「サルヴァトーレ・シャリーノ」の版間の差分

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「ソナタ第4番」は90年代に書かれた最も個性的な作品の一つであり、「[[トーン・クラスター]]」と「擬似アルペジョ」の二つの組み合わせのみで全曲が構成される特異なピアノ曲である。「音楽とは思えない素材」に対する固執はこの時期から強まり、「単一の楽器は特定の素材しか演奏しない」傾向が加速化する。「夜想曲」では沈黙の中を「擬似アルペジョ」がふらふらと舞うのみであり、痺れを切らして憤慨した聴衆の咳がCDに収録されている。この作品は同一コンセプトで現在までに6曲書かれており、場合によっては19世紀的なオクターブも使われている。演奏は至難である。
 
2003年には構想から完成までに20年を要したオペラ「マクベス」で、その創作を集大成する。[[ジョルジュ・ビゼー|ビゼー]]や[[ジュゼッペ・ヴェルディ|ヴェルディ]]などのクリシェと自己イディオムの混濁は、第二期までの快楽主義とは隔たりがある。編成は小さいが、「我が裏切りの光(これは厳密には誤訳であり『私を裏切った目』という意味である)」と「無限の漆黒」は最もシャリーノらしいと初演から好評で、世界中で大ヒットし、国際作曲家としての地位がここで確立した。
 
しかしながら、シャリーノはイタリアを出ることを極端に嫌がり、委嘱が海外から入ってもスコアとパート譜を送付するのみで、演奏に立ち会うことはほとんどなかった。彼が若い時から望んだ日本への渡航も20世紀はついに実現せず、来日が実現したのは2005年であった。