「後天性免疫不全症候群」の版間の差分

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{{世界の疾病負荷}}
'''後天性免疫不全症候群'''(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん、'''A'''cquired{{lang-en|Acquired '''I'''mmuneimmune '''D'''eficiencydeficiency syndrome}}, '''SAIDS'''yndrome; '''AIDSエイズ'''))は、[[ヒト免疫不全ウイルス]](HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症のことで疾患<ref>{{Cite web |url=http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201305/2.html |title=ストップエイズ!今は「不治の特別な病」ではなく、コントロール可能な病気です。まずは早めに「HIV検査」を |publisher=政府広報オンライン |accessdate=2013-05-31}}</ref>実態。照屋勝治エイズを慢性ウイルス血症による「全身性炎症性疾患」としている<ref name=naika.102.3244>照屋勝治、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/12/102_3244/_article/-char/ja/ HIV治療の最前線] 日本内科学会雑誌 Vol.102 (2013) No.12 p.3244-3252, {{DOI|10.2169/naika.102.3244}}</ref>。一般に'''エイズ'''('''AIDS''')の略称で知られている。[[性行為感染症]]の一つ。
 
HIVに感染した時点ではAIDSの[[発症]]とは言えないが、ここではHIV[[感染症]]全般の事柄についても記述する。[[ウイルス]]としてのHIVについては[[ヒト免疫不全ウイルス|ヒト免疫不全ウイルス(HIV)]]を参照。
 
== 臨床像 ==
照屋勝治によると、エイズは単なる[[細胞免疫]]不全疾患では無く、実態は慢性ウイルス血症による「全身性炎症性疾患」で、としている。免疫力低下に伴い[[日和見感染]]を生じるほかHIVへの感染自体が、[[血管]]内皮障害の原因となり脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)や心血管疾患(心筋梗塞など)のリスクを上昇するとる<ref name=naika.102.3244 />。
 
=== 急性感染期 ===
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=== 無症候期 ===
多くの人は急性感染期を過ぎて症状が軽快し、概ね5 - 年から10年は無症状で過ごす。この間、見た目は健康そのものに見えものの、体内でHIVが盛んに増殖を繰り返す一方で。また、免疫担当細胞であるCD4陽性[[T細胞]]がそれに見合うだけ作られ、ウイルスがCD4陽性T細胞に感染し破壊するプロセスが繰り返されるため、見かけ上の血中ウイルス濃度が低く抑えられているという動的な平衡状態にある。無症候期を通じてCD4陽性T細胞数は徐々に減少していってしまう。無症候期にある感染者は[[無症候性キャリア]](AC)とも呼ばれる。
 
またこの期間に、自己免疫性疾患に似た症状を呈することが多いことも報告されている。他にも[[帯状疱疹]]を繰り返し発症する場合も多い。
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多くの場合、最初は全身倦怠感、体重の急激な減少、慢性的な下痢、極度の過労、帯状疱疹、[[過呼吸]]、[[めまい]]、発疹、口内炎、発熱、喉炎症、咳など、風邪によく似た症状のエイズ関連症状を呈する。また、顔面から全身にかけての[[脂漏性皮膚炎]]などもこの時期に見られる。大抵これらの症状によって医療機関を訪れ、検査結果からHIV感染が判明してくる。
 
その後、免疫担当細胞であるCD4陽性[[T細胞]]の減少と同時に、普通の人間生活ではかからないような多くの日和見感染を生じ、[[ニューモシスチス肺炎]](旧 カリニ肺炎)や[[カポジ肉腫]]、[[悪性リンパ腫]]、[[皮膚がん]]などの[[悪性腫瘍]]、[[サイトメガロウイルス]]による身体の異常等、生命に危険が及ぶ症状を呈してくる。また、HIV感染細胞が中枢神経系組織へ浸潤(しんじゅん)し、脳の神経細胞が冒されるとHIV脳症と呼ばれ、[[精神障害]]や[[認知症]]、ひどい場合は[[記憶喪失]]を引き起こすこともある。
 
通常、感染したと認められてから長期間経過した後に、以下の23の疾患(AIDS指標疾患という)のいずれかを発症した場合にAIDS発症と判断される。
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* [[壊疽]]
* [[クリプトコッカス症]]
* [[ニューモシスチス肺炎]](PC肺炎=旧カリニ肺炎)
* [[コクシジオイデス]]症
* [[ヒストプラズマ]]症
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== 感染経路 ==
{{出典の明記|date=2017年1月|section=1}}
HIVの初期症状は、[[発熱]]、[[リンパ節]]の腫れ、[[のど咽喉]]の痛み、[[だるさ]]、[[口内炎]]、[[発疹]]、慢性的な[[下痢]]、[[筋肉痛]]などであり、[[風邪]]や[[インフルエンザ]]の症状と全く変わらず、症状から感染を判断することは不可能である難しい。また、潜伏期間が1010年と長く感染に気付きにくい。よって、下記の感染の可能性のある行為の経験がある場合は、早めに[[保健所]]等での[[検査]]を受けることが重要となる。
 
