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かつて心理学者や精神科学者たちは{{仮リンク|ルイス・マディソン・ターマン|en|Lewis Madison Terman}}の1906年の研究を踏襲し、長年に渡ってギフテッドは高知能指数と同意義だと考えていた。この遺物的概念は今日でもギフテッドの概念の中にいくらか残っている。ただし当初から他の研究者たち(たとえば[[レイモンド・キャッテル]](Raymond Cattell)や[[ジョイ・ギルフォード]](Joy Paul Guilford)、{{仮リンク|ルイス・レオン サーストン|en|Louis Leon Thurstone |label=Thurstone}})は知性とはそのような一元的な形で表せるものではなく、もっと多面的な分析が必要だと提唱していた。
 
[[1980年代]]と[[1990年代]]に行われた研究によって知性は複数の要素からなるという考えを支持するデータが得られた。{{仮リンク|ロバート・スタンバーク|en|Robert Sternberg |label=Sternberg}}と{{仮リンク|Janet E. Davidson|en|Janet E. Davidson |label=Davidson}}による『Conceptions of Giftedness』の中の『giftedness』の再研究において、それが特に顕著に検証されている。そこで提示された様々なギフテッドの概念は、それぞれ別個であるにも関わらず様々な面で互いに関連性がある。ほとんどの研究者はギフテッドを複数の資質(すべてが知的な要素というわけではない)として定義している。またIQ測定値だけでは、学問や芸術の実質的な創造的貢献を計測することができないとしてギフテッドの選別には不適切であるとしばしば考えられている。
 
{{仮リンク|Joseph Renzulli|en|Joseph Renzulli}} (1978) の「three ring定義」は詳しい研究から、得られたギフテッドの概念の1つである。これは、ギフテッド個人というより、ギフテッドの行動の定義であり、その行動は、以下の3つの基本要素から成り立っている。すなわち、平均以上の能力、高い目的達成意識、高い創造性という3つの特徴が、互いに関連しあい、それを反映した行動がRenzulliによるギフテッドの定義である。ギフテッドの行動を実現できる者とは、こうした3つの特徴を総合的に持っている人、あるい相互的に開発できる能力のある人であり、かつ、何からの形で有益な活動として活かせる人である。そして、こうした人々には通常の学校の教育カリキュラムでは、提供されない様々な形式の学習の機会と支援が必要である。
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アメリカの多くの学校ではギフテッドの生徒を選別するために、能力や可能性を様々な方法で判定する<ref name=johnsen />。生徒の過去の作品集、教室での観察、達成度テストや[[知能検査]]などである。教育現場の専門家の多くは、選別の方法を何か一つ使用するだけでは正確にギフテッドを見極めることはできないと考えており、総合的な判断をする。
 
選別方法の一つとしてIQ(知能指数)テストの値が用いられることがある。1960年代以前、「ギフテッド」がIQによって定義されていた時代には、単純にIQの値(およそ130、標準偏差15)を基準にしてギフテッドであるか否かを判定していた。こうしたIQによる選別方法は研究者たちの間では古い考え方であるが、それにも関わらず、まったく無意味だとは言えないために、今でも他の判定基準と併用して採用している学校は少なくない。現在、ギフテッドの概念はより広範に考察されているが、確立された単一の定義・選定基準はない。ただし、現代ではIQがギフテッドを選別する単一の尺度として支持されなくなってきているとしても、生徒が非常に高いIQを示した場合は、当然学術において高い潜在能力を持っている可能性もあると推測され、そのもっとも有力な目安になる<ref>{{cite book|author=Gross, M. U. M. |year=2004|title= Exceptionally gifted children |editon=2nd ed.|location= London|publisher= RoutledgeFalmer|isbn=978-0415314909}}</ref>。したがって非常に高いIQを持ちながら平均以下の成績しか残していない生徒がいた場合には、より注意深い観察が必要である<ref>GIFTED AND TALENTED STUDENTS. A Resource Guide for Teachers. Educational Services Division (Anglophone) Revised 2007, Department of Education, Government of New Brunswick, Canada.</ref>。
 
