「日本以外全部沈没」の版間の差分

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「'''日本以外全部沈没'''」(にほんいがいぜんぶちんぼつ)は、[[筒井康隆]]の[[短編小説]]。『[[オール讀物]]』[[1973年]][[9月]]号に発表。タイトルは「{{larger|日本}}{{smaller|以外全部}}{{larger|沈没}}」と表記される。
 
== 概要 ==
当時のベストセラーであった[[小松左京]]のSF長編小説『[[日本沈没]]』の[[パロディ]]であり、題名の通り[[日本列島]]以外の文明を持った人類が住む陸地すべて([[チベット]]、[[アンデス山脈|アンデス]]等の高山・高原地域も残っていることが記されるが、治安が悪くて住めないと、著名人たちに嘆かせている)が沈没してしまった世界を舞台に、唯一の陸地である日本へと殺到する世界の著名人の悲惨な境遇と突然世界で一番偉い人種となってしまった[[日本人]]の島国根性による浅ましさを描くブラックユーモア小説である。
 
== 作品解説 ==
『日本沈没』のヒットを祝うSF作家たちの集まりで、[[星新一]]が題名を考案、小松の許可を得て筒井が執筆した。第5回([[1974年]]度)[[星雲賞]]短篇賞受賞作品(ちなみに長編賞は『日本沈没』)。授賞式の壇上、小松は冗談交じりに「日本沈没完成まで9年かけたのに、筒井氏は数時間で書き上げて賞を攫ってしまった」とコメントしたという。
 
そして、さらなる返礼として小松が書いたのがタイム・ジャック」(『[[S-Fマガジン]]1973年10月臨時増刊号、[[早川書房]])である。筒井作品風に「おれ」を名乗る主人公の他、筒井や小松が当時よく登場させていた「大杉酔狂」や「[[星新一|月古市]]」なども登場する、パロディSF短篇小説である。筒井は、小松の自薦短編集『さらば幽霊』([[講談社文庫]]、1974年)の解説で、この作品の解説によって自分と小松との異質な点を浮き彫りにする、という試みをおこなっており、[[アンソロジー]]'73日本SFベスト集成』('73)[[徳間書店]]、1975年)収録の際の解説でもそれを抜粋している。
 
なお、米ソ首脳が乱闘する場面が、[[リチャード・ニクソン|ニクソン]]と[[アレクセイ・コスイギン|コスイギン]]、[[ヘンリー・キッシンジャー|キッシンジャー]]と[[レオニード・ブレジネフ|ブレジネフ]]という組み合わせとなっており、ブレジネフがコスイギンの格下に見える描写となっている。
 
== 書籍 ==
* 日本以外全部沈没 〈自選短篇集3(パロディ篇)〉([[徳間文庫]]、2002年9月15日)ISBN 4198917655
* 日本以外全部沈没 〈パニック短篇集〉([[角川文庫]]、2006年6月24日)ISBN 4041305225
* オーディオブックCD 日本以外全部沈没([[ことのは出版]]、2008年5月7日)朗読:[[安原義人]]
 
