「電子伝達体」の版間の差分

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m 言葉の間違いとかoと0の打ち間違いとか、不勉強・・・
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この反応が、連鎖的に起きることによって酸化と還元が同時に別の電子伝達体で同時に発生し、電子伝達が行われる。
*A酸化型 + '''e<sup>-</sup>''' → '''A還元型''' + B酸化型 → A酸化型 + '''B還元型''' + C酸化型 → '''C還元型'''…
上記の反応の方向性は、[[酸化還元電位]]がいほうからいほうに流れる。すなわち、AからBには自然に電子は流れてもBからAに電子を流すにはエネルギーの投入が必要となる。
==酸化還元電位==
上記に出てきた[[酸化還元電位]](''E''<sub>o0</sub>)とは、電子伝達体の電子の受け取りやすさおよび放出しやすさの尺度である。一般に
*酸化還元電位が高い → 電子を放出し受け取りやすい
*酸化還元電位が低い → 電子を受け取り放出しやすい
すなわち、電子は酸化還元電位のいほうからいほうに流れる。なお、酸化還元電位の単位は[[ボルト]](V)であるために、エネルギー的には自然数の増加とは逆の表現となり、マイナス方向に大きいと『大』、プラス方向に大きいと『小』となる。
 
酸化還元電位の測定はその基準に、[[水素|H<sub>2</sub>]] → 2H<sup>+</sup> + 2e<sup>-</sup>という反応を用いるが、水素ガス1気圧、プロトン活量が1モル時の反応であり、生体内においてはこのような極限環境は存在しない(いわゆる[[pH]] = 0の状態)。したがって生体内を25℃、pH7.0としたときを標準状態としてそのときの酸化還元電位を標準中点酸化還元電位(''E''<sub>o0</sub>'あるいは''E''<sub>m,7</sub>)とする。電子伝達体の場合は単に酸化還元電位と書くと標準中点酸化還元電位を意味することが多い。[[呼吸鎖複合体]]の酸化還元電位を以下に示す。
*NADH → ''E''<sub>o0</sub>'= -0.32V
*FADH<sub>2</sub> → ''E''<sub>o0</sub>'= -0.22V
*ユビキノール → ''E''<sub>o0</sub>'= +0.10V
*シトクロムc → ''E''<sub>o0</sub>'= +0.25V
*[[最終電子受容体]]([[酸素]]) → ''E''<sub>o</sub>'= +0.82V
電子は上から下に流れ、各呼吸鎖複合体でプロトン濃度勾配を形成する(仕事)。形成されたプロトン濃度勾配を用いて[[ATP合成酵素]]でエネルギー保存を行なう。<br/>
酸化還元電位の詳細については、[[酸化還元電位]]を参照。
==電子伝達体のリスト==
電子伝達体はその構造や酸化還元電位で類別は行なわれていないが、大まかに存在している生物や電子伝達系によってある程度類別される。以下にそれらのリストと簡単な説明を提示しておく。
 
'''[[呼吸鎖複合体]]に使用される電子伝達体'''<br/>
*'''[[ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド|NAD<sup>+</sup>/NADH]]''':[[クエン酸回路]]から[[電子伝達系]]への電子伝達を担う主要な電子伝達体。[[ナイアシン]]を原料とする。二電子還元を受けるが中間体は生成しない。''E''<sub>o0</sub>'= -0.32V 詳細は[[ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド|NAD<sup>+</sup>]]を参照
*'''[[FMN|FMN/FMNH<sub>2</sub>]]''':[[呼吸鎖複合体]]ⅠのNADH還元活性を担う[[補欠分子族]]。[[ビタミンB2|ビタミンB<sub>2</sub>]]を原料とする。二電子還元を受けて中間型を形成する。''E''<sub>o0</sub>'= -0.22V
*'''[[FAD|FAD/FADH<sub>2</sub>]]''':クエン酸回路のコハク酸脱水素酵素の補欠分子族。ユビキノールに電子伝達を行なう活性を触媒する。FMNと同じくビタミンB<sub>2</sub>を原料とする。''E''<sub>o0</sub>'= -0.22V
*'''[[ユビキノン|ユビキノン(UQ)]]''':[[ミトコンドリア]]内膜に存在する電子伝達系内部の電子伝達体。[[ビタミンQ]]と呼ばれることもある。分子内に比較的長い炭素鎖を持つために[[有機溶媒]]で洗うと溶出する。''E''<sub>o0</sub>'= +0.10V 詳細は[[ユビキノン]]を参照
*'''[[シトクロム|シトクロム(Cyt)]]''':呼吸鎖複合体の一部や遊離して電子伝達体となる[[ヘム]]タンパク質。内部のヘムによって酸化還元電位が異なる。呼吸鎖で使用されるシトクロムcは''E''<sub>o0</sub>'= +0.25V 詳細は[[シトクロム]]、[[ヘム]]を参照
'''[[光合成]]で使用される電子伝達体'''<br/>
*'''[[ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸|NADP<sup>+</sup>/NADPH]]:NAD<sup>+</sup>'''と良く似た構造を持つが、残基の一部が[[リン酸]]に置換されている。[[光化学反応]]と[[カルビン-ベンソン回路]]を結ぶ電子伝達体。NAD<sup>+</sup>と同じくナイアシンを原料とし二電子還元を受けるが中間型を生成しない。''E''<sub>o0</sub>'= -0.32V 詳細は[[NADP]]を参照
*'''[[プラストキノン|プラストキノン(PQ)]]''':ユビキノンに良く似るが、細部の構造が異なっている。光化学系Ⅱからシトクロムb<sub>6</sub>/f複合体への電子伝達を担う。''E''<sub>o0</sub>'= +0.10V
*'''プラストシアニン(PCy)''':シトクロムb<sub>6</sub>/f複合体から光化学系Ⅰへの電子伝達を担う。銅を含むタンパク質であり青色。一電子還元を受ける。 ''E''<sub>o0</sub>'= +0.40V
*'''[[フェレドキシン|フェレドキシン(Fd)]]''':光合成以外にも多くの[[原核生物]]での電子伝達に用いられる[[鉄 - 硫黄クラスター]]を含むタンパク質。光化学系ⅠからNADP<sup>+</sup>への電子伝達に関与する。極めて低い酸化還元電位を持つ。 ''E''<sub>o0</sub>'= -0.43V
*'''[[葉緑素|クロロフィル(Chl)]]''':集光色素として良く知られるが、光化学系複合体内部のクロロフィルスペシャルペアでは電子伝達体として機能する。光化学系によって励起された電子をフェオフィチンに伝達する。詳細は[[クロロフィル]]を参照。
*'''フェオフィチン(Pheo)''':クロロフィルから[[マグネシウム]]が抜けた物質。光化学系複合体内部の電子伝達に関与する。光化学系複合体のフェオフィチンでは''E''<sub>o0</sub>'= -0.40V。詳細は[[クロロフィル]]を参照。
*'''チオレドキシン(Tr)''':光合成に関与する[[酵素]]の光活性化過程に関与する電子伝達体。[[RubisCO]]などはこの反応系で活性化される。フェレドキシンから電子を受容する。
'''そのほか原核生物などに使用される電子伝達物質'''<br/>
*'''メナキノン(MQ,MK)''':[[大腸菌]]等一般的な[[原核生物]]でユビキノンの代わりに使用される。[[光合成細菌]]の光化学系でもプラストキノンの代わりに使用される。別名[[ビタミンK]]
*'''カルダリエラキノン(CQ)''':''[[Sulfolobus属]]''など好熱性[[ユリアーキオータ]]の呼吸鎖複合体で使用される。