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ZairanTD (会話 | 投稿記録)
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== 腹痛のアプローチ ==
急性腹痛では次のようなステップで行うと[[誤診]]が少なくなる。まずは外傷性かどうかを調べる。病歴をもとに考え、[[腹部エコー]]で臓器損傷を確認する。次に産科的疾患、婦人科的疾患、外科的疾患、内科的疾患と考えていく。どうしても診断がつかなければLQQTSFAを全て埋めるような問診をして、精神的疾患まで考えていく。診断をつける際は緊急手術が必要かどうかを常に考える。たいていの場合、腹痛の緊急性は、心肺血管系の緊急疾患でい場合、原因によらず、[[腹膜炎]]になっているかどうかで決まる。緊急性を感じたら、術前に必要な検査を行い、静脈確保も手術に耐えられるようなものにしなければならない。具体的には、胸部X線写真ではPA像で撮影、腹部X線写真は立位、臥位の二方向撮影、凝固機能、クロスマッチテスト、針は18Gにするといったことを行わなければならない。原則として背部痛を伴う場合は[[後腹膜臓器]]の疾患を考える。ブスコパンで反応すれば内科系疾患であり、反応しなければ外科系疾患であるという経験則も使える。救急では診断がつき、[[バイタルサイン]]が安定化するまでは[[鎮痛薬]]を使用しないという原則がある。ブスコパンは[[鎮痙薬]]であるので使っても診断は行うことができる。またたとえ診断がついても[[モルヒネ]]は膵、胆管系の疾患を増悪させるので禁忌である。
 
慢性腹痛では、機能性の疾患([[過敏性腸症候群]]、[[便秘]]、[[機能性胃腸症]]など)が多いが、見逃してはならないのは[[悪性腫瘍]]である。
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|Shift of WBC count||白血球の左方移動||1
|}
7点以上で虫垂炎が疑わしいとされている。画像診断では造影CTが望ましいとされている。外科のcope's early diagnosis of the acute abdomenによると急性虫垂炎は食思不振からはじまり、徐々に心窩部あるいは臍周囲の痛みが出現し、悪心、嘔吐が出現する。食思不振が高頻度(95%)(95%)に先行するため悪心、嘔吐は程度が核い場合が多く、嘔吐はあっても数回程度である。その後右下腹部痛が出現し、微熱を伴い白血球の増加が起こるとしている。この順序で出現しなければ虫垂炎以外の疾患を考慮する必要があるとされているが非典型例も多い。
 
== 腹部症状との関係 ==
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==== 悪心・嘔吐のマネジメント ====
診断の手掛かりとなる情報としては[[24時間]]以内に摂取した食物や旅行歴のほか、腹痛、下痢、便秘といったその他の腹部症状、排ガスの有無や冷や汗の有無など重要である。排ガス、排便がなければ閉塞性の消化器疾患が疑われる。既往歴に腹部の手術歴や心疾患、糖尿病、産婦人科的な疾患歴などがある場合はそれが影響している可能性がある。周囲に同様の症状の人がいれば食中毒の可能性もあり、アルコール多飲歴はAKAの手掛かりとなる。内服薬も嘔吐の原因の手がかりになる。
 