== 映画 ==
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| 画像解説 =
| 監督 = [[河崎実]]
| 脚本 = 河崎実<br />[[右田昌万]]
|原作=[[筒井康隆]]
| 製作 = 河崎実<br />[[鈴木政信]]<br />[[二木大介]]
| 製作総指揮 = [[酒匂暢彦]]<br />[[福井政文]]<br />[[由里敬三]]<br />[[土井宏文]]
| 出演者 = [[小橋賢児]]<br />[[柏原収史]]<br />[[デルチャ・ミハエラ・ガブリエラ]]<br />[[ブレイク・クロフォード]]<br />[[キラ・ライチェブスカヤ]]<br />[[村野武範]]<br />[[藤岡弘、]]<br />[[寺田農]]<br />[[筒井康隆]](特別出演)
| 音楽 = [[石井雅子 (作曲家)|石井雅子]]
| 主題歌 = [[ミドリカワ書房]]<br />「遺言」 〜日本以外全部沈没のテーマ〜
| 撮影 = [[須賀隆]]
| 編集 = [[前真健二]]
| 美術 = [[池谷仙克]]
| 衣装 = [[川崎健二]]<br />[[宮崎みずほ]]
| 配給 = [[クロックワークス]]<br />[[トルネード・フィルム]]
| 公開 = {{flagicon|JPN}} [[2006年]][[9月2日]]
| 上映時間 = 98分
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=== キャスト ===
*[[小橋賢児]] - おれ(主人公) - [[小橋賢児]]
* 古賀 - [[柏原収史]] - 古賀
* 後藤 - [[松尾政寿]] - 後藤
*[[ブレイク・クロフォード]] - ジェリー・クルージング([[アカデミー賞|オスカー]]俳優) - [[ブレイク・クロフォード]]
*[[キラ・ライチェブスカヤ]] - エリザベス・クリフト(人気女優、ジェリーの妻) - [[キラ・ライチェブスカヤ]]
* キャサリン(「おれ」の妻) - [[デルチャ・ミハエラ・ガブリエラ]] - キャサリン(「おれ」の妻)
*[[美緒|土肥美緒]] - 古賀明子(古賀の妻) - [[美緒|土肥美緒]]
*[[ヘイズ・ジョン|ジョン・ヒーズ]] - ペピトーン元[[アメリカ合衆国大統領|アメリカ大統領]] - [[ヘイズ・ジョン|ジョン・ヒーズ]]
*[[ビル・ダーリング]] - ラインバック元[[アメリカ合衆国国務長官|アメリカ国務長官]] - [[ビル・ダーリング]]
*[[坂本大地]] - 金元[[大統領 (大韓民国)|韓国大統領]] - [[坂本大地]]
*[[隅野貞二]] - 張元[[中華人民共和国主席|中国国家主席]] - [[隅野貞二]]
*[[サラム・ジャーニュ]] - デンプシー元[[国際連合事務総長|国連事務総長]] - [[サラム・ジャーニュ]]
*[[ジーコ内山]] - [[金正日|北の独裁者]] - [[ジーコ内山]]
*[[ブルマンド・サンデイ]] - ハリウッド映画監督ルージ・ジョーカス - [[ブルマンド・サンデイ]]
*[[八幡トモアキ]] - [[浅野長矩|浅野内匠頭]] - [[八幡トモアキ]]
*[[石見栄英]] - [[吉良義央|吉良上野介]] - [[石見栄英]]
* マジックガール - [[プリマベーラ]] - マジックガール
* 怪獣 - [[谷口洋行]] - 怪獣
* [[破李拳竜電エース]] - [[電エース破李拳竜]]
* 電一 - [[河崎実|南郷勇一]] - 電一
* ナレーション - [[木村裕二]] - ナレーション
* [[テアエキスルアカデミー]] - [[エキステアルアカデミー]]
* 外人エキストラ - [[稲川素子事務所]] - 外人エキストラ
* GAT・赤木隊長 - [[岡村洋一]] - GAT・赤木隊長
* 出前持ち - [[ユリオカ超特Q]] - 出前持ち
* 大家 - [[つぶやきシロー]] - 大家
*[[ デーブ・スペクター]] - 本人役(日本語学校「デーブ・スペクター日本語学院」校長として) - [[デーブ・スペクター]](本人役
*[[イジリー岡田]]( 結婚したばかりの若手議員 - [[イジリー岡田]]
*[[インゴ]] - 機関銃で襲撃する北のウェイター - [[インゴ]]
*[[松尾貴史]] - 予報士・森田良純 - [[松尾貴史]]
* ある男 - [[筒井康隆]]([[特別出演]])- ある男
* アメリカ俳優 - [[プチ・ブルース]]、[[今一歩]]
* 編集長 - [[黒田アーサー]] - 編集長
*[[中田博久]] - 伊達[[内閣官房長官|官房長官]] - [[中田博久]]
* 田所博士 - [[寺田農]] - 田所博士
*[[村野武範]] - 安泉純二郎[[内閣総理大臣|首相]] - [[村野武範]]
*[[藤岡弘、]] - 石山新三郎[[防衛大臣|防衛庁長官]] - [[藤岡弘、]]
 
