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[[ファイル:Lutefisk Vines.JPG|thumb|250px|ルーテフィスク(干鱈の灰汁煮)を中心に、ジャガイモやエンドウマメのマッシュを添えたノルウェーの伝統的な一皿。]]
本稿では'''[[ノルウェー]]の食文化'''について解説する。
 
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=== 魚介類 ===
[[ファイル:Stockfish in Lofoten.jpg|thumb|180px|[[ロフォーテン諸島]]での魚の天日干し風景。]]
ノルウェーの食文化の最も大きな柱が海産物である。特に魚類は古くからさまざまな種類が食卓に上り、[[タイセイヨウダラ]]、[[サケ]]、[[タイセイヨウニシン]]、[[イワシ]]、[[サバ]]などがよく食べられている。沿岸地方を中心に頭や[[卵巣]]、[[肝臓]]などを除かず、天日干しもしくは[[燻製]]にして保存される。現代になって人気が出てきた[[甲殻類]]のうち、[[カニ]]は漁師やカニ漁愛好家によって壺型の仕掛けで捕獲され、[[エビ]]は小さな[[トロール船]]で捕獲したものを調理して波止場で売っている。
 
なんといってもノルウェーの輸出品として最たるものはタイセイヨウダラを加工した[[バカラオ]](|干鱈]]である。干鱈は何世紀もの間、世界の食を担ってきた。 特に[[イベリア半島]]と[[アフリカ]]の海岸部において欠かせない食糧だった。[[大航海時代]]から[[産業革命]]の時代にかけて、干鱈は大西洋貿易を支える重要な食糧だった。[[日本]]の[[棒鱈]]と同様に天日干しにした干鱈は非常に硬く、木槌でよく叩き、何時間もかけて灰汁で戻す{{仮リンク|ルーテフィスク(lutfisk)|en|Lutefisk}}(lutefisk)という料理にして食べる。
 
また、同じくノルウェー名産の[[スモークサーモン]]は、ノルウェーの主要な輸出品として世界中の食卓に提供されている。スモークサーモンは古くからさまざまな種類が存在し、炒り卵に添える、[[イノンド|ディル]]を散らす、[[サンドイッチ]]にする、[[マスタード]]ソースを掛けるなどして食べられている。
 
スモークサーモンに似たものに、[[グラブラックス]](gravlaks:地面に埋めた鮭)という生の鮭を塩・砂糖・ディル(香草)に漬けたものがあり、響きのいい商品名に改名して輸出もされている。地面に埋めるという名が付いているのは、もともと塩鮭を地面に埋めて発酵させる[[発酵食品]]であった名残である。ほか、現代も残る発酵食品としては、マスの発酵食品{{仮リンク|クフィスク|en|Rakfisk}}(rakfisk)がある。
 
[[20世紀]]まで、魚以外の魚介類は漁の手間がかかることと保存が利かないことから、種類を問わずほとんど食用にされなかったが、現代ではエビやカニ、[[ムール貝]]などが夏の味覚として好まれるようになっている。ムール貝は[[ニンニク]]、[[パセリ]]と共に[[白ワイン]]で蒸されて、パンと一緒に食べる。貝殻に残るつゆは、濃い生クリームに混ぜてスープにする。[[ロブスター]]も人気はあるが、乱獲防止に漁獲量の制限があるため、高価で、めったに食卓に上らない。夏の行事としてkrabbelagクラッベラグ(krabbelag)といってカニを供する野外パーティーが開かれる。調理済みのカニを購入するか、大鍋で生きているカニを料理して、田舎風にパンの上に[[マヨネーズ]]とカニ、[[銀杏切り]]にした[[レモン]]を載せて食べる。
 
