「ピタゴラスコンマ」の版間の差分

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[[Image:Pythagorean comma (difference A1-m2).PNG|thumb|right|450px|ピタゴラスコンマはピタゴラス音律における全音階的半音と半音階的半音の差、あるいは異名同音の差として定義される。]]
'''ピタゴラスコンマ'''({{lang-en-short|Pythagorean comma}}、'''ダイトニックコンマ'''〈{{lang-en-short|Ditonic comma}}〉)は、[[楽器]]の[[調律]]に関する音楽用語であり、具体的には[[ピタゴラス音律]]による[[音階]]と、その[[オクターブ]]の違いによって生じる[[音高|ピッチ]]の誤差を指す。
 
'''ピタゴラスコンマ'''({{lang-en-short|Pythagorean comma}})、あるいはダイトニックコンマ<ref>[[シントニックコンマ]]の別名であるダイアトニックコンマと混同してはならない。Johnston B. (2006). ''"Maximum Clarity" and Other Writings on Music'', edited by Bob Gilmore. Urbana: University of Illinois Press. ISBN 0-252-03098-2.</ref>は、[[ピタゴラス音律]]における[[異名同音]]の差である小さな[[音程]](あるいはコンマ)であり、例えば C と B{{Music|#}}、あるいは D{{Music|b}} と C{{Music|#}}<ref>Apel, Willi (1969). ''Harvard Dictionary of Music'', p.188. ISBN 978-0-674-37501-7. "...the difference between the two semitones of the Pythagorean scale..."</ref>などの差である。これは531441:524288の周波数比に等しく、約23.46[[セント]]であり、おおむね半音の1/4である(75:74 と 74:73の間<ref>Ginsburg, Jekuthiel (2003). ''Scripta Mathematica'', p.287. ISBN 978-0-7661-3835-3.</ref>)。
== 要因 ==
 
ピタゴラスコンマは、ピタゴラスアポトメとピタゴラスリンマの差<ref>Kottick, Edward L. (1992). ''The Harpsichord Owner's Guide'', p.151. ISBN 0-8078-4388-1.</ref>(すなわちピタゴラス音律によって定義される全音階的[[半音]]と半音階的半音の差)、あるいは12の純正な完全五度と7[[オクターヴ]]との差、また3つのピタゴラスダイトーン(二全音)と1オクターヴとの差としても定義できる(これがダイトニックコンマと呼ばれる理由である)。
まず、ピタゴラス音律とは、ある数 <math>a</math> を <math>3</math> 倍したり <math>3</math> で割ったりして得られた値を、その <math>a</math> と同じオクターブの層( <math>1\leqq a \leqq 2</math> )に並ぶように、<math>{2^{n}}</math> で割ったり <math>{2^{n}}</math> 倍したりして、 <math>a</math> とのあいだに <math>{3^{m}}:{2^{n}}</math> の[[比]](上方に[[完全5度]])や <math>{2^{n}}:{3^{m}}</math> の比(下方に完全5度)を作り、そして、今度はその値を <math>b</math> として、また <math>3</math>倍したり <math>3</math> で割っては <math>a</math> と同じオクターブの層に並べる、ということをくり返して得られる[[音律]]だが、これを何回くり返しても、[[五度圏]]を[[時計回り・反時計回り|まわる]] <math>{3}</math> の[[冪乗|べき乗]]と、オクターブの層をそろえる <math>2</math> のべき乗が一致することは無いので、<math>\frac{3^{m}}{2^{n}}=2</math> が成立することはない。
 
ピタゴラス音律における[[減二度]]はリンマとアポトメの差と定義される。これはピタゴラスコンマの逆に一致し、下向きのピタゴラスコンマと見なすことができ(例:C{{Music|#}} から D{{Music|b}})、約&minus;23.46コンマである。
たとえば、ある周波数 <math>f</math> を <math>12</math> 回くり返して <math>\frac{3}{2}</math> 倍させると、その値はおよそ <math>129.75 f</math> となるが、これは[[平均律]]における <math>7</math> オクターブ目にあたる <math>{2^{7}} {f} = 128 f</math> よりも若干高い値だ。
 
