削除された内容 追加された内容
新規作成 (会話 | 投稿記録)
en:Quotient_group&oldid=726415849
タグ: サイズの大幅な増減
Gsubmodal (会話 | 投稿記録)
m lk
1行目:
{{Group theory sidebar |Basics}}
[[数学]]において,'''商群'''(しょうぐん,{{lang-en-short|quotient group, factor group}})あるいは'''剰余群''''''因子群'''とは,群構造を保つ[[同値関係]]を用いて,大きい群から似た元を集めて得られる[[群 (数学)|群]]である.例えば,[[合同算術|{{mvar|n}} を法とした加法]]の[[巡回群]]は,[[整数]]から,差が {{mvar|n}} の倍数の元を同一視し,そのような各類([[合同類]]と呼ばれる)に1つの実体として作用する群構造を定義することによって得られる.[[群論]]と呼ばれる数学の分野の一部である.
 
群の商において,[[単位元]]の[[同値類]]はつねにもとの群の[[正規部分群]]であり,他の同値類たちはちょうどその正規部分群の[[剰余類]]たちである.得られる商は {{math|''G'' / ''N''}} と書かれる,ただし {{mvar|G}} はもとの群で {{mvar|N}} は正規部分群である.(これは「{{math|''G'' mod ''N''}}(ジーモッドエヌ)」と読まれる."mod" は modulo の略である.)
 
商群の重要性の多くはその[[群準同型|準同型]]との関係に由来する.[[同型定理#第一同型定理|第一同型定理]]は任意の群 {{mvar|G}} の準同型による[[像 (数学)|像]]はつねに {{mvar|G}} のある商と[[群同型|同型]]であると述べている.具体的には,準同型 {{math|''φ'': ''G'' → ''H''}} による {{mvar|G}} の像は {{math|''G'' / ker(''φ'')}} と同型である,ただし {{math|ker(''φ'')}} は {{mvar|φ}} の[[核 (代数学)|核]] を表す.
 
商群の[[双対 (数学)|双対]]概念は[[部分群]]であり,これらが大きい群から小さい群を作る2つの主要な方法である.任意の正規部分群 {{mvar|N}} は,大きい群から部分群 {{mvar|N}} の元の間の差異を除去して得られる,対応する商群を持つ.[[圏論]]では,商群は[[商対象]]の例であり,これは[[部分対象]]の[[双対 (圏論)|双対]]である.商対象の他の例は,[[商環]],[[商線型空間]],[[商位相空間]],[[商集合]]を参照.
 
==定義と説明==
[[群 (数学)|群]] {{mvar|G}} と部分群 {{mvar|H}} と,{{mvar|G}} の元 {{mvar|a}} が与えられると,対応する左[[剰余類]] {{math|1=''aH'' := {{mset| ''ah'' : ''h'' in ''H'' }}}} を考えることができる.剰余類は群の部分集合の自然な類である;例えば,[[整数]]全体のなすアーベル群 {{mvar|G}} と偶数全体からなる部分群 {{mvar|H}} を考えよう.するとちょうど2つの剰余類があり,1つは {{math|0 + ''H''}} で,偶数全体からなり,もう1つは {{math|1 + ''H''}} で,奇数全体からなる(ここで二項演算には乗法的ではなく加法的な表記を用いている).
 
一般の部分群 {{mvar|H}} に対して,すべての剰余類 {{math|{{mset| ''aH'' : ''a'' in ''G'' }}}}からなる集合に協調的な群演算を定義することが望ましい.これは以下に見るように {{mvar|H}} が[[正規部分群]]であるときにちょうど可能である.群 {{mvar|G}} の部分群 {{mvar|N}} が正規であるとは,{{mvar|G}} のすべての元 {{mvar|a}} に対して剰余類の等式 {{math|1=''aN'' = ''Na''}} が成り立つことをいう.{{mvar|G}} の正規部分群は {{math|''N'' ◁ ''G''}} と書かれる.
 
===定義===
27行目:
例えば,6を法とした加法の群 {{math|1=''G'' = {{mset|0, 1, 2, 3, 4, 5}}}} を考えよう.部分群 {{math|1=''N'' = {{mset|0, 3}}}} を考える.これは {{mvar|G}} が[[可換群|可換]]だから正規である.すると(左)剰余類全体の集合は3元からなる:
 
:{{math|1= ''G''/''N'' = {{mset| ''aN'' : ''a'' ∈ G }} = {{mset| {{mset|0, 3}}, {{mset|1, 4}}, {{mset|2, 5} }}} = {{mset| 0 +N ''N'', 1 + ''N'', 2 +N ''N''}}.}}
 
上で定義された二項演算はこの集合を商群と呼ばれる群にし,この場合位数 3 の[[巡回群]]に同型である.
49行目:
{{mvar|G}} が可逆 3 × 3 実[[行列]]全体の乗法群で,{{mvar|N}} がその[[行列式]] 1 の部分群であるとき,{{mvar|N}} は {{mvar|G}} において正規である(なぜなら行列式を取る[[群準同型|準同型]]の[[核 (代数学)|核]]なので).{{mvar|N}} の剰余類は与えられた行列式を持つ行列全体の集合であり,したがって {{math|''G''/''N''}} は非零実数のなす乗法群に同型である.群 {{mvar|N}} は[[特殊線型群]] {{math|SL(3)}} と呼ばれる.
 
