「甲状腺癌」の版間の差分

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:ヨードは海藻類などに多く含まれるミネラル栄養素であり、血液中に入ったヨードのほとんどは甲状腺組織によって吸収される。放射線を出すヨードを作ってこれを内服すれば、放射性ヨードは甲状腺組織に集まり、甲状腺組織へ選択的に放射線を吸収させることが出来る。甲状腺由来の癌細胞にヨードを吸収する性質が残っていれば、この方法でリンパ節・肺などに転移した癌細胞に放射線を加えることが出来る。一般に正常な甲状腺組織の方が甲状腺由来の癌組織よりヨードの摂取が強いので、この治療を行うためには健康な甲状腺を全摘しておく必要がある。日本では主として転移が証明されている場合か強く疑われる場合に使用することが多いが、アメリカでは転移が証明されていない場合にも予防的に行われることが多い。この方針は近年見直されつつある。
*TSH抑制療法
:甲状腺ホルモンが不足すると下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、甲状腺にもっと働くように信号を送る。逆に甲状腺ホルモンが過剰な時はTSHは分泌されず、甲状腺は刺激を受けない。TSHが大量に分泌されると乳頭癌や濾胞癌は腫瘍の成長が早まることが知られている。このため、甲状腺ホルモンを過量に投与し、TSHを抑制することによって甲状腺癌の成長を抑制する治療方法がある。既に切除出来ない転移が証明されている場合、転移の成長を抑制するのに有効である。アメリカでは、転移が証明されていなくても、すべての甲状腺癌患者に予防的にTSH抑制療法を採用するべきだという意見が根強い。ただし、すべての甲状腺癌に等しく有効であるわけではなく、[[骨粗鬆症]]のリスクもあるため、早期手術できた例や予防的リンパ節切除を行った例では、転移が証明されるまでは、必ずしも必要ではないと考える専門家もいる
* 化学療法
TSHが大量に分泌されると乳頭癌や濾胞癌は腫瘍の成長が早まることが知られている。このため、甲状腺ホルモンを過量に投与し、TSHを抑制することによって甲状腺癌の成長を抑制する治療方法がある。既に切除出来ない転移が証明されている場合、転移の成長を抑制するのに有効である。アメリカでは、転移が証明されていなくても、すべての甲状腺癌患者に予防的にTSH抑制療法を採用するべきだという意見が根強い。ただし、すべての甲状腺癌に等しく有効であるわけではなく、[[骨粗鬆症]]のリスクもあるため、早期手術できた例や予防的リンパ節切除を行った例では、転移が証明されるまでは、必ずしも必要ではないと考える専門家もいる。
:抗癌剤を使用する化学療法は、一般に健康な組織に近い腫瘍には効果が低く、健康な組織に遠い腫瘍には効果が高い。悪性度の低い乳頭癌や濾胞癌は、比較的健康な組織に近く、抗癌剤の効果は低い。[[分子標的薬]]である[[ソラフェニブ]]は分化型甲状腺癌に適応がある。<ref>[https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201311/533773.html ソラフェニブが米国で甲状腺癌対象に適応拡大の承認] 日経メディカル 記事:2013年11月24日</ref>未分化癌は逆に悪性度が強すぎて抗癌剤の効果が低い。甲状腺由来の[[悪性リンパ腫]]にはR-CHOPなどの免疫化学療法が奏功する場合がある。
*化学療法
:抗癌剤を使用する化学療法は、一般に健康な組織に近い腫瘍には効果が低く、健康な組織に遠い腫瘍には効果が高い。悪性度の低い乳頭癌や濾胞癌は、比較的健康な組織に近く、抗癌剤の効果は低い。[[分子標的薬]]である[[ソラフェニブ]]は分化型甲状腺癌に適応がある。<ref>https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201311/533773.html</ref>未分化癌は逆に悪性度が強すぎて抗癌剤の効果が低い。甲状腺由来の[[悪性リンパ腫]]にはR-CHOPなどの免疫化学療法が奏功する場合がある。
*放射線外照射
:体外から局所的に放射線を照射する治療方法である。手術の補助療法、転移の増殖抑制などにしばしば利用される。
*その他の治療
:外科的切除の難しい転移巣の腫瘍縮小を目的に、局所的に[[エタノール]]を注入する経皮エタノール注入療法(PEIT)が用いられることがある<ref>家根旦有、上村裕和、田中治 ほか、[http://dx.doi.org/10.3950/jibiinkoka.101.565 頭頸部腫瘤に対する経皮的エタノール注入療法] 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol.101 (1998) No.4 P565, {{DOI|10.3950/jibiinkoka.101.565}}</ref>。その他多くの実験的治療が現在開発中である。
*集学的治療
:抗癌剤・手術・放射線などを組み合わせた複合型の治療を集学的治療という。甲状腺未分化癌などの非常に悪性度の高い癌に利用される。一部の専門施設では、さらに分子標的治療薬やHDAC阻害剤を加えて未分化癌に対して一定の成果を上げている<ref>野口仁志、内野眞也、村上司 ほか、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/33/2/33_128/_article/-char/ja/ 集学的療法によって寛解に至った甲状腺未分化癌3例] 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 Vol.33 (2016) No.2 p.128-134, {{DOI|10.11226/jaesjsts.33.2_128}}</ref>。また、少量の抗癌剤を毎週投与するウィークリー療法や、腫瘍を栄養する血管にチューブを埋め込み、高濃度の抗癌剤を局所投与する方法で未分化癌に良好な延命効果を報告している専門家もいる。
 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/33/2/33_128/_article/-char/ja/</ref>。また、少量の抗癌剤を毎週投与するウィークリー療法や、腫瘍を栄養する血管にチューブを埋め込み、高濃度の抗癌剤を局所投与する方法で未分化癌に良好な延命効果を報告している専門家もいる。
 
== 予後 ==