[[バイタルサイン]]では意識障害、呼吸不全が認められる場合や、高血圧な割に徐脈という[[クッシング徴候]]が認められる場合は中枢性疾患を疑う。発熱が認められれば感染症、徐脈や不整脈が認められれば心血管疾患、呼吸不全が認められるときはDKAといった代謝性疾患も疑う。発熱、嘔吐を伴い消化管感染を特に疑う下痢の症状がない場合は[[髄膜炎]]も疑われる。髄膜炎を疑う不随意運動や[[皮質症状]]、高熱、[[髄膜刺激症状]]が認められる場合は頭部CT撮影後、腰椎穿刺を行う。特に細菌性髄膜炎は緊急疾患である。
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==== 悪心・嘔吐の治療 ====
基本的には心筋梗塞ではPCIといった原因療法を行う。対症療法としては[[制吐薬]]、グリセオールといった脳圧降下薬、胃内容物の除去としてNGチューブの挿入などが行われる。制吐薬としては消化器疾患が疑われた場合は[[ドパミン拮抗薬]]や[[抗コリン薬]]が用いられる。ドパミン拮抗薬としては[[メトクロプラミド]](プリンペラン®)、[[ドンペリドン]](ナウゼリン®)などがよく用いられる。これは消化管蠕動運動を亢進させることで内容物が通過することで嘔気が軽減する。静注、筋注、坐薬、経口といった各種薬剤が市販されている。点滴静注では即効性がないことが知られている。心窩部の不快感ではなく腹痛が認められるときは蠕動の亢進で症状が悪化することがあり注意が必要である。この場合は抗コリン薬である[[ブチルスコポラミン]](ブスコパン®)が好まれる傾向がある。抗コリン薬は腸管蠕動を抑制することで悪心、嘔吐を軽減する作用がある。胆管や尿管にも同様に作用する。また内視鏡的に潰瘍、炎症所見が認められない[[機能性ディスペプシア]]の場合は[[セロトニン]]5-HT<sub>4</sub>受容体刺激薬である[[モサプリド]](ガスモチン®)がよく用いられる。
 
また制吐薬に分類されるドパミン拮抗薬は[[スルピリド]](ドグマチール®)を除き中枢神経作用はほとんどないとされているが稀に[[錐体外路症状]]が出現することがある。振戦、無動、固縮といった[[パーキンソン症候群]]のかたちをとることが多く、この場合は抗コリン薬である[[ビペリデン]](アキネトン®)などがよく用いられる。また胃潰瘍や[[GERD]]による悪心、嘔吐に関しては[[H2ブロッカー]]や[[PPI]]が用いられる。そのほか、種種の原因でおこる悪心、嘔吐に対する制吐薬を以下にまとめる。
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!nowrap|疾患分類!!nowrap|用いる制吐薬
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=== しゃっくり ===
[[しゃっくり]]は横隔膜や横隔神経への刺激によって起るとされている。対処法としては息を止めて水を飲むのが第一の対応法である。機械的刺激が存在する場合はその原因除去を行い、薬物療法としては抗ドパミン薬の投与を行う場合が多い。また[[抗精神病薬]]である[[クロルプロマジン]](ウィンタミン®)が用いられることもある。クロルプロマジン25mgを生理食塩水50mlに溶解させ、30分で点滴などは難治性の場合は用いられることがある処方である。
 
=== 下痢 ===
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その後、感染性、非感染性の区別を行う。体外毒素型の感染の場合は発熱が認められないことに注意が必要である。血が混じっているかといった便の性状、過去2日~3日の食事歴、旅行歴、同様の症状を伴った人が周りにいるか、抗菌薬の使用の有無、アレルギーなどが重要な問診事項となる。[[食物アレルギー]]([[カキ (貝)|カキ]]などの食物による嘔吐、下痢など)などの存在にも留意する。嘔吐なしの軽症患者では検査なし、重症患者、脱水患者では採血、点滴の施行、特殊患者では便培養を施行することが多い。
 
