「ゲンセンカン主人」の版間の差分

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裏の話
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[[夢]]の世界を描いた『[[ねじ式]]』に対して、本作は[[前世]]や[[因果]]、[[輪廻]]など[[仏教]]的なモチーフを前面に押し出した、一種の恐怖漫画であり幻想漫画でもあり全体にほの暗い色調に貫かれている。また、極めて日本的な[[物語]]を描きながら、つげがかつて愛読した[[エドガー・アラン・ポー|エドガー・アラン・ポオ]]の影響をもうかがわせる不思議な味わいを持っている。本作の[[主人公]]は、つげ義春の自画像に近いリアルな劇画風キャラクターとして描かれるが、主人公のキャラクターはコマによって左右非対称になったり、表情が変わったりと目まぐるしい変化を見せる。しかし、その変化はかえってこの作品のテーマである自己否定の不安感を際立たせる結果となった。この人物像は以後、『[[やなぎ屋主人]]』や『[[退屈な部屋]]』など作者をモデルにしたと思われる[[キャラクター]]へと受け継がれていくこととなる。
 
[[1967年]]]は[[水木プロ]]の仕事を手伝っていたころで、仕事量が増え[[腱鞘炎]]を患う。同年秋に単独で[[東北]]を大旅行、[[旅]]と[[湯治場]]に強く惹かれる。[[1968年]](昭和43年)2月には[[群馬県]]の[[湯宿温泉]]を訪れ、本作品のもとになる体験をし、同年7月に発表。[[1969年]]、つげは『[[アサヒグラフ]]』の取材で[[大崎紀夫]]、[[北井一夫]]と再び湯宿温泉、[[法師温泉]]などを訪問するほど湯宿温泉を気にいっていた<ref name="mangajutsu"></ref><ref name="asahi">『アサヒグラフ』(朝日新聞社 1969年2月14日号)</ref>。
 
その後の時代の変化に対応する形で、作品の表現は初出時と微妙に変化した。特にヒロインの女将さんの障害を指摘する台詞部分([[おし]]、[[つんぼ]])は[[差別]]にあたると判断、[[小学館]]などその後、出版された作品集では全面的に書き改められたが(「耳と口が不自由らしいですね」への置き換え)、それによって初版のもつ効果は著しく損なわれた。