「有機質肥料」の版間の差分

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[[ファイル:Peat_Lewis.jpg|右|サムネイル|泥炭(スコットランド)]]
[[石灰岩]]<ref name=extension.agron.iastate.edu />や[[リン鉱石]]、[[硝酸ナトリウム]]は収量を向上させるが、生物由来ではなく、無機資材である<ref name=extension.org /><ref name=nal.usda.gov />。
 
== 人間由来 ==
:* 人糞尿 : 肥料取締法第二条第二項によると、凝集を促進する材料(凝集促進材)または悪臭を防止する材料(悪臭防止材)を加え脱水または乾燥されたものを除くはこの分類に当てはまらない
:* 発酵乾糞(かんぷん)肥料 : [[屎尿]]を[[嫌気発酵]]で処理して得られるもの。
 
=== 下水汚泥 ===
(人間の排泄物の)屎尿はかつて伝統的な有機質肥料であったが、現在では、下水汚泥を材料とした[[生物固体]]が使用されている。
[[ファイル:Hestemøj.jpg|サムネイル|動物の糞の分解物は有機肥料の源である。]]
土壌改良材としての生物固体は米国の農耕地において1%未満しか使用されていない。下水汚泥は産業の汚染物質を含み、このことが肥料としての再利用の障害となっている。[[アメリカ合衆国農務省]](USDA)は、産業上の汚染物質、医薬品、ホルモン、重金属、およびその他の要因により米国の有機農業事業における下水汚泥の使用を禁止している<ref name=epa.gov2010 /><ref name=calorganicfarms2010 /><ref name=water.epa.gov />。USDAは、窒素含量が高い液性の有機肥料の米国での販売にサードパーティの認証を必要としている<ref name="USDA certification of high-nitrogen liquid fertilizer" />。
 
USDAの禁止により、米国の有機農業事業における下水汚泥の使用は非常に限定され、また、希少である<ref name=epa.gov2012 /><ref name=calorganicfarms2012 /><ref name=sludgememo />。
 
== 動物由来 ==
天然由来の有機肥料には、食肉加工、[[泥炭]]くず、[[堆肥]]、[[スラリー]](泥漿)、および[[グアノ]](糞化石)を原料とする動物性廃棄物がある。
 
=== 動物の排泄物に由来する肥料 ===
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: 動物(主に乳牛、豚、鶏)の排泄物を原料とした[[特殊肥料]]<ref name=hiryoutorishimari>[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO127.html 肥料取締法(昭和二十五年五月一日法律第百二十七号)]</ref>。
:* 動物の排泄物 : 乾燥糞など。
:* 人糞尿 : 凝集を促進する材料(凝集促進材)または悪臭を防止する材料(悪臭防止材)を加え、脱水または乾燥されたものを除く。
:* 発酵乾糞(かんぷん)肥料 : [[屎尿]]を[[嫌気発酵]]で処理して得られるもの。
:* 動物糞堆肥 : 動物の排泄物を原料に含み、これを堆積または撹拌し[[腐熟]]させたもの。発酵過程では、一般に発酵を促進させるための副資材が動物糞に混合されている。この副資材は主に[[大鋸屑]]や[[木質チップ]]などの木質系[[バイオマス]]である<ref name=tokusyuhiryou>{{cite journal |author=農林水産省 |title=調査結果の概要 |journal=たい肥等特殊肥料の生産・出荷状況調査 |date=2007年12月31日 |url=http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001064673}}</ref>。副資材にはほかに戻し堆肥(水分調整などの目的で生糞尿に添加し再利用される堆肥)や食品廃棄物がある。
:* 動物の排泄物の焼却灰
; 鶏糞厩肥
: 鶏糞厩肥とは、鶏糞と大鋸屑の混合物である。米Agricultural Research Service(ARS)の研究者によると、鶏糞厩肥と他の有機質肥料と化学肥料をそれぞれ施肥した綿圃場では、綿の収量は化学肥料条件と比べて鶏糞厩肥条件で12%増加した。高い収率に加えて、ARSの研究者は[[土壌改良材]]としての価値も評価した。彼らは、鶏糞厩肥の従来の販売額相場$61/tに17$/tの価値を足し、総合$78/tの価値と評した<ref name=ars.usda.gov23 />。
; [[グアノ]]
: 海鳥の排泄物や死体が風化・堆積して生成されたもの。
:* 窒素質グアノ : 比較的多量の窒素分を含有するグアノ。登録期間3年の普通肥料に分類される。窒素質グアノは、雨量が少ない高温多照の乾燥地帯([[ペルー]]、[[チリ]]、[[アルゼンチン]]など)、土壌の窒素が流亡しない条件で生じる。
 
=== 動物粕粉末類 ===
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; 尿素
: 動物から調達された[[尿素]]や[[尿素ホルムアルデヒド]]は有機農業に適している<ref name=ecochem />。
 
== 微生物 ==
いわゆる[[生物肥料]](bio-fertilizer)とは、ある種の生きた微生物を内包する有機質肥料である。この微生物は植物成長促進根圏微生物(plant-growth promoting rhizobacteria:PGPR)と呼ばれ、種子、植物表面、または土壌に与えられた場合、根圏または植物内部に定着する。そして、宿主植物への主要栄養素の供給量や利用可能性を増大させ、それによって宿主植物の成長を促進させる<ref name="vessey2003">Vessey, J.k. 2003, Plant growth promoting rhizobacteria as bio-fertilizers. </ref>。生物肥料中のRGPRは窒素固定で栄養素を付加し、リンを可溶化し、更に、成長促進物質の合成によって植物の生長を刺激する。
 
