「東洲斎写楽」の版間の差分

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=== 肉筆画 ===
[[ファイル:Yonezaburō Matsumoto and Kōshirō Matsumoto IV (1795).jpg|thumb|310px|「[[松本幸四郎 (4代目)|四代目松本幸四郎]]の加古川本蔵と松本米三郎の小浪」(ギリシア国立コルフ・アジア美術館収蔵)]]
[[2008年]]、ギリシャの国立コルフ・アジア美術館が収蔵する浮世絵コレクションに対して日本の研究者(小林忠ら)が学術調査を行い<ref>[http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010853_00000 NHKスペシャル 浮世絵ミステリー 写楽 ~天才絵師の正体を追う~ - NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス]</ref>、写楽の署名のある肉筆扇面画『四代目松本幸四郎の加古川本蔵と松本米三郎の小浪』が確認された、と発表した。絵柄の場面は寛政7年5月(1795年6月)に江戸[[河原崎座]]で上演された『[[仮名手本忠臣蔵]]』の配役と一致することから、従来写楽が姿を消したと思われていた1795年初頭以後に描かれたものと推定されている。<!--2009年に江戸東京博物館で公開された[http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2009/0704/200907.html]。-->画中に筆跡から後世の持ち主が書き加えたと見られる、[[松本幸四郎 (4代目)|四代目幸四郎]]を五代目幸四郎とし、小波ではなく妻・戸無瀬に言う台詞を書き付けるなど「明らかな誤記」が見られる。また、筆致は繊細で、少なくとも二度は改装され若干周囲を切り取られており、現在の状態では窮屈な印象を受ける。しかし、写楽の版画作品に通じる美化を捨象した面貌表現、二人の人物の感情表現の的確さ、絵の具の鮮麗さ配合の妙、など鑑定上の不自然さが感じられない。特に写楽画のほぼ全て<ref group="注">第3期間版役者絵11枚を除く。</ref>に共通する耳の描き方<ref>{{Harvnb|松木寛|1985}}</ref>も、線が一本化している部分がある以外は全く同じ描法で、幸四郎の他の顔の皺の本数や特徴も、四代目幸四郎を描いた写楽の版画作品4点と同様である。描かれている場面も、通常は描かれていない特異な場面で、後世の捏造の可能性は低い。落款も[[花押]]の終筆部分に筆者が故意につけた三つ葉のクローバーのような突起を持ち、この特異な特徴は後述の「老人図」と共通する。写楽筆と伝わる肉筆画は数点知られているが<ref>「[http://www.artic.edu/aic/collections/artwork/18739?search_id=7 扇面お多福図]」シカゴ美術館蔵など。</ref>、多くの専門家が確実と認めた作品はこれのみとされる<ref>{{Harvnb|小林忠|2009a|pp=428-432}}、{{Harvnb|小林忠|2009b}}、{{Harvnb|浅野秀剛|2011|pp=6-16}}「写楽の肉筆扇面画」。</ref>。
 
反面、この肉筆扇面画の鑑定に疑問を呈する見解もある<!--<ref>[http://syaraku.edo-jidai.com/ ギリシャで発見された肉筆扇面画について] </ref>-->。『新版 歌舞伎事典』の「東洲斎写楽」の項目は鑑定した小林忠の執筆だが、「版下絵とされる役者群像9点と相撲絵10点の素描、および若干の肉筆画が報告されているが、写楽真筆と公認されるまでには至っていない」と、自説が受け入れられていないのを認めている<ref>{{Harvnb|歌舞伎事典|2011|p=297}}。</ref>。