「有機質肥料」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
37行目:
:* 鶏糞堆肥(発酵鶏糞):鶏糞堆肥は牛糞堆肥と比べて肥料成分、特にリン酸の含有量が高い。発酵により窒素分が揮散しているため、乾燥鶏糞に比べて窒素分は少ない。加えて、肥効の発現が速い。粗大有機物はほとんど含まれておらず、土壌物理性の改善効果は大いに期待できない。過剰に施用すると肥料当たりが起こる。以上のように、使用方法は化学肥料のそれに近い。島根県は野菜畑への施肥量として500kg/10aを推奨している<ref name=taihisetumei />。ただし、米Agricultural Research Service(ARS)は、副資材を大鋸屑としたとき、鶏糞堆肥は[[土壌改良材]]としての価値を有することを見出した。加えて、この堆肥には高い肥料効果があることが実証された。鶏糞堆肥と他の有機質肥料と化学肥料をそれぞれ施肥した綿圃場では、綿の収量は化学肥料条件と比べて鶏糞堆肥条件で12%増加した。ARSの研究者らは、鶏糞堆肥の従来の販売額相場$61/tに17$/tの価値を足し、総合$78/tの価値と評した<ref name=ars.usda.gov23 />。
:* 鶏糞ペレット堆肥:鶏糞堆肥を成型機によりペレット状に成型したもの。成型機には乾式造粒型(ディスクペレッター)や円錐型(タブレット式)がある。ペレット化にはコストがかかるが、多くの利点がある。ペレット化前の堆肥(バラ堆肥)と比べて臭いが少なく、散布時に粉塵を引き起こさない。重量と容積ともに圧縮される。肥料効果と品質が均一化される<ref name=manure201111>{{cite journal |author=三重県農業研究所 研究員 村上 圭一 |title=鶏ふんのペレットたい肥化による利用の促進 |pages=1-6 |date=2011年11月6日 |url=http://www.maff.go.jp/tokai/seisan/tikusan/manure/pdf/manure201111_6.pdf}}</ref>。
:* [[牛糞#堆肥|牛糞堆肥]]:牛糞堆肥の特性は、畜産牛が牧草や、繊維質の多い粗飼料を食すことに由来する。他の畜種由来の堆肥と比較して窒素分やリン分は少ないが、[[肥料の三要素]]のバランスが良いとされている<ref name=shiryo8>{{cite journal |author=滋賀県 |title=1 家畜ふん堆肥の利用 |journal=肥料節減に向けた技術対策集 |pages=51-55 |date=2008年9月 |url=http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/shiryo8.pdf}}</ref>。[[栄養素 (植物)#カルシウム|石灰]]はやや少ないが、[[栄養素 (植物)#ナトリウム|ナトリウム]]、[[栄養素 (植物)#塩素|塩素]]、[[栄養素 (植物)#ケイ素|珪酸]]の含量が高い。[[電気伝導度]](EC)は低く、C/N比は鶏糞や豚糞より高い。緩効性であり、土づくり資材として作付けの一月前に施用される。長期間にわたって持続的に肥料成分を供給する。乳牛の糞を原料とした場合、[[和牛]]のそれと比べて肥料成分は高い。島根県によると、牛糞堆肥は[[基肥]]としての利用に有利であり、野菜畑には基肥として2t/10a程度施用されることが望ましい<ref name=taihisetumei>[http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/seisan/kankyo_suishin/katikuhaisetubutu/index.data/taihisetumei.pdf たい肥の役割や主なたい肥の種類別特徴と使用方法(島根県)]</ref>。使用上の注意として、牛の飼料には雑草種子が混入している場合があり、発酵が不十分であると、牛糞に紛れていた雑草種子が発芽する。発酵熱による雑草種子や寄生虫卵の死滅には70~80度程度の温度が必要とされる<ref name=shiryo8 />。腐熟が不十分であると、例えば雑草の[[メヒシバ]]は50度未満の発酵熱でも96%発芽する<ref name=takabayashi1978>{{cite journal |author=高林 実 |author2=中山 兼徳 |title=主要畑雑草種子の土中における生存年限について |journal=雑草研究 |volume=23 |issue=1 |pages=32-36 |date=1978 |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed1962/23/1/23_1_32/_article/-char/ja/ |doi=10.3719/weed.23.32}}</ref>。このため、完熟堆肥が用いられる。
