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[[ファイル:Ladyofthelake1.jpg|thumb|320px|[[アーサー王]]にエクスカリバーを授ける[[湖の乙女]]。アルフレッド・カップス(Alfred Kappes, 1880年)。]]
'''エクスカリバー'''({{lang-en|'''Excalibur'''}})は、[[アーサー王物語|アーサー王伝説]]に登場する、[[アーサー王]]が持つとされる剣。魔法の力が宿るとされ、[[グレートブリテン島|ブリテン島]]の正当な統治者の象徴とされることもある。同じくアーサー王伝説に登場し、アーサーの血筋を証明する'''石に刺さった剣'''と同じものとされることがあるが、別物とされることもある。
 
'''エクスカリバー'''({{lang-en|Excalibur}})は、[[アーサー王物語|アーサー王伝説]]に登場する、[[アーサー王]]が持つとされる剣。魔法の力が宿るとされ、[[グレートブリテン島|ブリテン島]]の正当な統治者の象徴とされることもある。同じくアーサー王伝説に登場し、アーサーの血筋を証明する'''石に刺さった剣'''と同じものとされることがあるが、別物とされることもある。
 
エクスキャリバー、エスカリボール、エクスカリボール、カリバーン、キャリバーン、コールブランド、カリブルヌス、カレトヴルッフ、カレドヴールッハなど様々な異称があるが、これらは[[英語]]、[[フランス語]]、[[ラテン語]]、[[ウェールズ語]]の発音の違いや[[写本]]の表記の揺れで生じたものであり、すべて同じ剣を指す言葉である。エクスカリバーはアーサー王伝説の初期から登場している。
 
== カレトヴルッフ ==
[[ウェールズ]]の伝承にはアルスル([[アーサー王|アーサー]])の剣として'''カレトヴルッフ'''が登場する。これは caled (硬い)+ bwlch (切っ先、溝)の意味であるという<ref>R. Bromwich and D. Simon Evans, ''Culhwch and Olwen. An Edition and Study of the Oldest Arthurian Tale'' (Cardiff: University of Wales Press, 1992), pp.64-5</ref> 。この剣は、[[タリエシン]]作とされる詩『アンヌヴンの略奪』(''Preiddeu Annwfn'')、および後世に[[マビノギオン]]に集録される『キルッフとオルウェン』(''Culhwch ac Olwen,'' [[1100年]]頃)に名前が見え、後者ではアルスルの最も重要な持ち物の一つとされている<ref>中野節子訳『[[マビノギオン]]』JULA出版局、2000年 p.164</ref>。同書ではアルスルの戦士スェンスェアウクが[[アイルランド]]の王ディウルナッハを殺すのに使用している<ref>同 p.206</ref>。同じくマビノギオンに収められた『ロナブイの夢』(''Breuddwyd Rhonabwy'')には、カレトヴルッフと明記されていないもののアルスルの剣が鮮やかに描かれている。
{{Quotation| 見よ、彼は立ち上がった。手にはアルスルの剣を持っていた。剣身には黄金で打ち出された二匹の蛇の姿があって、鞘ばしると、蛇の首から二筋の炎が立ち上るのが見え、それがあまりにも恐ろしいありさまだったので、だれ一人として目を向けて見る者もないほどだった<ref>同 p.225</ref>。(中野節子訳)}}
後に外国の文献(モンマスをもとにした詩『[[ブリュ物語]]』など)が[[ウェールズ語]]に訳される際、カレトヴルッフはエクスカリバーの訳語として使用された。
 
== カリブルヌスからエクスカリバーへ ==
[[12世紀]]の[[ジェフリー・オブ・モンマス]]は[[ラテン語]]の[[偽史]]『[[ブリタニア列王史]]』において、アーサーの剣を'''カリブルヌス'''(Caliburnus)とした<ref>ジェフリー・オブ・モンマス『ブリタニア列王史』第9巻147章など</ref>。これは中世[[ラテン語]]で鋼を意味する calibs (古典ラテン語では chalybs)の影響を受けているといわれる。モンマスによると、この剣は[[アヴァロン]]で鍛えられたもので、アルトゥルス(アーサー)はこの剣を手に[[サクソン人]]の軍勢470人を打ち倒したという。
 
アーサー王伝説が[[アングロ=ノルマン語|アングロ=ノルマン]]の[[詩人]][[ウァース]]の『[[ブリュ物語]]』を経由して[[フランス]]の[[吟遊詩人]]に取り入れられた際、[[ラテン語]]の格語尾 us が落ち、起源不明の es ex が加わって[[古仏語]]のエスカリボール(Escalibor)、エクスカリボール(Excalibor)などに変化した。これらがのちに[[英語]]に入り最終的に'''エクスカリバー'''(Excalibur)となった。
 