アーベル群 {{math|1='''Z'''<sub>4</sub> = '''Z'''/4'''Z'''}}(すなわち 4 を法とする加法をもつ集合 {{math|{{mset|0, 1, 2, 3}}}})とその部分群 {{math|{{mset|0, 2}}}} を考える.商群 {{math|'''Z'''<sub>4</sub>/{{mset|0, 2}}}} は {{math|{ { mset|{{mset|0, 2 }}, { {mset|1, 3 } } }}}} である.これの群の単位元は {{math|{{mset|0, 2}}}} であり,群の演算は {{math|1={ {mset|0, 2 }} + { {mset|1, 3 }} = { {mset|1, 3 } }}} などとなる.部分群 {{math|{ {mset|0, 2 } }}} と商群 {{math|{ { mset|{{mset|0, 2 }}, { {mset|1, 3 } } }}}} はともに {{math|'''Z'''<sub>2</sub>}} に同型である.
 
乗法群 <math>G=\mathbf{Z}^*_{n^2}</math> を考える.{{mvar|n}} 乗剰余の集合 {{mvar|N}} は <math>\mathbf{Z}^*_{n}</math> に同型な乗法的部分群である.このとき {{mvar|N}} は {{mvar|G}} で正規であり,商群 {{math|''G''/''N''}} は剰余類 {{math2|''N'', (1+''n'')''N'', (1+''n'')<sup>2</sup>''N'', ..., (1+''n'')<sup>''n''−1</sup>''N''}} である.[[Paillier暗号]]は {{mvar|G}} のランダムな元の剰余類を {{mvar|n}} の因数分解を知らずに決定することは難しいという[[予想]]に基づいている.
58行目:
{{math|''G''/''N''}} の[[群の位数|位数]],すなわち元の個数は,{{math|{{mabs|''G'' : ''N''}}}}, {{mvar|N}} の {{mvar|G}} における[[部分群の指数|指数]]に等しい.{{mvar|G}} が有限ならば,指数は {{mvar|G}} の位数を {{mvar|N}} の位数で割ったものにも等しい.{{mvar|G}} と {{mvar|N}} がともに無限でも {{math|''G''/''N''}} は有限かもしれないことに注意(例えば {{math|'''Z'''/2'''Z'''}}).
 
{{mvar|G}} の各元 {{mvar|g}} を {{mvar|g}} が属する {{mvar|N}} の剰余類に送る「自然な」[[全射]][[群準同型]] {{math|''π'': ''G'' → ''G''/''N''}}, すなわち {{math|1=''π''(''g'') = ''gN''}}, が存在する.写像 {{mvar|π}} はときに {{mvar|G}} の {{math|''G''/''N''}} の上への[[商写像|自然な射影 (canonical projection) ]]と呼ばれるその[[核 (代数学)|核]]は {{mvar|N}} である.
 
{{mvar|N}} を含む {{mvar|G}} の部分群たちと {{math|''G''/''N''}} の部分群たちの間には全単射な対応がある;{{mvar|H}} が {{mvar|G}} の {{mvar|N}} を含む部分群ならば,{{math|''G''/''N''}} の対応する部分群は {{math|''π''(''H'')}} である.この対応は {{mvar|G}} と {{math|''G''/''N''}} の正規部分群たちに対しても成り立ち,{{仮リンク|lattice対応定理 theorem(群論)|label=対応定理|en|lattice theorem}}においとして定式化される.
 
商群のいくつかの重要な性質は[[準同型定理]]と[[同型定理]]に含まれている.
68行目:
{{mvar|H}} が有限群 {{mvar|G}} の部分群で,{{mvar|H}} の位数が {{mvar|G}} の位数の 1/2 ならば,{{mvar|H}} は正規部分群であることが保証され,商群 {{math|''G''/''H''}} が存在し,{{math|''C''<sub>2</sub>}} に同型である.この結果は「指数 2 の任意の部分群は正規である」と述べることもでき,この形では無限群にも適用できる.さらに,{{mvar|p}} が有限群 {{mvar|G}} の位数を割り切る最小の素数であるとき,{{math|''G''/''H''}} の位数が {{mvar|p}} ならば,{{mvar|H}} は {{mvar|G}} の正規部分群でなければならない{{sfn|Dummit|Foote|2003|p=120}}.
 
{{mvar|G}} と正規部分群 {{mvar|N}} が与えられると,{{mvar|G}} は {{math|''G''/''N''}} の {{mvar|N}} による[[群拡大]]である.この拡大が自明あるいは分裂するかどうか問うことができる.言い換えると,{{mvar|G}} が {{mvar|N}} と {{math|''G''/''N''}} の[[群の直積|直積]]あるいは[[半直積]]であるかどうかを問うことができる.これは{{仮リンク|[[群の拡大#拡大問題|en|extension problem}}拡大問題]]の特別な場合である.拡大が分裂しない例は以下である:{{math|1=''G'' = '''Z'''<sub>4</sub> = {0, 1, 2, 3} }} とし,{{math|1=''N'' = {0, 2} }}とする.{{mvar|N}} は {{math|'''Z'''<sub>2</sub>}} に同型である.このとき {{math|''G''/''N''}} も {{math|'''Z'''<sub>2</sub>}} に同型である.しかし {{math|'''Z'''<sub>2</sub>}} は自明な[[自己同型]]しか持たないから,{{mvar|N}} と {{math|''G''/''N''}} の半直積は直積しかない.{{math|'''Z'''<sub>4</sub>}} は {{math|'''Z'''<sub>2</sub> × '''Z'''<sub>2</sub>}} とは異なるから,{{mvar|G}} は {{mvar|N}} と {{math|''G''/''N''}} の半直積ではない.
 
==リー群の商==
77行目:
==関連項目==
*[[群の拡大]]
*{{仮リンク|Lattice対応定理 theorem(群論)|en|Lattice theorem}}
*{{仮リンク|商圏 (圏論)|en|Quotient category}}
*[[短完全列]]