:* 豚糞堆肥:多くの場合、窒素分やリン酸といった肥料成分は牛糞堆肥より多く、鶏糞肥料より少ない。炭素量は牛糞堆肥と同程度であり、C/N比はより小さい。ECは牛糞堆肥より大きい<ref name=shiryo8 />。繊維質は牛糞堆肥よりも少なく、比較的微生物に分解されやすい。しかし、鶏糞肥料と比べて緩効性が高い。畑地への施用量は300-500kg/10aが推奨されている<ref name=taihisetumei />。過剰に施用すると肥料当たりが起こる。
:* 馬糞堆肥
; 動物の排泄物の焼却灰
:* 鶏糞動物の排泄物または堆肥を焼却した後に得られた:リンお。焼却にび加里質肥料として利用り有機物は完全に熱分解される。ており、焼却灰中に水分や炭素は全く存在せず、窒素成分ほとんど含まれていない。リンと加里は焼却前から濃縮されており、それらの供給源として利用される。[[灰分]]を多く含むため、[[塩基性]]を示す<ref name=taihisetumei />。
:* 鶏糞焼却灰(鶏糞灰):小林ら(2013)<ref name=kobayashi2013>{{cite journal |author=小林 透 |author2=田中 章浩 |title=バイオマス燃焼灰のリンの形態と肥効 |journal=九州沖縄農研 第76回 発表要旨集 |volume=76 |pages=19 |date=2013年8月 |url=http://www.naro.affrc.go.jp/org/karc/qnoken/yoshi/no76/76-p019.pdf}}</ref>によると、鶏糞灰中には牛糞灰中よりもリン酸の全濃度と[[ク溶性]]濃度、および加里の全濃度が高い。リン酸の肥効率は[[熔成リン肥]]や[[過リン酸石灰]]と同程度である。青森農林総研によると、鶏糞灰は[[栄養素 (植物)#銅|銅]]を300ppm以上含む<ref name=YS6>{{cite journal |author=青森農林総合研究所 |title=鶏糞灰(商品名:昔の知恵、アッシュ、ハイカリン)及び炭化鶏糞(商品名:鶏ふん炭化物、万能炭太郎)の肥効特性に応じたりん酸・カリの減肥 |journal=普及する技術・指導参考資料 |volume= |issue= |pages=- |date=2012 |url=http://www.applenet.jp/~nouken/promote/sakumoku/yasai/YS6.pdf}}</ref>。
:* 牛糞焼却灰(牛糞灰):小林ら(2013)<ref name=kobayashi2013 />によると、鶏糞灰中よりもリン酸濃度は低いが、牛糞灰で育てた[[小松菜]]の乾燥重量およびリン酸吸収量は鶏糞灰で育てたものよりも同等以上であった。[[過リン酸石灰]]で育てたものよりも乾燥重量が、[[熔成リン肥]]で育てたものよりもリン酸吸収量とリン肥効率は有意に高かった。牛糞灰中のリン酸はほとんど[[可給態]]であると考えられ、リン酸化学肥料の代替となり得る。
; 炭化動物糞
:* 炭化鶏糞:土壌改良材として使用される。窒素を2-3%含むが、この窒素分は無機化せず作物へと供給されない。リン酸は9%ほど含まれ、主に遅効性である。加里は8%ほどあり、遅効性と速効性の両方が存在する。[[栄養素 (植物)#亜鉛|亜鉛]]を600ppm以上含む。10a当たり300kg程度の施用では、土壌での亜鉛の蓄積量は少なく亜鉛の過剰害の心配はない<ref name=YS6 />。
; 加工家禽糞肥料
: 家禽の糞で、農林水産省告示第284号で指定される工程で加工されたものは加工家禽糞肥料と呼ばれ、登録有効期間6年の普通肥料として扱われる<ref name=kakokakinfun>[http://www.famic.go.jp/ffis/fert/kaisetu/kakokakinfun.pdf 加工家禽糞肥料の公定規格]</ref>。水分は20%以下で、窒素全量およびリン酸全量をそれぞれ2.5%以上並びに加里全量を1.0%以上含む<ref name=pocket />。
:* 硫酸等を混合して火力乾燥したもの。
:* 加熱蒸煮した後に乾燥したもの。