IQの判定はテストの種類、作製者によっても基準が異なる。またIQテストは、高いIQの者同士の優劣を判定するには妥当ではない。IQはある人がギフテッドかどうかを判別するにはある程度有効だが、どの程度のレベルのギフテッドであるかを測定するものではない。[[ウェクスラー成人知能検査]]のIQ最高値が160であることから、ギフテッドの判別に関する著者の一部には[[知能検査#開発の歴史|スタンフォード・ビネー法]] L-M版を並外れたギフテッドを選別できる唯一のテストとして推奨する者もいる。しかし、スタンフォード・ビネー法 L-M版は廃れた測定方法を用いており、これまでアメリカにおいても標準的なテストとして用いられたことがない。
 
幼い子供のIQ測定は、さらに議論が必要となる。またIQテストは、一般的に言語能力や数学的な能力に重点を置いているため、芸術や文学の分野の才能は得点では反映されにくい。現在、欧米ではIQテスト以外で芸術性や独創性などを測る試験を行なう学校も多くある。作品や創造力、独創性、芸術性、素行言動や思考など多方面から才能を理解する必要がある。
 
==ギフテッドの特徴==
一般的にギフテッドは同年の人間より速く、深く、広く学ぶ。ギフテッドの子供は幼いうちから話したり文字を読んだりするが、必ずしもこれが全てのギフテッドの幼少期にあてはまる特徴というわけではない。ずいぶん年上の子供と同レベルで学習することもある。高い[[論証]]能力、独創性、好奇心、想像力、洞察力、芸術性、共感的理解、豊富な語彙、優れた記憶力を持つ傾向にある。わずかの反復で全体概念を修得できやすい傾向がみられるが、個人差がある。
 
ギフテッドといっても、全ての学術分野に等しく秀でていることは稀だろう。たとえば、論理問題を解くのが非常に優れているのに文字の綴りが苦手であったり、あるいは、学年平均よりずっと秀でた読み書きができる一方で数学が苦手であったりする。個人の発達の遅れに様々なケースがあるように、ギフテッドにも様々なケースが存在することが指摘されている。
 
肉体的、精神的に繊細で敏感であったりする。幼少時から優れた論法や推論力を示し、文章または口頭で豊富な語彙を用いることができ、使う語彙に対して鋭敏である。おしゃべりまたは早口であったり、並外れた集中力、幅広い関心、創造性豊かで限りない知識欲、深い分析力、優れた記憶力を持ち、[[知的好奇心]]や[[独創性]]に富み、鋭い質問をしたり、常識外れの一風変わった考えを持つこともある。深く速く理解し、短期間の復習で課題を修得でき、その内容を詳細に理解しており、[[原理]]や[[概念]]を示すことができる<ref name="clark">Clark, B. (2002). Growing up gifted (5th ed.) Columbus, OH: Charles E. Merrill.</ref>。
 
高知能のゆえにその知性を満たすため複雑さを求めたりする。ギフテッドは時として[[完全主義]]の傾向があったり、現実的な高い自己基準を持っていたり、早い時期から内面的な[[統制の所在]](LOC:ローカス ・オブ・コントロール)を発達させ、自己を厳しく評価または非難する傾向がみられたりする<ref name="clark"/><ref>Parker, W. D. & Mills, C. J. (1996). The Incidence of Perfectionism in Gifted Students. Gifted Child Quarterly</ref><ref>Renzulli, J. S., Smith, L. H., White, A. J., Callahan, C. M., Hartman, R. K., & Westberg, K. L. (2002). Scales for rating the behavioral characteristics of superior students (Rev. ed.). Mansfield Center, CT: Creative Learning Press.</ref>。
 
一生懸命勉強せずとも際立った学習成績を修めるという特徴が伺えるが、これも個人差がみられる。それゆえ飽きやすい傾向もしばしばみられ、授業が簡単すぎて興味がわかない、興味のある事以外はやりたがらなかったり、本人にとり意味の見出せない暗唱や機械的な丸暗記を嫌がったり苦手であったり、クラスや課題に集中できなかったり[[白昼夢]]していたり、周りとうまく合わせることができない、一般的な学校の勉強に興味を示さず成績は芳しくない、学校で問題児あつかいされたり<ref>Reis, S. M. & Renzulli, J. S. (2004). Current Research on the Social and Emotional Development of Gifted and Talented Students: Good News and Future Possibilities. Psychology in the Schools, 41, published online in Wiley Inter</ref>、繊細さや[[感受性]]の豊かさにより過度に周囲に同化しようとするあまり、意図的に能力以下の成績を修めたり、ギフテッドの特異な才能を隠す傾向がみられることが指摘されている。これは女性に際立ってよくみられる傾向である。ギフテッドは、一般的な教育方法では、優れた成績や才能を発揮できない傾向があり、このため一般教育ではその才能は開花しにくく、欧米ではギフテッド用にそれぞれの才能を伸ばす[[英才教育]]が行なわれている<ref>Sankar-DeLeeuw, N., (1999). Gifted preschoolers: Parent and teacher views on identification, early admission and programming. US: Roeper School Article Review, 21 (3) 174-179</ref>。
 