=== 肉類 ===
[[File:Norwegian.cuisine-Reinsdyrsteik-01.jpg|thumb|トナカイのステーキ]]
高級料理は[[ヘラジカ]]、[[トナカイ]]、鴨などの[[ジビエ]]が中心である。自ら狩りに出向いて得た獲物を売ったり人に贈ることもあるが、贈答用として広く販売もされている。野生動物独特の臭みを消すため、[[セイヨウネズ|杜松]]の実で風味づけした濃厚なソースをかけ、[[コケモモ]]のジャムを添えて食べられる。
 
[[羊肉]]を中心とした加工肉は、地域ごとに多様な種類があり、[[サワークリーム]]入りの料理にしたり、平たいパン、[[小麦粉]]、[[ジャガイモ]]に包んで丸めた蒸し料理にされる。特に人気が高いのはフェナロー(fenal)という仔羊の腿肉を塩漬けにした[[生ハム]]の一種、燻製にした[[ソーセージ]]など。フォーリコール(fårikål)という[[キャベツ]]と羊肉のシチューがよく食べられる。
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他のスカンジナビア諸国同様、伝統的な野菜は[[カブ]]と[[キャベツ]]で、シチューなどによく使われる。[[ジャガイモ]]はアメリカ大陸から伝わったものだが、ノルウェー人にとって欠かせない食材となった。夕食の付け合わせとして料理に添えるほか、塩漬け肉などを包んだジャガイモの蒸し団子などが好まれている。
 
果実類としては、[[リンゴ]]、[[サクランボ]]などに加えて、[[イチゴ]]、[[ブルーベリー]]、[[コケモモ]]、[[ラズベリー]]といったベリー類が海外にも名高い。野生の[[ホロムイイチゴ]]は特に人気があり、泡立てた生クリームに混ぜてデザートになる。ドイツ菓子とよく似た北欧風の[[スポンジケーキ]]、[[デニッシュ]]に加え、自家製ケーキ、[[ワッフル]]、[[ビスケット]]に果物の砂糖漬けがよく使われる。風味づけには[[カルダモン]]がよく使われる。
 
=== 穀物 ===
[[ファイル:Krumkaker.JPG|thumb|180px|クルームカーケ。焼き上げたクレープを木型を芯に巻いて、円錐状に仕上げる。]]
80%のノルウェー人が朝食と昼食にいつもパンを食べるというほど、ノルウェーの食事にパンは欠かせない。ノルウェーで最も一般的なパンは、バターをたっぷり使ったデニッシュとは正反対の、乾燥した堅く薄い全粒粉の[[フラットブレッド]]と呼ばれるパンである。ノルウェーでは朝食、昼食、夕食、夜食のうち、夕食の準備でしか台所に火は入れないという習慣があり、夕食以外はパンに[[チーズ]][[サラミ]]を載せた[[{{仮リンク|スモーブロー]]|no|Smørbrød}}(Smørbrød)済ますことが多い。
済ますことが多い。
 
菓子類としてはクリーム入り[[クレープ]]菓子のクルームカーケ(krumkake)、[[スポンジ生地ケーキ]]にジャムを塗って生クリームで飾ったブルートカーケ(bløtkake)、輪型の[[マカロン]]を塔のように積み上げたクランセカーケ(kransekake)などが有名。
 
=== 乳製品 ===
物々交換の時代、ノルウェー人にとって[[バター]]は高額貨幣のように取り扱われた。[[結婚式]]には、若い夫婦の前途を祝って木型で四角錐にかたどった大きなバターの塊がテーブルに飾られた。
 
一日のほとんどをパンに[[チーズ]]を塗った軽食で済ませるノルウェーでは、チーズは必需品である。海外でよく知られているヤールスバーグ(Jarlsberg)という牛乳でできた薄味のチーズ、非常に甘いブルンオスト(brunost)という[[シェーブルチーズ|山羊乳のチーズ]](正確にはチーズではなく山羊乳を加熱して[[乳糖]]を[[キャラメル化]]したもの)、凝乳剤を使わずに牛乳を沸騰させて造るガンメルウスト(gammelost)という長く熟成させた刺激のあるサワーミルクのカビチーズなどがある。
 
