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==化学的性質==
===変性===
核酸や[[蛋白質]]などの巨大分子に起こる現象の一つで、一般的に二次以上の構造に関係している非共有結合交互作用の破壊を指し、核酸の場合では二本鎖から一本鎖の変換を意味し、<ref group="注">蛋白質の変性については[[変性#変性_生体高分子]]参照</ref>慣用的に'''融解'''といわれる。変性の化学的外因は紫外線、熱、加圧、攪拌、酸・塩基、溶媒のイオンなどである。これらのような刺激を与え続ければ、核酸の螺旋構造(以下、単に螺旋構造といえば二重螺旋の二次構造を指し、螺旋分子といえばその構造を持った核酸分子を意味する)は解けてゆき、最終的には平行していた鎖が完全に解離し、一本鎖となるだろう。この[[遷移]]の所要時間をその螺旋構造の''安定性''といえる。鎖の解離は対向塩基間の[[水素結合]]の切断によって進行するが、G/C塩基対の3本の結合より、A/T塩基対の2本の塩基対の破壊が容易であることは明らかである。[[スタッキング相互作用]]も安定性に関わるが、それは<math>- \Delta G_{37}^\circ</math>の項で詳述する。
 
また、溶液の[[イオン強度]]にも影響を受ける。螺旋分子の主鎖には負電荷を持つ[[リン酸基]]があり、2本の鎖上のこれらの負電荷は互いに近くにあるので、遮蔽されていなければ鎖同士を反発させようとし、分離を促す。イオン濃度が高いと、陽イオンによって負電荷を遮断し、螺旋は安定化される。
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====T<sub>m</sub>の値====
<ref group="参考文献">N. K. カチェトコフ/E. I. ブドフスキー 編、橋爪たけし 監訳「核酸の有機化学 上」 1974年 講談社出版</ref>
 
'''融解温度'''という。螺旋分子溶液を徐々に加熱すると、そのポリヌクレオチドに特異的な一定の温度範囲内で、その溶液の性質が急変する。温度の増加に伴う種種の性質の変化は螺旋構造の崩壊の進行に比例する。加熱前の螺旋分子の温度と、変性完了の瞬間の温度の、中間の温度が融解温度なのである。熱変性には[[旋光度]]や[[粘度]]の減少、[[沈降定数]]の増大などを伴うが、この遷移の経過の検出に最も広く用いられる変化は[[吸光度]]の増加である。そこで、吸光度の観測実験を例に取り上げ、T<sub>m</sub>の具体的な説明をする。
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について特に解説することはない。以下に、両者の変性過程に共通して関わることを述べる。
 
螺旋分子の変性の遷移過程の特徴として、[[変性|native]]の状態から変性状態へ遷移するときの遷移間隔の幅(⊿T<sub>m</sub>、⊿pH<sub>m</sub>)があげられる。螺旋分子の変性過程を、上で示した吸光度の観測実験のように解析した結果において、1-θ曲線に対する点での接点が、直線1-θ=1(全変性)、および1-θ=0(未変性)と交差する温度の差から求められる。これは遷移の'''協力性'''<ref group="注">{{lang|ru|КООПБРАТИВНОСТЬ}}の暫定的和訳。英語ではcooperativeness</ref>、すなわち温度(pH)の上昇に伴う螺旋構造の要素のすべてが崩壊する同時性の度合いを反映する。螺旋構造がある温度で同時に消失するとき、⊿T<sub>m</sub>(⊿pH<sub>m</sub>) = 0となる。DNAは決してそのような融解はしない。
 
今まで二重螺旋のことばかり扱ってきたが、核酸には一重や、三重、四重螺旋も存在し、また部分的に二重螺旋を持つ三次構造も存在する。それらと比べ、単一の種類の螺旋分子の未変性温度およびpHは極めて低く、また⊿T<sub>m</sub>は特徴的に低い(3〜7℃)ので、他の構造とほとんど区別できる。
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'''構造安定エネルギー'''という。上で示した通り、螺旋構造の安定性はG/C含量に依存することを述べたが、実はそれだけでなく、スタッキング相互作用も関与している。水素結合は螺旋の軸に垂直に、スタッキング相互作用はほぼ平行に形成されるため、両者の、安定性への寄与を分けて考えることが可能である。<math>\Delta G_{37}^\circ</math>は37度における構造形成の[[自由エネルギー]]を意味し、<math>- \Delta G_{37}^\circ</math>は水素結合とスタッキング相互作用の両者の寄与から予想された、安定性の指標の一つである。
 
この指標はI. Tinocoら<ref group="注">I. Tinoco, Jr., O. C. Uhlenbeck, M. D. Levine</ref>が1971年に'''最塩基対モデル'''として提案され、このモデルは「核酸の塩基対形成に関して最も影響を与えるのは既に生成している隣の塩基対である」という考えを基本にしている。なぜなら、水素結合の強度は1塩基対における二つの塩基の組み合わせに決定され、スタッキング相互作用は距離の6乗に反比例するので、ある塩基対と隣接塩基対のさらに隣の塩基対との間に働く力は無視できると考えられるためである。すなわち、螺旋構造の安定性は、隣接する塩基対の足し合わせによって求められると考えられた。
 
螺旋構造において可能な最近接塩基対の組は、DNA/DNAおよびRNA/RNAで10種類、DNA/RNAで16種類である。<ref group="参考文献">下の図のアイディアは杉本直己「遺伝子化学」2002年 p36 に書かれている図3.9から流用</ref>
## DNA/DNA二重螺旋
DNA<math>\rightarrow</math> <math>\rightarrow</math> <math>\rightarrow</math> <math>\rightarrow</math> <math>\rightarrow</math> <math>\rightarrow</math>
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もし螺旋構造の安定性がこのモデルに従えば、異なる塩基配列を持つ螺旋分子同士でも、同じ最近接塩基対の組成を持つのなら安定性は等しい。最近接塩基対モデルから、上図に示した最近接塩基対の組の構造安定エネルギーの実験的測定の網羅から、構造安定性は解読されている。
 
== ==
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{{Reflist|group=== 注釈}} ===
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==参考文献= 出典 ===
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== 関連項目 ==
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== 外部リンク ==
{{Wiktionary|核酸}}
*[http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?562 核酸 (DNA, RNA) - 「健康食品」の安全性・有効性情報] ([[国立健康・栄養研究所]])
*[http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/misc/naseq.html Nomenclature for Incompletely Specified Bases in Nucleic Acid Sequences]
 
{{核酸}}
 
{{核酸}}
{{Wiktionary|核酸}}
{{DEFAULTSORT:かくさん}}
 
[[Category:生化学]]
[[Category:栄養素]]