知性、認知能力や語彙が発達していることから同級生ではなく年上や大人と話すのを好む。他のギフテッドとの交流は、心的に安定感をもたらすと報告されている。
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コミュニケーション能力に優れ、[[道徳]]心、責任感、高い洞察力、共感的理解、問題解決能力などの高いリーダーシップ力を潜在能力の特徴として指摘されている<ref name="clark"/>。
 
芸術分野のギフテッドは、高いIQと知性を示し、早期から芸術分野で才能を現し、豊かな想像力や表現力に富み、創造性、独創性、芸術性に優れ、アイデアに溢れ、身体動作やリズム感に繊細、思慮深く、洞察力、感受性が豊かなどの潜在能力を示す<ref>Haroutounian, Joanne (1995) Talent Identification and Development in the Arts: An Artistic/Educational Dialogue</ref>。しかしこれらの特徴には、もまた個人差があるの範疇を出ない
 
これら知性面だけを取り上げて、ギフテッドは単純に学力やIQテストによって測定できる量的な違いであると信じられがちだが、一方で、ギフテッドは世界を知覚するのに一般人とは根本的な違いがあり、その違いが本人の人生経験すべてに影響している、とする説がある。過敏な神経による'''過度激動な反応'''('''OE'''。後述)が原因となって、社会や人生における出来事を一般人に比べて強く、深く、長く感じるという説である。この生理的な違いは、ギフテッドの子供が学校を卒業しようと、大人に成長しようと消えない。ギフテッドの大人はめったに特殊な人として扱われないが、高知能を持つ人間ギフテッドならではの心理的、社会的、感情的な要求を持っているのである<ref>[http://www.hoagiesgifted.org/optimum_intelligence.htm Hoagies' Gifted: Optimum IQ: My Experience as a Too Gifted Adult (accessdate=2006-09-17)](英語版脚注)</ref>。
 
=== OE(Overexcitabilities、過度激動) ===
 
ギフテッドの人間には異常なほどの熱情、並外れた集中力、一般人とは一風変わったふるまいが見られる。これは[[注意欠陥・多動性障害|多動性障害]]、[[双極性障害]]、[[自閉症#自閉症の分類|自閉症スペクトラム]]やその他の心理的障害の兆候に似ている。一方で、[[ギフテッド教育]]の専門家はドンブロフスキ「'''積極的な分離'''」([[w:en:Positive Disintegration]]) <ref name=SENG />という人格形成理論を主張ばしば引用すている。ドンブロフスキの積極的な分離理論の中核をなすのが、'''刺激に対する並ならない反応'''('''OE''' '''Overexcitabilities''' '''過度激動''')である。これは神経の感受性が増すことによって通常の人間よりも刺激を生理的に強く経験する性質であり、ギフテッドの特徴である。
 
否定的な分離とは、一般社会的な生き方から受動的・破滅的に離れてしまうことで、行為の主体性を喪失するため[[精神病]]や[[自殺]]を引き起こす可能性がある。それに対して積極的な分離とは、一般的な受身の人生から離れるべく、まず対象から主体的に分離し、物理的あるいは精神的な距離を置くことで、より広い視野を俯瞰し、強い知覚に基づく深い理解を形成し、より高いレベルの認識を求め続けることである。たとえば、一般社会に対してでさえ積極的分離と再融合を繰り返すギフテッドは、自己や世界の概念が徐々に変化しながらも少しずつ社会の矛盾を解きほぐし、問題を認識し、最終的に独創的な生き方のビジョンを得てその解決や克服、その実現を目指す。しかし、その分離過程では、常に、緊張、不安、気分的うつ、恥、罪悪感といった精神的苦痛を伴う。その自己の葛藤は、常に深い感情作用と連動しており、人生の要となる出来事から日常の内省行為まで、世の中がそうあるべき姿と現実世界とのギャップを思い知る強烈な機会となる。
 
