「インスリン」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
205行目:
 
=== インスリン療法の実際 ===
==== 後ろ向き用量調節(責任インスリン方式、アルゴリズム法) ====
{{更新|date=2013年5月}}
血糖値に影響する急性疾患の合併がなく、安定した糖尿病に用いられている方法。測定された血糖値に最も影響を与えるインスリンを'''責任インスリン'''と呼び、超速効型または速効型インスリンを毎食前に注射している場合、朝食前に注射したインスリンが昼食前の血糖値に対する責任インスリンである。
==== 責任インスリン ====
 
たとえば、ある日の昼前の血糖値が通常より高かったなら、翌日の朝食前の超速効型インスリン量を増やす、といった方法を採る。食事の内容や運動量によって血糖値は変化するため、注意は必要である。
 
即効型又は中間型インスリンを用いるときの考え方であり、同インスリン製剤を用いる上での難しさを物語る考え方である。持効型インスリンに超速効型インスリンを組み合わせて用いる際にはこのようなことを考える必要がない。
 
朝食前のRは昼食前の血糖を下げる。昼食前のRは夕食前の血糖を下げる。夕食前のRは就寝前の血糖を下げ、就寝前のNは朝食前の血糖を下げると考えると分かりやすい。
 
==== 強化前向き用量調節(スラディリン療ケール ====
あらかじめ、病気の状態、血糖値の変動パターン、体重あたりのインスリンの必要量などから医師が作成する目安表で、患者自身が4~8時間ごとに血糖自己測定し、このスライディングスケールに従ったインスリン量を注射する方法。
強化インスリン療法とは、インスリンの頻回注射。または持続皮下インスリン注入(CSII)に血糖自己測定(SMBG)を併用し、医師の指示に従い、患者自身がインスリン注射量を決められた範囲で調節しながら、良好な血糖コントロールを目指す方法である。基本的には食事をしている患者では、各食前、就寝前の一日四回血糖を測定し、各食前に速効型インスリン(R)を就寝前に中間型インスリン(N)の一日四回を皮下注にて始める。オーソドックスなやり方としては各回3~4単位程度、一日12~16単位から始める。量を調節する場合は2単位程度までの変更にとどめた方が安全である。超速効型インスリン(Q)や持続型も近年は多く用いられる。
 
;インスリン絶対的適応
手術前後、感染症、他の急性疾患で入院しているときなど、異常事態に適した調節方法であるとされている。
 
==== 責任強化インスリン療法(Basal-Bolus法) ====
現在、1型糖尿病で主に採用されているインスリン療法で、最初に選択される治療法。血糖自己測定(SMBG)を併用したインスリンの頻回注射が原則的に選択される。コントロール不良の場合や、妊婦、小児~思春期の1型糖尿病には、持続皮下インスリン注入(インスリンポンプ療法、CSII)を採用する。
 
強化インスリン療法とは、インスリンの頻回注射。また持続皮下インスリン注入(CSII)に血糖自己測定(SMBG)を併用し、医師の指示に従い、患者自身がインスリン注射量を決められた範囲で調節しながら、良好な血糖コントロールを目指す方法である。基本的には食事をしている患者では、各食前、就寝前の一日四回血糖を測定し、各食前に速効型インスリン(R)を就寝前に中間型インスリン(N)の一日四回を皮下注にて始める。オーソドックスなやり方としては各回3~4単位程度、一日12~16単位から始める。量を調節する場合は2単位程度までの変更にとどめた方が安全である。超速効型インスリン(Q)や持続型も近年は多く用いられる。
 
持続皮下インスリン注入は、超速効型インスリンを24時間通じて注入する携帯型の小型機器を用いる。持続型インスリンよりもはるかに血糖値変動を予測しやすい超速効型インスリンを用いることができ、用量の微調整も可能で正確である。世界で2億人以上が糖尿病と診断され、およそ100万人がインスリンポンプを使用していて世界的に増加傾向にあり、ほとんどは1型糖尿病患者だが、2型糖尿病患者も含まれる<ref>{{Cite web |date=2015-03-24 |url=http://www.dm-net.co.jp/calendar/2015/023221.php |title=インスリンポンプの安全性についてADA/EASDが合同声明を発表 |publisher=糖尿病ネットワーク |accessdate=2016-01-07}}</ref>。 日本においては、まだ認知度は低く、普及率も低いのが現状である<ref>{{Cite web |date=2015-12-01 |url=http://www.dm-net.co.jp/pumpfile/ |title=インスリンポンプ情報ファイル |publisher=糖尿病ネットワーク |accessdate=2016-01-07}}</ref>。
 
==== インスリン絶対的適応(基本的にインスリンが必ず必要) ====
* インスリン依存状態(1型糖尿病)
* 糖尿病昏睡(糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群)
* 糖尿病合併妊娠(妊娠糖尿病で、食事療法のみでのコントロール不良の場合も含む)
* 重篤な感染症、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)時
 
初期投与量としては0.5単位/kg/dayにて開始し、数日の効果判定後0.7~1.2単位/kg/dayで維持する場合が多い。
{| class="wikitable"
226 ⟶ 244行目:
食前血糖値、空腹時血糖値が140mg/dL以上や食後2時間血糖値が200mg/dL以上の場合は責任インスリンの増量を検討する。食前血糖値が70mg/dL以下であれば責任インスリンの減量を検討する。但し、調節するインスリンの総量は4単位を超えない範囲で行うのが安全である。
 
;==== インスリン相対的適応(必ずではないがインスリンが必要) ====
* 顕著な高血糖(例:空腹時血糖値250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL以上)やケトーシス傾向を認める場合
* 食事療法、運動療法、および経口薬療法で良好な血糖コントロールが得られない場合(SU剤の一次無効、二次無効など)
* 重症の肝障害、腎障害を合併し、食事療法でのコントロールが不十分な場合
 
初期投与量としては0.2単位/kg/dayにて開始し、数日の効果判定後0.3~0.5単位/kg/dayで維持する場合が多い。
{| class="wikitable"