「殺処分」の版間の差分

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{{国際化|date=2013年9月|領域=[[日本法]]}}
{{出典の明記|date=2014年3月}}
[[File:Intracardial-injection-rat.JPG|thumb|right|300px|注射を受け殺処分される動物]]
'''殺処分'''(さつしょぶん、さっしょぶん)とは、不要な、もしくは人間に害を及ぼす[[動物]]を[[殺害]]することである。
 
== 犬猫等の引き取りにおける処分 ==
法律上は[[家畜伝染病予防法]]のみに書かれている用語だが、近年は以下にある政令「動物の殺処分方法に関する指針」などの表題に用いられたため、このような広い意味で使用されるようになった。
=== イギリス ===
イギリスでは、王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals:RSPCA)、バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム(Battersea Dogs and Cats Home)、ドッグズ・トラスト(Dogs Trust)、キャッツ・プロテクション(Cats Protection)などが動物保護施設を運営し、飼い主斡旋等を行っている<ref name="NO830" />。イギリスの動物保護団体を対象とした[[2010年]]の調査では、動物保護施設における捨て犬・猫等の年間受入頭数は、犬が9〜13万頭、猫が13〜16万頭であり、そのうち施設で殺処分される割合は、犬が10.4%(1〜1.3万頭)、猫が 13.2%(1.7〜2万頭)と推定されている<ref name="NO830" />。
 
野良犬(stray dogs)については、基本的には自治体が7日間留置し、その間に所有者が見つからなければ、新たな飼い主への譲渡、民間の動物保護施設等への譲渡、殺処分のいずれかとなる<ref name="NO830" />。2012年度に全英の自治体が扱った野良犬の数は、年間約11万2千頭で、その8%にあたる約9千頭が自治体により殺処分となっている<ref name="NO830" />。
[[日本]]においては殺処分方法は[[政令]]<ref name="動物の殺処分方法に関する指針">{{PDFlink|[http://web.archive.org/web/20110607055402/http://www.jaws.or.jp/documents/welfare/law/law_8.pdf 動物の殺処分方法に関する指針]}} 平成7年7月4日 総理府告示第 40 号(2011年6月7日時点の[[インターネット・アーカイブ|アーカイブ]])</ref>に定められており、対象となる動物は[[動物の愛護及び管理に関する法律|動物愛護法]]第44条4項に定められた家庭動物、展示動物、実験動物、産業動物が対象<ref>{{Cite web |url=http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/baseline.html |title=動物の適正な取扱いに関する基準等 |work=動物愛護管理法 |publisher=環境省自然環境局 |accessdate=2013-9-12}}</ref>であり、すなわち人が所有する動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものが対象となる<ref>動物の殺処分方法に関する指針では、対象動物以外の動物を殺処分する場合においても同政令の趣旨を配慮する努力義務を定めている(同政令、補則2)。」</ref>。
 
=== ドイツ ===
例えば[[動物実験]]が終了した後の[[実験動物]]、伝染病まん延防止の目的で[[狂犬病予防法]]や家畜伝染病予防法に指定された伝染病に罹患している[[家畜]]・[[家禽]]を殺す場合、もしくは非常事態において人間の管理下に置けなくなる(なった)猛獣等を殺す場合にもちいられる。
ドイツでは、国内の500 か所以上の動物保護施設ティアハイム(Tierheim)が飼い主斡旋等を行っている<ref name="NO830" />。ドイツ動物保護連盟はティアハイムの運営指針で基本的に殺処分してはならないと定めているが、治る見込みのない病気やけがで苦しんでいる動物については動物福祉の観点から獣医師による安楽死が行われている<ref name="NO830" />。
 
他方、ドイツ連邦狩猟法22は、狩猟動物を保護する目的で野良犬・猫の駆除を認めており、その頭数は年間猫40万頭、犬6万5千頭に達すると指摘する動物保護団体もある<ref name="NO830" />。
なお、食用を目的として家畜を殺す場合には「[[屠殺|と殺]]」または「と畜」と表現され、殺処分という表現は使用されない<ref>食用以外でも、家畜伝染病の[[口蹄疫]]に感染したブタ類などの場合は、「と殺指示書」というものが発行されて殺処分が行われる。</ref>。
 
=== 方法アメリカ ===
アメリカでは、自治体が運営する公共の動物保護施設のほか、全米人道協会(Humane Society of the United States: HSUS)、米国動物虐待防止協会(The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals: ASPCA)、ベストフレンズ・アニマルソサエティ(Best Friends Animal Society)、アレイ・キャット・アライズ(Alley Cat Allies)などの民間の動物保護団体の施設がある<ref name="NO830" />。
政令「動物の殺処分方法に関する指針」<ref name="動物の殺処分方法に関する指針" />で、「化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。」と定めている。また「苦痛」とは省令<ref>{{Cite report |author=環境省 |date=2007-11-12 |title=動物の殺処分方法に関する指針 |url=http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/shobun.pdf |format=PDF |others=環境省告示第105号}}</ref>で「痛覚刺激による痛み並びに中枢の興奮等による苦悩、恐怖、不安 及びうつの状態等の態様をいう。」(同省令 第2(4))と定められている(具体例については後述する)。
 
全米人道協会(HSUS)の統計では、1970年代には1200〜2000万頭もの犬猫が殺処分となっていた<ref name="NO830" />。全米人道協会(HSUS)の2012〜2013年の推計では全米の動物保護施設に入居する年間600〜800万頭の犬猫の約4割に相当する年間約270万頭の犬猫が殺処分になっているとみられている<ref name="NO830" />。
== 実態 ==
日本国内の保健所等による年間の殺処分数は、犬は約1.6万頭、猫は約6.7万頭である(平成27年度環境省統計)。
 
