「準静的過程」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
m編集の要約なし
熱平衡を熱力学的平衡に訂正、可逆過程との関係を追加
1行目:
'''準静的過程'''(じゅんせいてきかてい、{{lang-en-short|quasistatic process}})とは、[[系 (自然科学)|系]]が[[熱力学的平衡]]の状態を保ったまま[[系 (自然科学)|系]]をある状態から別の状態へとゆっくり変化させる過程を指す[[熱力学]]上の概念である。
 
== 原理 ==
12行目:
ここで {{mvar|n}} は[[物質量]]、{{mvar|R}} は[[気体定数]]である。
 
これらの式が成り立つのは気体が平衡([[熱力学的平衡]])の状態にあるときに限られる<ref>[[#芦田(2008)|芦田(2008)]] pp.12-13</ref>。平衡とは、時間がたっても系の状態が変化しないことをいう。
 
物体(系)の温度や圧力など変化させる過程では、変化の途中の段階では状態が連続的に変わっているため、一般的には平衡とみなせない。したがって、これらの式はつねに成り立つとは限らない。しかし、温度や圧力の変化を非常にゆっくりと行えば、変化の途中段階を含めてすべて平衡として取り扱うことができる。このような過程が準静的過程である<ref>[[#田崎(2000)|田崎(2000)]] p.36</ref>。
 
[[熱力学的平衡]]には、力学的平衡、熱平衡、化学的平衡が含まれる。
したがって、系全体の圧力が均一な状態(力学的平衡)が保持できる程度にゆっくりと行われる膨張・圧縮や、系内に温度不均一が生じない(熱平衡)程度にゆっくりと行われる加熱・冷却
は準静的変化と見なすことができる。
また、系内で[[化学変化]]または[[成分]]物質の[[物質移動]]が生じる場合は、
([[化学量論]]的関係を含めた)各成分の[[化学ポテンシャル]]が均一な状態(化学平衡)を保持できる程度にゆっくりと生じる変化は、準静的過程であると見なすことができる
<ref>[[#Zemansky(1957)|Zemansky(1957)]] pp.52-53</ref>。
 
ある状態変化において、
# 準静的過程であること、
# [[粘性]]、[[摩擦]]、[[弾性|非弾性]]、[[電気抵抗]]、[[ヒステリシス#磁力のヒステリシス|磁気ヒステリシス]]、等によるエネルギーの[[散逸]]が生じないこと。
が満たされれば、この変化は[[可逆#熱力学的な意味|可逆過程]]となる
<ref>[[#Zemansky(1957)|Zemansky(1957)]] pp.196-197</ref>。
ただし文献によって用語の定義に相違や曖昧さがあり、
可逆過程と準静的過程を同義に使う文献<ref>[[#原島(1978)|原島(1978)]] pp.32-34</ref>もある。
 
== 仕事と準静的過程 ==
27 ⟶ 42行目:
しかし、この式もつねに成り立つとは限らない<ref>[[#キャレン(1998)|キャレン(1998)]] p.130</ref><ref>[[#白井(2011)|白井(2011)]] p.76</ref>。なぜなら、ピストンを引いている最中、シリンダー内の圧力 {{mvar|p}} は徐々に減少するが、ピストンを引く速度が速い場合、すなわちピストンを勢いよく引いた場合は、シリンダー内の圧力はどこでも同じでなく、場所によって多少のムラが出てしまうからである。その場合は、ピストン移動中の圧力が定まらず、結果として仕事を上述の式で表すことはできない<ref name="Callen26">[[#キャレン(1998)|キャレン(1998)]] p.26</ref>。
 
この式が成り立つのは、ピストンを引いている間、気体がつねに平衡の状態にあるときである。そこで、準静的過程の考え方が適用される。すなわち、ピストンを動かす速さを可能な限り遅くし、無限の時間をかけてシリンダー内の体積を変化させるようにする。こうすることで、ピストンの移動中も含めたすべての状態において平衡と考えることができ、式が成立する<ref name="Callen26"/>。
 
== 準静的過程の成り立つ条件 ==
66 ⟶ 81行目:
|isbn=978-4-274-06742-6
|ref=芦田(2008)}}
* {{Cite book|洋書
|author=Mark J. Zemansky
|year=1957
|title=Heat and Thermodynamics (5'th ed.)
|publisher=McGraw-Hill
|isbn=
|ref=Zemansky(1957)}}
* {{Cite book|和書
|author=[[原島鮮]]
|year=1978
|title=熱力学・統計力学 (改訂版)
|publisher=培風館
|isbn=4-563-02139-3
|ref=原島(1978)}}
* {{Cite book|和書
|author=カルノー