ドンブロフスキは、短時間の単純な感情は人格の成長にあまり影響はなく、否定的感情も含めた激しい感情作用こそが人生を変えるような劇的な体験をもたらし、積極的な分離を起こすと考えた。つまり精神的苦痛は、個人が心理的により高いレベルへ成長するために不可欠であり、その深い感情作用を最大にもたらすものはOEである、と結論付けている。ギフテッドの子供が、OEという平均以上に敏感な精神状態にあることは、勉学や仕事芸術で著しい成果をあげるだけでなく、日常におけるすべての活動においても精神に特異な反応を起こしていることを示す。つまりギフテッドは、誕生時より常に外界・内界両方からの刺激を増長した精神で感じ、激しく深い幅をもって経験し、内省を繰り返していることが、彼らの著しい成長に関連しているという説である。
 
ドンブロフスキはOEを次の5つの分野に区分けした。
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ギフテッドと[[うつ病|慢性うつ病]]や[[自殺]]との関連性は、科学的には未だ証明されていない。レイスとレンズリの研究では次のように述べられている。「著述や視覚芸術に優れた独創的なギフテッドである青少年を除いては、ギフテッドの人間も一般人もうつ病に関する違いはない。ギフテッドは知覚能力が発達しており、他人よりも敏感で発達社会的に孤立し、発達状態にもむらがあるため社会的、精神的な問題にぶつかる。しかしながら、彼らのもつ高い問題解決能力、[[社会技能|ソーシャル・スキル]]、倫理判断、学校外の事物への関心、達成感といったものが助けとなっていると思われる」<ref name=renzulli /> また自殺率についても、ギフテッドとの関連性はいまだ証明されていない<ref>Neihart, M. (2002). Risk and Resilience in Gifted Children: A Conceptual Framework. In M. Neihart, S. Reis, N. M. Robinson, & S. M. Moon (Eds.) ''The Social and Emotional Development of Gifted Children.'' (pp. 113-124). Waco, Texas: [http://www.prufrock.com/ Prufrock Press, Inc.](英語版脚注)</ref>。
 
しかし、ギフテッドの人間が気分的にうつ状態に陥ることが多いことは、過去から広く認知されている。死の終局、根本的な個人個人の取るに足ら根本的存在、人生の意味や意味の欠如といった抽象的な心配ごとが引き金となり、他人より不安を感じやすいという性質もうつ状態に拍車をかけている<ref>[http://www.sengifted.org/articles_counseling/Ellsworth_AdolescenceAndGiftedAddressingExistentialDread.shtml SENG: Articles & Resources - Adolescence and gifted: Addressing existential dread (accessdate=2006-09-17)](英語版脚注)</ref>。
 
===孤立===
ギフテッドはOE([[#ギフテッドの特徴|前述]])に起因する少し変わった行動をとる、同世代の子供達と精神年齢や興味が異なり話が合わないといった理由で、気の合う友達がみつからなかったり、他の子供から[[疎外]]されることもある。外界からの刺激を嫌うためや、人生をより真摯に受け止めるがゆえに内向性を持ち頻繁に内省するために、ギフテッド自身が一人でいることを選ぶ場合もある。
 
特にギフテッド仲間の[[社会的ネットワーク]]を持たない者にとって、[[孤立]]は一番の問題である。他人に好かれ、認められようと、ギフテッドの子供はしばしば自分の能力を隠そうとする。低達成児となったり、家族や信頼できる人といる時に使う高尚な言葉とは異なり、同級生といる時は簡単な言葉を使うようにするといった、本当の自分とは異なる姿を演じる<ref>Swiatek, M. A. (1995). An Empirical Investigation Of The Social Coping Strategies Used By Gifted Adolescents. [http://www.nagc.org/index.aspx?id=163 ''Gifted Child Quarterly], 39,'' 154-160.(英語版脚注)</ref>。これはギフテッドの女性により多く際立って見られる傾向である。
 