重要なことは'''感染性下痢症であってもほとんどの場合は抗菌薬の投与は不要である'''。通常であれば排泄によって起炎菌の排出で自然治癒をするということが第一にあげられる。さらに抗菌薬投与によって増悪することもある。例えばサルモネラ菌による腸炎の場合は[[抗菌薬]]の投与によって[[保菌者]]となることがある。[[腸管出血性大腸菌]][[O157]]の場合は[[溶血性尿毒症症候群]](HUS)を誘発することがある。'''[[止瀉薬]]に関しても感染性下痢、出血性下痢といった器質性下痢に対しては使用しない'''。消化管の排菌機能を抑えてしまうからである(特に'''O157'''や'''[[志賀毒素]]を産生する[[赤痢菌]]'''の感染による下痢の場合は止瀉薬の服用によって重篤になることもある)。こういった事情から原則は乳酸菌などの[[整腸剤]]の投与を行う。海鮮物による下痢、出血性下痢、感染性胃腸炎で頻度の多いE.coli O157:H7、Campylobacter spp.(カンピロバクター)、Vibro parahemolyticus(腸炎ビブリオ)などには抗菌薬が不要である。逆に抗菌薬を使用する感染性胃腸炎には敗血症、重症感のある場合、旅行者下痢症、偽膜性大腸炎、性行為感染症、肝硬変の患者のVibrio vulnificusなどである。Vibrio vulnificusは生魚などに含まれる細菌であるが、肝硬変患者が感染すると致死率が高い。この場合はテトラサイクリン系の抗菌薬を用いる。下痢の患者に抗菌薬を使用する場合はラックビーR®やビオフェルミンR®といった抗菌薬耐性の整腸剤を併用する。よく用いる抗菌薬は点滴であれば[[セファマイシン]]系であるセフメタゾン®などである。経口薬では[[ニューキノロン]]系であればトシル酸[[トスフロキサシン]](オゼックス®)を150mg錠で3錠分3で5日間や、ホスホマイシン系では[[ホスホマイシン]](ホスミシン®)を500mg錠で6錠分3で5日間などがよくみる処方である。起炎菌は市中と院内では大きく異なることが知られており、入院後3日経過していれば抗菌薬投与中といった特殊な事情がなければ便培養は不要である。これはほとんどの場合は感染性ではなく別の原因で起る下痢であるからである。対症療法が必要ならばこの場合も整腸剤を用いる。
 
入院中の下痢、発熱の場合は[[クロストリジウム・ディフィシル腸炎]]を疑いCDトキシンの測定が必要となる。診断したら[[メトロニダゾール]]または経口[[バンコマイシン]]で治療する。
 
[[止瀉薬]]は機能性下痢症にのみ原則用いる。潰瘍性大腸炎に塩酸ロペラミドなど腸運動抑制薬を投与すると中毒性巨大結腸を起こすことなどが有名である。非感染性器質性下痢には炎症性疾患、血管疾患、吸収不良疾患、[[乳糖不耐症]]、手術後、内分泌疾患、放射線、腫瘍、アレルギー疾患、中毒、薬物、便秘、レジオネラ肺炎の随伴症状と多数知られている。
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|吐血||上部消化管出血
|-
|メレナ||別名タール便、ほとんどが上部消化管出血
|-
|下血||下部消化管出血、
|}
上部消化管出血の原因疾患を以下にまとめる。
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!nowrap|病態!!nowrap|疾患
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==== 吐血、メレナ ====
吐血と区別が必要な症候に[[喀血]]がある。喀血が気道出血であるのに対して、吐血は消化管出血である。吐血の場合、[[胃潰瘍]]などによる胃あるいは十二指腸からの出血で、血液が胃液による酸化を受けて黒色となる。[[コーヒー]]の滓に似ており「コーヒー残渣様」と表現される。コーヒー残渣様吐物(coffee-ground emesis)は吐血で特徴のある所見である。ただし吐血でも[[肝硬変]]などに伴う[[食道静脈瘤]]からの出血は胃液と接触しないため赤い。吐物に対して尿潜血検査がなされることがあるが、テステープ検査では胃酸に触れただけで潜血陽性となるため出血の有無はこの検査からは分からない。喀血を飲み込み、それを後に吐血することもあるため、両者の区別は時に難しいこともある。喀血と吐血の区別がつかない場合は呼吸器と消化器の両方の精査が必要である。
{|class="wikitable" style="margin-left:2em; font-size:95%"
!nowrap| !!nowrap|喀血!!nowrap|吐血