== 飲み物 ==
[[ファイル:E.C. Dahls Juleøl.jpg|thumb|180px|ユーレォル(クリスマスビールJuleøl。これはDahlsダールス醸造所のもの。]]
統計サイトのNationmasterネーションマスターによると、平均的ノルウェー人は1年あたり160リットル、[[]]の重量にして10.7kgの[[コーヒー]]を飲んでおり、ノルウェーは主立ったコーヒー消費国の一つである。食事を終えた後に客と手作りのデザートとコーヒーを味わいながら歓談するのは、ノルウェーの日常風景である。コーヒーはたいてい混ぜ物なしのブラックで、マグカップに淹れて供される。
 
[[19世紀]]頃までノルウェー人にとって、ブランネ(blande)という水と[[乳清]]を混ぜたものか、[[ビール]]が主な飲料だった。大量生産によるものとは別に、小規模の醸造所[[マイクロブルワリー]][[ヴァイキング]]時代以来の長い伝統を持っている。[[ピルスナー]]スタイルか赤大麦を原料にしたレッドビールが主流だが、伝統的なノルウェービールは麦芽100%でアルコール度数も高い。MAC社のJuleølユーレォル(Juleøl)というクリスマスビールは伝統的なノルウェービールの製法で作られている。
 
[[ブドウ]]の栽培は北国のノルウェーでは難しく、[[ワイン]]は輸入がほとんどである。その他の地酒としては、ジャガイモを使った[[キャラウェイ]]風味の蒸留酒[[アクアビット]](Akevitt)や、[[北欧神話]]に知恵を与える霊酒として登場する水で薄めた[[蜂蜜]]から作る醸造酒[[ミード蜂蜜酒]](mjød)がある。
 
酒類は4.75%未満のものは一般の[[スーパーマーケット]]などで販売されるが、それ以上のものは国営専売公社([[{{仮リンク|ヴィンモノポレット|en|Vinmonopolet]])}}および飲食店でのみ販売が許可されている。
 
== 料理 ==
[[File:Norwegian.food-Smørbrød-01.jpg|thumb|[[:en:Smørrebrød|スモーブロー(ノルウェー風オープンサンドウィッチ]]]]
*フォーリコール(fårikål):羊肉とキャベツのシチュー。
*リッベ(ribbe):[[バラ|豚]][[ばら肉]]を皮つきのままローストしたもの。祝宴料理。
*フォーレルル(fårerull):仔羊の肉を使った祝宴料理。
*ピンネ・ヒョット(pinnekjøtt):塩漬けの羊の腿肉を蒸しあげたもの。西ノルウェー発祥の祝宴料理。
*スィルテ(sylte):[[ドイツ]]に起源を持つ豚の頭のパテ。
*ルーテフィスク(lutfisk):干鱈を水に浸け、灰汁で戻したもの。蒸すか弱火で茹でて食べる。クリスマス料理の一つ
*フィスクスッペ(fiskesuppe):魚のスープ。
*フィスクカーケ(fiskekake):魚の練り物。
*スーシル(sursild):ニシンを[[タマネギ]]と共に酢と砂糖でマリネしたもの。
*ロンメグロート(rømmegrøt):祝宴料理。サワークリームと小麦粉、[[牛乳]]を煮込んでシナモンシュガーと溶かしバターを加えて食べるもの。
*パンネカーケ(pannekake):クレープ風の[[ホットケーキ|パンケーキ]]。
*ブルートカーケ(bløtkake):ジャムを塗ったスポンジケーキ。
*クランセカーケ(kransekake):アーモンド粉とメレンゲを混ぜたリング状の焼菓子を円錐形に積み上げたもの。
*リスクレーム(riskrem):[[ライスプディング]]。クリスマスのデザート。
*カラメルプディング(karamelpudding):[[プリン]]。
 
== 外部リンク ==