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<div style="float:right;margin:10px;">__TOC__</div>
'''スマートグリッド''' (smart grid) とは、[[スマートメーター]]や[[#HEMS|HEMS]] の通信・制御機能を活用して停電防止や送電調整のほか多様な電力契約の実現や人件費削減等を可能にした[[電力系統|電力網]]である。2013年時点では実用化に向け、小規模な電力網で実証実験が行われている。
 
== 概要 ==
スマートグリッドは、通信・制御機能を付加した電力網である。多くの邦書で[[アメリカ合衆国]]の電力事業者がスマートグリッドを考案したと書かれている。自然エネルギーを活用するという意味での事業としては[[:en:Amory Lovins|エイモリー・ロビンス]]が1991年に発表した''Consumer Guide to Home Energy Savings'' が下地であるらしい<ref>[[LOHAS#ロハス関連団体|ロハスクラブ]] [http://www.lohasclub.org/300/308_6.html “スマートグリッド ”は、ボールダーから] 2016年4月29日閲覧</ref>。技術面では無線[[アドホック]]ネットワークが専門の[[:en:Thomas David Petite|トーマス・ピタイト]]がスマートメーターの核をつくったという。
スマートグリッドは、通信・制御機能を付加した電力網である。[[アメリカ合衆国]]の電力事業者が考案した。
 
当初の概念では、「スマート」とは発電設備から末端グリッド電力機器ま目的は[[コスト]]最小化を、ある。具体的にはデジタル・コンピュータ内蔵の高機能な電力制御装置同士を発電設備から末端の電力機器まで[[モノのインターネット|ネットワーク]]で結び合わせたり、従来型の中央制御では達成できない自律分散的な制御方式を取り入れたりすることで、電力網内での需給バランスの最適化調整([[#逆潮流]]を参照)と事故や過負荷など([[#従来型の電力系統の見直し]]を参照)に対する抗堪性を高め、それらに要するコストを最小に抑えることを目的としている。
 
スマートグリッドが消費者利益に結びつくかどうかは未知数である<ref>日経新聞電子版 [http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78472460W4A011C1000000/ 相次ぐスマートメーター設置拒否 米電力会社の憂鬱] 2014/10/28</ref>。
== 経緯 ==
元々、コンピュータで電力網を制御するという概念は目新しいものではなく既に1970年代より提案されていた<ref>{{Cite journal |和書 |author=H.グラビッチ |author2= |author3= |authorlink= |coauthors= |year=|date=1975年1月号 |month= |title=電力供給系のコンピュータ制御 |journal=[[日経サイエンス|サイエンス]] |publisher=日経サイエンス社 |volume= |issue= |pages=68 |id= |url= |accessdate= |quote= }}</ref>。米国の脆弱な送配電網を、新たに登場したコンピュータ技術によって低[[コスト]]で安全に運用する手法を模索する過程で生まれた構想であり、電力供給者と需要者をデジタル通信線によって結ぶアイデアに、家庭電化製品のネットワーク化推進に失敗していた高機能家電への進出を狙うメーカーやデジタル通信用のデバイス・メーカー、さらにはITネットワークを主導している企業までが、家庭へデジタル回線を引き込む良い機会と捉えて大きな関心を寄せるようになった。また、欧米や日本で[[電気自動車]]、[[太陽光発電]]などが推進され始めたのも、米国が官民を挙げて次世代の送配電網の必要性を論じるきっかけになった。
 
スマートグリッドは2009年からすでに[[#標準化|IEEEによる標準化]]が始っている。そして今や地中海を取り巻くスーパーグリッドへの応用=[[地中海#経済|スーパースマートグリッド]]まで構想されている。
米国が新たな電力網に"Smart Grid"と名づけて新たな産業分野を作ると、同様の動きが他の先進各国でも生じた。欧州は米国同様の構想で、域内の電力網の再構築・向上を検討している。日本は自家発電や蓄電を推進する住宅・自動車・家電、石油、ガス業界が積極的な一方、現行の電力網で電力供給が安定して運営されていることもあり、電力業界では積極的な動きは少ないが、2011年に政府が5年間でスマートメーター4000万台の導入計画を発表している。
 