=== スタッフ ===
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=== 作品解説 ===
2度目の映画化であった[[東宝]]の[[日本沈没#2006年の映画|『日本沈没』(2006年版)]]に公式に便乗しての製作となり、タイトルロゴも『日本沈没』の字体をそのまま用いている。小松左京は映画化に関しては許可したものの出演依頼は断った。理由としては「できすぎるパロディーを書かれた原作者はいつまでも根に持つ」とのことである<ref>映画版のホームページ並びに劇場パンフレットには小松本人のコメントが掲載されている。</ref>
 
小松左京は映画化に関しては許可したものの出演依頼は断った。理由としては「できすぎるパロディーを書かれた原作者はいつまでも根に持つ」とのことである<ref>映画版のホームページ並びに劇場パンフレットには小松本人のコメントが掲載されている。</ref>。
 
==== 配役 ====
テレビドラマ版『日本沈没』で主演した[[村野武範]]と1973年の映画版『日本沈没』で主演した[[藤岡弘、]]が揃って出演したことが話題となった。田所博士役を演じた[[寺田農]]は2006年版『日本沈没』からも出演依頼されていたが、どちらに出演するか悩んだ末に本作を選んだという。2006年版『日本沈没』出演者の中には「『日本以外全部沈没』に[[カメオ出演]]でもいいから出演したい」と希望するものがいたが、スケジュールの関係などのため、両作品共出演できたのは[[松尾貴史]]のみであった<ref>[[気象予報士|予報士]]・森田良純役の[[松尾貴史]]は2006年版『日本沈没』に篠原学・内閣参事官役で出演している。</ref>
 
田所博士役を演じた[[寺田農]]は2006年版『日本沈没』からも出演依頼されていたが、どちらに出演するか悩んだ末に本作を選んだという。
 
2006年版『日本沈没』出演者の中には「『日本以外全部沈没』に[[カメオ出演]]でもいいから出演したい」と希望するものがいたが、スケジュールの関係などのため、両作品共出演できたのは[[松尾貴史]]のみであった<ref>[[気象予報士|予報士]]・森田良純役の[[松尾貴史]]は2006年版『日本沈没』に篠原学・内閣参事官役で出演している。</ref>。
 
=== 評価 ===
原作世界にある[[ナショナリズム]]や[[人種差別]]に対する逆説的な強い批判精神や、人類は自然に対しては無力であるという世界観には忠実に描かれ、終盤にも言及されているが、監督・脚本を務めた[[河崎実]]によってより過激な描写が用いられているために、原作の世界観を理解していない観客に対しては作品に対する誤った印象を与えかねない要素も有している。また原作ではクラブ内での出来事で完結していた内容も、主人公やその友人の家族、日本に入国した外国人が描かれることで2006年版『日本沈没』同様に一般市民の視点が描かれている。
 
=== DVD関連ソフト ===
; CD
作品の公開は『日本沈没』の方が先(2006年[[7月15日]]公開)だったが、DVDソフトの方はこちらが先に発売された([[2007年]][[1月1日]]発売。『日本沈没』のDVD発売は2007年[[1月19日]])。
* 日本以外全部沈没 オリジナルサウンドトラック(2006年8月23日、[[ソニー・ミュージックレコーズ|Sony Records]] SRCL-6404)
; DVD
* 日本以外全部沈没(2007年1月1日、[[角川エンタテインメント]] DABA-0317)
作品** 映画の公開は『日本沈没』の方が先(2006年[[7月15日]]公開)だったが、DVDソフトの方はこちらが先に発売された([[2007年]][[1月1日]]発売。『日本沈没』のDVD発売は2007年[[1月19日]])。
 
=== 備考 ===