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[[心理学]]における'''レジリエンス'''(resilience)とは、社会的ディスアドバンテージや、己に不利な状況において、そういった状況に自身のライフタスクを適応させる個人の能力と定義される<ref>{{cite journal|year=1999|title=Critical conceptual; and measurement issues in the study of resilience|url=|journal=International Journal of Occupational Safety and Ergonomics|volume=|issue=|pages=163|last1=Windle|first1=M}}</ref> 。それら不利な状況や[[ストレス (生体)|ストレス]]とは、家族、人間関係、健康問題、職場や金銭的な心配事、その他より起こり得る<ref name="apa.org">American Psychological Association. (2014). [http://www.apa.org/helpcenter/road-resilience.aspx The Road to Resilience].</ref> 。
'''レジリエンス'''(resilience)とは、「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」などとも訳される心理学用語である。[[心理学]]、[[精神医学]]の分野では訳語を用いず、そのままレジリエンス、またはレジリアンスと表記して用いることが多い。「脆弱性 (vulnerability) 」の反対の概念であり、自発的治癒力の意味である。▼
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== 概要 ==
レジリエンス(resilience)は、元々は[[ストレス]] (stress) とともに[[物理学]]の用語であった。 ストレスは「外力による歪み」を意味し、レジリエンスはそれに対して「外力による歪みを跳ね返す力」として使われ始め{{Sfn|加藤敏|2009|p=9}}、精神医学では、ボナノ (Bonanno,G.) が2004年に述べた「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」という定義が用いられることが多い{{Sfn|岡野憲一郎|2009|p=219}}。 1970年代には貧困や親の精神疾患といった不利な生活環境 (adversity) に置かれた児童に焦点を当てていたが、1980年代から2000年にかけて、成人も含めた精神疾患に対する防衛因子、抵抗力を意味する概念として徐々に注目されはじめた<ref>田 亮介 「PTSDにおけるレジリアンス」[[#加藤敏編2009|『レジリアンス』 2009]] pp.76-78</ref>。▼
▲1970年代には貧困や親の精神疾患といった不利な生活環境 (adversity) に置かれた児童に焦点を当てていたが、1980年代から2000年にかけて、成人も含めた精神疾患に対する防衛因子、抵抗力を意味する概念として徐々に注目されはじめた<ref>田 亮介 「PTSDにおけるレジリアンス」[[#加藤敏編2009|『レジリアンス』 2009]] pp.76-78</ref>。
具体的に解りやすい例が[[PTSD]]である。
[[1995年]]のアメリカの論文には、[[アメリカ人]]の50% - 60%がなんらかの外傷的体験に曝されるが、その全ての人がPTSDになるわけではなく、PTSDになるのはその8% - 20%であるという<ref>田 亮介
[[2006年]]の論文では、深刻な外傷性のストレスに曝された場合、PTSDを発症するのは14%程度と報告されている
では、なる人とならない人の差は何か、というのがこのレジリエンスである。
チャーニー (Charney) は[[2004年]]に「アロステイシス(allostasis)」という概念を提唱し、それを構成する要素としてコルチゾールに始まり、セロトニンを含む11の生理学的ファクターをあげている
国内では小塩真司らによる研究もあり、レジリエンスは「新奇性追求」「感情調整」「肯定的な未来志向」の3因子で構成され、また苦痛に満ちたライフイベントを経験したにも関わらず[[自尊心]]が高い者は、自尊心が低い者よりもレジリエンスが高いとする
以上レジリエンスを構成する要素は多く、かつ極めて複雑な相互関係を持つ。
また、生得的なものからその人自身によって獲得されるもの、感じ方や考え方まで含む。
==
[[アメリカ精神医学会]]は、以下の「レジリエンスを築く10の方法」を提唱している<ref name="apa.org"/>。
{{Reflist|1}}▼
# 親戚や友人らと良好な関係を維持する。
== 参考文献 ==▼
# 危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐え難い問題として見ないようにする。
# 変えられない状況を受け入れる。
# 現実的な目標を立て、それに向かって進む。
# 不利な状況であっても、決断し行動する。
# 損失を出した闘いの後には、自己発見の機会を探す。
# 自信を深める。
# 長期的な視点を保ち、より広範な状況でストレスの多い出来事を検討する。
# 希望的な見通しを維持し、良いことを期待し、希望を視覚化する。
# 心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う。
[[セルフヘルプ]]によってレジリエンスを築く様々な方法が提唱されており、主に[[認知行動療法]](CBT)と[[理性感情行動療法]](REBT)の理論を元にして執筆されている<ref name="Robertson_2012">{{Cite book| author=Robertson, D | title=Build your Resilience| year=2012| publisher=Hodder| location=London| isbn=978-1444168716|url=https://books.google.com/books?id=QwIstsEgkBMC}}</ref>。 例えば、Penn Resiliency Program(PRP)と呼ばれるグループ認知行動介入は、様々なレジリエンスの側面を向上することが示されている。17件のPRP研究メタアナリシスでは、介入によって[[抑うつ]]症状が有意に軽減されると示された。<ref name="pmid19968381">{{cite journal|author=Brunwasser SM, Gillham JE, Kim ES.|title=A meta-analytic review of the Penn Resiliency Program's effect on depressive symptoms|journal=Journal of Consulting and Clinical Psychology|year=2009|volume=77|issue=6|pages=1042–1054|doi=10.1037/a0017671|pmid=19968381|last2=Gillham|last3=Kim}}</ref>
|last = 小塩真司・中谷素之・金子一史・長峰伸治「ネガティブな出来事からの立ち直りを導く心理的特性-精神的回復力尺度の作成」▼
== 出典 ==
▲== 参考文献 ==
▲* {{Cite|
* {{Cite |和書 |author=岡野憲一郎 |title=新外傷性精神障害―トラウマ理論を越えて |date=2009 |publisher=岩崎学術出版社 |ref=harv }}
|title = 続解離性障害―脳と身体から見たメカニズムと治療▼
* {{Cite |和書 |author=加藤敏 |author2=八木剛平 |title=レジリアンス 現代精神医学の新しいパラダイム |date=2009 |publisher=金原出版 |ref=harv }}
▲
== 関連項目 ==
*[[マインドビルディング]]
*[[ストレス管理]]
== 外部リンク ==
* [http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3486_all.html “折れない心”の育て方 - NHK クローズアップ現代 - NHKオンライン]
* [http://www.sinritest.com/positive/resilience.html レジリエンスに関わる診断]
* [http://www.coaching-psych.com/ 日本コーチング心理学協会] レジリエンスに関わるコーチングを扱っている。
* [http://positive-counselor.org/ 日本ポジティブ心理カウンセラー協会] レジリエンスに関わるカウセリングを扱っている。
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[[Category:動機づけ]]
[[Category:心理学の理論]]
[[Category:ストレス]]
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