日本では2013年ごろから実用化に向け、小規模な電力網で実証実験が行われている。もっとも、アメリカでの実験には日本企業が何度も参加している。
電力の送電網/配電網とその周辺の将来技術の予想や電力需要の量的・質的予想、技術開発と規格統一といった多くの課題があるが、電力網全体に新技術を盛り込んだ[[デジタル]]式の通信および電力制御を行う装置を配置するだけでも、巨額投資が見込めるため、電力機器メーカーや設備工事業者だけでなく、自動車メーカーやデジタル通信装置に関わる多くの関連業界が新市場と捉え、特にこうした分野に技術的優位性を持つ日本や米国などでは官民一体で推進しており、周辺産業界とも協力してまずは国際的な標準化の確立を目指している。
 
事業所や工場など、限られた範囲でエネルギー供給源から末端消費部分を通信網で管理する場合も定義に含まれ、サブ[[カテゴリスマ]]として「[[トグリッドは、特にマイクログリッド]]」と呼称される。
消費者利益に結びつくかどうか未知数であるが、最小のコストで送電網を構築することに狙いがあるため構築コストの低減が大きな課題である<ref name="スマートグリッド">蓮田宏樹、Phil Keys著 『スマートグリッド』、日経エレクトロニクス2009年6月1日号</ref>。
 
== 経緯 ==
事業所や工場など、限られた範囲でエネルギー供給源から末端消費部分を通信網で管理する場合も定義に含まれ、サブ[[カテゴリー]]として「[[マイクログリッド]]」と呼称される。
元々、コンピュータで電力網を制御するという概念発想は目新しいものではなく既に1970年代より提案されていた<ref>{{Cite journal |和書 |author=H.グラビッチ |author2= |author3= |authorlink= |coauthors= |year=|date=1975年1月号 |month= |title=電力供給系のコンピュータ制御 |journal=[[日経サイエンス|サイエンス]] |publisher=日経サイエンス社 |volume= |issue= |pages=68 |id= |url= |accessdate= |quote= }}</ref>。米国の脆弱な送配電網を、新たに登場したコンピュータ技術によって[[コスト]]で安全に運用する手法を模索する過程で生まれた構想であり、電力供給者と需要者をデジタル通信線によって結ぶアイデアに、家庭電化製品のネットワーク化推進に失敗していた高機能家電への進出を狙うメーカーやデジタル通信用のデバイ・メカー、さらにはITネトグリトワークを主導している企業までド構想、家庭へデジタル回線を引き込む良い機会と捉えて大きな関心を寄せるようになった。た、欧米や日本で[[電気自動車]]、[[太陽光発電]]などが推進さ始めたのも、米国が官民を挙げて次世代の送配電網の必要性を論じるきっかけになった。
 
電力供給者と需要者をデジタル通信線によって結ぶスマートグリッドは家庭へデジタル回線を引き込む良い機会と考えられた。そして家庭電化製品のネットワーク化推進に失敗していた高機能家電への進出を狙うメーカーやデジタル通信用のデバイス・メーカー、さらにはITネットワークを主導している企業までが大きな関心を寄せるようになった。また、欧米や日本で[[電気自動車]]、[[太陽光発電]]などが推進され始めたのも、米国が官民を挙げて次世代の送配電網の必要性を論じるきっかけになった。
 
米国が新たな電力網に"Smart Grid"と名づけて新たな産業分野を作ると、同様の動きが他の先進各国でも生じた。欧州は米国同様の構想で、域内の電力網の再構築・向上を検討している。日本は自家発電や蓄電を推進する住宅・自動車・家電、石油、ガス業界が積極的な一方、現行の電力網で電力供給が安定して運営されていることもあり、電力業界では積極的な動きは少ないが、2011年に政府が5年間でスマートメーター4000万台の導入計画を発表している。
 
電力の送電網/配電網とその周辺の将来技術の予想や電力需要の量的・質的予想、技術開発と規格統一といった多くの課題があるが、電力網全体に新技術を盛り込んだ[[デジタル]]式の通信および電力制御を行う装置を配置するだけでも、巨額投資が見込めるため、電力機器メーカーや設備工事業者だけでなく、自動車メーカーやデジタル通信装置に関わる多くの関連業界が新市場と捉え、特にこうした分野に技術的優位性を持つ日本や米国などでは官民一体で推進しており、周辺産業界とも協力してまずは国際的な標準化の確立を目指している<ref group="注">[[NEDO]]に集った日本の協力体制。[https://www.smart-japan.org/vcms_lf/Members_japanese_20160401.pdf スマートコミュニティ・アライアンス会員一覧] 2016年4月1日現在</ref>。最小のコストで送電網を構築することに狙いがあるため構築コストの低減が大きな課題である<ref name="スマートグリッド">蓮田宏樹、Phil Keys著 『スマートグリッド』、日経エレクトロニクス2009年6月1日号</ref>
 