生物肥料は化学肥料や農薬の使用を減らすことが期待されている。生物肥料は、土壌中における自然の栄養素循環を活性化させ、土壌有機物の蓄積を促す。生物肥料の使用は、持続可能性と土壌の健康を向上させながら、植物を健康的に生育させることができる。RGPRは、植物の栄養素の要求を満たすことと土壌の肥沃度を高めることにおいて非常に有益であるとされる。したがって、RGPRの生育を阻害する化学物質を生物肥料は含んでいない<ref name=explogrow.com />。
 
[[リゾビウム属]]、[[アゾトバクター]]、[[アゾスピリラム属]]および[[藍藻類]]などの生物肥料は長期間使用されてきた。リゾビウム属細菌は[[マメ科]]植物に使用されている。アゾトバクターは小麦、トウモロコシ、マスタード、綿、ジャガイモ、およびそのほかの野菜類に有効な可能性がある。アゾスピリラム属細菌の投入は主に[[モロコシ]]、[[雑穀]]、トウモロコシ、[[サトウキビ]]、および小麦で推奨されている。ラン藻類は一般的な[[シアノバクテリア]]、''[[ネンジュモ|Nostoc]]''属、''[[アナベナ|Anabaena]]''属あるいは''Aulosira''属である。空気中の窒素を固定し、植物に供給する。低地と高地ともに水田での作物の生育を助ける。''[[アナベナ|Anabaena]]''属は[[アカウキクサ属|''Azolla'']]属の窒素量を60&nbsp;kg/ha/期だけ増加させ、土壌有機物を豊かにする<ref name=eprints.ru.ac.za />。
 
== 植物由来 ==
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: 材料は、[[コーンスターチ]]を製造する際に原料のトウモロコシから由来する副産物である。このトウモロコシを[[亜硫酸]]で浸漬し、その液を発酵させて濃縮させたものがコウモロコシ浸漬液肥料である<ref name=tomorokoshishinsekieki>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/tomorokoshishinsekieki.pdf コウモロコシ浸漬液肥料の公定規格]</ref>。窒素全量3.0%以上、りん酸全量3.0%以上、加里全量2.0%以上、水溶性加里2.0%以上を含む<ref name=pocket />。
 
== 下水汚泥微生物由来 ==
いわゆる[[生物肥料]](bio-fertilizer)とは、ある種の生きた微生物を内包する有機質肥料である。この微生物は植物成長促進根圏微生物(plant-growth promoting rhizobacteria:PGPR)と呼ばれ、種子、植物表面、または土壌に与えられた場合、根圏または植物内部に定着する。そして、宿主植物への主要栄養素の供給量や利用可能性を増大させ、それによって宿主植物の成長を促進させる<ref name="vessey2003">Vessey, J.k. 2003, Plant growth promoting rhizobacteria as bio-fertilizers. </ref>。生物肥料中のRGPRは窒素固定で栄養素を付加し、リンを可溶化し、更に、成長促進物質の合成によって植物の生長を刺激する。
(人間の排泄物の)屎尿はかつて伝統的な有機質肥料であったが、現在では、下水汚泥を材料とした[[生物固体]]が使用されている。
[[ファイル:Hestemøj.jpg|サムネイル|動物の糞の分解物は有機肥料の源である。]]
土壌改良材としての生物固体は米国の農耕地において1%未満しか使用されていない。下水汚泥は産業の汚染物質を含み、このことが肥料としての再利用の障害となっている。[[アメリカ合衆国農務省]](USDA)は、産業上の汚染物質、医薬品、ホルモン、重金属、およびその他の要因により米国の有機農業事業における下水汚泥の使用を禁止している<ref name=epa.gov2010 /><ref name=calorganicfarms2010 /><ref name=water.epa.gov />。USDAは、窒素含量が高い液性の有機肥料の米国での販売にサードパーティの認証を必要としている<ref name="USDA certification of high-nitrogen liquid fertilizer" />。
 
生物肥料は化学肥料や農薬の使用を減らすことが期待されている。生物肥料は、土壌中における自然の栄養素循環を活性化させ、土壌有機物の蓄積を促す。生物肥料の使用は、持続可能性と土壌の健康を向上させながら、植物を健康的に生育させることができる。RGPRは、植物の栄養素の要求を満たすことと土壌の肥沃度を高めることにおいて非常に有益であるとされる。したがって、RGPRの生育を阻害する化学物質を生物肥料は含んでいない<ref name=explogrow.com />。
USDAの禁止により、米国の有機農業事業における下水汚泥の使用は非常に限定され、また、希少である<ref name=epa.gov2012 /><ref name=calorganicfarms2012 /><ref name=sludgememo />。
 
[[リゾビウム属]]、[[アゾトバクター]]、[[アゾスピリラム属]]および[[藍藻類]]などの生物肥料は長期間使用されてきた。リゾビウム属細菌は[[マメ科]]植物に使用されている。アゾトバクターは小麦、トウモロコシ、マスタード、綿、ジャガイモ、およびそのほかの野菜類に有効な可能性がある。アゾスピリラム属細菌の投入は主に[[モロコシ]]、[[雑穀]]、トウモロコシ、[[サトウキビ]]、および小麦で推奨されている。ラン藻類は一般的な[[シアノバクテリア]]、''[[ネンジュモ|Nostoc]]''属、''[[アナベナ|Anabaena]]''属あるいは''Aulosira''属である。空気中の窒素を固定し、植物に供給する。低地と高地ともに水田での作物の生育を助ける。''[[アナベナ|Anabaena]]''属は[[アカウキクサ属|''Azolla'']]属の窒素量を60&nbsp;kg/ha/期だけ増加させ、土壌有機物を豊かにする<ref name=eprints.ru.ac.za />。
 
== 関連項目 ==