハルトを襲った時、銃のないキルヒアイスはその身を盾にしてラインハルトを庇い、凶弾に倒れた。没年齢21歳。死後、帝国元帥に昇進、生前に遡って帝国軍三長官の地位(軍務尚書、統帥本部総長、宇宙艦隊司令長官)を与えられ、ローエングラム王朝が成立すると[[大公]]の地位を与えられた。
 
== 能力 ==
その軍事的才能は天才であるラインハルト、あるいはヤンに比肩すると考えられている。副官としてラインハルトの傍らにいた時に度々助言を求められ、その回答の全てがラインハルトの価値観と思考原理に合うものだった。また、例えば[[銀河英雄伝説の戦役#アスターテ会戦|アスターテ会戦]]で同盟第4艦隊を撃破した後、ラインハルトが思いつかなかった「自軍の兵士に休息をとらせる」という提案を自ら行うなど、ラインハルトが天才であるがゆえに見落としがちだった一般兵卒の視点に立った判断も行えるなど、その柔軟性においてはラインハルトに勝っていた。
 
当初はラインハルトの影に隠され、敵味方を通じて過小評価されていた。しかし帝国暦487年、ラインハルトの[[元帥府]]開設に伴い少将に任命されると、直後に発生した[[銀河英雄伝説の戦役#カストロプ動乱|カストロプ動乱]]を短期間<!--・無血/原作では「無血」ではない-->で鎮圧して実力を示した。これにより一挙に中将に昇進してラインハルト陣営のNo.2の地位を確立したが、その人柄に由来する穏やかな物腰と年上の同僚や部下に対する謙虚な姿勢で、そのことを自然と周囲に認めさせるに至り、これ以降は次々と才覚に相応しい功績を挙げていった。
 
また、幼いころから天性の喧嘩巧者が得意[[白兵戦]]の技量も非常に高く、[[銀河英雄伝説の戦役#衛星ヴァンフリート4=2の戦い|ヴァンフリート4=2での地上戦]]では、同盟軍最強の[[ワルター・フォン・シェーンコップ|シェーンコップ]]と互角に渡り合ったほどである<ref>ただし、お互い名乗る間もなく、相手が誰かを知ることは無かった。</ref>。また、[[銀河英雄伝説の用語#フライングボール|フライングボール]]の名人でもあり、刺客に襲われて無重力状態で格闘した際にその片鱗を見せている。さら、射撃能力も卓越している。幼年学校時代に大会で何度も金メダルを獲得する程の腕前で、作品中ラインハルトを射撃の腕で救った回数はトップである。ラインハルトが護衛役としてキルヒアイスに武器の携行を許していたのは、信頼関係と同時に、キルヒアイスの射撃能力を評価していたからとも考えられており<ref>幼年学校での成績は白兵戦、射撃、運転技能でラインハルトを上回っていた。</ref>、[[銀河英雄伝説の戦役#リップシュタット戦役|リップシュタット戦役]]終結後の捕虜の謁見においても武器携行が認められていれば(つまり、ラインハルトがキルヒアイスを一部下として扱おうとしなければ)アンスバッハの襲撃は瞬時に阻止されていたとラインハルト自身が認めている。
 
敵手であるヤンも、彼を「能力的にもラインハルトの分身である」と評し、名実共に帝国軍のNO.2と認めていた。
 
== 人柄 ==
ラインハルトの特徴或いは欠点を補うかの様に、温和で人当たりの良い性格を有している。ラインハルトには「ゴミ溜めの中にも美点を見出すタイプ」「教師になっていたら生徒の長所を伸ばすいい教師になっていた」と評された。幼年学校の時代から、敵を作りやすい性格を有するラインハルトの傍らにいて、調整役、或いは戦う際の味方となった。だが、清廉潔白に過ぎる性格から、オーベルシュタイン登用後はラインハルトと意見を異にすることも多くなった。
 
しかし、武器を持たない人間を撃つことが出来ないため、オーベルシュタインにもそれを見抜かれて初対面で指摘され、外伝「千億の星、千億の光」でもグリンメルスハウゼンがラインハルトの敵として立ちはだかったら排除せねばならないと考えつつも実行できない己自身を自覚しており、外伝「汚名」でバーゼル夫人ヨハンナが夫を愛するがゆえに証拠書類を暖炉の火にくべて隠滅しようとするのを阻止するには彼女を撃つしかないとわかっていながら撃てず、結果的に彼女を愛し続けるカイザーリング男爵に愛する女性を殺させる結果を招いた。ラインハルトを害そうとする敵であっても相手が武器を持たねば排除できない可能性は十二分にあった。
ラインハルトには「ゴミ溜めの中にも美点を見出すタイプ」「教師になっていたら生徒の長所を伸ばすいい教師になっていた」と評された。
 
