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'''ニシン'''(鰊・鯡、[[学名]]:''Clupea pallasii'')は、[[ニシン目]][[ニシン科]]の海水魚。別名、'''春告魚'''(はるつげうお)。欧米で [[ヘリング]] '''Herring, Häring''' といえばニシンも含むが、普通は[[タイセイヨウニシン]]( ''[[w:Clupea harengus|C. harengus]]'' )のことをいう。2種を区別したいときは、ニシンを パシフィックヘリング [[w:Pacific herring|Pacific herring]]、タイセイヨウニシンを アトランティックヘリング [[w:Atlantic herring|Atlantic herring]] という。種小名は、[[ドイツ]]の生物学者[[ペーター・ジーモン・パラス]]にちなむ。繁殖特性や形態などが異なることから本種とタイセイヨウニシンは別種と考える研究者もいる<ref name=kobayashi />。魚体は細長く、体長は30-35cmほど。背側は青黒色、腹側は銀白色。日本付近では春、産卵のために[[北海道]]沿岸に現れる
 
== 分布 ==
冷水域を好む回遊魚で[[北太平洋]]、[[日本海]]、[[黄海]]北部の[[渤海湾]]に、北アメリカ大陸側ではカリフォルニア州[[サンディエゴ]]付近を南限として分布し[[アラスカ]]の[[ブリストル湾]]が大きな産卵場になっている<name=kobayashi />。日本での分布南限は日本海で富山県、太平洋側で[[犬吠埼]]付近とされる<name=kobayashi />。分布域は広いが回遊範囲が狭く固有の湾内などを生息域とする地域性の群れ(地域群)と広範囲の海洋を回遊する群れ(広域群)が存在している<ref name="78_7">大河内裕之、中川雅弘:[http://doi.org/10.2331/suisan.78.8 北海道噴火湾周辺海域で漁獲されるニシンの系群構造] 日本水産学会誌 Vol.78 (2012) No.1 P8-14</ref>が、それぞれの回遊範囲等については十分に解明されていない。
冷水域を好む回遊魚で[[北太平洋]]、[[北極海]]、[[白海]]、[[バレンツ海]]南西部、[[日本海]]、[[黄海]]北部の[[渤海湾]]に分布する。魚体は細長く、体長は30-35cmほど。背側は青黒色、腹側は銀白色。日本付近では春、産卵のために[[北海道]]沿岸に現れる。日本の太平洋側では[[犬吠埼]]付近が南限。
 
分布域は広いが回遊範囲が狭く固有の湾内などを生息域とする地域性の群れ(地域群)と広範囲の海洋を回遊する群れ(広域群)が存在している<ref name="78_7">大河内裕之、中川雅弘:[http://doi.org/10.2331/suisan.78.8 北海道噴火湾周辺海域で漁獲されるニシンの系群構造] 日本水産学会誌 Vol.78 (2012) No.1 P8-14</ref>が、それぞれの回遊範囲等については十分に解明されていない。
 
日本付近では、地域群:それぞれ[[石狩湾]]、[[能取湖]]、[[風蓮湖]]、[[厚岸湖]]、[[湧洞沼]]、[[尾鮫沼]]、[[万石浦]]<ref name="78_7"/>などを主な産卵場とする群と広域群:「北海道・サハリン系」、「本州系」が分布する。サハリン周辺の地域群は、オホーツク海北部沿岸に産卵するオホーツク系統群、シェレホフ湾内とカムチャッカ半島北西部に産卵するギジガ・カムチャッカ系統群<ref name="agrmet.41.386">内島立郎:[http://doi.org/10.2480/agrmet.41.386 北海道沿岸のニシン漁の変せんと気候変動] 農業気象 Vol.41 (1985-1986) No.4 P386-387</ref>。
 
=== 生態 ===
主なエサは動物性プランクトンや[[オキアミ]]類(日本付近では、[[ツノナシオキアミ]])を捕食している。回遊魚であるが同じ海域に戻り産卵する性質がある(産卵回遊性)。生後数年で性成熟し産卵活動に参加するが、産卵を行わない年もあるとされている<ref name="aquaculturesci.62.195">長倉義智ほか:[http://doi.org/10.11233/aquaculturesci.62.195 宮古湾で再捕されたニシンの年齢と産卵回帰] 水産増殖 Vol.62 (2014) No.2 p.195-197</ref>。孕卵数は体長と共に増加し、 24cm-2.2万粒、28cm-3.8万粒、32cm-6.5万粒、36.6cm-9.3万粒 との報告があり年齢に万を付けた数が概略の孕卵数となる<ref name="aquaculturesci.62.195"/>。

==== 産卵と成熟 ====
タイセイヨウニシンが外洋水に近い比較的塩分濃度が高く水温の高い水深10〜200mの砂地、石、岩に産卵するのに対し太平洋に分布する個体群は、タイセイヨウニシンと比較すると低塩分で低水温域の潮間帯に分布する水性植物([[アマモ]]や[[コンブ]]などの海藻類)に産卵を行う<ref name=kobayashi>小林時正、[http://fsf.fra.affrc.go.jp/bulletin/kenpoupdf/kenpou30-1.pdf 太平洋ニシンの集団遺伝学的特性と種内分化に関する研究] 遠洋水研報 第30号 平成5年3月, {{naid|500000098233}} </ref>。

産卵期春のみで水深 1m 以下の浅い海で行われる。メスは沈性で粘着性のある直径 1mm程度の卵を海藻に産み付け、オスが放精して受精させる。この際に海水が白濁する状態となる。なお、海域で産卵する個体群と汽水湖沼内で産卵を行う個体群が存在する<ref>小林時正ほか:[http://doi.org/10.2331/suisan.56.1045 日本の北部海域で産卵するニシン地域性集団間の遺伝的分化] 日本水産学会誌 Vol.56 (1990) No.7 P1045-1052</ref>。寿命については十分な調査が行われていないため不明であるが、ノルウェー産 20年、石狩ニシン 5-6年、宮古湾 9年、万石浦(宮城県) 6年等の報告があるが、日本近海の個体群の推定寿命を過小評価している可能性が指摘されている<ref name="aquaculturesci.62.195"/>。
 
地域群と広域群では成熟に至るまでの年数が異なる。
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== 脚注 ==
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<references/>
 
== 関連項目 ==