孤立は、必ずしもギフテッドであることが原因ではなく、社会のギフテッドに対する考えにも起因する。一般社会において人は「ふつう」でなければならないという多大な心理的負担がある。ギフテッドやタレンテッドの人間は、変わり者という烙印を押されたり<ref>Plucker, J. A., & Levy, J. J., (2001). The Downside of Being Talented [Electronic version]. ''American Psychologist, 56,'' 75-76.(英語版脚注)</ref>、 [[いじめ]]の対象になったりし、自己嫌悪や自己卑下する可能性もある。この孤立問題を解決するために、ギフテッド教育の専門家は共通した興味や能力に基づいたギフテッド達でグループを作ることを薦めている。グループに参加する時期が早いほど、孤立を避けられる<ref>Robinson, N. M. (2002). Introduction. In M. Neihart, S. M. Reis, N. M. Robinson, & S. M. Moon (Eds.) ''The Social and Emotional Development of Gifted Children.'' Waco, Texas: [http://www.prufrock.com/ Prufrock Press, Inc.], Lardner, C. (2005) "School Counselors Light-Up the
Intra- and Inter-Personal Worlds of Our Gifted" as found on the World Wide Web at http://www.hoagiesgifted.org/light_up_the_world.htm.(英語版脚注)</ref>。
 
欧米には[[ギフテッド教育]]を施す私立校がある。アメリカ合衆国の場合、公立や進学校を含めた他の私立からギフテッド専門の私立校へ転校する子供も多い。専門私立校は公立のギフテッド・プログラムとは異なる選考基準を設けるところもある。卒業生が[[アイビー・リーグ]]などの名門大学に進む学校も多いが、ギフテッド専門校は進学校ではなく、あくまでもギフテッドである生徒のニーズにきめ細かく応えることができる学校である。そこでは、ギフテッドの子供が、本来の自分のままでいながらにその才能を最大限に咲かせられることを最優先にしている。ギフテッド専門校に通ってようやく話が通じる仲良しの友達ができた、「普通の人」を演じる必要がなくなった、というような広義の意味での[[クオリティ・オブ・ライフ]](人生の質)の向上に力を入れる。一般的にギフテッド専門私立校は授業料が高く、ごく一部の恵まれた子供しか通うことができな
 
===アンダー・アチーブメント(低達成)===
ギフテッドの生徒はしばしば、その能力と実際の成績の間に大きな隔たりがある。多くのギフテッドは標準テストなどでは非常に優れた結果を出すのに、学級でのテストでは低得点しか取れないことがある。こうした隔たりは、周囲からの孤立を避け学校友達・同級生に同化しようとするプレッシャー、授業が簡単すぎるゆえの学習意欲の低下、担当教師の自分との相性、その状況が要求する制度・規則・ノルマの達成、など様々な要因からも容易に引き起こされる<ref name=renzulli>Reis, S. M. & Renzulli, J. S. (2004). Current Research on the Social and Emotional Development of Gifted and Talented Students: Good News and Future Possibilities. ''Psychology in the Schools, 41,'' published online in [http://www.interscience.wiley.com/ Wiley InterScience].(英語版脚注)</ref>。憂うつ、不安、完全主義、故意の怠慢など含めた感情的、精神的要因によっても引き起こされる<ref>Reis, S. M. & McCoach, D. B. (2002). Underachievement in Gifted Students. In M. Neihart, S. M. Reis, N. M. Robinson, & S. M. Moon (Eds.). ''The Social and Emotional Development of Gifted Children'' (pp. 81-91). Waco, Texas: [http://www.prufrock.com/ Prufrock Press, Inc.](英語版脚注)</ref>。
 
また低達成児は、ギフテッドと[[学習障害]]が同時に存在するわけがないという誤解のために、学習障害を持つギフテッドが診断漏れで支援教育を受け損なっていることもある。一般的に、全教科の点数が平均以上であっても、点数差が標準偏差σ1程度あれば学習障害と定められる。
ギフテッドの広く、深く、速く学習するという性質上、単純に学習量や難易度を増した[[習熟度別学習|習熟度別クラス]]やスピードを増しただけの[[飛び級]]では十分に対応しきれない。低達成児であるギフテッドの子供の能力や興味、幅広い好奇心にもとづいた'''エンリッチメント・プログラム'''を受講させることが解決法となる。エンリッチメント・プログラムとは生徒の精神的健康を念頭に置いて、主体的な関心を持って学習できるよう工夫して作り上げられたもので、多方面にわたった幅のある発展的授業や個別指導カリキュラムを指す。
 