[[銀河英雄伝説の戦役#アムリッツァ星域会戦|アムリッツァ会戦]]で同盟軍の完全な殲滅を逸する原因を作った[[フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト|ビッテンフェルト]]をラインハルトが厳しく罰しようとした時、キルヒアイスの諌めで不問に伏したという事例があり、この時の、減点主義を否定し、失態を演じた者には名誉挽回の機会を与えるべき、という発想は、死後にラインハルトに受け継がれ、殊に[[ナイトハルト・ミュラー|ミュラー]]はラインハルトの命を救うことになる。ヤンに敗北したミュラーや[[アウグスト・ザムエル・ワーレン|ワーレン]]、[[カール・ロベルト・シュタインメッツ|シュタインメッツ]]、あるいは[[ヘルムート・レンネンカンプ|レンネンカンプ]]などが厳罰を免れて、敗死した[[カール・グスタフ・ケンプ|ケンプ]]も上級大将に特進している。
 
地球へ向かう途上の[[銀河英雄伝説の登場人物・その他#ボリス・コーネフ|ボリス・コーネフ]]の[[銀河英雄伝説の登場艦船#ベリョースカ号|ベリョースカ号]]を臨検した際も、乗員や乗客である[[銀河英雄伝説の用語#地球教|地球教徒]]たちに非常に親切に応対した<ref>この時点では地球教の正体はまだ明らかではなく、また彼ら末端の信徒たちは上層部の陰謀とは無関係であった。</ref>。なおこの時コーネフは、彼をいい人だと賞賛する[[銀河英雄伝説の登場人物・その他#マリネスク|マリネスク]]に答えて、いい人はこのご時世では長生きできない、気の毒なことだ、と予言めいたセリフを口にしている<ref>ただこれはマリネスク曰く船長の悪い癖であり、この時は思いっきり外れた台詞であった。</ref>。
 
最期までラインハルトを守り、慕い続け、ラインハルトの「[[銀河系|宇宙]]を手に入れる」という望みを託して死亡。死後、ラインハルトは[[元帥]]、[[大公]]の称号を贈るなどあらゆる栄誉を与えたが、その墓に刻んだ碑銘は「Mein Freund(マイン・フロイント、「我が友」)」ただ一言であったことがラインハルトの心情を表していたと思われる。後にラインハルトは息子のミドルネームに「ジークフリード」の名を付けている。
 
キルヒアイスの死は、その後のラインハルトとその陣営内に重い影を落とし続けた。彼を知る者のほとんどが「キルヒアイスが生きていれば」と口にするほど、彼の存在は大きかったと考えられる。死の直後の茫然自失からは立ち直ったラインハルトだが、その後の対応はロイエンタールに野心の芽を抱かせる遠因ともなった。事あるごとに煽るような言葉を口にしている。また、[[銀河英雄伝説の用語#ヴェスターラントの虐殺|ヴェスターラントの惨劇]]への対応、キルヒアイスの処遇はオーベルシュタインの進言で変わったことから、キルヒアイスの下で戦った[[コルネリアス・ルッツ|ルッツ]]やワーレン、[[銀河英雄伝説の登場人物・銀河帝国#ハンス・エドアルド・ベルゲングリューン|ベルゲングリューン]]や[[銀河英雄伝説の登場人物・銀河帝国#フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー|ビューロー]]といった諸提督・幕僚など陣営内でのオーベルシュタインへの反感を強める原因ともなった。これは後々に、実戦部隊と軍務省の精神的摩擦となって表面化した。
 
人気を博したこの作品においてなお「キルヒアイスの死は早すぎたのではないか」という読者の意見は多く、作者自身も、[[プロット (物語)|プロット]]上問題があり、その死を早くし過ぎたことを初版の本伝5巻のあとがきで認めている。ただ作者は当初より彼を[[ヤン・ウェンリー]]同様物語途中で死亡するキャラクターと設定しており、問題があるとしたのは「早く死なせすぎた」という点で、たとえ読者からいくら苦情が来ても物語の最後まで死なせないという選択をすることはなかったであろうとしている。同時に彼の欠を補うべく多彩な人物が揃った一面も持ち、作者は彼に代わりうる人物として、[[ウォルフガング・ミッターマイヤー|ミッターマイヤー]]、[[オスカー・フォン・ロイエンタール|ロイエンタール]]、オーベルシュタイン、[[ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ|ヒルダ]]、ミュラーの名を挙げている(新書版後書きより)。一方、その批判と不満を補うかのように外伝ではラインハルトとともに活躍する若き姿が数多く描かれており、特に外伝汚名はキルヒアイスの視点でをメインとして物語が進行しており、ラインハルトの登場は最後にわずかあるだけである。
 
鮮やかな[[ヒトの髪の色#赤毛|赤髪]](ルビー色)と190cmの長身が特徴。容貌もかなり良いとされ、昇進が続いていた頃は帝国貴族の女性達からかなり注目されていた。特にヴェストパーレ[[男爵]]夫人[[銀河英雄伝説の登場人物・銀河帝国#マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ|マグダレーナ]]の執心ぶりは一度ならず描かれているが、キルヒアイス本人はアンネローゼ以外の女性に興味を抱いた様子は無かった。
42行目:
彼のローエングラム陣営での特別扱いに関しては、人柄の良さとカストロプ動乱で実力を認められたことからオーベルシュタイン以外は誰も問題にしなかったほどである。
 
艦隊司令官になった後の乗艦は[[バルバロッサ]]。アニメ版ではラインハルトのブリュンヒルトと似た流線型のデザインを持つ戦艦だが、キルヒアイスの髪の毛と同じ赤い色に塗られている。
 
== 演じた人物 ==