== 目的 ==
{{col|
=== 日本 ===
=== 欧州 ===
*政府
再生可能エネルギーの利用拡大。[[電気自動車]]のインフラ整備<ref>[[経済協力開発機構]]/[[国際エネルギー機関]] [https://www.iea.org/publications/freepublications/publication/smartgrids_roadmap.pdf Technology Roadmap Smart Grids] 2011. p.12.</ref>。[[ブロックチェーン]]に使う[[モノのインターネット]]の普及拡大。
** 企業
*** [[スマートメーター]]の他、電力制御技術全般や[[超伝導]]ケーブル、[[ナトリウム・硫黄電池|NAS電池]]のような大規模[[蓄電池]]システムを売り込むビジネスチャンスとの見方が強い<ref name="スマートグリッド" />。また、[[高温超伝導]]送電線なども活用される<ref group="注">日本の[[住友電気工業]]では[[高温超伝導]]ケーブルを売り込んでいる。</ref>。
 
=== 米国 ===
[[#米国の状況]]も参照。
* 政府
** [[景気]]刺激。[[グリーン・ニューディール]]政策の推進
** 新たな規格を自国内で確立し、次世代[[インターネット]]産業での自国企業の立場を確固たるものにする。
* 企業
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** 高機能電力メーターから参入して家庭IT機器の[[コンピュータネットワーク|ネットワーク]]化を独占する<ref group="注">世界中の家庭内の電気製品が送電網を経由した電力線の通信網で情報をやり取りするようになれば、現在の[[インターネット]]機器の10-100倍の数の端末が繋がる巨大な情報網が出現するため、未来の[[シスコシステムズ]]、次の[[Google]]を狙う企業はこれら2社のほかにも[[IBM]]、[[インテル]]、[[ベライゾン・ワイヤレス]]を筆頭に、多くの企業がチャンスをうかがっている。</ref>。
** 個人の電力消費データを元に[[シミュレーション]]を行い、電力事業者へ売り込む。
|
=== 日本 ===
[[#日本の状況]]も参照。
 
*** 2011年に政府が5年間でスマートメーター4000万台の導入計画を発表。[[スマートメーター]]の他、電力制御技術全般や[[超伝導]]ケーブル、[[ナトリウム・硫黄電池|NAS電池]]のような大規模[[蓄電池]]システムを売り込むビジネスチャンスとの見方が強い<ref name="スマートグリッド" />。また、[[高温超伝導]]送電線なども活用される<ref group="注">日本の[[住友電気工業]]では[[高温超伝導]]ケーブルを売り込んでいる。</ref>。2014年にスイスの[[ABBグループ]]を核とした[[カルテル]]が報告され、日本勢が芋づる式に摘発された
=== 欧州 ===
再生可能エネルギーの利用拡大。[[電気自動車]]のインフラ整備。
 
=== 中国 ===
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=== アジア ===
脆弱な送電線網の安定性信頼性向上。
}}
 
== 方法 ==
{{独自研究|section=1|date=2010年3月}}<!--ノートに理由を示しました。-->
231 ⟶ 239行目:
* [http://www.sei.co.jp/tr/staticFile/39/rakcat&DESTINATION=TLVL03&HAKKO_NO=172&TECHNICAL_CD=254.htm 技術論文集 SEI テクニカルレビューJanuary 2008 No.172 GENESIS計画と高温超電導直流ケーブル -究極の持続可能な「新エネルギー」の開発について-] - 住友電気工業株式会社
* [http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20100521/348330/ スマートグリッドとは - 電子行政:キーワード:ITpro](文・渡辺敏康、NTTデータ経営研究所)
* 河内信幸 [https://www3.chubu.ac.jp/documents/industrial_economy/content/5262/5262_833fe35433ec357dc2b8c5d0dda1da5e.pdf スマート・グリッドと"ミッション・クリティカル"] 産業経済研究所紀要 第22号 2012年3月
 
* 高山丈二 [http://ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/pdf/071902.pdf スマートグリッドの導入に向けた動きと我が国の課題] [[国立国会図書館]]レファレンス 2010年12月
 
{{DEFAULTSORT:すまあとくりつと}}