「再帰動詞」の版間の差分

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非印欧語族の言語にも再帰動詞の体系を持つものが存在する為、節の区分を編集および加筆。また印欧語族に関しても加筆。
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意味的には、自分自身を対象として行う行為(再帰的)のほか、言語にもよるが、複数の人または物が互いにしあう行為(相互的:英語ではeach otherなどを使う)、他の明示されない[[動作主]]や現象によって受ける行為(受動的:英語では[[能格動詞]]などを使う)などにも用いられる。本質的再帰動詞は、他の言語ならば自動詞を使うような場面(他の動作主があるとは普通考えられない)に用いられる。
 
==ロマンス印欧==
[[インド・ヨーロッパ語族|印欧語族]]の再帰動詞が取りうる形態は、[[語派]]により多種多様である。
 
===ロマンス語===
ロマンス語では本来の代名詞のほかに接辞的な代名詞があり、これが再帰代名詞として使われて再帰動詞を構成する。再帰代名詞としては動詞の種類により、直接目的語([[対格]])のほか、間接目的語([[与格]])も使われる。
 
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*フランス語では不定形 se laver のように、 se は独立で、助動詞が介入すると離れる。
 
強調する場合、またあいまいさを回避するために強勢形の代名詞を追加して用いる場合もある。スペイン語の例: ''Yo me cuido a mí mismo. ''(私は自分のことを自分でする=他人の世話にはならない)ここで mí[一人称]、 sí[三人称]は強勢形の代名詞、mismo は「同じ」「それ自身」つまり英語の self に当たる。
 
フランス語では再帰動詞の過去・完了を表す助動詞 être ([[be動詞]]にあたる)を使うと、目的語としての種類(直接・間接)による違いが顕著に現れる。直接目的語だと、"je me suis '''vu(e)'''." (私は自分を見た)というふうに、主語すなわち直接目的語の性に応じて[[過去分詞]]の語尾が変わる。間接目的語だと、"Je me suis '''parlé'''."(私は自分に言った=自問自答した)と、過去分詞は変わらない。
 
また se laver は se を直接目的語とした場合には「入浴する」という意味になるが、 se を間接目的語としてその他の直接目的語をとれば「自分の…を洗う」(Je(''Je me suis lavé les mains.''「私は手を洗った」)という意味になる。
 
スペイン語ではそれぞれ "Yo me vi" 、 "Yo me hablé" というふうに動詞と直接結びつく。「思い出す」などの基本的な動作に関しても "Me recuerdo"(私は思い出す)などと盛んに用いられる。
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[[ラテン語]]には、[[受動態]]と同じ形で能動的意味を表す[[デポネント|形式受動態動詞]](異態動詞、変位動詞、[英]deponent verb)というものが多くあり、ロマンス語の代名動詞は(形態的には異なるが)機能的にはこれに由来するといわれる。
 
===ゲルマン語===
[[ゲルマン語派|ゲルマン語]]でも英語と同様に再帰動詞を使うが、英語のように -self をつけることはなく、代名詞(対格または与格)がそのまま使われる。
 
ドイツ語の例: ''Ich wasche mich.'' (私は入浴する)。
 
==ロシア=スラヴ===
[[スラヴ語派|スラヴ語]]、たとえば[[ロシア語]]では多くの他動詞を接尾辞{{lang|ru| -ся}} (再帰代名詞 {{lang|ru|себя}} に由来する;活用により形は少し変わるが常に接尾辞として働く)をつけることで自動詞({{lang|ru|ся}} 動詞)に変換することができる。
 
たとえば動詞 {{lang|ru|одеть}} (着せる)を {{lang|ru|одеться}} (着る)に変えることができる。 {{lang|ru|ся}} 動詞は動詞の種類にもよるが受動態の代わりにも用いられる。また、{{lang|ru|-ся}} は {{lang|ru|себя}} の[[対格]]に由来しているため、{{lang|ru|ся}} 動詞の目的語は決して対格に[[格変化]]しない。
 
{{lang|ru|ся}} 動詞にも本質的再帰動詞がある。たとえば {{lang|ru|смеяться}} (笑う)に対しては {{lang|ru|смеять}} という動詞はない。
 
なお、ロマンス語やゲルマン語の様に目的語に[[主語]]の人称が反映される事は無い。
 
===バルト語===
[[バルト語派|バルト語]]のうち[[リトアニア語]]の再帰動詞の場合は語末に''-s(i)''という接尾辞がつけられ、活用が行われる(例: [[wikt:daryti|''daryti'']] 〈する〉 → ''daryti'''s''''' 〈自分にする〉)。こうした要素はスラヴ語の事例に近いものである。しかし、動詞が接頭辞つきのものである場合、再帰性を表す要素は常に接頭辞と動詞本体の間に挿入される[[接中辞]]として現れる(例: ''uždaryti'' 〈閉める〉 → ''už'''si'''daryti'' 〈閉まる〉)。
 
==マヤ語族==
[[マヤ語族|マヤ語]]にも再帰動詞にあたるものが存在する。たとえば[[ツォツィル語]]ではスペイン語の様に動詞本体と目的語が人称や[[数 (文法)|数]]に応じて変化する(例: ''[[wikt:k'atajes ba|k'atajes ba]]'' 〈変身する〉 → '''''s'''k'atajes '''s'''ba'' 〈彼/彼女/それは変身する〉, '''''s'''k'atajes '''s'''ba'''ik''''' 〈彼ら/彼女ら/それらは変身する〉)。
 
またツォツィル語と区分が異なる[[ユカテコ語]]にも詳細は異なるがスペイン語を髣髴とさせる再帰動詞の体系が存在する<ref>{{Harvcoltxt|Bevington|2000|p=40}}</ref>。
 
==その他==
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[[日本語]]には以上のような再帰動詞はないが、再帰代名詞に当たる「自分」「自ら」などがあり、また相互的動作を現す[[補助動詞]]的成分「あう」(「投げあう」「罵りあう」など)がある。また形式的には特殊な点はないが、「着る」「脱ぐ」のように自分のことについてのみ用いる他動詞を再帰動詞と呼ぶこともある。「顔を洗う」なども用法的にはこれに含まれる。
 
==脚注==
{{脚注ヘルプ}}
<references />
 
==参考文献==
* {{Cite book|last=Bevington|first=Gary|year=2000|title=Maya for Travelers and Students: A Guide to Language and Culture in Yucatan|location=Austin|publisher=The University of Texas Press|isbn=0-292-70812-2|ref=harv}}
 
==関連項目==