「元 (数学)」の版間の差分

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[[数学]]において'''元'''(げん、{{lang-en-short|''element''}})とは、[[集合]]を構成する個々の[[数学的対象]]のことである。[[ジュゼッペ・ペアノ]]の導入した記法<ref>Hans Freudenthal, « Notation mathématique », ''Dictionnaire des mathématiques – fondements, probabilités, applications'', Encyclopædia Universalis et Albin Michel, Paris 1998.</ref>に従えば、対象 {{mvar|x}} が集合 {{mvar|E}} の元であることを {{math|''x'' ∈ ''E''}} と書き表す。このとき対象 {{mvar|x}} が集合 {{mvar|E}} に'''属する'''(ぞくする、{{lang-en-short|membership}})、あるいは集合 {{mvar|E}} は対象 {{mvar|x}} を含む{{refnest|group="Note"efn|「含む」「含まれる」などの語は集合の[[包含関係]]などにも用いるため紛らわしい([[赤摂也]]は部分集合として含む、含まれるという代わりに「包む」「包まれる」とすることを提唱した<ref>{{cite book|和書| author= 松坂和夫 | title=集合位相入門 | publisher= 岩波書店 | year= 1968 | isbn=978-4000054249}}</ref>)。包含関係は帰属関係を用いて {{nowrap|「集合 {{mvar|A}} が集合 {{mvar|B}} に含まれる」}}{{nowrap| {{math|:}} 「{{mvar|A}} の任意の元が {{mvar|B}} の元として属す」}} と定めることができる。}}とも言う。
[[数学]]において'''元'''(げん、英: element)とは、[[集合]]を構成する個々の[[数学的対象]]のことである。
[[ジュゼッペ・ペアノ]]の導入した記法<ref>Hans Freudenthal, « Notation mathématique », ''Dictionnaire des mathématiques – fondements, probabilités, applications'', Encyclopædia Universalis et Albin Michel, Paris 1998.</ref>に従えば、対象 {{mvar|x}} が集合 {{mvar|E}} の元であることを {{math|''x'' ∈ ''E''}} と書き表す。
このとき対象 {{mvar|x}} が集合 {{mvar|E}} に'''属する'''(ぞくする、{{lang-en-short|membership}})、あるいは集合 {{mvar|E}} は対象 {{mvar|x}} を含む{{refnest|group="Note"|「含む」「含まれる」などの語は集合の[[包含関係]]などにも用いるため紛らわしい([[赤摂也]]は部分集合として含む、含まれるという代わりに「包む」「包まれる」とすることを提唱した<ref>{{cite book|和書| author= 松坂和夫 | title=集合位相入門 | publisher= 岩波書店 | year= 1968 | isbn=978-4000054249}}</ref>)。包含関係は帰属関係を用いて「集合 {{mvar|A}} が集合 {{mvar|B}} に含まれる」⇔「{{mvar|A}} の任意の元が {{mvar|B}} の元として属す」と定めることができる。}}とも言う。
 
「属する」という[[二項関係]]は、数学的対象と集合(あるいは一般に[[クラス (集合論)|クラス]])との間に定まる非[[対称関係|対称な関係]]('''帰属関係''')である。[[外延性の公理]]により、集合はそれに属する全ての数学的対象を指定することで[[特徴付け (数学)|特徴づけられる]]。
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通常用いられる{{仮リンク|集合論|en|set theory|preserve=1}} {{仮リンク|ツェルメロ=フレンケル集合論|en|Zermelo-Fraenkel set theory|label=ZF}} においては[[基礎の公理]]が述べるところによって帰属関係は[[整礎関係|整礎]]、すなわち任意の集合は自身を元として含むことはない(帰属関係は[[反対称関係]]である)。しかし、基礎の公理の代わりに{{仮リンク|反基礎の公理|en|anti-foundation axiom}}を置く{{仮リンク|反基礎集合論|en|Non-well-founded set theory|label=他の集合論}}ではそのような制約を受けない{{仮リンク|超集合|en|hyperset}}が存在し得る。
 
帰属関係は[[推移関係|推移的]]でない<ref group="Note">{{efn|が、特定の集合からなる部分類の上に限れば推移的となり得る。よく知られる例としては[[順序数]]全体の成す類がある。</ref>}}。これは集合の[[包含関係]]がそうであることと対照的である。
 
== 素朴な説明 ==
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と述べられる。このある種漠然とした定義においても、直観的な[[集合論]]を展開することはできる([[集合]]あるいは{{仮リンク|素朴集合論|en|naive set theory|preserve=1}}の項を参照)。
 
例えば、集合 {{math|''M'' {{=}} {{mset|1, 2, 3} }}} に対し、{{math|1, 2, 3}} は各々 {{mvar|M}} の元である。ここで、「元であること」と「[[部分集合]]であること」を混同してはならない。先の例であれば {{math|{{mset|1, 2} }}} や {{math|{{mset|3} }}} などは {{mvar|M}} の部分集合だが {{mvar|M}} の元ではない<ref group="Note">{{efn|少なくとも、 {{math|{{mset|1, 2}} ≠ 1}}, {{math|{{mset|1, 2}} ≠ 2}}, {{math|{{mset|1, 2}} ≠ 3}}, {{math|{{mset|3}} ≠ 1}}, {{math|{{mset|3}} ≠ 2}}, {{math|{{mset|3}} ≠ 3}} などが証明できる。</ref>}}
 
== 定義 ==
[[形式論理]]に基づく現代的な[[集合論]]は、([[等関係]] {{math|{{=}}}} 以外に)一つの{{仮リンク|述語 (数理論理学)|label=述語|en|Predicate (mathematical logic)}}記号(二項述語 {{math|∈}})を含む一階述語論理で記述される<ref>Voir {{Cori-Lascar II}}, chapitre 7, p. 113-114 notamment</ref>。
 
そのような記述法のもとで、文「{{mvar|x}} は {{mvar|M}} の元である」は式
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== 元素 ==
最もよく用いられる ZFC 集合論では全ての元がそれ自身集合として実現されるが、別の集合論では必ずしもそうではない。集合の元であって、かつそれ自身は集合として実現されないような元を'''原子''' (atom) あるいは {{仮リンク|urelement|label=ur-&shy;element|en|urelement}}(根源的元/原要素/原始元/基本元素) と呼ぶ。
 
そのような場合においては、必ずしも集合でないような対象に対しても、考えている数学的体系に属する対象であることを以って「元」と呼ぶ方が自然である。数、点、函数など(これらは集合として実現できる)と言った従来の数学的体系の殆どに加えて、星、分子、カエルなどもその体系における「元」ということになる<ref>Ces trois suggestions sont proposées par {{Ouvrage
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== 注釈 ==
{{reflist|group="Note注釈"}}
 
== 参考文献 ==