「イシュタル」の版間の差分

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雨音秋 (会話 | 投稿記録)
岡田朋子→岡田明子、ナムタン→ナムタル。
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文学性を編集。
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=== 華やかな神事 ===
神々への奉仕として捧げられるのは食物だけではない。華美な調度品、多くの建築物や神像、煌びやかな衣装、宝飾に彩られた装身具なども恵まれた。祭典、祝典、[[パレード]]も神事として神殿を中心に催され、音楽や歌や香で包まれる豪華な「奉仕」が執り行われた。これはエアンナに限らず、メソポタミア南部地方におけるバビロニア地域全土(ウルクはバビロニアのシュメール系都市国家)に共通する。神事では音楽の催し物がとりわけ重要とされ、埋葬儀礼や戦場の指揮でも奏でられていた。[[紀元前3000年]]のウルクの粘土板には弓型[[ハープ]]をかたどった絵文字が確認されており、[[紀元前2600年]]頃のウル出土の王墓からは装飾の施された[[ハープ]]や[[ライアー|リラ]]を携える楽士たちの姿が発見された<ref name="mesopota2">『メソポタミアの光芒』100~101</ref>。ハープを始めとする[[バイオリン]]や[[ギター]]などの弦楽器、[[トランペット]]や[[オーボエ]]などの管楽器は、メソポタミアで使われた楽器が原点であると言われている<ref name="mesopota2" />。
 
== 神々との関係 ==
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=== 解説 ===
前述で触れたように、双方の内容には差異がある。まずイシュタルが冥界へ下った理由として、『イシュタルの冥界下り』では夫ドゥムジの名は一切出てこない。このため、冥界の番人となったドゥムジを取り戻すつもりで下界を訪れとされるが、『イナンナの冥界下り』では姉エレシュキガルに代わり冥界を支配しようと思い立ったことが冥界へ赴い理由であると言わ考えられている<ref>『神の文化史辞典』ドゥムジ(タンムズ)の項目。p357</ref><ref>『シュメル神話の世界』p173</ref>。何より『イナンナの冥界下り』と比べて短編ながらも、より鮮明に冥界の様子が描かれている点は『イシュタルの冥界下り』を語る上で外せない話題となっている
 
以下、該当箇所。『イシュタルの冥界下り』から抜粋した矢島文夫による訳文。
『イナンナの冥界下り』と比べて短編ながらも、より鮮明に冥界の様子が描かれるようになったのが『イシュタルの冥界下り』であり、ギルガメシュ叙事詩の第7版における内容には重複部分が確認された。
 
以下、該当箇所。『イシュタルの冥界下り』から抜粋した矢島文夫による訳文。
 
{{Quotation|イルカルラエレシュキガルの別名の住まい、『暗黒の家』へ
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|ギルガメシュ叙事詩 付『イシュタルの冥界下り』より}}
 
なお、この内容は[[ギルガメシュ叙事詩]]の第7版において重複箇所が認められる。
 
=== 神話から見る死後の世界 ===
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=== 文学性 ===
『イシュタルの冥界下り』における解釈は、神話全体を1つの[[式文]]であるとする見方が正しいといわれている<ref>『ギルガメシュ叙事詩』p231</ref>。他、病人に対する快復祈願やイシュタルの神性に結びつけ、豊穣心願を示唆しているとの指摘も多い。
『イシュタルの冥界下り』はイシュタルの冥界訪問を軸に物語が進行していくが、後世にまで伝えられるようになったのは単に物語としての面白さがあったからではない。おもには作中で語られている冥界での様子に焦点が当てられている。冥界に関する捉え方から、当時のメソポタミア文明におけるシュメール人は、死後の暮らしに大変な関心があったとされている。[[死霊]]や[[死神]]がいる暗く乾燥した土地であるならば、死者が冥界で歓迎され清福に暮らすのは容易ではない。よって葬儀は大層に執り行い、供物を定期的に捧げることが、死者たちの暮らしを良くするのだという考えを持った。故人を弔う行為は死者に向けたものではあるが、残された者たちの思いを昇華させるための救済措置ともいえる。こういった生死観への答えを古代メソポタミアの編集者たちは既に導き出しており、哲学的にも興味深い神話として名を残すに至った。
 
== 脚注 ==