[[フランス]]の詩人[[クレティアン・ド・トロワ]]の『ペルスヴァル、あるいは聖杯物語』では、ゴーヴァン([[ガウェイン]])がなぜかエスカリボール(エクスカリバー)を持っており、次のような記述がある。「なにせ、彼(ゴーヴァン)が腰に下げているのは、まるで木を断つかのように鉄を断つ、当世最高の剣エスカリボールなのだから<ref>Bryant, Nigel (trans., ed.), ''Perceval: The Story of the Grail'', DS Brewer, 2006, p. 69 ("Qu'il avoit cainte Escalibor, la meillor espee qui fust, qu'ele trenche fer come fust.")</ref>。」この話は[[ランスロ=聖杯サイクル]]の『メルラン物語』にも見られ、さらにエスカリボールという語は「鉄、鋼(achier)(achier)、木を斬るもの、という意味の[[ヘブライ語]]である」という民間語源説が書き加えられている<ref>Loomis, R. S., ''Arthurian Tradition and Chretien de Troyes'', Columbia, 1949, p. 424 ("c'est non Ebrieu qui dist en franchois trenche fer & achier et fust")</ref><ref>なお、ここでの鋼 achier という語は刃ないし剣も意味し、中世ラテン語の aciarium (鋭い acies の派生語)に由来する。</ref>。『[[アーサー王の死]]』を書いた[[トマス・マロリー]]はこの珍妙な説を取り入れて、エクスカリバーを「鋼を斬るもの」という意味とした<ref>Vinaver, Eugene (ed.), ''The works of Sir Thomas Malory'', Volume 3, Clarendon, 1990, p. 1301 ("the name of it said the lady is Excalibur that is as moche to say as cut stele.")</ref>。
 
なお、カリブルヌスの英語形であるカリバーン(Caliburne)は『[[ブリュ物語]]』などのマロリー以前の英語作品に見える。また、この剣の別名とされることがある'''コールブランド'''(Collbrande)は『[[頭韻詩アーサー王の死]]』にカリバーンの異称として登場する<ref>''Alliterative Morte Arthure'', 2123行</ref>。
 
== エクスカリバーと石に刺さった剣 ==
[[ファイル:Bedivere.jpg|thumb|200px|エクスカリバーを水に投げ入れる[[ベディヴィア]]([[オーブリー・ビアズリー]]、[[1894年]])。]]
 
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マロリーは、『[[アーサー王の死]]』にこの二つのエピソード(石に刺さった剣を抜いて王になる、湖の乙女から魔法の剣を受け取る)を両方取り入れており、その結果生まれた二本の剣を'''ともにエクスカリバーとした'''<ref>トマス・マロリー『アーサー王の死(キャクストン版)』第1巻9章、第2巻3章</ref>ため、混乱を招いている<ref>『アーサー王の死』を抄訳した[[厨川文夫]]は、注で石に刺さった剣をエクスカリバーとしたのはマロリーの誤りだとしている(厨川文夫・圭子編訳 『中世文学集1 アーサー王の死』 ちくま文庫)。</ref>。なお、「一本目の石に刺さった剣はカリブルヌスといい、二本目の湖の乙女によって鍛え直された剣がエクスカリバーである」という説明がされることがあるが<ref>[http://www.4gamer.net/weekly/sandm/001/sandm_001.shtml 剣と魔法の博物館](2010年11月閲覧)等</ref>、マロリーにそのような記述は見られない<ref>石から剣を引き抜く件は冶金術の暗喩ではないかとする説もある。''デイヴィッド・デイ著/山本史郎訳:『アーサー王の世界』原書房''</ref><ref>ちなみに、[[2011年]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[Starz|Starz局]]で放送が開始された『[[:en:Camelot (TV series)|Camelot]]』では、滝の最上部の石に刺さった剣をアーサーが抜くが、それはエクスカリバーとは別物という設定になっている。後日、魔術師[[マーリン]]がエクスカリバーを入手してアーサーに届ける際、「湖の乙女に授かった」と報告するが、その乙女とは実は、マーリン自身が魔法を制御できずに溺死させてしまった、鍛冶屋の娘のことである。</ref>。
 
== エクスカリバーの返還 ==
[[ランスロ=聖杯サイクル]]の『アルテュの死』で、傷付いたアーサーは騎士ギルフレ([[グリフレット]])にエクスカリバーを魔法の湖に投げ入れるよう命じる。二回失敗したのち、ギルフレは王の望みを果たし、湖から手が現れて剣を掴む。これを引き継いだマロリーと他の[[英語]]の作品では、ギルフレの代わりに騎士[[ベディヴィア]]が剣を湖に投げ入れることになっている。
 
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== 映像作品 ==
* [[王様の剣]](つるぎ) - 1963年の[[ディズニー]][[アニメ映画]]
* [[エクスカリバー (1981年の映画)]] - 1981年制作の映画。
* [[エクスカリバー (1997年の映画)]] - 1997年制作の映画。
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* [[エクスカリバー (宝塚歌劇)]] - アーサー王伝説に基づいて作られた[[宝塚歌劇]]作品。
* [[Xcalibur]] - [[カナダ]]の[[コンピュータアニメーション|3Dアニメーション]]、全40話。
* [[キャメロット (ミュージカル)]]
 
* [[キャメロット (ミュージカル1967年の映画)]]
* [[キャメロット (19671998年の映画)]]
* [[魔法の剣 キャメロット]] (1998年の- [[アニメ映画)]]
*[[魔法の剣 キャメロット]] - [[アニメ映画]]
 
== 脚注 ==