=== 実態日本 ===
愛護動物に関する殺処分は、法令により「処分することができる(狂犬病予防法)」「譲渡し及び殺処分とする(犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置)」と自治体に処分する権利を与えているだけであり、必ず殺処分しなければならない義務があるわけではない。
日本では[[動物の愛護及び管理に関する法律]](動物愛護法)で都道府県等は、犬又は猫の引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならないとしている(第35条1項)。ただし、犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第七条第四項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。
 
[[2012年]](平成24年)には動物の愛護及び管理に関する法律が一部改正され、都道府県知事等は引き取った犬猫の飼い主斡旋等に努めるとする規定(第35条第4項)が盛り込まれた<ref name="NO830">[http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8748098_po_0830.pdf 諸外国における犬猫殺処分をめぐる状況―イギリス、ドイツ、アメリカ― 調査と情報 No.830] 国立国会図書館、2017年2月1日閲覧</ref>。
 
都道府県等が引き取った犬猫の殺処分頭数は1974年度(昭和49年度)には122万頭であった<ref name="NO830" />。処分頭数は減少しているものの、日本国内の保健所等による年間の殺処分数は、犬は約1.6万頭、猫は約6.7万頭であとなっている(平成27年度環境省統計)。
 
2014年6月3日、日本の[[環境省]]は、殺処分されている犬・猫について、将来的にゼロにするための行動計画を発表した<ref>[http://www.jiji.com/jc/zc?k=201406/2014060300469 犬猫殺処分ゼロへ計画=モデル地区を選定-環境省]時事ドットコム 2014年6月3日</ref>。
 
==== 過程方法 ====
[[日本]]においては殺処分方法は[[政令]]<ref name="動物の殺処分方法に関する指針">{{PDFlink|[http://web.archive.org/web/20110607055402/http://www.jaws.or.jp/documents/welfare/law/law_8.pdf 動物の殺処分方法に関する指針]}} 平成7年7月4日 総理府告示第 40 号(2011年6月7日時点の[[インターネット・アーカイブ|アーカイブ]])</ref>に定められており、対象となる動物は[[動物の愛護及び管理に関する法律|動物愛護法]]第44条4項に定められた家庭動物、展示動物、実験動物、産業動物が対象<ref>{{Cite web |url=http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/baseline.html |title=動物の適正な取扱いに関する基準等 |work=動物愛護管理法 |publisher=環境省自然環境局 |accessdate=2013-9-12}}</ref>であり、すなわち人が所有する動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものが対象となる<ref>動物の殺処分方法に関する指針では、対象動物以外の動物を殺処分する場合においても同政令の趣旨を配慮する努力義務を定めている(同政令、補則2)。」</ref>。
=== 捕獲(犬のみ)・引き取り・収容 ===
 
政令「動物の殺処分方法に関する指針」<ref name="動物の殺処分方法に関する指針" />で、「化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。」と定めている。また「苦痛」とは省令<ref>{{Cite report |author=環境省 |date=2007-11-12 |title=動物の殺処分方法に関する指針 |url=http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/shobun.pdf |format=PDF |others=環境省告示第105号}}</ref>で「痛覚刺激による痛み並びに中枢の興奮等による苦悩、恐怖、不安 及びうつの状態等の態様をいう。」(同省令 第2(4))と定められている(具体例については後述する)。
 
==== 捕獲(犬のみ)・引き取り・収容 ====
各自治体の[[保健所]]、もしくは各[[都道府県]]や[[政令指定都市]]が管理運営する動物愛護施設(自治体により名称は異なる)が行う。公共施設であるため従事者はその自治体の職員(=[[公務員]])であり、現場での捕獲等に従事する[[現業]]職員のほか、動物の健康管理に従事する[[獣医師]]により構成される。
 
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なお、平成27年度の環境省の統計資料によると、飼い主からの引き取りは犬が14%(6,462頭)、猫が16%(14,061頭)である。
 
==== 収容日数 ====
[[狂犬病予防法]]により定められた公示期間は2日間であるが、収容期間は法令によって定められておらず、実際の収容期間は各自治体の[[条例]]に基づいた日数であり{{要出典|date=2013年2月}}、各自治体により様々である。その間に捕獲・収容した地域、動物の種類・品種・性別・毛色・首輪の有無及びその他の特徴といった内容を、収容された地域の市役所の掲示板に公示することで飼い主が名乗り出るのを待つことになる。
 
==== 処分 ====
動物の愛護と管理に関する法律第35条5項によって定められた、犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置第4で定められている「処分」とは、殺処分の他に譲渡処分とされており、飼い主への返還や[[里親]]募集業務による希望者への譲渡も含めた「愛護施設から出て行く全ての事例」を指している。
 
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*家畜銃([[:en:Captive bolt pistol|Captive bolt pistol]]):牛
 
==== 家畜伝染病の感染拡大おけ処分 ====
=== 日本 ===
日本においては、[[家畜伝染病予防法]]により指定されている法定の[[家畜伝染病予防法#家畜伝染病(法定伝染病)|家畜伝染病]]に罹患した動物については、感染拡大の防止、経済的な悪影響などの副次的被害の防止という観点から、行政手続による速やかな摘発淘汰、すなわち殺処分が実施されることになっている。