「ダクタイル鋳鉄」の版間の差分

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「鉄鋼:Iron and Steel」は[[炭素]]含有率で、[[鋳鉄]]などの「[[鉄]]:Iron」と「[[鋼]](はがね):Steel」とに分けられる。鋳鉄(Cast Iron)は炭素含有率が高いので、鋼より溶融温度が低く[[鋳造]]しやすい。また、鋳鉄中の炭素は固まるとき膨張して、全体の体積の縮みを補う。[[銑鉄]][[鋳物]]の歴史が紀元前まで遡るのは、これらの特性故である。ところで通常、鋳鉄が固まるとき、炭素は[[結晶]]化して裂け目状もしくはサツマイモ状の[[グラファイト]](Graphite:石墨・黒鉛)となる。つまり、[[析出]]したグラファイトに[[応力]]が集中しやすく脆いことが、銑鉄鋳物の最大の弱点であった。
 
このため、[[白鋳鉄]]に[[焼鈍]](しょうどん)を行い[[グラファイト]]組織を塊状に散在させることで[[強靭]]化する「'''黒心可鍛鋳鉄''':''[[材料記号#.E9.89.84.E9.8B.BC.E7.B3.BB.E6.9D.90.E6.96.99.E8.A8.98.E5.8F.B7|鉄鋼記号]]'' '''FCMB(Ferrum Casting Malleable Black)'''」が開発され、強靭性が求められる製品に採用されるようになった。但し黒心可鍛鋳鉄は、鋳造後に長時間の焼鈍工程を通るため、コストが割高となり、さらに肉厚製品には不適である。
 
1948年、H.Morrogh、W.J.Williamらが、接種法(鋳造する直前に非鉄[[元素]]を添加)により、溶湯にCe([[セリウム]])を加えて析出するグラファイトを球状化させることに成功した。これによりグラファイトへの[[応力集中]]の度合いは最小化し、銑鉄鋳物の脆弱性を克服することができた。なお翌年には、Ceより安価なMg([[マグネシウム]])を添加する製造方法がA.P.Gagnebin、K.D.Millisらにより発表された。これが「'''ダクタイル鋳鉄''':''鉄鋼記号'' '''FCD(Ferrum Casting Ductile)'''」である。なぜ、黒鉛が球状化するのか定説はないが、ある程度の脱酸によって発生の核を与えるものと考えられる。