「権威に訴える論証」の版間の差分

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誤謬とされる「権威に訴える論証」は以下のような形式を基本とする。
 
# ''A'' さんが ''B'' と主張する。
# ''A'' さんに関して何らかのポジティブな面がある。
# したがって、''B'' という主張は真である。
 
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== 議論 ==
最も尊敬された[[古代ギリシア]]の哲学者の1人として[[ピタゴラス]]がいる。彼の弟子は、師の言葉を彼らの表明の根拠とする習慣で知られており、それを {{Polytonic|αὐτὸς έφη}} (''autos ephe'') または "he himself hath said it" と表現した。この風習は後の哲学者や聖職者にも受け継がれた。[[スコラ学]]の影響があったため、表現は[[ラテン語]]に翻訳され ''ipse dixit'' となった。
 
[[12世紀]]から[[15世紀]]にかけての[[中世]]において、[[アリストテレス]]の[[哲学]]は[[教養]]の基盤となり、議論においてはアリストテレスの信念を活用することが重要視された。中世後期の哲学においてはアリストテレスが中心と考えられていたため、彼は[[ラテン語]]で ''Ille Philosophus''(定冠詞付きの哲学者)と呼ばれ、アリストテレスの引用が ''ipse dixit'' と呼ばれるようになった。この場合、アリストテレスは哲学における権威の例だが、哲学は直接的証拠が見つかりにくい分野であり、そのためにアリストテレスの言葉には重みはあっても絶対的な言葉ではない。一方、天文学者は天文学の知識が豊富であり、例えば惑星の存在を直接的証拠で証明できる立場にあるので、全ての天文学者が海王星が存在すると信じていることが海王星の存在証明として働くという論証はより注目せずにはいられない。ただし、「天文学者が信じているから」よりも直接的証拠から論証する方が当然ながら好ましい。