== 要因導出 ==
よって、これを比率にすると……
上述のようにピタゴラスコンマは様々な方法によって導出される。
{| style="text-align:center" style="padding: 2em;"
|-
| style="border-bottom:1px solid black; text-align:center;" | 完全5度を積み重ねた <math>12</math> 段目
| rowspan="2" | <math>= \left(\frac{3}{2}\right)^{12}\Big/2^{7}= \frac{3^{12}}{2^{19}}= \frac{531441}{524288}= 1.0136432647705078125</math>
|-
| style="text-align:center;" | <math>7</math> オクターブ目
| となり、
|}
 
* ピタゴラス音律における2つの異名同音の差、 すなわち C と B{{Music|#}}、あるいは D{{Music|b}} と C{{Music|#}}の差など。
この差を、仮に平均律をもとにした単位である[[セント (音楽)|セント]]値であらわすと、 <math>\log_{2}\left(\frac{3}{2}\right)^{12}\times 1200 \approx 8423.46</math> だから、<math>7</math> オクターブ目(<math>8400</math>セント)との差は約<math>23.46</math>セント、つまり'''[[半音]]の約 <math>\frac{1}{4}</math> の高さ'''ということである。
* ピタゴラスアポトメとピタゴラスリンマの差。
* 12の純正な完全五度と7オクターヴとの差。
* 3つのピタゴラスダイトーン(二全音)と1オクターヴとの差
 
純正な完全五度は周波数比3/2である。これはピタゴラス音律において、ある音から他の音を得るのに用いる点でオクターヴとともに定義の基準となっている。
したがって、ピタゴラス音律を構成する数値をもとに円を描くと、英字による[[コンマ]]のような形になるため、これらを総称してピタゴラスコンマとよぶ。
 
アポトメとリンマはピタゴラス音律で定義される2種類の半音である。アポトメ(約113.69セント、例:C から C{{Music|#}})は半音階的半音、あるいは増一度であり、リンマ(約90.23セント、 例:C から D{{Music|b}}) は全音階的半音、あるいは短二度である。
<!--
== 注釈 ==
{{reflist|group="注"}}
-->
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== 脚注 ==
{{reflist}} -->
 
ダイトーン(あるいは長三度)は2つの全音からなる音程である。ピタゴラス音律では全音は約203.9セント(周波数比9:8)であり、ピタゴラスダイトーンは約407.8セントである。
== 参考文献 ==
 
{{Cite book|和書
{{Wide image|Octaves versus fifths Cuisenaire rods Pythagorean.png|1600px|7オクターヴ (7 × 1200 {{=}} 8400) と12の完全五度 (12 × 701.96 {{=}} 8423.52)、赤は1200、黒は701.96。|400px|center}}
|author = 小方 厚
{{Wide image|Octaves versus major thirds Cuisenaire rods Pythagorean.png|229px|1オクターヴ (1 × 1200 {{=}} 1200) と3ダイトーン (3 × 407.82 {{=}} 1223.46)、赤は1200、紫は407.82。|400px|center}}
|year = 2007
 
|title = 音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか
== 大きさ ==
|publisher = [[ブルーバックス]]
ピタゴラスコンマの大きさを[[セント]]値で表すと
|isbn = 978-4-06-257567-6
 
}}
:<math>\hbox{apotome} - \hbox{limma} \approx 113.69 - 90.23 \approx 23.46 ~\hbox{cents} \!</math>
 
より正確に周波数比で表すと
 
:<math>\frac{\hbox{apotome}}{\hbox{limma}}
=\frac{3^7/2^{11}}{2^8/3^5}
= \frac{3^{12}}{2^{19}}
= \frac{531441}{524288}
= 1.0136432647705078125
\!</math>
 
== ==
{{reflist|group="注"}}
 
== 関連項目 ==