===完璧主義===
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====天才====
知的好奇心という点でギフテッドと'''[[天才]]'''は非常に似通っているが、天才という言葉は神がかり、奇行や変人、あるいは説明不可能なケースを漠然と表現する時にも使われる。一方でギフテッドは、客観的な学術知見・データに基づく診断結果とする意味合いが強いが、仮説である。これは、天才という言葉が「はるかに上」という意味であらゆる事物に対して濫用され俗語化しているのに対し、ギフテッドが[[教育学]]や[[心理学]]で用いられる学術用語であることも起因している。すべてのギフテッドは天才に含まれる一方、定義と特徴に合致した一部の天才がギフテッドと見なされる。
 
====サバント====
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たとえばアメリカの場合、ギフテッドの定義は州や[[アメリカ合衆国の学区|学区]]によって異なる。純粋にギフテッドの生徒を対象にして、空きがある時のみ成績優秀者を受け入れる所もある。一般的に言って、予算や学級編成の都合があったり、ギフテッドが学力差別だと非難を受けている地域などでは、ギフテッドのかわりに、ギフテッドおよび成績優秀者、上級、優等、高能力、優秀といった呼称を与え、ギフテッドに限らず成績優秀者を上位から選抜していく学校が多い。学業評価で判定する場合は、生来のギフテッドであってもすくい上げられない生徒が出てくる。
 
また、ギフテッドという点を見落として学習障害児や発達障害児だと誤断を優先するケースでは、高い潜在能力を伸ばす機会を潰してしまったり、逆に学習障害や発達障害を見落としてギフテッド能力に比例した達成度が見られないと診断され自尊心がひどく傷つけられるケースもある。このように学校の定義や審査基準、専門家の誤診断などによって、ギフテッドの学習環境が大きく変わる恐れをはらんでい可能性がある。
 
===まわりの人間一般社会の理解===
特殊教育の中でもギフテッドは高知能、高能力ゆえに後回しにされがちである。知能指数が平均より下方にある子供ばかりでなく、上方にある子供にも支援を受ける権利はある。ギフテッドの子供の中にはギフテッドであるがゆえの様々な問題を抱えており支援を必要としている。しかし、頭ケース良いのに文句を言うのは贅沢だ、もう既に十分得をしている人間がこれ以上得するために税金をつぎこむ必要はない、といった風潮が支援教育が行われない背景となっている。
 
通常ギフテッド教育を受けるには知能指数や学力試験で選抜され、素行の良さも必要とされるため、子供がギフテッド・プログラムに選ばれて嫌がる親はいない。実際ギフテッドを鼻にかける親も存在する。しかしギフテッドの子供にとって最適の育児・教育法を暗中模索する親は、時にはギフテッドではなく通常クラスに入れたり、状況が許せば[[私立学校|私立]]や[[ホームスクーリング]]を選ぶこともある。子供の才能を見逃さず最大限に伸ばす方法を考え、常に旺盛で衝動的な知的好奇心を満たす学習課題を与え、激しい感情の波のコントロールを教え、得意分野だけでなくバランスのとれた教養をめざし、高慢にならず、被害妄想を膨らませず、社会で孤立しないよう育てようとする。子供の独創性や独立精神を尊重しながら、豊かで幸せな人生が送れるよう心をくだいてるのである。しかし一般的にギフテッドの子供についての悩みは、他人には自慢話や贅沢な文句にしか聞こえないことが多く、親自身が孤立することもある。ギフテッドの親も本人同様、似た立場にむしろ例外である者同士の交流が必要でこともある。
 
== 優秀な子供とギフテッドの比較 ==
 
ギフテッドは、遺伝により生まれ持った特質な資質と環境との相互作用によるものであるが<ref>Plomin, R., & Price, T. S. (2003). The relationship between genetics and intelligence. In N. Colangelo & G. A. Davis (3rd Ed.) Handbook of Gifted Education (pp. 113-123). Pearson Education, Inc.</ref>、幼少期から教育熱心な親と特別な教育方法と本人の一生懸命な学習努力で優れた成績を収めるな生徒とは一線を画するとわれている。ギフテッドは授業中、深さ、意味、速さ、創造性を絶え間なく必要とするため、一般的な授業を退屈に感じている可能性がある。
 