[[HIV]]は通常の環境では非常に弱いウイルスであり、一般に普通の社会生活をしている分には感染者と暮らしたとしてもまず感染することはない。一般に感染源となりうるだけのウイルスの濃度をもっている体液は[[血液]]・[[精液]]・[[膣分泌液]]・[[母乳]]が挙げられる。一般に感染しやすい部位としては[[粘膜]](腸粘膜、膣粘膜、口腔粘膜など)、切創(せっそう)や刺創(しそう)などの血管に達するような深い傷などがあり、通常の傷のない[[皮膚]]からは侵入することはない。そのため、主な感染経路は以下の3つに限られている。
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== 治療 ==
現在、抗HIV薬は様々なものが開発され、著しにつ発展を遂げきている。基本的に多剤併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy:[[HAART療法]])にて治療は行われる。ただ完治・治癒に至ることは現在でも困難であるため、[[抗ウイルス薬]]治療は開始すれば一生継続する必要がある。
 
それでも現在では、HIV感染と診断されても、適切な治療を受ければ通常の寿命を全うすることが十分可能となっている<ref>[http://ameblo.jp/sound-grow/entry-10738393071.html CNNニュースの転載]</ref>。また、HAART療法は2000年初頭までは1年間に1万ドル以上がかかる非常に高額な治療法必要であったが、[[インド]]や[[タイ]]、[[ブラジル]]などで安価な[[ジェネリック]]薬が生産されるようになり、さらに世界最大のエイズ患者を抱える[[南アフリカ共和国]]がこうした薬を輸入できるよう定めた改正薬事法を1997年に施行し、これに対し提訴した製薬会社が2001年に和解に応じたことでエイズ治療薬価格の劇的なが大幅に低下が起きた。2001年末にはHAART療法に必要な薬価は年間350ドルにまで低下し、エイズ治療は貧困層にも手の届くものとなった<ref>「アフリカ経済論」p204-205 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷</ref>。
 
=== ガイドライン ===
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=== アフリカ ===
AIDSが最も猛威を振るっ発症している地域は[[サハラ砂漠|サハラ]]以南のアフリカ、いわゆる[[ブラックアフリカ]]である。2002年末においては全世界4200万人の患者のうち、アフリカが2940万人(70%)を占め、圧倒的に多い。同年のAIDS新規感染者は全世界で500万人、うちアフリカが350万人。同年のエイズ死亡者は全世界で310万人で、うちアフリカは240万人、77.4%を占めている<ref>「アフリカ経済論」p195-196 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷</ref>。このうち中東圏に属する北アフリカではAIDS患者がほとんどいないため、この数値のほとんどはブラックアフリカにおける数値である。その中でももっとも被害の激し患者数が多いのは[[南部アフリカ]]であり、上図にもあるように[[南アフリカ共和国]]、[[ナミビア]]、[[ボツワナ]]、[[スワジランド]]、[[レソト]]、[[ジンバブエ]]、[[ザンビア]]の7か国においては人口の15%以上が感染している。最も人口に対する感染率が高いのはボツワナであり、2001年末においては成人人口の38.8%がエイズに感染している。この影響により、上図のように南部アフリカ諸国においては1990年代以降AIDSによる死者の急増によって[[平均寿命]]が急速に落ち込み低下し、ボツワナにおいては20歳以上平均寿命が短縮してしまった。
 
1986年には[[ウガンダ]]が感染率5%を超えていたものの、それ以外に感染率5%を超えるような国はなく、感染者数の多い国もほぼアフリカ中部に限られていた。しかしその後感染者数は増加の一途をたどり、南部アフリカに向かって徐々に[[パンデミック]]は広がっていった。1991年にはウガンダ、ザンビア、ジンバブエで感染率が20%を超え、1996年にはボツワナ、スワジランド、レソトで20%を超え、2001年には上記の状況となったように、感染は急速に拡大していった。
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[[1985年]]、初めてAIDS患者が確認され、[[1989年]]2月17日、「[[後天性免疫不全症候群の予防に関する法律]]」が施行。当初は大半が凝固因子製剤による[[感染症]]例([[薬害エイズ事件]])だった。
 
新規HIV感染者数は世界でも特に少ない水準にあるが、年々増加する傾向にある。日本人患者・感染者の現状は、同性間性的接触(男性同性愛)による感染が多く、ついで異性間性行為による感染が続いている。静注薬物濫用や母子感染によるものは少ない<ref>{{cite web |url=http://api-net.jfap.or.jp/status/2014/14nenpo/hyo_02.pdf |title=平成26(2014)年エイズ発生動向年報 表2 平成26(2014)年末におけるHIV感染者及びAIDS患者の国籍別、性別、感染経路別累計 |publisher=厚生労働省エイズ動向委員会 |date=2015-05-27 |accessdate=2015-10-18}}</ref>。
 
== 歴史 ==