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== 日本にギフテッドが浸透しない理由 ==
{{要出典|section=1|date=2014年7月}}
[[ギフテッド教育]](GATEやTAG)が進んでいる欧米諸国では、現地でギフテッド教育を受けている日本人の子供が多数いる。その中にはギフテッドを誇りに思っているが、「特別」「違う」「独特」「変わっている」などと表現されることを非常に嫌がる親もいる。ギフテッド=パーフェクトな人間という意味ではない。またギフテッドという特別性、輝かしい[[レッテル]]は光栄だが、特殊教育の傘下に置かれることを嫌う者もいる。これは欧米とは異なり日本の教育では、[[特別支援教育]]=[[障害児教育]]という方面のみに力を注いできた社会認識からくる思い込みや偏見である。日本では、教育機関でなく主に医師や医療関係者などからギフテッドと診断される事も病気や精神病と誤解される理由の1つである。
 
日本は受験システムにより、テストの採点結果のみが高く評価され、欧米社会の様な本人の持って生まれた独特な高い知性、想像力、独創性、洞察力、芸術性などの才能や資質能力を伸ばし受け入れ還元される社会システムや環境そして認識が整っていない。逆に、特異で高度な資質が排他や[[妬み]]の対象になりやすい懸念もある。
 
欧米では、ギフテッド=「神様が特別に選んで優秀にさせた、ギフトを授けた」という意味であり認識であが広まっている。街や会社や学校など地域社会レベルで、周りの社会環境に良い影響を与えられ、それぞれの分野で社会をより良い方向へ導く未来のリーダー存在となりうる高い潜在能力を備えた存在である為、ギフテッド教育がさかんである。ギフテッドを社会で育て守り、そして社会全体がその還元を受けるという認知が進んでいる。
 
日本国内においてギフテッドの定義が浸透しないのは、欧米の[[機会平等]]主義に対して日本が能力平等主義であること、一人一人の人間が天・神によって創られているという欧米の宗教観に対して日本では血にこだわる素朴遺伝観が強いといった差が要因にあると言われている。この相違点は{{仮リンク|氏か育ちか論争|en|Nature versus nurture}} にも繋がる。
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現在の日本社会にそぐわない知性論そのものを周知させることが、常に逆差別や感情論などを引き起こし議論を停滞・誤解させる危険を伴う。また「ギフテッドは生まれつき」という概念を浸透させるには、血にこだわり建前として能力平等を前提とする日本社会において遺伝子論争や[[優生学|優生]]思想を避けては通れないため、ギフテッド・プログラム導入には非常に慎重にならざるを得ない。
 
[[アメリカ合衆国教育省]]は、ギフテッド教育はギフテッドの子供自身だけでなく国家のためにも必要であるという見解を示した。[[1993年]]発表のギフテッド・タレンテッド教育方針書では、その序章において「国際競争力をつけ、経済的に大きく成長するために、アメリカ国家は最高レベルの学生達に頼らなければならない。この多くの学生達は数学、科学、文筆、政治、舞踏、美術、ビジネス、歴史、心と体の健康、その他の分野においても、将来リーダーシップを取る人材となるからである」と述べられている。
 
==誤診の問題==
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ギフテッド教育がさかんな諸国では、ギフテッドが、[[発達障害]]、[[注意欠陥・多動性障害]](ADHD)や[[自閉症]]、[[強迫性障害]]、[[アスペルガー症候群]]、[[気分障害]] の[[気分変調性障害]]、 [[鬱]]、[[双極性障害]]などに[[誤診]]され社会問題となっており、注意が呼びかけられている。
 
一般的なギフテッドの社会認知は進んでいても、医療関係者や教育者のギフテッドに関する知識不足によりギフテッドが誤診されやすい傾向が指摘されている。
 
不必要な[[処方薬]]の摂取は、ギフテッドの才能や能力を鎮圧させてしまう。薬の摂取をやめ、教育などで知的深究心を満たさせると誤診された症状が改善するという報告もある<ref>Misdiagnosis and Dual Diagnoses of Gifted Children and Adults: ADHD, Bipolar, Ocd, Asperger's, Depression, and Other Disorders by James T. Webb.Edward R. Amend, Nadia E. Webb and Jean Goerss. Great Potential Press, Inc., Jan 1, 2005 - Family & Relationships</ref>。